| 北大路欣也 きたおおじ きんや / Kin'ya Kitaōji | |
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![]() 2023年11月、文部科学大臣・盛山正仁から文化功労者の顕彰状を受け取る北大路欣也(出典:ウィキメディア・コモンズ、CC BY 4.0) | |
![]() 1961年の東映映画『若君と次男坊』のスチール写真。「東映城のプリンス」時代(出典:ウィキメディア・コモンズ) | |
| 本名 | 淺井将勝(あさい まさかつ) |
| 誕生日 | 1943年2月23日 |
| 年齢 | 83歳 |
| 出身地 | 京都府京都市 |
| 国籍 | 日本 |
| 学歴 | 暁星高等学校、早稲田大学第二文学部演劇専修卒業 |
| ジャンル | 映画、テレビドラマ、時代劇、舞台、声優、CM |
| 活動期間 | 1956年 - |
| デビューアルバム | 1956年 東映映画『父子鷹』(少年時代の勝麟太郎役) |
| 家族 | 父:市川右太衛門(俳優) |
| 事務所 | ホリプロ・ブッキング・エージェンシー |
| 代表作 | 『仁義なき戦い 広島死闘篇』『八甲田山』『空海』『竜馬がゆく』(大河ドラマ)『華麗なる一族』『半沢直樹』『剣客商売』『三屋清左衛門残日録』シリーズ、ソフトバンク「白戸家」CM(お父さん犬の声) |
| 関連活動 | 声優(吹き替え・アニメ映画・ゲーム)、ナレーション |
| あだ名 | 東映城のプリンス、きんやちゃん、お父さん |
| その他 | 紫綬褒章(2007年)、旭日小綬章(2015年)、京都市文化功労者(2021年)、牧野省三賞(2022年)、文化功労者(2023年)、早稲田大学芸術功労者(2025年) |
概要[編集]
北大路欣也(きたおおじ きんや、1943年2月23日 - )とは、京都市出身の俳優である。時代劇の大スター・市川右太衛門の次男として13歳で東映からデビューし、「東映城のプリンス」として売り出された。『仁義なき戦い 広島死闘篇』の孤独な殺し屋・山中正治、『八甲田山』の神田大尉、そして2007年からはソフトバンクCMの「お父さん犬」の声まで、芸歴70年をまたいで第一線を走り続ける、日本の映像界の生き字引のような存在である。
詳細[編集]
時代劇スターの家に生まれた「プリンス」[編集]
北大路欣也、本名・淺井将勝は1943年2月23日、京都市の紫竹に生まれた。父は戦前から戦後にかけて『旗本退屈男』シリーズなどで一世を風靡した時代劇スターの市川右太衛門で、その次男にあたる。芸名の「北大路」は、父の邸宅が京都の北大路にあったことに由来する。1956年、父が勝小吉を演じた東映映画『父子鷹』で、息子の勝麟太郎(のちの勝海舟)の少年時代を演じてデビュー。いきなり親子共演という華々しいスタートだった。1958年には『少年三国志』で早くも映画初主演を果たしている。
松方弘樹との「プリンス」対「暴れん坊」[編集]
デビュー当時の東映は時代劇の黄金期で、同じくスター俳優・近衛十四郎の息子である松方弘樹とは同世代のライバルとしてセットで語られた。会社は北大路を「東映城のプリンス」、松方を「東映城の暴れん坊」と呼び分けて売り出し、二人は『若君と次男坊』(1961年)などで共演している。品のある顔立ちと立ち居振る舞いは「プリンス」の名にふさわしく、1961年の『葵の暴れん坊』、1963年の現代劇初主演作『海軍』など、主演作が次々と作られた。
早稲田大学と舞台への目覚め[編集]
映画の仕事と並行して、北大路は兄が通っていた早稲田大学の雰囲気に惹かれて1961年に第二文学部へ進学した。当初は俳優を一生の職業にするという意識は薄かったと本人は振り返っている。在学中、学生仲間の公演『リア王』で演出の教授からエドガー役を勧められ、本名で初舞台を踏む。この舞台を見た日生劇場のプロデューサーの推薦で、1964年の『シラノ・ド・ベルジュラック』にクリスチャン役で出演し、プロの舞台デビューを果たした。学友から「一生チャンバラで終わるのか」と言われたことが発奮材料になったという。その後は劇団四季にも客員として参加し、映画俳優から総合的な演技者へと幅を広げていった。
25歳で大河ドラマの主演[編集]
1968年には司馬遼太郎原作の大河ドラマ『竜馬がゆく』で主人公・坂本竜馬を演じた。25歳での大河主演は大抜擢で、映画会社の専属スターがテレビの看板枠に出ることが珍しくなくなっていく時代の象徴ともいえる起用だった。北大路はその後も大河ドラマに計9作品出演し、『独眼竜政宗』(1987年)の伊達輝宗、『篤姫』(2008年)の勝海舟、『江〜姫たちの戦国〜』(2011年)の徳川家康、『花燃ゆ』(2015年)の毛利敬親など、作品の重しになる役を数多く担っている。
経歴[編集]
東映時代劇の申し子(1956年〜1960年代)[編集]
13歳でデビューした北大路は、東映時代劇の量産体制のなかで少年スター、青年スターとして育った。『少年三国志』『花笠ふたり若衆』『源九郎義経』など主演作は多く、父・右太衛門や長谷川一夫ら時代劇の大スターたちの背中を見て育った世代である。しかし1960年代半ばになると時代劇映画は急速に衰退し、東映は任侠映画路線へと舵を切る。北大路は舞台やテレビへと活動の場を広げ、映画会社の看板に頼らない俳優としての道を探っていった。
『仁義なき戦い』への合流(1973年〜1974年)[編集]
1973年、深作欣二監督の実録やくざ映画『仁義なき戦い』シリーズに参加し、第2作『広島死闘篇』で事実上の主人公・山中正治を演じた。続く第5作『完結篇』(1974年)では、天政会の若き会長・松村保を演じている。品のいい「プリンス」が血まみれの実録路線に飛び込んだことは当時大きな話題になり、ここから北大路の役柄の幅は一気に広がった。
『八甲田山』と日本アカデミー賞(1977年〜1978年)[編集]
1977年公開の『八甲田山』は、新田次郎の小説『八甲田山死の彷徨』を原作に、橋本忍が製作・脚本、森谷司郎が監督を務めた大作である。北大路は青森歩兵第五連隊の雪中行軍隊を率いる神田大尉を演じ、弘前第三十一連隊の徳島大尉を演じた高倉健とダブル主演の形になった。極寒の八甲田での長期ロケは過酷を極めたが、作品は配給収入25億円を超えてこの年の日本映画1位の大ヒットを記録。翌1978年の第1回日本アカデミー賞では『八甲田山』『アラスカ物語』で優秀主演男優賞を受けた。同年1977年11月には一般女性と結婚している。
『空海』と得度(1984年)[編集]
1984年の東映映画『空海』では弘法大師・空海を演じた。役作りのため実際に高野山で得度し、四度加行という修行を経て不動護摩法の資格まで取得したというエピソードは、北大路のストイックな役作りを象徴する話として今も語られる。1980年代にはほかにも『火まつり』『春の鐘』など、作家性の強い作品で主演を重ねた。
時代劇とテレビの大黒柱(1990年代〜2000年代)[編集]
1990年代以降はテレビ時代劇の主演が増え、『名奉行! 大岡越前』『隠密奉行朝比奈』『子連れ狼』などで主役を張った。『忠臣蔵』の大石内蔵助を3度、徳川家康を4度、勝海舟を2度演じるなど、同じ歴史上の人物を何度も任される俳優は珍しい。2007年にはホリプロへ移籍し、同年に紫綬褒章を受章。TBSの日曜劇場『華麗なる一族』では木村拓哉演じる万俵鉄平の父・万俵大介を演じ、冷徹な銀行頭取の威圧感で強烈な印象を残した。
権力者役と「お父さん」(2007年〜2010年代)[編集]
2007年に始まったソフトバンクの「白戸家」CMで、白い犬の「お父さん」の声を担当。これが国民的な人気シリーズとなり、北大路の声は世代を超えて知られるようになった。ドラマでは日曜劇場『半沢直樹』(2013年・2020年)で東京中央銀行の頭取・中野渡謙を特別出演の扱いで演じ、堺雅人演じる半沢と対峙する場面は大きな話題になった。ほかにも『剣客商売』の秋山小兵衛、『三匹のおっさん』の主演、『刑事7人』『ドクターX』など、民放の人気シリーズにも幅広く出演している。2014年には朝ドラ『マッサン』に出演し、本人が出演を直訴したとされる。2015年には旭日小綬章を受章した。
『三屋清左衛門残日録』と70年目の現在(2016年〜)[編集]
2016年からは藤沢周平原作の時代劇『三屋清左衛門残日録』シリーズで主人公の三屋清左衛門を演じ続けている。2021年に京都市文化功労者、2022年に父と親子二代での牧野省三賞、2023年に国の文化功労者に選ばれた。2025年4月には母校・早稲田大学から芸術功労者として表彰され、同年10月から2026年1月まで早稲田大学演劇博物館で「北大路欣也展」が開かれた。デビューから70年目にあたる2026年には、テレビ朝日のドラマ『ボーダレス〜広域移動捜査隊〜』に特別出演している。
代表作と役柄[編集]
『仁義なき戦い 広島死闘篇』の山中正治[編集]
『広島死闘篇』の山中正治は、実在の殺し屋をモデルにした復員兵である。無銭飲食で袋叩きにされたことをきっかけに村岡組に拾われ、組長の姪・靖子との恋を咎められながらも、組のために殺しを重ねて名を上げていく。最後は利用されていたことを知り、追い詰められて拳銃で自ら命を絶つ。シリーズの主人公・広能昌三(菅原文太)はこの作品ではほぼ脇に回っており、北大路が実質的な主役を担った。
実は当初の配役は逆で、北大路が狂犬のような愚連隊の頭目・大友勝利を、千葉真一が山中を演じる予定だった。北大路は「大友は粗暴で下品すぎて自分には演じられない」と山中役を希望し、プロデューサーが千葉に交代を頼み込んだという。千葉は当初難色を示したが、深作監督自身が千葉の大友のほうが面白くなると考えていたことを知り、役を作り直す条件で承諾した。結果としてこの「入れ替え」は、北大路の陰影ある山中と千葉の伝説的な怪演という両方の名演を生んだ。
撮影では、八名信夫演じるやくざが熱い丼飯を浴びせる場面で深作から「手加減しているのか」と叱責が飛び、撮り直しでさらに中身を熱くしたという逸話もある。山中の最期は脚本ではこめかみを撃つ形だったが、戦地での自決の仕方を反映させ、銃口を口にくわえる形に変更された。
『八甲田山』の神田大尉[編集]
神田大尉は、上官の介入で計画を乱されながら雪中行軍隊を指揮し、多くの部下を失っていく悲劇の指揮官である。吹雪の中で叫ぶ台詞「天は我々を見放した」は公開当時の流行語になり、今も映画ファンの間でたびたび引用される。北大路は20代の頃、深酒をして先輩の高倉健に叱られ、それを機に節制するようになったと語っており、以後健さんとは長く親交が続いた。その高倉と真正面から並び立ったのが『八甲田山』だった。
『三屋清左衛門残日録』の清左衛門[編集]
前藩主の用人を退いて隠居した清左衛門が、身の回りで起こる事件や人々の苦しみに静かに手を差し伸べる物語。北大路は清左衛門を「こういう人物になれたらいい」と思える理想の人物と語り、70代前半で演じられたことを幸運だとし、「ぼくにはぼくの残日録がある」とも述べている。シリーズは時代劇専門チャンネルの製作で始まり、第5作以降はJ:COMとの共同製作に。親友の町奉行・佐伯熊太役の伊東四朗との掛け合いも見どころになっている。
第9作『三屋清左衛門残日録 永遠(とわ)の絆』は2025年12月7日に日本映画+時代劇 4Kで初放送され、J:COM STREAMで独占配信、時代劇専門チャンネルでは2026年3月に放送された。幼い息子を亡くした若い夫婦と、藩の開墾工事を指揮していた旧友の切腹をめぐる陰謀を清左衛門が追う物語で、優香、麻生祐未、伊東四朗らレギュラー陣に加え、上川隆也、佐野史郎、藤岡弘、らがゲスト出演した。
『華麗なる一族』と『半沢直樹』の銀行トップ[編集]
不思議なことに、北大路はテレビで二度、巨大銀行のトップを演じて大きな話題を呼んでいる。『華麗なる一族』(2007年)の万俵大介は、家族さえも出世の道具にする冷酷な頭取。一方『半沢直樹』の中野渡謙頭取は、清濁を併せ呑む底の知れない人物として描かれた。脇に回るときは総理大臣、社長、頭取といった権力者を任されることが多く、画面に現れるだけで物語の格が一段上がる存在感が重宝されている。
声の仕事と「お父さん犬」[編集]
白戸家のお父さん[編集]
2007年、ソフトバンクモバイルの家族向け料金プラン「ホワイト家族24」の訴求のためにCM「白戸家」シリーズが誕生した。お母さん役に樋口可南子、娘のアヤ役に上戸彩、兄役にダンテ・カーヴァーという家族構成で、なぜかお父さんだけが白い犬という設定である。北大路は姿を見せず声だけで出演し、威厳たっぷりにお説教をする犬というギャップが大受けした。
起用の理由は、『華麗なる一族』で見せた威厳ある父親のイメージだったとされる。北大路本人は当初、家族全員が犬だと思っていたため「なんで俺だけ犬なの?」と戸惑ったという話も伝わる。企画段階では3話目でお父さんが犬である理由を明かす予定だったが、2話までの反響が想像以上だったため正体は明かさないことになったという。
初代のお父さん犬「カイくん」は北海道犬で、撮影初期は座って話すシーンに一晩かかることもあったが、次第に慣れていったという。カイくんは2018年に亡くなり、その後は子どもの「カイト」が役を引き継いでいる。犬は代替わりしても声は北大路のままで、ソフトバンクの顔であり続けている。
吹き替え・アニメ・ゲーム[編集]
声の仕事はCMだけではない。映画『HACHI 約束の犬』ではリチャード・ギアの日本語吹き替えを担当し、アニメ映画『ONE PIECE FILM GOLD』や『トリコ』の劇場版にも声で出演した。ゲームではスマートフォン向け『ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト』で竜王の声を務め、ドラクエファンを驚かせた。重厚で品のある声質は、ナレーションや吹き替えでも重宝されている。
人物と交友[編集]
同世代の仲間たち[編集]
松方弘樹、千葉真一、渡瀬恒彦、梅宮辰夫、山城新伍ら東映出身の同世代俳優とは長く親交があり、仲間内では「きんやちゃん」と呼ばれていた。北大路が出演予定だった1993年の大河ドラマ『炎立つ』を降板した際には、渡瀬恒彦が代役を務めたこともある。2017年に松方弘樹が亡くなった際には、仕事への情熱と、夢や冒険に向かって進み続ける姿を敬愛していたとコメントを寄せた。
父・市川右太衛門との関係[編集]
北大路は父を俳優としても人間としても深く尊敬しており、2025年に配信された練馬区のオンライントーク「ねりま映画サロン」でも、父との思い出や東映で出会った高倉健とのエピソード、『八甲田山』の撮影秘話を語っている。2022年の牧野省三賞は父に続く親子二代での受賞で、日本映画の父と呼ばれる牧野省三の名を冠した賞を親子で受けたことは映画史的にも珍しい。
役作りへのこだわり[編集]
『空海』での得度に象徴されるように、北大路は役に入るための準備を惜しまないタイプとして知られる。一方でインタビューでは「時代劇と現代劇の境目はない」と語り、『三屋清左衛門残日録』を「現代劇より現代劇的」と評するなど、ジャンルにとらわれない柔軟さも見せている。
2026年の動向[編集]
2026年4月からはテレビ朝日の水曜21時枠ドラマ『ボーダレス〜広域移動捜査隊〜』(土屋太鳳と佐藤勝利のダブル主演)に特別出演し、元警視庁の鬼刑事で、定年後に自動車工場を営みながら移動捜査課のトラック改造に協力する緑川宗一郎、通称「メカじい」を演じた。本人は役について、少年時代に見た整備の人への憧れを思い出したとコメントしている。
同年5月1日には、木村大作監督の新作映画『腹をくくって』(2027年公開予定、主演は山﨑賢人)の企画発表で、渡辺謙、阿部寛らとともに出演者の一人として名前が発表された。しかし9月、体調不良のため同作への出演を見送ることが発表された。報道によると7月下旬に入院していたといい、病名は公表されていない。所属事務所のホリプロは「体調不良によりお休みしておりますが、俳優活動の復帰に向けて、順調に回復しております」と説明している(2026年11月4日時点)。
余談[編集]
- 芸名の「北大路」は京都の地名から取ったもので、美食家の北大路魯山人とは血縁関係はない。
- 『八甲田山』の「天は我々を見放した」は、半世紀近くたった今もバラエティやネットで雪や寒さのネタとして使われる定番フレーズになっている。
- 『忠臣蔵』の大石内蔵助を3度、徳川家康を4度演じている。「家康役者」としても屈指の存在である。
- 妻とは15歳の頃に見初めた相手で、13年間の交際を経て1977年に結婚したとされる。
- 白戸家のお父さんは「犬なのに父親として説教する」キャラクターで、北大路の重厚な声が出るたびにギャップで笑いが起きる、という構造がCMの肝だった。

