概要[編集]
格闘ゲームとは、プレイヤーが操作するキャラクター同士を1対1(または少人数)で戦わせ、相手の体力をゼロにすることを競う対戦型ビデオゲームのジャンルである。略称は「格ゲー」「対戦格闘ゲーム」。1991年の『ストリートファイターII』の大ヒットで確立し、現在はEスポーツの主要ジャンルの一つとして世界大会や国際総合競技大会の種目にもなっている。
詳細[編集]
格闘ゲームの基本は「横から見た画面で、2人のキャラクターが向かい合って殴り合う」という形式である。体力ゲージ、ラウンド制、制限時間、レバーとボタンを組み合わせた「コマンド入力」による必殺技といった要素が定番で、これらの多くはカプコンの『ストリートファイターII』によって一般化した。
ジャンルの特徴は、運の要素が小さく、読み合いと操作精度がそのまま勝敗に直結する点にある。同じキャラクター、同じ条件で戦うため、実力差がはっきり出る一方で、相手の行動を先読みする「読み合い」が常に発生し、観戦していても展開がわかりやすい。この性質が、ゲームセンターの対戦台から大規模な観戦型大会へと発展していく下地になった。
日本はジャンルの発祥地であり、開発メーカー(カプコン、バンダイナムコ、SNK、アークシステムワークス等)とトッププレイヤーの双方が集中する「本場」とされる。梅原大吾やときどのように、格闘ゲームをきっかけにプロゲーマーという職業が日本で認知されるようになった経緯もある。
歴史[編集]
ストII以前[編集]
1対1で戦うゲーム自体は1980年代から存在し、1984年の『空手道』(海外名 Karate Champ)などが先駆けとされる。1987年にはカプコンが初代『ストリートファイター』を発売し、「波動拳」「昇龍拳」などのコマンド必殺技を導入したが、この時点ではまだジャンルとして確立していなかった。
ストリートファイターIIの登場(1991年)[編集]
1991年にアーケードで稼働した『ストリートファイターII』は、個性の異なる複数キャラクターから1人を選び、人間同士で対戦できる仕組みで爆発的なヒットとなった。ゲームセンターには対戦台が並び、見知らぬ相手に「乱入」して戦う文化が生まれた。攻撃の硬直を必殺技でキャンセルして連続技を叩き込む「コンボ」も、この作品から広まったとされる。
ストIIの成功を受けて、SNKの『餓狼伝説』『龍虎の拳』『ザ・キング・オブ・ファイターズ(KOF)』(1994年〜)などが続き、1990年代前半は格闘ゲームがゲームセンターの主役となった。
3D格闘ゲームの登場[編集]
1993年にセガが『バーチャファイター』を発表し、ポリゴンによる3D格闘ゲームという新しい流れを生んだ。1994年にはナムコ(現バンダイナムコ)の『鉄拳』が登場し、以後長く続くシリーズとなった。3D格闘は奥行き方向への移動(横移動)や、ボタンを手足に対応させた直感的な操作が特徴で、2D格闘とは別の文化圏を形成した。
衰退期[編集]
1990年代後半から2000年代にかけて、シリーズの複雑化による新規参入の難しさや、ゲームセンター市場の縮小により、格闘ゲームは「冬の時代」と呼ばれる時期を迎えた。一方で、既存プレイヤーによる大会文化はこの時期に成熟しており、日本では『闘劇』(2003〜2011年)、アメリカではEVOが格闘ゲーマーの目標となった。2004年のEVOで梅原大吾が見せた逆転劇(通称「EVO Moment #37」)は、後に動画共有サイトを通じて世界的に知られるようになった。
ストリートファイターIVによる復興[編集]
2008年にアーケードで稼働し、翌2009年に家庭用が発売された『ストリートファイターIV』は、約10年ぶりのナンバリング新作としてジャンルの再興をもたらした。家庭用ゲーム機のオンライン対戦が普及したことで、ゲームセンターに通わなくても対人戦ができるようになり、動画配信の広まりと合わせて新旧プレイヤーが戻ってきた。2010年には梅原大吾がアメリカ企業とプロ契約を結び、「日本初のプロゲーマー」として話題になった。
ストリートファイター6とEスポーツ化[編集]
2010年代後半からは、賞金制大会やプロチームの整備が進み、格闘ゲームは本格的なEスポーツとしての体裁を整えていった。カプコンは世界大会CAPCOM CUPと、日本国内のチームリーグ「ストリートファイターリーグ」(2018年〜)を運営している。
2023年6月に発売された『ストリートファイター6』は、簡易操作「モダン操作」の搭載や、人気ストリーマーによる大型配信企画の影響もあって新規層を大量に取り込んだ。販売本数は2026年6月に全世界で700万本を突破したとカプコンが発表している。
2026年9月には愛知・名古屋で開催された2026年アジア競技大会でEスポーツが正式競技となり、格闘ゲームは3タイトル合同の団体戦として実施された(後述)。
主要シリーズ[編集]
- ストリートファイターシリーズ(カプコン)
- ジャンルの原点にして最大のシリーズ。『II』『III』『IV』『V』を経て、最新作は『ストリートファイター6』。国内リーグ、世界大会とも最も規模が大きい。
- 鉄拳シリーズ(バンダイナムコ)
- 1994年開始の3D格闘の代表格。最新作は『鉄拳8』(2024年)。韓国やパキスタンなど、アジア各国に強豪が多いことで知られる。
- ザ・キング・オブ・ファイターズ(SNK)
- 3人1組のチームで戦う形式が特徴の2D格闘。最新作は『KOF XV』。中南米や中国語圏で根強い人気がある。同じSNKからは『餓狼伝説 City of the Wolves』(2025年)も登場している。
- ギルティギアシリーズ(アークシステムワークス)
- 1998年開始。スピード感のある空中戦と、アニメ調の3Dグラフィックで2D格闘を表現する技術で知られる。最新作は『GUILTY GEAR -STRIVE-』。
- バーチャファイターシリーズ(セガ)
- 3D格闘の元祖。『バーチャファイター5』系列が大会で現役タイトルとして扱われている。
- 大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ(任天堂)
- 体力ゲージではなく「ふっとばし」で場外に出すルールのため、一般的な格闘ゲームとは区別して「対戦アクション」「プラットフォームファイター」と呼ばれることが多い。ただし大会文化は非常に大きく、EVOの種目になった実績もあるため、格闘ゲームの隣接ジャンルとして扱われることが多い。
基本用語[編集]
- コマンド入力
- レバー(方向キー)とボタンを決まった順に入力して必殺技を出す操作。代表例が「波動拳コマンド」(↓↘→+パンチ)と「昇龍拳コマンド」(→↓↘+パンチ)で、他社の作品でも同じ入力が流用されることが多い。レバーを半円状に回す「ヨガコマンド」、一回転させる「スクリューコマンド」などもある。
- コンボ(連続技)
- 相手がガードや反撃をできない状態のうちに攻撃をつなぐこと。通常技を必殺技でキャンセルする、ゲージを使って技の後隙を消す、といったテクニックの組み合わせで成立する。
- 差し合い・起き攻め・確定反撃
- 間合いの外から技を置き合う駆け引きが「差し合い」、ダウンした相手が起き上がる瞬間を攻める行為が「起き攻め」、相手の技の隙に確実に入る反撃が「確定反撃(確反)」。
- フレーム
- 1/60秒の単位。技の発生や硬直をフレーム数で管理しており、上級者はこの数値を覚えて攻防を組み立てる。
- モダン操作
- 『ストリートファイター6』で導入された簡易操作方式。ボタンの組み合わせだけで必殺技を出せ、アシストボタンで自動的にコンボが出る。代わりに一部の技が使えない、威力に補正がかかる等の制約がある。従来の操作は「クラシック」と呼ばれ、公式大会でも両方式が使われている。
- ドライブシステム
- 『スト6』の中心システム。共通ゲージ「ドライブゲージ」を使ってパリィ、インパクト、ラッシュなどの行動を行う。
大会文化[編集]
格闘ゲームの大会は、誰でもエントリーできる「オープン大会」の比重が大きいのが特徴である。無名のプレイヤーがトッププロを倒す番狂わせが起こりやすく、これがジャンルの観戦的な魅力になっている。
- EVO(Evolution Championship Series)
- 1996年の「Battle by the Bay」を起源とする、アメリカ・ラスベガスで毎年開催される世界最大級の格闘ゲーム大会。2021年にソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が共同買収したが、2025年に株式をNODWIN Gamingへ売却している。EVO 2026(2026年6月26〜28日)のスト6部門は2,414人が参加し、MenaRD(ドミニカ共和国)が前年に続き優勝、日本の重松が準優勝した。
- EVO Japan
- EVO Japanは2018年に始まったEVOの日本大会。2026年大会(5月1〜3日・東京ビッグサイト)は来場者数過去最多の3万4000人を記録し、スト6部門は7,168人のエントリーで「単一格闘ゲームの最大のトーナメント」としてギネス世界記録に認定された。同部門はZETA DIVISIONのヤマグチが優勝している。
- CAPCOM CUP
- CAPCOM CUPはカプコンが主催するストリートファイターシリーズの世界一決定戦。スト6世代では優勝賞金100万ドルが用意され、2025年の「CAPCOM CUP 11」では日本の翔が、2026年3月に両国国技館で行われた「CAPCOM CUP 12」ではSAHARAが優勝した。
- 闘劇
- エンターブレイン(アルカディア編集部)が主催した日本の格闘ゲーム全国大会。2003年から2011年まで開催され、ゲームセンター時代の「日本一決定戦」として多くの名勝負を生んだ。
- ストリートファイターリーグ(SFL)
- カプコン公式のチームリーグ戦。日本では12チームがホーム&アウェイ形式で戦い、優勝チームは世界大会に進む。詳細はストリートファイターリーグを参照。
ほかにも、サウジアラビアの「Esports World Cup」に格闘ゲーム部門が組み込まれるなど、賞金規模は年々拡大している。
日本の主なプレイヤー[編集]
- 梅原大吾(ウメハラ):「日本初のプロゲーマー」とされる第一人者。EVOで複数回優勝し、2010年に「最も長く賞金を獲得しているプロゲーマー」としてギネス世界記録に認定された。
- ときど:東京大学出身という経歴で知られる。EVO 2017の『ストリートファイターV』部門で優勝した。
- ボンちゃん:スト6でも国内リーグの主力として活躍するベテラン。
- ももち:CAPCOM CUP 2014の優勝者。プロチーム運営や後進育成にも携わる。
- ひぐち:ガイル使いとして知られ、2026年アジア大会の日本代表(スト6担当)。
- ノビ:日本を代表する『鉄拳』プレイヤー。2026年アジア大会の日本代表(鉄拳8担当)。
- 翔:CAPCOM CUP 11(2025年)で優勝し、賞金100万ドルを獲得した。
2026年アジア競技大会[編集]
2026年アジア競技大会(第20回アジア競技大会・愛知・名古屋)では、Eスポーツが正式競技として実施され(→2026年アジア競技大会のeスポーツ競技)、格闘ゲームは『ストリートファイター6』『鉄拳8』『KOF XV』の3タイトルを各国1人ずつ担当する団体戦として行われた。会場は常滑市のAichi Sky Expo(愛知県国際展示場)。
日本代表は、スト6のひぐち(ZETA DIVISION)、鉄拳8のノビ、KOF XVのスコアの3人。9月25日の予選・準決勝を勝ち抜き、9月26日の決勝で韓国に敗れて銀メダルを獲得した。金メダルは韓国、銅メダルは香港とサウジアラビアだった。1つのメダルを3タイトルの合算で争う形式は、格闘ゲームとしては珍しい試みとなった。
余談[編集]
- 「波動拳コマンド」は他社作品でも共通の入力として使われることが多く、格闘ゲーマーの間では事実上の共通言語になっている。
- ストIIのコンボは、開発段階で想定していなかった「キャンセル」の仕様から生まれたとされる。
- EVO Moment #37は、梅原大吾(ケン)が相手の春麗のスーパーアーツ「鳳翼扇」を全段ブロッキングして逆転した場面を指し、格闘ゲーム史上もっとも有名なシーンの一つとされる。
- EVO Japan 2026のスト6部門は、7,168人という参加者数で「EVO全体の歴代最多」としても報じられた。