渡辺謙
Ken_Watanabe_20220615.jpg
ドジャー・スタジアム(2022年)(出典:Wikimedia Commons「Ken Watanabe 20220615.jpg」・CC BY 4.0)
出身地 新潟県北魚沼郡広神村(現・魚沼市)
国籍 日本
職業 俳優
活動期間 1979年 -


概要[編集]

渡辺謙(わたなべ けん)とは、新潟県出身の日本の俳優である。大河ドラマ『独眼竜政宗』で一躍スターとなり、『ラスト サムライ』でアカデミー賞助演男優賞にノミネート。ハリウッドと日本映画を行き来し、「世界で最も顔が知られた日本人俳優」の一人として活躍し続けている。

詳細[編集]

身長184cm。演劇集団 円の研究所から俳優人生をスタートさせ、20代後半で大河ドラマの主役に抜擢されて国民的な知名度を獲得した。ところが人気絶頂の1989年、初の映画主演作の撮影中に急性骨髄性白血病を発症して降板。長い治療と再発を経てから第一線に戻ってきた、という「どん底からの復活」がキャリアの大きな軸になっている。

40代に入った2003年、『ラスト サムライ』で国際的にブレイク。以降はクリント・イーストウッド、クリストファー・ノーランといった大物監督の作品に次々と起用され、ハリウッド大作で日本人の重要な役どころを担う機会が増えていった。2015年にはブロードウェイのミュージカル『王様と私』でトニー賞主演男優賞にノミネートされ、舞台でも世界の賞レースに名を連ねている。

一方で日本映画でも、プロデュースまで手がけた『明日の記憶』、山崎豊子原作の『沈まぬ太陽』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を2度受賞。2020年代も『Fukushima 50』で最優秀助演男優賞、そして社会現象になった『国宝』(2025年)で重要人物・花井半二郎を演じるなど、主演・助演の両方で存在感を発揮している。2023年からは長年所属したケイダッシュを離れ、個人で活動している。

経歴[編集]

生い立ち・俳優を志すまで[編集]

1959年、新潟県北魚沼郡広神村(現在の魚沼市)に生まれる。高校時代は吹奏楽部でトランペットを担当しており、もともとは音楽の道、具体的には武蔵野音楽大学への進学を目指していた。しかし学費の問題から音大進学を断念し、進路を芝居の世界へと切り替えた。

1979年、演劇集団 円の附属研究所に入所。研究生の身でありながら、唐十郎作・蜷川幸雄演出の舞台『下谷万年町物語』のオーディションを勝ち抜き、主演に抜擢される。いきなり大舞台の主役という異例のスタートだった。

テレビ・映画デビューと『独眼竜政宗』(1982年〜1988年)[編集]

1982年にドラマ『未知なる反乱』でテレビデビュー。1984年には篠田正浩監督の『瀬戸内少年野球団』で映画デビューを果たす。1986年には連続テレビ小説『はね駒』にも出演した。

転機は1987年。NHK大河ドラマ『独眼竜政宗』で主人公・伊達政宗を演じ、平均視聴率39.7%という大河史に残る大ヒットを記録。20代にして一気に「国民的俳優」の仲間入りを果たし、同年度のエランドール賞新人賞も受賞した。1988年には蜷川演出の『ハムレット』でタイトルロールも務めている。

白血病との闘い(1989年〜1994年)[編集]

1989年、映画初主演作として予定されていた角川春樹監督の『天と地と』の撮影中に急性骨髄性白血病を発症し、降板を余儀なくされた。約1年の闘病を経て、治療を続けながら仕事に復帰。1990年から始まった『仕掛人・藤枝梅安』シリーズでは主人公の梅安を演じ、本人もこのシリーズを代表作の一つに挙げている。

1993年には大河ドラマ『炎立つ』に主演し、本格的な復活を印象づけた。しかし1994年に病気が再発し、再び治療に入る。後年の著書では、治療の過程でC型肝炎ウイルスにも感染していたことを明かしている。

時代劇とテレビの顔(1995年〜2002年)[編集]

復帰後は、1995年スタートの『御家人斬九郎』シリーズで主人公・松平残九郎を演じ、2002年まで続く人気シリーズに。ほかにも『わが町』シリーズ、TBSの『池袋ウエストゲートパーク』(2000年)への出演など、時代劇から現代劇まで幅広くこなし、テレビの顔として安定した地位を築いた。

『ラスト サムライ』でハリウッドへ(2003年〜2008年)[編集]

2003年、トム・クルーズ主演の『ラスト サムライ』に勝元盛次役で出演。この演技でアカデミー賞助演男優賞とゴールデングローブ賞助演男優賞にノミネートされ、一気に世界的な知名度を得た。当初は英会話に通訳が必要だったが、猛勉強の末に大半の会話を自分でこなせるようになったという。

2005年には『バットマン ビギンズ』『SAYURI』とハリウッド大作への出演が続き、同年には米『TIME』誌の表紙にも登場した。2006年にはクリント・イーストウッド監督から直接オファーを受けた『硫黄島からの手紙』で、日本側の指揮官・栗林忠道中将を演じ、国外映画で初の主演を務めた。

同じ2006年、日本では『明日の記憶』で映画初主演。若年性アルツハイマー病に侵される会社員役で、自身の闘病経験を重ねるように作品に深く関わり、原作者に映画化を希望する手紙を送ったうえで、初めてエグゼクティブ・プロデューサーも兼任した。この作品で第30回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞する。2007年の第79回アカデミー賞授賞式では、カトリーヌ・ドヌーヴとともにプレゼンターを務めた。

日米で主役を張る時代(2009年〜2019年)[編集]

2009年、山崎豊子原作の『沈まぬ太陽』で主人公・恩地元を演じ、第33回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。公開初日の舞台挨拶では感極まって涙を見せた。同年から放送されたNHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』ではナレーションも担当している。

2010年、クリストファー・ノーラン監督の『インセプション』で、レオナルド・ディカプリオらと共演し、物語の鍵を握る実業家サイトーを演じた。2011年には『塀の中の中学校』でモンテカルロ・テレビ祭の主演男優賞を受賞。2012年にはドラマ『負けて、勝つ 〜戦後を創った男・吉田茂〜』で吉田茂を演じている。

2014年、ハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』で芹沢猪四郎博士役を担当し、2019年の続編『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』にも出演。日本では2013年に李相日監督の『許されざる者』、2016年に同監督の『怒り』で主演を務めた。

舞台では2015年、ニューヨーク・ブロードウェイのミュージカル『王様と私』でシャム王を演じ、トニー賞ミュージカル主演男優賞にノミネートされた。2015年には新潟県民栄誉賞も受賞している。

独立と『国宝』(2020年〜)[編集]

2020年公開の『Fukushima 50』では、東京電力福島第一原子力発電所の所長・吉田昌郎を演じ、第44回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。2022年からはHBO Maxのドラマ『TOKYO VICE』で刑事・片桐役を演じ、日本を舞台にした海外ドラマでも主要キャストを務めた。

2023年1月、長年所属したケイダッシュを離れて独立。同年はギャレス・エドワーズ監督のハリウッド映画『ザ・クリエイター/創造者』に出演した。

2025年は出演作が相次いだ。1月からはNHKのドラマ『TRUE COLORS』に出演。6月公開の李相日監督『国宝』では、吉沢亮演じる主人公・喜久雄を引き取る上方歌舞伎の名門当主・花井半二郎を演じた。同作はカンヌ国際映画祭での上映を経て国内で記録的ヒットとなり、2025年11月には『踊る大捜査線 THE MOVIE 2』を抜いて邦画実写の歴代興行収入1位に。渡辺はこの演技で第49回日本アカデミー賞優秀助演男優賞に選ばれた(同部門には横浜流星、田中泯も『国宝』から選出)。同年10月には坂口健太郎主演の『盤上の向日葵』で、賭け将棋の真剣師・東明重慶を演じている。

2026年2月には、柄本佑との初共演となる時代劇ミステリー映画『木挽町のあだ討ち』(源孝志監督)が公開。同じ2月には、ワールド・ベースボール・クラシック関連のNetflix企画でアンバサダーを務め、二宮和也とともにドキュメンタリーシリーズ『DIAMOND TRUTH ワールドベースボールクラシックの真実』に出演した。2026年11月にはドキュメンタリー映画『ブルネロ 静かなる先見者』でナレーションを担当予定、2027年には映画『腹をくくって』の公開も控えている。

主な出演作[編集]

テレビドラマ[編集]

  • 1982年『未知なる反乱』 - テレビデビュー作
  • 1983年『壬生の恋歌』 - 畑中三郎 役
  • 1986年『はね駒』(連続テレビ小説) - 小野寺源造 役
  • 1987年『独眼竜政宗』(大河ドラマ) - 伊達政宗 役
  • 1990年〜1993年『仕掛人・藤枝梅安』シリーズ - 藤枝梅安 役
  • 1992年〜1998年『わが町』シリーズ - 森田吾郎 役
  • 1993年『炎立つ』(大河ドラマ) - 主演
  • 1995年〜2002年『御家人斬九郎』シリーズ - 松平残九郎 役
  • 2000年『池袋ウエストゲートパーク』 - 横山礼一郎 役
  • 2004年『砂の器』 - 今西修一郎 役
  • 2009年〜2011年『坂の上の雲』 - ナレーション
  • 2011年『塀の中の中学校』
  • 2012年『負けて、勝つ 〜戦後を創った男・吉田茂〜』 - 吉田茂 役
  • 2022年〜2024年『TOKYO VICE』 - 片桐 役
  • 2025年『TRUE COLORS』(NHK) - 辻村多一郎 役
  • 2026年『DIAMOND TRUTH ワールドベースボールクラシックの真実』(Netflix、ドキュメンタリー)

映画[編集]

  • 1984年『瀬戸内少年野球団』 - 映画デビュー作
  • 2003年『ラスト サムライ』 - 勝元盛次 役
  • 2005年『バットマン ビギンズ』 - ラーズ・アル・グール 役
  • 2005年『SAYURI』 - 会長 役
  • 2006年『明日の記憶』 - 主演(エグゼクティブ・プロデューサー兼任)
  • 2006年『硫黄島からの手紙』 - 栗林忠道 役
  • 2009年『沈まぬ太陽』 - 恩地元 役
  • 2009年『ダレン・シャン』 - Mr.トール 役
  • 2010年『インセプション』 - サイトー 役
  • 2013年『許されざる者』 - 主演
  • 2014年『GODZILLA ゴジラ』 - 芹沢猪四郎 役
  • 2016年『怒り』 - 主演
  • 2016年『追憶の森』 - タクミ・ナカムラ 役
  • 2018年『ベル・カント とらわれのアリア』 - ホソカワ 役
  • 2019年『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』 - 芹沢猪四郎 役
  • 2020年『Fukushima 50』 - 吉田昌郎 役
  • 2023年『ザ・クリエイター/創造者』 - ハルーン 役
  • 2024年『ライオン・キング:ムファサ』 - キロス 役(日本語吹替)
  • 2025年『国宝』 - 花井半二郎 役
  • 2025年『盤上の向日葵』 - 東明重慶 役
  • 2026年『木挽町のあだ討ち』 - 篠田金治 役
  • 2026年『ブルネロ 静かなる先見者』 - ナレーション(公開予定)
  • 2027年『腹をくくって』(公開予定)

舞台[編集]

  • 『下谷万年町物語』 - 研究生時代に主演
  • 1988年『ハムレット』 - ハムレット 役
  • 2015年『王様と私』(ブロードウェイ) - シャム王 役

人物・エピソード[編集]

  • 筋金入りの阪神タイガースファン。子どもの頃、後楽園球場で見た江夏豊と田淵幸一のバッテリーに魅了されたのが始まり。日本語のX(旧Twitter)の投稿は阪神の勝利を祝うものがほとんどで、2023年の日本シリーズは全7試合を現地で観戦し、38年ぶりの日本一を見届けた。
  • ハリウッドの関係者の間でも阪神好きは知られており、「撮影はシーズンオフに終わるように組む」「阪神が勝った翌日にオファーすると引き受けてもらいやすい」という都市伝説まで存在する。野球解説者の福本豊とも友人。
  • 作品選びの基準は「自分の心の針が振れるかどうか」。条件よりも直感を重視するタイプ。
  • 『GODZILLA ゴジラ』では、英語風の「ガッズィーラ」という発音を拒み、日本語の「ゴジラ」で押し通した。
  • 趣味は乗馬、ゴルフ、料理。大の蕎麦好きで、地元・新潟の「へぎそば」を愛している。
  • 東京、ロサンゼルス、ニューヨークと拠点を移し、2020年には以前から別荘を持っていた長野県軽井沢町へ移住した。
  • 東日本大震災後の2013年、宮城県気仙沼市にカフェ「K-port」をプロデュース。日本にいるときは月に一度現地を訪れ、不在時にもメッセージを送り続けた。
  • 2016年には早期の胃がんが見つかり手術を受けたことを公表している。
  • 家族では、長男が俳優の渡辺大、長女が女優・モデルの杏。2022年には杏のYouTubeチャンネルで親子初共演が実現した。
  • 2023年、AIを題材にした『ザ・クリエイター』公開時には、AIが社会のあらゆる仕事を置き換えることに慎重な考えを示し、「本屋の店員さん」のような文化も大切にしたいと語った。

受賞歴[編集]

  • 1987年度 エランドール賞新人賞
  • 2004年 アカデミー賞助演男優賞ノミネート(『ラスト サムライ』)
  • 2004年 ゴールデングローブ賞助演男優賞ノミネート(『ラスト サムライ』)
  • 2006年 報知映画賞主演男優賞(『明日の記憶』)
  • 2007年 第30回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞(『明日の記憶』)
  • 2009年 報知映画賞主演男優賞(『沈まぬ太陽』)
  • 2010年 第33回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞(『沈まぬ太陽』)
  • 2011年 モンテカルロ・テレビ祭主演男優賞(『塀の中の中学校』)
  • 2015年 トニー賞ミュージカル主演男優賞ノミネート(『王様と私』)
  • 2015年 新潟県民栄誉賞
  • 2021年 第44回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞(『Fukushima 50』)
  • 2026年 第49回日本アカデミー賞優秀助演男優賞(『国宝』)

炎上とバズ[編集]

  • 2017年の不倫報道:2017年3月に週刊誌で女性との交際が報じられ、同年7月の記者会見で事実を認めて謝罪した。当時の妻で女優の南果歩とは2018年5月に離婚が発表されている。
  • 『国宝』の大ヒット:2025年公開の『国宝』は公開後もロングランを続け、邦画実写の興行記録を22年ぶりに塗り替える社会現象に。主演の吉沢亮・横浜流星とともに、渡辺も第49回日本アカデミー賞の優秀賞に名を連ねた。
  • 阪神ポストの安定感:X(旧Twitter)はほぼ阪神の勝利報告で埋まっており、試合結果とともに話題になるのが恒例となっている。

余談[編集]

  • 大河ドラマ『独眼竜政宗』の平均視聴率39.7%は、大河ドラマの歴代最高記録として長く語り継がれている。
  • 釜山国際映画祭で、日本人として初めて開幕式の司会を務めた。
  • ロサンゼルス生活や英語学習の様子は、雑誌『AERA English』でも紹介された。
  • 気仙沼のカフェ「K-port」のオープニングでは、南果歩と朗読劇『ラヴ・レターズ』を上演した。
  • 高校時代は吹奏楽部のトランペット奏者で、当初の志望は音楽大学だった。

外部リンク[編集]

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