王と生きる男
왕과 사는 남자 / The King's Warden
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2025年12月19日の制作報告会。左からユ・ジテ、パク・ジフン、ユ・ヘジン、チョン・ミド、チャン・ハンジュン監督(撮影:TV10、出典:Wikimedia Commons、CC BY 3.0)
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物語の舞台、寧越・清泠浦に復元された端宗の御所(撮影:Naturehead、出典:Wikimedia Commons、CC BY-SA 3.0)
監督 チャン・ハンジュン
脚本 チャン・ハンジュンほか
出演 ユ・ヘジン
パク・ジフン
ユ・ジテ
チョン・ミド
キム・ミン
音楽 ダルパラン
ジャンル 時代劇(史劇)/ヒューマンドラマ
撮影期間 2025年3月 - 6月
制作会社 オンダワークス、B.A.エンターテインメント
配給 ショーボックス(韓国)
KADOKAWA(日本)
劇場公開 2026年2月4日(韓国)
2027年1月8日(日本、予定)
配信 Coupang Play(韓国、個別購入)
配信公開 2026年4月29日(韓国)
上映時間 117分
製作費 約100億ウォン
興行収入 韓国観客動員 約1692万人(歴代2位)/韓国売上歴代1位
言語 韓国語
レイティング 12歳以上観覧可(韓国)
リンク 日本公式サイト



概要[編集]

王と生きる男(おうといきるおとこ、原題:왕과 사는 남자、英題:The King's Warden)とは、1457年に江原道寧越へ流された廃王・端宗と、流刑地の村長オム・フンド(厳興道)の交流を描いた、チャン・ハンジュン監督・ユ・ヘジン、パク・ジフン主演の2026年の韓国映画である。

詳細[編集]

どんな映画?[編集]

ざっくり言うと「歴史の教科書で一番かわいそうな王様を、田舎の村長が全力で世話する話」。舞台は1457年の朝鮮王朝。叔父の首陽大君(のちの世祖)に王位を奪われた少年王・端宗(本名イ・ホンウィ)は、身分を「魯山君」に落とされ、三方を川、一方を断崖に囲まれた陸の孤島・清泠浦(チョンニョンポ)へ流される。

そこで王の監視と世話を押しつけられたのが、村の暮らしをどうにか良くしたい一心の村長オム・フンド。流刑者が来れば村にお役人の恩恵があるかも……と皮算用していた村長の前に現れたのは、なんと元・国王本人だった。身分も年齢もまったく違う2人が、ぎこちなく、やがて本気でお互いを守ろうとしていく。悲劇で終わるとわかっている史実に、笑いと温かさを持ち込んだのが本作の最大の特徴である。

監督は「バラエティの人」チャン・ハンジュン[編集]

監督のチャン・ハンジュンは、2002年の『ライターをつけろ』でデビューし、『記憶の夜』(2017年)、『リバウンド』(2023年)などを撮ってきた映画監督。同時に、韓国ではトーク番組やバラエティでおなじみの「よくしゃべる面白いおじさん」としての知名度も高い。妻は『シグナル』『キングダム』で知られる脚本家キム・ウニである。

本作はチャン監督にとって初の時代劇。本人は制作費や時代考証の重さから当初はかなり迷ったと語っており、「やる」が51%、「やらない」が49%という状態で妻に相談したところ背中を押され、52%に傾いたというエピソードをインタビューで明かしている。「みんながやらないことをやるほうが好き。時代劇を避ける人が多いからこそ挑戦した」とも話している。

韓国映画史に残る大ヒット[編集]

2026年2月4日に公開されると、旧正月(ソルラル)連休をきっかけに口コミが爆発。公開5日で100万人、18日で500万人、31日目で1000万人を突破した。韓国映画の1000万突破は2年ぶりのことだった。その後も客足は落ちず、公開50日で1500万人、67日目の4月には約1628万人に達して『エクストリーム・ジョブ』(原題『極限職業』、約1626万人)を抜き、韓国映画の観客動員歴代2位に浮上。8月末時点の累計は約1692万人で、1位の『バトル・オーシャン/海上決戦』(原題『鳴梁』、約1761万人)に次ぐ記録となった。売上(興行収入)では韓国公開作の歴代1位に立っている。

登場人物とキャスト[編集]

オム・フンド(演:ユ・ヘジン)[編集]

寧越・清泠浦の村長。大義や忠誠より「村のみんなが白いご飯を食べられること」が一番の関心事という、地に足のついたおじさん。廃王の世話係という厄介な役目を引き受けたことで、否応なく歴史の渦に巻き込まれていく。演じたユ・ヘジンにとって、本作は『王の男』『ベテラン』『タクシー運転手 〜約束は海を越えて〜』『破墓/パミョ』に続く5本目の「1000万映画」になった。チャン監督とは監督デビュー作『ライターをつけろ』以来、約24年ぶりの再タッグである。チャン監督は「国史の教科書から破って出てきたような顔なのに、台本はタブレットで読んでいる」とユ・ヘジンをいじっている。

イ・ホンウィ/端宗(演:パク・ジフン)[編集]

朝鮮王朝第6代国王。叔父に王位を追われ、清泠浦へ流された少年。演じたパク・ジフンは、オーディション番組『PRODUCE 101』シーズン2で最終2位となりWanna Oneとしてデビューした元アイドルで、近年は俳優として評価を高めていた。役のために約15kgを減量。筋肉がついて見えないよう、運動をせずに少しずつ痩せていったと監督が明かしている。チャン監督は起用の理由として「深い淵を宿した目」を挙げた。本作のヒットで韓国では「端宗オッパ」という愛称まで生まれた。

ハン・ミョンフェ(演:ユ・ジテ)[編集]

首陽大君(世祖)の側近で、癸酉靖難を設計した稀代の策士。本作では端宗とオム・フンドの前に立ちはだかる「権力の顔」として描かれる。演じたユ・ジテは『オールド・ボーイ』のイ・ウジン役で知られる俳優で、知略だけでなく武芸にも長けた威圧感のある悪役像を作り上げた。

その他の登場人物[編集]

  • メファ(演:チョン・ミド)…端宗に付き従う宮女。史実では複数いたとされる侍女たちを、1人のキャラクターにまとめた存在である。
  • オム・テサン(演:キム・ミン)…オム・フンドの息子。
  • 錦城大君(演:イ・ジュンヒョク、特別出演)…端宗の叔父で、世祖に反旗を翻す人物。
  • 寧越郡守(演:パク・ジファン、特別出演)

イ・ジュンヒョクとパク・ジファンは2023年の『犯罪都市 NO WAY OUT』以来の共演、ユ・ジテとイ・ジュンヒョクはKBS2ドラマ『スターの恋人』以来16年ぶりの共演となった。

史実と脚色[編集]

端宗はどんな王だったのか[編集]

端宗(1441〜1457年)は、ハングルを作った世宗大王の孫にあたる朝鮮王朝第6代国王。父の文宗が在位わずか2年で亡くなったため、1452年に10代前半の幼さで即位した。しかし翌1453年、叔父の首陽大君が重臣を粛清するクーデター「癸酉靖難」を起こして実権を握り、1455年に端宗は王位を譲らされて上王となる。

1456年、成三問ら「死六臣」による端宗復位計画が発覚して失敗。1457年に端宗は魯山君に降格され、寧越の清泠浦へ流された。同年、もう1人の叔父・錦城大君の復位計画が露見したことで端宗は死を賜り、16歳(満年齢)で生涯を閉じた。王としての名誉が回復され「端宗」の廟号が贈られたのは、200年以上後の粛宗の時代、1698年のことである。

オム・フンドは実在の人物[編集]

タイトルの「王と生きる男」ことオム・フンドは実在の人物で、寧越の戸長(地方の下級役人の長)だったとされる。伝承では、端宗の死後、遺体に手を出した者は罰するとされていたにもかかわらず、彼がひそかに遺体を収めて埋葬したと伝えられ、この忠義がのちに顕彰された。現在、端宗の陵墓・荘陵(チャンヌン)には彼をたたえる旌閭閣も建てられている。

映画で変えられたところ[編集]

映画はかなり大胆にアレンジしている。主な違いは次のとおり。

  • オム・フンドの身分:史実の「戸長」から、庶民寄りの「村長」に変更。
  • 息子:史実では3人いたとされる息子を、1人(オム・テサン)にまとめている。
  • 宮女:複数いた侍女を、メファ1人に集約。
  • ハン・ミョンフェ:史実では知略の人として知られるが、映画では武芸に優れた悪役として造形。

つまり「端宗が寧越に流され、そこで亡くなった」「オム・フンドが遺体を葬った」という大枠は史実、その間の約4か月の交流の中身はほぼ映画の創作、と考えるとわかりやすい。

監督が描きたかったもの[編集]

チャン監督は、単に有名な悲劇をなぞるのではなく、「失敗した正義」と、その時代を生きた名もない人々がどう振る舞ったかを描きたかったと語っている。もともと監督には「成功したクーデターは処罰できないのか」という問いがあり、12・12軍事反乱を描いた『ソウルの春』(2023年、ファン・ジョンミン主演)を観て、結末が知られている歴史でも観客の心を動かせると確信したという。端宗が復位してハン・ミョンフェを倒す「歴史改変もの」にする案も一瞬考えたが、最終的には史実の結末を守ることを選んだとされる。

制作[編集]

衣装は全部新調[編集]

本作は2025年3月から6月にかけて、主に江原道寧越郡で撮影された。チャン監督は2025年12月19日、ソウル・龍山のCGVで開かれた制作報告会で「衣装はすべて新しく作った。制作費がかかるので、ほかの部分を削ってそちらに回した」と明かした。歴史学の教授や専門家に相談し、「当時の人は何時に起きたのか、夏に何を食べたのか、1食の量はどのくらいか」といった細かいところまで調べたという。

制作費と損益分岐点[編集]

制作費は約100億ウォン規模、損益分岐点は観客約260万人とされた。最終的に分岐点の6倍以上を動員したことになり、韓国メディアは「100億を投じて1000億超を売り上げた」と大きく報じている。

音楽[編集]

音楽はダルパランが担当。西洋の弦楽器と韓国の伝統楽器を組み合わせ、伝統と現代が共存するサウンドを作っている。

興行と社会現象[編集]

「端宗ブーム」[編集]

公開後、韓国では「端宗ブーム」と呼ばれる現象が起きた。観客が映画を観たあとに端宗、文宗、世祖、癸酉靖難などの歴史を調べ直し、オンラインコミュニティでは歴史解説が盛り上がった。チャン監督は「寧越まで足を運んでくださるのは、映画への愛情と関心の表れ。ありがたい」とコメントしている。

寧越の観光客が激増[編集]

舞台となった寧越の荘陵と清泠浦には観光客が殺到し、清泠浦へ渡る船には長い行列ができた。寧越郡によると、2026年1月から5月17日までの両所の観覧客は合計約52万人に達し、前年1年間の合計(約26万人)のほぼ2倍となった。月別では2月の約6万4000人から、3月約13万9000人、4月約18万4000人と右肩上がり。映画が地域経済まで動かした例として話題になった。

パク・ジフン、端宗文化祭を宣伝[編集]

2026年4月24〜26日に開催された第59回端宗文化祭では、パク・ジフンが祭りの公式SNSに応援動画を寄せた。「端宗を演じて、その孤独と痛みをより深く理解できた」「澄んだ自然と温かい人々のおかげで楽しく撮影できた」と語り、寧越と端宗への関心を呼びかけたことで、「端宗が端宗文化祭を宣伝している」とネットで話題になった。

監督の「1000万公約」[編集]

公開前、チャン監督は「もし1000万人を超えたら、電話番号を変えて、改名して、整形して、他国に帰化することも考える」という冗談めいた公約をしていた。もちろん本気にした人はほとんどいなかったが、本当に1000万人を突破してしまったため、韓国のネットではたびたびネタにされている。

受賞[編集]

年 賞 部門 対象
2026年 第62回百想芸術大賞 映画部門 大賞 ユ・ヘジン
2026年 第62回百想芸術大賞 映画部門 新人演技賞(男性) パク・ジフン
2026年 第62回百想芸術大賞 人気賞 パク・ジフン
2026年 第62回百想芸術大賞 GUCCI IMPACT AWARD(映画) 王と生きる男

2026年5月8日の第62回百想芸術大賞で4冠を獲得。ユ・ヘジンが映画部門大賞を受賞した同じ夜、テレビ部門大賞は彼の盟友リュ・スンリョンが受賞し、大きな話題になった。今後の青龍映画賞などでの評価も注目されている。

日本公開[編集]

日本ではKADOKAWAの配給で、2027年1月8日に劇場公開される予定。邦題は『王と生きる男』で、日本版のキャッチコピーは「王位を追われた悲劇の若き王と流刑地の番人、身分を超えた二人の出会いが生んだ、友情と絆の物語」。日本向けには、筏で川を渡る登場人物たちを描いたティザービジュアルが公開されている。韓国での公開から約11か月後の上陸となる。

韓国国内の配信は、劇場公開から76日後の2026年4月29日にCoupang Playで個別購入(TVOD)形式で始まった。公開時点ではNetflixなどでの配信予定は発表されていなかった。

炎上とバズ[編集]

盗作疑惑と上映禁止仮処分[編集]

公開後、ドラマ脚本『オム・フンド』の作者の遺族が、本作がその脚本を無断で利用したとして上映・配信の差し止めを求める仮処分を申し立てた。制作側は「純粋な創作物であり、歴史的事実は著作権の保護対象ではない」と反論。ソウル西部地方法院は2026年7月23日、「人物同士の関係、全体のあらすじ、主題がまったく異なる」として申し立てを棄却した。裁判所は、ドラマが儒教的な忠義の物語であるのに対し、映画は登場人物が互いに変化し成長していく点を核にしていると判断している。

「端宗オッパ」現象[編集]

パク・ジフンの端宗があまりにも哀れで美しかったため、SNSでは「端宗オッパ」が流行語化。彼がアイドル時代に出演したドラマ『弱いヒーロー Class 1』がNetflixで再びランキングを駆け上がる「逆走」現象も起きた。

余談[編集]

  • 韓国では『王と生きる男』を略して「왕사남(ワンサナム)」と呼ぶ。
  • 興行が1457万人に達した際には、物語の舞台となった「1457年」にかけた記念ポスターが作られたとされる。
  • チャン監督の声が、劇中の内官(宦官)役でカメオ出演しているとされる。
  • ユ・ヘジンは本作で、2005年の『王の男』に続いて2度目の「王」がタイトルに入る1000万映画に出演したことになる。
  • 日本版の英題『The King's Warden』は「王の番人」という意味。原題の「王と暮らす男」とはややニュアンスが異なる。
  • 韓国の歴史もの大ヒット作としては、ほかに『KCIA 南山の部長たち』『ハルビン』などがあり、近年は実在の事件・人物を扱う作品が強いとされる。

外部リンク[編集]

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