| オールド・ボーイ 올드보이 Oldboy | |
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![]() 監督のパク・チャヌク(2009年、カンヌ国際映画祭)(出典:ウィキメディア・コモンズ、撮影:Masha Kuvshinova、CC BY 3.0) | |
![]() 主演のチェ・ミンシク(出典:ウィキメディア・コモンズ、撮影:Petr Novák、CC BY-SA 3.0) | |
| 監督 | パク・チャヌク |
| 製作 | イム・スンヨン |
| 脚本 |
ファン・ジョユン イム・ジュニョン パク・チャヌク |
| 原作 | 土屋ガロン(作)・嶺岸信明(画)『ルーズ戦記 オールドボーイ』(双葉社) |
| 出演 |
チェ・ミンシク ユ・ジテ カン・ヘジョン チ・デハン オ・ダルス キム・ビョンオク ユン・ジンソ ユ・ヨンソク |
| 撮影 | チョン・ジョンフン |
| 音楽 | チョ・ヨンウク |
| ジャンル | 復讐サスペンス、ネオ・ノワール |
| 制作会社 |
エッグフィルム(Egg Film) CJエンタテインメント(現・CJ ENM) |
| 配給 |
Show East(韓国) 東芝エンタテインメント(日本・2004年) |
| 劇場公開 |
2003年11月21日(韓国) 2004年11月6日(日本) 2022年5月6日(日本・4Kリマスター版) |
| 上映時間 | 120分 |
| 製作費 | 約300万ドル |
| 興行収入 |
韓国観客動員 約326万人 世界 約1,760万ドル(再上映込み) |
| 言語 | 韓国語 |
| レイティング | 日本:R15+(初公開時)/R18+(4Kリマスター版) |
| 前作 | 復讐者に憐れみを(復讐三部作・第1作) |
| 次作 | 親切なクムジャさん(復讐三部作・第3作) |
概要[編集]
オールド・ボーイ(올드보이、Oldboy)とは、2003年に公開された韓国の復讐サスペンス映画である。監督はパク・チャヌク、主演はチェ・ミンシク。理由もわからず15年間監禁された男の復讐を描き、2004年のカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した。原作は日本の漫画『ルーズ戦記 オールドボーイ』。
詳細[編集]
15年監禁された男の「5日間」[編集]
物語の始まりは1988年。平凡な会社員オ・デス(チェ・ミンシク)は、酔って騒ぎを起こし警察に連行され、4歳になる娘の誕生日を祝いそこねる。友人ノ・ジュファンに引き取られた直後、デスは何者かに拉致され、ベッドとテレビしかない密室に閉じ込められてしまう。
監禁部屋のテレビで、デスは自分の妻が殺され、しかも自分がその容疑者にされていることを知る。理由も犯人もわからないまま、彼は壁を相手にシャドーボクシングで体を鍛え、箸で壁に穴を掘り、自殺を図っては蘇生させられる日々を送る。そして2003年、催眠をかけられたデスは突然解放される。犯人は「5日以内に監禁の理由を突き止めろ」というゲームを持ちかけてくる。
「復讐三部作」の真ん中[編集]
本作はパク・チャヌク監督の「復讐三部作」の第2作にあたる。第1作は『復讐者に憐れみを』(2002年)、第3作は『親切なクムジャさん』(2005年)で、いずれも復讐をテーマにしながら物語上のつながりはない独立した作品だ。三部作の中でも本作は最も知名度が高く、パク・チャヌクの代表作として真っ先に名前が挙がる一本である。
パク・チャヌクは2000年の『JSA』で韓国国内の大ヒット監督となっていたが、国際的な評価を決定づけたのが本作だった。のちの『お嬢さん』(2016年)や『別れる決心』(2022年)まで続く、色彩と構図にこだわった様式美は、この時点ですでに完成形に近い。
韓国映画ルネサンスの象徴[編集]
2003年の韓国では、ポン・ジュノの『殺人の追憶』と本作が同じ年に公開されている。本作は韓国で約326万人を動員し、2003年の韓国の年間興行ランキングで5位に入った。ジャンル映画のエンタメ性と作家性を両立させた作品として、2000年代前半の韓国映画ブームを象徴する存在になった。
翌2004年のカンヌでのグランプリ受賞により、「韓国映画は世界の映画祭で戦える」という認識が一気に広まった。2019年の『パラサイト 半地下の家族』のパルムドール受賞へとつながる流れの、大きな転換点のひとつである。
登場人物とキャスト[編集]
オ・デス(チェ・ミンシク)[編集]
本作の主人公。酒好きでおしゃべりな、どこにでもいる会社員だったが、15年の監禁を経て、獣のような執念を持つ復讐者として街に放り出される。演じたチェ・ミンシクは、撮影スケジュールに合わせて体重を落としたり増やしたりし、6週間のトレーニングを積んで、アクションの大半を自らこなした。監禁前のくたびれた中年と、監禁後のボサボサ頭の野獣とのギャップは、それだけで一見の価値がある。
イ・ウジン(ユ・ジテ)[編集]
デスを監禁した張本人で、自らを「エバーグリーン」と名乗る謎の男。莫大な財力を持ち、デスの行動を常に一歩先回りしている。演じたユ・ジテについて、パク・チャヌクは当初「若すぎるのでは」と考えていたが、チェ・ミンシクの推薦で起用が決まった。ウジンの少年時代は、のちに人気俳優となるユ・ヨンソクが演じている。
ミド(カン・ヘジョン)[編集]
寿司店で働く若い女性料理人。解放直後に店で倒れたデスを自宅に連れ帰り、やがて彼の復讐に協力するようになる。演じたカン・ヘジョンは、本作で青龍映画賞の助演女優賞を受賞した。
その他の主要人物[編集]
- ノ・ジュファン(チ・デハン):デスの高校時代からの友人。監禁される直前、警察署までデスを迎えに来た人物でもある。
- パク・チョルン(オ・ダルス):人を金で預かる「私設監禁所」の所長。デスの拷問を受ける羽目になる。
- ハン(キム・ビョンオク):ウジンに仕える無口なボディガード。
- イ・スア(ユン・ジンソ):ウジンの姉。物語の核心に関わる人物。
名シーン[編集]
廊下の格闘シーン[編集]
本作を語るうえで絶対に外せないのが、監禁所の狭い廊下でデスがハンマー1本を手に数十人のチンピラと戦うシーンである。カメラは廊下を真横から捉えたまま、ゆっくりと横移動し続け、カットを一切割らない。撮影には3日間かかり、17テイクを重ねて完成させた。編集が入っていない完全なワンカットで、唯一の加工はデスの背中に刺さるナイフのCGだけだという。
このワンカットの格闘は公開当時から批評家に特に高く評価され、本作の代名詞となった。2022年の4Kリマスター版公開時にも、「伝説のシーン」として改めて宣伝の目玉になっている。
生ダコを食べるシーン[編集]
解放されたデスが寿司店に入り、生きたタコを丸ごと口に押し込んで食べるシーンも有名だ。これはCGではなく、撮影では実際に生きたタコが4匹使われた。海外での上映時には、このシーンが大きな物議を醸したとされる。パク・チャヌクはDVDのコメンタリーで、俳優よりもタコのほうに申し訳なく思ったと冗談まじりに語っている。
ちなみに、デスの腕からアリが出てくる幻覚シーンや、アリが体を這うシーンのほうはCGで作られている。
色彩と音楽[編集]
緑・紫・赤を印象的に使った色彩設計も、パク・チャヌク作品らしいポイントだ。音楽はチョ・ヨンウクが中心となって手がけ、サウンドトラックは全24曲。デスのテーマ「In a Lonely Place」、ウジンのテーマ「Cries and Whispers」、ミドのテーマ「The Last Waltz」など、曲名の多くはフィルム・ノワールをはじめとする映画のタイトルから取られている。劇中ではヴィヴァルディの『四季』より「冬」も使われ、優雅な旋律と暴力的な映像の組み合わせが強烈な印象を残す。
原作漫画『ルーズ戦記 オールドボーイ』[編集]
原作の概要[編集]
原作は、土屋ガロン(作)と嶺岸信明(画)による日本の漫画『ルーズ戦記 オールドボーイ』。双葉社の「漫画アクション」で1996年から1998年まで連載され、単行本は全8巻で完結している。原作者の土屋ガロンは、劇画原作者・狩撫麻礼の別名義である。
主人公は元サラリーマンの五島慎一。都内のビルの秘密の階に10年間監禁され、その間テレビを見ながら体を鍛え続けた男が、解放後にわずかな手がかりから自分を監禁した人物を追う、というハードボイルドな復讐劇だ。
映画との違い[編集]
監禁期間は原作が10年、映画は15年。また映画で描かれる「5日以内に理由を突き止めろ」というタイムリミットは原作にはない。監禁の理由や結末も映画では大きく作り変えられており、映画版はあくまで原作の設定を出発点にした「ゆるやかな翻案」という位置づけである。
海外での評価[編集]
映画のヒットをきっかけに、原作漫画も海外で読まれるようになった。アメリカではダークホース・コミックスが英語版を2006年から2007年にかけて全8巻刊行し、2007年にはアイズナー賞の「最優秀国際作品(日本)」部門を受賞している。日本の漫画を韓国が映画化して世界的にヒットし、その流れで原作も英語圏で刊行・受賞に至った、珍しいパターンといえる。
2013年のハリウッドリメイク[編集]
幻のスピルバーグ版[編集]
本作のアメリカでの権利は2004年にドリームワークスに売られ、一時はスティーヴン・スピルバーグ監督、ウィル・スミス主演でのリメイクが企画されていた。脚本家マーク・プロトセヴィッチが脚色を担当したが、スピルバーグは2009年に企画から離れている。
スパイク・リー版『オールド・ボーイ』[編集]
最終的に公式リメイクを手がけたのはスパイク・リー監督で、アメリカでは2013年11月27日に公開された。主人公ジョー・ドーセットをジョシュ・ブローリン、マリー・セバスチャンをエリザベス・オルセン、謎の男をシャールト・コプリー、チェイニーをサミュエル・L・ジャクソンが演じている。日本では2014年6月28日にブロードメディア・スタジオの配給で公開された(上映時間103分)。
監禁期間は20年に延び、結末も変更されている。リー監督によるオリジナル編集は約140分あったが、製作側によって約105分に短縮され、リー監督はクレジットをいつもの「A Spike Lee Joint」ではなく「A Spike Lee Film」に変更して不満を示したとされる。
興行と評価[編集]
製作費は約3,000万ドルだったが、世界興行収入は約520万ドルにとどまり、興行的には大失敗に終わった。批評サイトRotten Tomatoesでの支持率も39%と低く、オリジナル版の82%とは大きな差がついた。なお、2006年にはインドで、本作に酷似したヒンディー語映画『Zinda』も作られており、著作権侵害をめぐって問題視された。
評価と受賞[編集]
カンヌでのグランプリ[編集]
2004年の第57回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、最高賞パルムドールに次ぐグランプリを受賞した。このときの審査委員長はクエンティン・タランティーノで、彼が本作を激賞したことはよく知られている。
国内外の映画賞[編集]
韓国国内では、青龍映画賞で監督賞・主演男優賞・助演女優賞を受賞。アジア太平洋映画祭では監督賞と主演男優賞、大鐘賞では編集賞・照明賞・音楽賞を獲得した。海外でも、香港電影金像奨のアジア映画賞、英国インディペンデント映画賞の外国インディペンデント映画賞、シッチェス映画祭の作品賞などを受賞している。
「史上最高」リストの常連[編集]
英エンパイア誌が2008年に発表した「史上最高の映画500本」で64位、2010年の「ワールドシネマ100本」で18位。2016年のBBCによる「21世紀の偉大な映画100本」では30位、2025年のニューヨーク・タイムズ「21世紀の映画ベスト100」では43位に選ばれた。批評家ロジャー・イーバートも満点の4つ星をつけている。一方で、ニューヨーク・タイムズのマノーラ・ダージスのように否定的な評価を下した批評家もいた。
4Kリマスター版[編集]
公開から約20年を経て、本作は4Kリマスター版として再びスクリーンに戻ってきた。日本では2022年5月6日から全国公開され、パク・チャヌクこだわりの色彩がより鮮明によみがえった。初公開時の日本のレイティングはR15+だったが、4K版はR18+となっている。
アメリカでは配給会社NEONが20周年記念として2023年8月に4K版を公開した。さらに2025年の第30回釜山国際映画祭では、アジア映画史の決定的瞬間を振り返る特別企画の中で、パク・チャヌクの代表作として上映されている。
炎上とバズ[編集]
生ダコのシーンは、本物のタコを生きたまま食べたことから海外上映時に大きな論争を呼んだ。また2006年のインド映画『Zinda』は本作との類似が著しく、韓国の配給会社Show East側が著作権侵害の調査に乗り出した。ハリウッドリメイク版は、編集をめぐるスパイク・リー監督と製作側の対立が報じられ、公開後は「オリジナルを超えられなかったリメイク」の代表例としてたびたび話題にされている。
余談[編集]
- 主人公の名前「オ・デス」は、ギリシャ悲劇のオイディプスを連想させるよう名付けられたとされる。ウジンのヨガのポーズにはアポロンのイメージが込められているという。
- ラストの雪景色のシーンは、韓国ではなくニュージーランドで撮影された。
- ウジン役には当初、別のベテラン俳優が想定されていたが、チェ・ミンシクの推薦でユ・ジテに決まった。
- 2011年にイギリスのChannel 4で放送された際には約30万人が視聴し、その年に非BBCチャンネルで放送された外国語映画として最多の視聴者数を記録した。
- 同じ2003年公開の『殺人の追憶』(監督ポン・ジュノ、主演ソン・ガンホ)とともに、本作は2000年代前半の韓国映画の国際的評価を押し上げた一本で、日本での韓流ブームの時期とも重なる。
- 2008年にはCNNの視聴者投票で、アジア映画史上のベスト10の1本に選ばれている。ポン・ジュノの『母なる証明』などと並び、韓国サスペンスを語るうえで欠かせない作品だ。

