破墓/パミョ
파묘 / Exhuma
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巫堂ファリム役のキム・ゴウン(2024年トロント国際映画祭にて/撮影:John Sears、Wikimedia Commons、CC BY-SA 4.0)
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風水師サンドク役のチェ・ミンシク(2009年撮影/撮影:Petr Novák、Wikimedia Commons、CC BY-SA 3.0)
監督 チャン・ジェヒョン
脚本 チャン・ジェヒョン
原作 オリジナル脚本
出演 チェ・ミンシク
キム・ゴウン
ユ・ヘジン
イ・ドヒョン
撮影 イ・モゲ
音楽 キム・テソン
ジャンル オカルト・ホラー/サスペンス・スリラー
撮影期間 2022年10月〜2023年3月
制作会社 ショーボックス、パインタウン・プロダクション、MCMC
配給 ショーボックス(韓国)
KADOKAWA/KADOKAWA Kプラス(日本)
劇場公開 2024年2月16日(第74回ベルリン国際映画祭)
韓国:2024年2月22日
日本:2024年10月18日
上映時間 134分
製作費 約1100万ドル
興行収入 韓国で約1190万人動員
言語 韓国語・日本語・英語
レイティング PG12(日本)
リンク 日本公式サイト



概要[編集]

破墓/パミョ(파묘、英題:Exhuma)とは、2024年に公開された韓国映画のオカルト・サスペンス・スリラーである。監督・脚本はチャン・ジェヒョン、主演はチェ・ミンシク・キム・ゴウン・ユ・ヘジン・イ・ドヒョン。韓国で約1190万人を動員し、2024年の韓国映画No.1ヒットとなった。

詳細[編集]

墓を掘ったら、とんでもないモノが出てきた[編集]

タイトルの「破墓(パミョ)」は、文字どおり「墓を掘り返す」という意味の韓国語。代々の長男が原因不明の病に苦しむ金持ち一家から依頼を受けた巫堂(ムーダン=韓国のシャーマン)が、風水師・葬儀師とチームを組んで先祖の墓を掘り返し、改葬とお祓いを同時にやろうとする……というのが導入部分だ。ところが掘った墓の奥には、依頼人一家の呪いどころではない「もっとヤバいもの」が眠っていた、という二段構えの構成になっている。

ベテランと若手の4人組[編集]

風水師キム・サンドク役に国民的名優チェ・ミンシク、若きカリスマ巫堂イ・ファリム役にキム・ゴウン、葬儀師コ・ヨングン役にユ・ヘジン、ファリムの弟子ユン・ボンギル役にイ・ドヒョンという布陣。日本の宣伝では「風水師サンドク」「巫堂ファリム」「葬儀師ヨングン」「弟子ボンギル」と呼ばれる。いわば「墓掘りアベンジャーズ」とでもいうべき4人のプロフェッショナルが、それぞれの職能を武器に怪異へ挑むバディもの的な面白さが大きな魅力となっている。

オカルト職人チャン・ジェヒョン[編集]

監督のチャン・ジェヒョンは、悪魔祓いを描いた長編デビュー作『プリースト 悪魔を葬る者』(2015年、キム・ユンソク・カン・ドンウォン主演)、新興宗教の闇に迫った『サバハ』(2019年、イ・ジョンジェ主演)と、一貫してオカルトを撮り続けてきた韓国屈指のジャンル監督。本作はその3作目にあたり、CGに頼らず背景や小道具を実際に撮影することにこだわったとされる。監督自身、コロナ禍の中で「観客が劇場に足を運びたくなる体験型の映画」を目指して作ったと語っている。

ベルリンから世界へ[編集]

2024年2月16日に第74回ベルリン国際映画祭のフォーラム部門でワールドプレミア上映され、6日後の2月22日に韓国で封切り。その後、香港国際映画祭のガラ上映、シッチェス・カタロニア国際映画祭のコンペ部門などを経て世界各地で公開された。北米では2024年6月にホラー専門配信サービスShudderで配信され、日本では同年10月18日からKADOKAWA配給で新宿ピカデリーほか全国公開された。

あらすじ[編集]

※以下、物語の核心に触れるネタバレを含む。

アメリカに住む韓国系の富豪パク・ジヨンから、高額の依頼を受けた巫堂ファリムと弟子ボンギル。パク家では代々の長男が原因不明の病にかかり、ついには生まれたばかりの赤ん坊までが泣き止まない。ファリムはこれを先祖の墓が子孫を呼ぶ「墓の呼び声」と見抜き、先祖の墓を移す必要があると判断する。

ファリムは旧知の風水師サンドクと葬儀師ヨングンを呼び寄せ、北朝鮮との国境に近い山奥にある祖父の墓へ向かう。サンドクは一目見て「ここは人が眠る場所ではない、最悪の土地だ」と警告し、仕事を断ろうとするが、娘の結婚資金が必要な事情もあって最終的に引き受ける。ファリムが大がかりな儀式(グッ)を行うのと同時進行で、墓が掘り返される。

掘り出した棺はすぐに火葬する段取りだったが、思わぬ事情で近くの施設に一時安置されることに。その間に棺が開けられてしまい、祖父の怨霊が解き放たれる。怨霊は一族を次々に襲い、実はこの祖父が日本統治時代に親日派として財を成した人物だったことも明らかになる。

一件落着かと思いきや、サンドクは墓のあった場所に違和感を覚えて現地を再調査。祖父の棺のさらに下に、縦に埋められた巨大な棺が隠されていたことを突き止める。さらに近くの寺で、かつて日本の呪術師(通称「キツネ」)がこの地に関わっていたことを知る。棺に眠っていたのは「ヤバいもの」――関ヶ原の戦いで戦死した武将の霊が鬼と化した存在だった。日本統治時代、朝鮮半島の「気」の流れを断つために打たれたとされる「鉄杭」の伝説が物語に絡み、4人は国そのものに打ち込まれた呪いと対決していくことになる。最終決戦でサンドクは、風水の五行(火・水・木)の理屈を逆手に取った奇策に出る。

キャストと役柄[編集]

風水師サンドク(チェ・ミンシク)[編集]

土地の良し悪しを見極める腕利きのベテラン風水師。金のためなら妥協もする俗っぽさを見せつつ、最後には「土地を守る」ことに命を懸ける。『オールド・ボーイ』などで知られるチェ・ミンシクが、どっしりした存在感で物語の重心を担った。本作では釜山映画評論家協会賞の主演男優賞を受賞している。

巫堂ファリム(キム・ゴウン)[編集]

若くスタイリッシュな売れっ子巫堂。墓を掘り返す場面と並行して行われる儀式(グッ)のシーンでは、本物の巫堂さながらの迫力ある舞と演技を見せ、来日時のイベントでも「ゾッとしました。本職の巫堂かと思いました」と称賛された。キム・ゴウンにとっては初の1000万人映画となり、百想芸術大賞・青龍映画賞の主演女優賞をダブル受賞した。

葬儀師ヨングン(ユ・ヘジン)[編集]

数々の遺体を扱ってきたベテラン葬儀師。シリアスな展開の中にも人間味とユーモアを持ち込み、観客の緊張をほどく役回りを担う。韓国映画界きっての名バイプレイヤーであるユ・ヘジンらしい好演が光る。

弟子ボンギル(イ・ドヒョン)[編集]

ファリムの弟子で、体に刺青を入れた若き巫堂。物語後半では「ヤバいもの」に憑依されるという難しい場面を任された。本作がイ・ドヒョンのスクリーンデビュー作で、韓国公開時には兵役中だったが、第60回百想芸術大賞で映画部門の新人演技賞を受賞した。代表作のザ・グローリーとはまったく異なる顔を見せている。

隠された「抗日コード」[編集]

本作が公開直後から韓国で話題になったのが、作中のあちこちに仕込まれた「抗日コード」だ。

まず主要キャラクターの名前。サンドク(金尚徳)、ファリム(李華林)、ヨングン(高永根)、ボンギル(尹奉吉)はいずれも、日本統治時代の独立運動家やそれに関わる人物と同じ名前になっている。寺の僧侶ウォンボンの名も独立運動家・金元鳳を想起させ、鉄杭を抜いて回る団体の名「鉄血団」も実在の独立運動団体に重なるとされる。

さらに登場人物たちが乗る車のナンバープレートには「0301」(三・一独立運動の日)、「0815」(光復節=解放の日)、「1945」(解放の年)といった数字が並んでいる。寺の名前「保国寺」も「国を守る」という意味を持つ。

チャン・ジェヒョン監督は登場人物の名前について「ノーコメント」としつつ、「わが国は多くの傷やトラウマを抱えた被害者だった」と語って意図があることをにおわせた。観客がすぐにコードに気づいたことには「早く気づかれて驚いた」とも話している。こうした仕掛けを探すため、韓国では「N回観覧」(リピート鑑賞)するファンが続出した。

興行成績[編集]

韓国では2024年2月22日に2086スクリーンで公開。初日だけで約33万6000人を動員し、2024年公開作で最高のオープニングを記録した。公開4日目に200万人、7日目に300万人、10日目に500万人を突破し、16日目には800万人を超えて韓国オカルト映画の歴代最高記録を更新した。

そして公開32日目の2024年3月24日、ついに1000万人を突破。2024年の韓国映画で初の「1000万映画」となり、オカルト・ホラー系ジャンルの作品としては異例の快挙と大きく報じられた。最終的な動員は約1190万人で、2024年の韓国映画年間No.1ヒットとなった。

海外でもヒットし、インドネシアとベトナムではそれぞれ200万人以上を動員して、両国で公開された韓国映画の歴代最高記録を塗り替えた。全世界の興行収入は約9400万〜9800万ドルとされ、製作費の約8.5倍を稼ぎ出した計算になる。

受賞歴[編集]

2024年の韓国映画賞レースでは、本作が主要部門を次々と獲得した。

  • 第60回百想芸術大賞(2024年):映画部門の監督賞(チャン・ジェヒョン)、主演女優賞(キム・ゴウン)、新人演技賞(イ・ドヒョン)、芸術賞(音響)の4冠。
  • 第45回青龍映画賞(2024年):監督賞(チャン・ジェヒョン)、主演女優賞(キム・ゴウン)、撮影照明賞、美術賞を受賞。
  • シッチェス・カタロニア国際映画祭(2024年):審査員特別賞。
  • アジア・フィルム・アワード(2025年):衣装デザイン賞、視覚効果賞。
  • ジェラルメ国際ファンタスティック映画祭(2025年):審査員賞。
  • そのほか、韓国映画製作家協会賞の脚本賞・主演女優賞、ディレクターズ・カット・アワードの監督賞・脚本賞など多数。

百想・青龍の両方で作品賞(大賞)はファン・ジョンミン主演の『ソウルの春』が獲得しており、2024年の韓国映画界はこの2作が賞レースの主役となった。

日本での公開[編集]

日本ではKADOKAWAとKADOKAWA Kプラスの配給で、2024年10月18日に公開された。キャッチコピーは「あの墓に触れてはいけなかった」、映倫区分はPG12。公開初日にはジャパンプレミアが開かれ、チェ・ミンシク、チャン・ジェヒョン監督、そしてこれが初来日となったキム・ゴウンが登壇した。キム・ゴウンは「出演する最大の決め手はチャン・ジェヒョン監督でした」と語っている。

日本公開時に明かされた最大のサプライズが、作中の「ヤバいもの」の声を日本の声優・小山力也が担当していたこと。監督は『名探偵コナン』やバキなどの日本アニメが好きで、スタッフに「すばらしい声優を探してほしい」と頼んだところ、スタッフ10人中8人が小山を推薦したという。監督は「日本でナンバーワンの声優さんが必要だった」「韓国人が権威を感じるような声にしたかった」と説明。仮編集版を見た投資家から「ヤバいものの登場シーンにオーラが足りない」と言われていたが、小山の声が入ったバージョンを見せたところ「これはすごいぞ」と評価が一変し、公開日が決まったという逸話もある。

小山本人は、海外の大型作品にオリジナル音声で参加するのは初めてだったと明かしつつ、20年以上前に韓国映画『シュリ』で主演男優の吹替を担当し、そのとき敵役を演じていたのがチェ・ミンシクだったという縁も語った。

公開後の11月9日には角川シネマ有楽町で、映画研究者の崔盛旭とライターの岡本敦史によるトークイベントも開催。崔は本作を「韓国人の心に刺さっているトラウマを取り除く『お祓い』のような映画」と評し、韓国のレビューで見られた「入る時は恐怖心、出る時は愛国心」という感想を紹介した。

日本公式Xアカウント(@pamyomovie)では、その後Blu-ray&DVDの発売が告知されているほか、2026年8月にはKBS Worldでのテレビ放送も案内された。

炎上とバズ[編集]

「左派が群がる反日映画」発言[編集]

韓国公開直後、李承晩元大統領を描いたドキュメンタリー『建国戦争』の監督キム・ドギョンがフェイスブックで「抗日独立?またしても反日主義をあおる『破墓』に左派が群がっている」と投稿し、物議を醸した。キム監督は総選挙前の鬱憤晴らしだとも主張し、映画が政治論争に巻き込まれる形となった。

中国ネット民の「顔に文字」批判[編集]

2024年3月には、本作を見たという中国のネットユーザーがXに「中国では顔に文字を書く行為はとても侮辱的なもの」「韓国人がかっこいいと思っている行動は中国人から見ると滑稽」と投稿し、劇中で登場人物が顔に漢字(祝経)を書く場面を揶揄した。韓国のネットユーザーは「韓国映画なのだから関係ない」「韓国文化を無視した発言」と猛反発。チャン・ジェヒョン監督は「特別な意図はなかった」としつつ、関心を寄せてくれたことに感謝を述べた。

「N回観覧」と抗日コード探し[編集]

登場人物の名前や車のナンバーに隠された抗日コードがSNSで拡散され、コードを探すためのリピート鑑賞が流行。監督も「観客がこんなに早く気づくとは」と驚いたという。

余談[編集]

  • 「ヤバいもの」を演じた小山力也は、演技の際に「グリズリーが立ち上がる時の恐怖感」をイメージしたと語っている。監督からは「お化けだと思わず、自然に声を出してほしい」と指示されたそうで、録音後の音声加工はほとんどせず、そのまま採用されたという。収録後は監督と焼肉屋でビールを飲んだらしい。
  • ゴーストのシーンでは特殊メイクに約6時間かけたとされ、CGを極力使わない監督のこだわりがうかがえる。
  • 発掘のシーンで100ウォン硬貨(李舜臣将軍の肖像入り)を投げる場面も、抗日コードの一つではないかと話題になった。
  • 韓国の観客による「入る時は恐怖心、出る時は愛国心」というレビューは、日本のトークイベントでも紹介され話題になった。

外部リンク[編集]

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