| ユ・アイン 유아인 / 劉亞仁 / Yoo Ah-in | |
|---|---|
![]() 2011年6月、ソウル・上暗洞での試写会イベントに出席したユ・アイン(出典:Wikimedia Commons、撮影:LGEPR〔LG Electronics〕、CC BY 2.0) | |
| 本名 | オム・ホンシク(엄홍식) |
| 誕生日 | 1986年10月6日 |
| 年齢 | 40歳 |
| 出身地 | 大韓民国 大邱広域市 |
| 国籍 | 大韓民国 |
| 学歴 | 慶北芸術高等学校 |
| ジャンル | 映画・ドラマ |
| 活動期間 | 2003年 - |
| 身長 / 体重 | 179 cm / ― kg |
| 事務所 | Billions(2026年8月 - ) |
| 代表作 | 『トキメキ☆成均館スキャンダル』『密会』『六龍が飛ぶ』『ベテラン』『王の運命 -歴史を変えた八日間-』『バーニング 劇場版』『#生きている』『声もなく』『地獄が呼んでいる』『勝負』 |
| 関連活動 | アートコレクティブ「スタジオコンクリート」代表 |
| あだ名 | 「コロ」(『成均館スキャンダル』の役名から) |
| その他 | 第36回・第41回青龍映画賞 主演男優賞、第56回百想芸術大賞 映画部門 最優秀演技賞(男性) |
概要[編集]
ユ・アイン(유아인、本名:オム・ホンシク、1986年10月6日 - )とは、韓国の俳優である。『ベテラン』『バーニング 劇場版』『声もなく』などで2010年代後半の韓国映画を代表する存在となったが、2023年に発覚した薬物事件で有罪判決が確定し、長期の活動中断を経験した。
詳細[編集]
美術少年からスカウトへ[編集]
1986年10月6日、大邱で3人きょうだいの末っ子として生まれた。高校は慶北芸術高等学校で美術を専攻しており、もともとは「絵を描く側」の人間だった。そんな彼が芸能界に入ったきっかけは、街中でのスカウト。高校時代にキャスティング担当者の目に留まり、一時はアイドル練習生の道も経験したとされる。
2003年にCMで顔を出し、KBSの学園ドラマ『반올림』(英題:Sharp)などで俳優としてのキャリアをスタートさせた。芸名の「アイン」は、ドイツ語で「ひとつ」を意味する「ein(アイン)」に由来すると紹介されている。本名のオム・ホンシクとのギャップが大きすぎて、ファンの間では本名を知ったときの驚きが定番ネタになっている。
「コロ熱風」で一躍スターに[編集]
長らく「演技はうまいがヒット作に恵まれない若手」という立ち位置だったが、2010年のKBSドラマ『トキメキ☆成均館スキャンダル』で一気に流れが変わる。朝鮮時代の名門学府・成均館を舞台にしたこの作品で、彼は粗野で口数が少なく、それでいて情に厚い儒生ムン・ジェシン、通称「コロ」を演じた。
主演のパク・ミニョン、ソン・ジュンギらとの「花の4人衆」が社会現象になり、とりわけコロの不器用な魅力は「コロ熱風」と呼ばれるほどの人気を呼んだ。ここから彼は青春スターの枠を飛び出し、作品ごとにイメージを裏切る「カメレオン型」のキャリアを歩み始めることになる。
「アイン時代」と呼ばれた2015年[編集]
キャリアの頂点としてよく語られるのが2015年。財閥3世の暴君を演じた『ベテラン』が1300万人超の大ヒットを記録し、同じ年にソン・ガンホと共演した『王の運命 -歴史を変えた八日間-』では悲劇の王子・思悼世子を熱演。さらにSBS大河ドラマ『六龍が飛ぶ』では朝鮮王朝第3代王となるイ・バンウォンを演じ、映画とドラマの両方で主役級の当たり年を作った。
この年、彼は青龍映画賞の主演男優賞をはじめ映画賞を次々に受賞し、韓国メディアからは「アイン時代(아인시대)」という造語まで飛び出した。韓国ギャラップの「今年の映画俳優」にも選ばれており、20代にして名実ともにトップ俳優の仲間入りを果たした年だった。
兵役免除[編集]
人気絶頂期の2017年、兵役判定の身体検査で骨腫瘍を理由に兵役免除となったことが報じられた。それまでに複数回の再検査を経ての判定で、一部では批判的な声も上がったが、本人側は治療を続けていると説明している。結果として彼は兵役による空白期間なしに30代を迎え、ここから先は国際的な作品へと舵を切っていく。
主な出演作[編集]
映画[編集]
| 公開年 | 作品名 | 役名 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2006 | 『우리에게 내일은 없다』(英題:Boys of Tomorrow) | チョンデ | 映画デビュー期。釜山映画評論家協会賞 新人男優賞 |
| 2008 | 『アンティーク 〜西洋骨董洋菓子店〜』 | ヤン・ギボム | ディレクターズカット賞 新人男優賞 |
| 2011 | 『ワンドゥギ』 | ト・ワンドゥク | ベルリン国際映画祭で上映 |
| 2013 | 『カンチョリ オモニのために』 | カンチョリ | 釜山の港湾労働者役で主演 |
| 2015 | 『ベテラン』 | チョ・テオ | 財閥3世の悪役。ファン・ジョンミン、ユ・ヘジンと共演 |
| 2015 | 『王の運命 -歴史を変えた八日間-』 | 思悼世子 | ソン・ガンホと共演。アカデミー賞外国語映画賞の韓国代表 |
| 2016 | 『좋아해줘』(英題:Like for Likes) | — | ラブコメ群像劇。初めて女性監督と組んだ作品 |
| 2018 | 『バーニング 劇場版』 | イ・ジョンス | イ・チャンドン監督。カンヌ国際映画祭コンペティション部門 |
| 2018 | 『国家が破産する日』 | ユン・ジョンハク | キム・ヘスと共演。通貨危機を描いた社会派 |
| 2020 | 『#生きている』 | オ・ジュヌ | パク・シネと共演したゾンビサバイバル |
| 2020 | 『声もなく』 | テイン | 言葉を話さない男役。数々の主演男優賞 |
| 2022 | 『ソウル・バイブス』 | ドンウク | Netflix映画 |
| 2025 | 『勝負』(英題:The Match) | イ・チャンホ | イ・ビョンホンと共演。実在の囲碁棋士役 |
| 2025 | 『ハイファイブ』 | ファン・ギドン | 臓器移植で超能力を得る群像アクション |
ドラマ[編集]
| 放送年 | 作品名 | 役名 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2009 | 『結婚できない男』(韓国版) | — | 日本ドラマのリメイク |
| 2010 | 『トキメキ☆成均館スキャンダル』 | ムン・ジェシン(コロ) | ブレイク作 |
| 2012 | 『ファッション王』 | カン・ヨンゴル | シン・セギョン、イ・ジェフンと共演 |
| 2013 | 『チャン・オクチョン』 | 粛宗 | 朝鮮王朝の王役 |
| 2014 | 『密会』 | イ・ソンジェ | 20歳年上の女性と恋に落ちる天才ピアニスト |
| 2015-2016 | 『六龍が飛ぶ』 | イ・バンウォン | 全50話の大河ドラマ。放送期間を通して同時間帯1位 |
| 2017 | 『シカゴ・タイプライター〜時を越えてきた想い〜』 | ハン・セジュ | 現代の人気作家と1930年代の青年の二役 |
| 2021 | 『地獄が呼んでいる』 | チョン・ジンス | Netflixシリーズ。シーズン1のみ出演 |
| 2024 | 『終末のフール』 | ハ・ユンサン | Netflixシリーズ。事件前に撮影済み |
演技スタイルと評価[編集]
ユ・アインの演技は、よく「爆発型」と表現される。『ベテラン』のチョ・テオが見せた、笑いながら人を殴るような予測不能のテンション、『六龍が飛ぶ』のイ・バンウォンが抱える野心と孤独の振れ幅など、感情の針が振り切れる瞬間に強烈な説得力を出すのが持ち味とされてきた。
一方で、その真逆の芝居でも評価を得たのが彼の特殊なところ。『バーニング 劇場版』でイ・チャンドン監督は、彼の「感情を爆発させる俳優」というイメージをあえて裏返し、内にこもって感情を外に出さない青年ジョンスを演じさせたと語っている。台詞の少ない受け身の主人公を、視線と沈黙だけで成立させた演技は海外でも話題になり、ニューヨーク・タイムズの「2018年のベスト俳優」にアジア人俳優として唯一選ばれた。
さらに『声もなく』では、一言も台詞を話さない犯罪組織の下請け青年テインを演じるため、体重を15キロ前後増やし、頭を丸刈りにして撮影に臨んだ。ホン・ウィジョン監督からはキャラクター研究としてゴリラの映像を渡されたという逸話も残っている。この役で青龍映画賞主演男優賞と百想芸術大賞映画部門最優秀演技賞をダブル受賞し、「言葉を使わずに主演男優賞を取った俳優」として語られることになった。
国際的な活躍[編集]
カンヌと『バーニング』[編集]
2018年の『バーニング 劇場版』は、村上春樹の短編「納屋を焼く」を原作に、イ・チャンドンが8年ぶりに撮った長編。ユ・アインは、作家志望の青年ジョンスとして、幼なじみヘミ(チョン・ジョンソ)と謎めいた男ベン(スティーヴン・ユァン)の間で揺れる役を担った。
作品はカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、国際映画批評家連盟賞を受賞。アカデミー賞外国語映画賞の最終候補リスト(ショートリスト)入りも果たし、韓国映画として初めての快挙と報じられた。ユ・アインにとっても、国内の人気俳優から「世界の映画祭で名前が通る俳優」へと格が上がった作品だ。
『#生きている』とNetflixの時代[編集]
2020年の『#生きている』は、マンションに閉じ込められた青年がスマホとドローンを駆使してゾンビ禍を生き延びるサバイバル映画。コロナ禍の劇場不況のなかで韓国国内で観客動員100万人を突破した最初の作品となり、その後Netflixで配信されると世界ランキング上位に入った。
翌2021年にはヨン・サンホ監督のNetflixシリーズ『地獄が呼んでいる』で、カルト団体「新真理会」を率いる議長チョン・ジンスを演じた。トロント国際映画祭で上映された初の韓国ドラマシリーズとしても話題になり、配信直後にNetflixのテレビ部門で世界1位を記録している。静かに狂気を漂わせる教祖役は、「爆発型」のイメージをさらに更新するものだった。
ハイブランドの顔[編集]
俳優としての評価と並行して、ファッション界での存在感も大きかった。ディーゼルのグローバルモデル、カルティエの韓国アンバサダーに続き、2019年にはカルバン・クラインのキャンペーンにアジアから唯一参加。同年にはバーバリーの男性グローバルアンバサダーにも選ばれ、「韓国俳優でここまでハイブランドが並ぶのは異例」と言われた。
アートと社会活動[編集]
スタジオコンクリート[編集]
ユ・アインを語るうえで欠かせないのが、2014年に仲間と立ち上げたアートコレクティブ「スタジオコンクリート」。ソウル・漢南洞の古い住宅を改装したスペースで、ギャラリーとカフェとショップを兼ね、若手アーティストを支える場として運営された。本人は代表兼クリエイティブディレクターとして、展示の企画から広告・グラフィックデザインまで手掛けている。
海外の作家とのコラボレーションも多く、ジャン・ジュリアンやジョアン・コルネラ、DJのペギー・グーらと組んだ企画も話題になった。こどもの日に合わせたチャリティーバザーを毎年開き、収益を小児白血病の支援団体に寄付していたことも知られている。
書き手としての顔[編集]
文章を書くことも好きで、2014年から2016年にかけてファッション誌『TOM PAPER』の編集長を務め、雑誌にコラムを寄稿していた。自らデザインしたハングルTシャツのブランドの収益で奨学基金を立ち上げ、児童養護施設出身の学生の学費支援に充てたこともある。
発言する俳優[編集]
政治的・社会的な発言をためらわない俳優としても知られる。2016年の朴槿恵政権退陣を求める大規模集会には自ら参加し、2019年には哲学者キム・ヨンオク(トオル)とKBS1の対談番組『도올아인 오방간다』(全12回)で共同ホストを務めた。同年4月の済州4・3事件追悼式では司会を担い、平和宣言を朗読している。
SNSでの発言はしばしば論争にもなった。2017年にはX(旧Twitter)上でのネットユーザーとの応酬が大きく報じられ、「SNSで炎上する俳優」というイメージも同時に背負うことになる。
活動休止から復帰まで[編集]
公開が延期された作品たち[編集]
2023年の薬物事件発覚により、撮影済みだった作品の多くが宙に浮いた。イ・ビョンホンと師弟の囲碁棋士を演じた『勝負』は2023年前半の公開予定から延期され、最終的に2025年3月26日に劇場公開。公開後は2週連続で週末興行1位となり、累計観客は約211万人に達した。同年5月8日にはNetflixでも世界配信されている。
続く『ハイファイブ』も公開が先送りされていたが、2025年5月30日に公開され、8日目で観客100万人を突破した。韓国メディアはこれを「ユ・アインのリスクを乗り越えた」と報じている。どちらの作品でも、ユ・アイン本人は舞台挨拶などのプロモーション活動には参加しなかった。
『地獄が呼んでいる』シーズン2の主演交代[編集]
2024年に配信された『地獄が呼んでいる』シーズン2では、チョン・ジンス役が俳優キム・ソンチョルに交代した。同じくNetflixシリーズ『終末のフール』は事件前に撮影を終えており、2024年4月26日にそのまま配信されている。
3年ぶりの復帰作『ヴァンピル』[編集]
2026年に入ると、『破墓/パミョ』で観客1000万人超を記録したチャン・ジェヒョン監督の新作に出演するのではないかという報道が相次いだ。監督側は2025年12月の時点で「ユ・アインの出演は事実ではない」と否定していたが、2026年7月にはユ・アインが監督とともに試写会に姿を見せたことが報じられ、再び注目が集まった。
そして2026年8月18日、配給会社NEWがチャン・ジェヒョン監督のミステリーオカルト映画『ヴァンピル(Vampir)』のキャストとしてユ・アインの出演を正式に発表。謎の異教集団を追う殺し屋役で、共演にはイ・ソンミン、イ・ジュンヒョクらが名を連ねた。撮影は同年8月に始まり、公開は2028年を予定している。8月21日には芸能事務所Billionsが専属契約を発表し、「過去の件に対する大衆の懸念を重く受け止めている」とコメントした。
炎上とバズ[編集]
薬物事件の発覚(2023年)[編集]
2023年2月、ユ・アインは医療用麻酔薬プロポフォールの常習投与の疑いで警察の調べを受け、出国禁止措置が取られた。その後の国立科学捜査研究院の鑑定では、毛髪からプロポフォール、大麻、コカイン、ケタミンなどの成分が検出されたと報じられた。事件発覚を受けて広告主が相次いで契約を見直し、出演作の公開も軒並み延期された。
2023年3月28日、本人はInstagramに初の謝罪文を掲載し、自身の過ちを「どのような弁明でも覆い隠せない」とした上で、今後の捜査に誠実に臨み、法の判断を受け入れると表明している。
裁判と判決[編集]
検察は、2020年9月から2022年3月にかけてプロポフォールを181回にわたり投与されたこと、他人名義で睡眠薬を44回・1100錠以上処方させたこと、2023年1月の米国滞在中に大麻を吸引したことなどで起訴した。
- 一審(2024年9月3日、ソウル中央地方法院):常習投与などを有罪とし、懲役1年・罰金200万ウォンを言い渡して法廷拘束した。
- 二審(2025年2月18日、ソウル高等法院):薬物依存をかなり克服していることや反省の態度などを考慮し、懲役1年・執行猶予2年・罰金200万ウォンに減軽。約5か月半ぶりに釈放された。
- 上告審(2025年7月3日、大法院):検察の上告を棄却し、二審判決が確定した。
一審で実刑・法廷拘束、二審で執行猶予という判断の分かれ方は、韓国でも大きな議論を呼んだ。
復帰をめぐる反応[編集]
2026年8月の『ヴァンピル』出演発表では、ネット上で賛否が大きく割れた。所属事務所Billionsも契約発表の声明で、大衆の懸念に言及している。かつての「アイン時代」を知るファンの期待と、事件を重く見る声が交錯するなか、彼の復帰作は2028年の公開を控えている。
余談[編集]
- 料理が趣味で、知人を家に招いて手料理を振る舞うのが好きだと語っていた。
- 『密会』では20歳年上の女性と恋に落ちる青年役を演じ、韓国で「国民の年下彼氏(국민 연하남)」という呼び名が定着した。
- 2016年には『フォーブス』韓国版のパワーセレブリティ・ランキングで2位に入ったことがある。
- 『王の運命』で演じた思悼世子は、ソン・ガンホ演じる英祖との父子対決が見どころ。映画賞レースでは『ベテラン』と合わせて複数の主演男優賞を手にした。
- Instagramのアカウントは「@hongsick」(本名ホンシクに由来)。フォロワーは約189万人に上る一方、フォロー数は「0」という徹底ぶりで、2023年3月の謝罪文もここに掲載された。
- 『バーニング』で共演したチョン・ジョンソは本作が映画デビュー。新人ながらユ・アインやスティーヴン・ユァンを相手に強い印象を残した。
