ペ・ドゥナ
배두나/裴斗娜/Bae Doona(Bae Doo-na)
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映画『トンネル 闇に鎖された男』のプロモーションでのペ・ドゥナ(2016年、出典:ウィキメディア・コモンズ、撮影:K-POPIT 케이팝잇、CC BY 3.0)
誕生日 1979年10月11日
年齢 46歳
出身地 大韓民国・ソウル特別市鍾路区
国籍 大韓民国
学歴 漢陽大学校(在学中にスカウト)、建国大学校 映画芸術学科
ジャンル 映画、テレビドラマ、配信ドラマ、舞台、モデル
活動期間 1998年〜(モデル)、1999年〜(女優)
家族 母:舞台女優キム・ファヨン、兄:CMディレクターのペ・ドゥハン
事務所 グッドマンストーリー(2023年〜)
代表作 『ほえる犬は噛まない』『子猫をお願い』『復讐者に憐れみを』『リンダ リンダ リンダ』『グエムル -漢江の怪物-』『空気人形』『クラウド アトラス』『私の少女』『センス8』『秘密の森』『キングダム』『ベイビー・ブローカー』『あしたの少女』『家族計画』
関連活動 第76回ベルリン国際映画祭 コンペティション部門審査員(2026年)、映画芸術科学アカデミー(AMPAS)会員(2018年〜)
その他 第33回日本アカデミー賞 優秀主演女優賞(『空気人形』)、アジア・フィルム・アワード 主演女優賞(『私の少女』)


概要[編集]

ペ・ドゥナ(배두나、裴斗娜、Bae Doona、1979年10月11日 - )とは、韓国・ソウル出身の女優である。ポン・ジュノ、パク・チャヌク、是枝裕和、ウォシャウスキー姉妹といった国内外の名監督に起用され続け、韓国・日本・ハリウッドを股にかけて活躍する「国境のない女優」として知られる。

詳細[編集]

女優の母のもとに生まれ、カタログモデルからスタート[編集]

1979年10月11日、ソウルの鍾路区で生まれた。母は舞台女優のキム・ファヨンで、子どもの頃から芝居が身近にある家庭で育った。兄のペ・ドゥハンはCMディレクターで、2015年にはウェブ映画『Red Carpet Dream』で兄妹コラボも果たしている。

とはいえ、最初から女優一直線だったわけではない。1998年、漢陽大学校に通っていたときにモデル事務所にスカウトされ、カジュアルブランド「COOLDOG」のカタログモデルなどで芸能活動を始めた。のちに専攻を演劇映画の方面に移し、建国大学校の映画芸術学科で学んでいる。1999年にKBSのドラマ『学校』で本格的に演技を始めると、その年のKBS演技大賞で新人賞を獲得。同じ年に映画『リング・ウィルス』でスクリーンデビューも飾った。

ポン・ジュノの長編デビュー作で「女優になる」と決めた[編集]

転機になったのは2000年の『ほえる犬は噛まない』。のちに『パラサイト 半地下の家族』で世界を獲るポン・ジュノ監督の長編デビュー作で、ペ・ドゥナはマンション管理事務所で働く女性パク・ヒョンナムを演じた。この作品で青龍映画賞の新人女優賞を受賞している。

本人はのちに、この映画がきっかけで「女優に、それも良い女優になろうと決めた。あの映画が人生をまるごと変えた」という趣旨の発言をしている。モデル上がりの若手が、ポン・ジュノの現場で演技に本気で目覚めた、というのはなかなか出来すぎた話である。

2000年代前半、韓国インディーと巨匠の現場を往復[編集]

2001年の『子猫をお願い』(チョン・ジェウン監督)では、高校を卒業して社会に出た5人の女性のひとりユ・テヒを演じた。派手さはないが若者のリアルを描いた作品として高く評価され、ペ・ドゥナは2002年の百想芸術大賞映画部門で主演女優賞を受賞。春史映画賞や韓国映画評論家協会賞などでも主演女優賞を総なめにした。

翌2002年にはパク・チャヌク監督の『復讐者に憐れみを』に出演。ソン・ガンホ、シン・ハギュンと共演し、過激な思想を持つ若い女性チャ・ヨンミを演じた。いわゆる「復讐三部作」の1本目で、ここでもソン・ガンホとの縁が生まれている。こうして20代前半のうちに、韓国映画ニューウェーブの中心にいる監督たちとの仕事を次々とこなしていった。

写真家としての顔と「休業期間」[編集]

2003年から2004年にかけて、ペ・ドゥナは女優業を少しペースダウンさせている。この時期に打ち込んだのが写真で、旅先で撮った写真とエッセイをまとめた本を立て続けに出版した。『ドゥナのロンドンプレイ』(2006年)、『ドゥナの東京プレイ』(2007年)、『ドゥナのソウルプレイ』(2008年)の3冊で、都市ごとに自分の目線で切り取った写真集兼旅行記になっている。

2004年には舞台『Sunday Seoul』にも出演した。パク・チャヌクが共同で脚本に関わった作品で、映画だけでなく舞台にも足場を持つ母親譲りの一面がのぞく。カメラの前に立つだけでなく、カメラを構える側にも回ることで、自分の見せ方を客観視するようになったとも言われ、その後の飾らない演技スタイルにつながっていると評されることが多い。

日本映画との深い縁[編集]

『リンダ リンダ リンダ』の留学生ソン[編集]

日本で一気に名前が知られたのが、2005年公開の山下敦弘監督作『リンダ リンダ リンダ』である。文化祭の3日前、ボーカルが抜けてしまった女子高生バンドが、なぜか韓国からの留学生ソンをボーカルに迎え、ザ・ブルーハーツのコピーに挑むという青春映画だ。

ペ・ドゥナは日本語がおぼつかないまま巻き込まれていくソンを、とぼけた愛嬌たっぷりに演じた。撮影は2004年に群馬県前橋市で行われ、言葉や文化の壁に戸惑う彼女を山下監督が励ましてくれたと振り返っている。2025年8月22日には公開20周年を記念した4Kリマスター版のリバイバル上映が行われ、本人も「20代の作品の中で最も好きなもののひとつで、大きな誇り」という趣旨のコメントを寄せた。

是枝裕和の『空気人形』で日本アカデミー賞[編集]

2009年には是枝裕和監督の『空気人形』で主演を務めた。ある日「心」を持ってしまった空気人形が、持ち主の留守中に街へ出て恋をする、という寓話的な作品で、ほぼ全編日本語のセリフに挑んでいる。作品はカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に出品された。

この演技で、外国人ながら第33回日本アカデミー賞の優秀主演女優賞を受賞。さらに日本映画プロフェッショナル大賞、高崎映画祭、東京スポーツ映画大賞でも主演女優賞を獲得した。本人は「映画と演技に国境はない」という信念で日本語の芝居に向き合ったとされる。日本ではサントリーのCMにも起用されるなど、映画ファン以外にも顔が知られるようになった。

『グエムル』と体を張った役作り[編集]

2006年の『グエムル -漢江の怪物-』は、再びポン・ジュノ監督と組んだ怪獣映画。漢江に現れた怪物に娘をさらわれた一家の奮闘を描き、ソン・ガンホ演じる長男カンドゥの妹で、アーチェリー選手のパク・ナムジュを演じた。韓国で記録的な大ヒットとなった作品で、ペ・ドゥナはディレクターズ・カット賞の主演女優賞を受賞している。

この役のために数か月にわたってアーチェリーを練習したことはよく知られている。役作りのために競技を身につけるのは彼女の定番で、2012年の『ハナ 奇跡の46日間』では南北統一卓球チームに参加した北朝鮮の実在選手リ・ブニを演じるため、卓球を猛特訓。しかもリ・ブニに合わせて左利きでプレーできるように練習したという。

ハリウッド進出とウォシャウスキー姉妹[編集]

『クラウド アトラス』でハリウッドデビュー[編集]

2012年、ウォシャウスキー姉妹とトム・ティクヴァが共同監督した『クラウド アトラス』でハリウッドデビュー。未来のソウルで覚醒するクローンのソンミ451を中心に、時代の異なる複数の役を演じ分けた。英語のセリフで堂々と主要キャラクターを担い、世界の映画ファンに名前を刻んだ。

『センス8』『ジュピター』と続く信頼関係[編集]

ウォシャウスキー側との縁はその後も続き、2015年の『ジュピター』では賞金稼ぎのラゾ役で出演。さらに2015年から2018年にかけてNetflixのSFドラマ『センス8』に、世界各地で意識がつながった8人のひとり、ソウルの実業家で格闘技の達人でもあるサン・バク役でレギュラー出演した。

本人はウォシャウスキー姉妹について「母と同じくらい大切な存在になった。尊敬し、信頼している」という趣旨の言葉を残している。2018年6月には、アメリカの映画芸術科学アカデミー(アカデミー賞を主催する団体)の新会員にも招待された。

韓国ドラマでの大ブレイク[編集]

『秘密の森』の熱血刑事ハン・ヨジン[編集]

2017年のtvN『秘密の森〜深い闇の向こうに〜』では、感情をほとんど表に出さない検事ファン・シモク(チョ・スンウ)とコンビを組む、人情味あふれる刑事ハン・ヨジンを演じた。脚本の緻密さと二人の掛け合いが評判を呼び、2020年にはシーズン2も制作されている。

『最高の離婚』と『麻薬王』[編集]

2018年にはKBS2のドラマ『最高の離婚』に主演。日本の同名ドラマを原作にしたリメイク作品で、カン・フィル役を演じ、KBS演技大賞ではベストカップル賞を受けた。同年の映画『麻薬王』ではソン・ガンホと再共演し、キム・ジョンアを演じている。

Netflix『キングダム』の医女ソビ[編集]

世界的な知名度をさらに押し上げたのが、2019年と2020年に配信されたNetflixの時代劇ゾンビドラマ『キングダム』である。チュ・ジフン演じる世子イ・チャンとともに、謎の疫病の正体に迫る医女ソビを演じた。朝鮮王朝×ゾンビという異色の組み合わせは世界中でヒットし、韓国ドラマの「Kゾンビ」ブームの火付け役のひとつになった。

2021年にはNetflixのSFドラマ『静かなる海』で、コン・ユと共演し、月面の研究基地に向かう宇宙生物学者ソン・ジアンを演じている。

社会派映画と再び是枝作品へ[編集]

『私の少女』とチョン・ジュリ監督[編集]

2014年の『私の少女』は、イ・チャンドンがプロデュースし、新人のチョン・ジュリが監督した作品。海辺の村に左遷されてきた警察署長イ・ヨンナムが、虐待を受ける少女と出会う物語で、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品された。ペ・ドゥナはアジア・フィルム・アワードの主演女優賞、中国の金鶏百花映画祭の外国映画主演女優賞、春史映画賞の主演女優賞などを受けた。

チョン・ジュリ監督とは2022年の『あしたの少女』で再タッグ。コールセンターで実習中に追い詰められていく高校生ソヒの死の真相を追う刑事ユジンを演じた。作品はカンヌ国際映画祭の批評家週間に招待され、ペ・ドゥナは2023年の釜日映画賞でユ・ヒョンモク映画芸術賞を受けている。

『ベイビー・ブローカー』で是枝監督と13年ぶり[編集]

同じ2022年には、『空気人形』以来となる是枝裕和監督との再タッグ作『ベイビー・ブローカー』にも出演。赤ちゃんポストに預けられた子どもをめぐる物語で、ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、イ・ジウン(IU)と共演し、ブローカーたちを追う刑事スジンを演じた。ソン・ガンホはこの作品でカンヌ国際映画祭の男優賞を受賞している。

2023年以降の活動[編集]

事務所移籍と『REBEL MOON』[編集]

2023年3月にグッドマンストーリーと専属契約を結んだ。同年から2024年にかけては、ザック・スナイダー監督のNetflix映画『REBEL MOON』2部作に出演し、剣の達人ネメシスを演じた。

Coupang Play『家族計画』で新境地[編集]

2024年11月29日に配信が始まったCoupang Playのドラマ『家族計画』では、他人の記憶を編集できる特殊能力を持つ母ハン・ヨンスを演じた。家族を装った能力者たちが凶悪犯に立ち向かうというブラックコメディ風のアクションで、監督は『ボイス』シリーズのキム・ゴク&キム・ソン、脚本は『ハッシュ』のキム・ジョンミン。夫役のリュ・スンボム、祖父役のペク・ユンシクと共演した。

この作品で2025年のディレクターズ・カット賞のシリーズ部門主演女優賞と、ContentAsia Awardsの主演女優賞を受賞。シーズン2の制作も決まり、2026年4月時点で撮影中、2026年下半期に配信予定と報じられた。シーズン2ではリュ・スンボムが降板し、パク・ビョンウンが叔父役で新たに加わる。ペ・ドゥナは台本読み合わせの後、「新しく登場する人物たちが最初のシーズンよりずっと怖く感じた」と語っている。

映画『바이러스(ウイルス)』で初のラブコメ[編集]

2025年5月7日には、カン・イグァン監督の映画『바이러스』(英題:Virus)が公開された。撮影から約5年を経ての公開で、作家を夢見たものの才能のなさを悟った翻訳家テクソンが、人を恋に落とす奇妙なウイルスに感染してしまうというロマンティック・コメディ。ソン・ソック、チャン・ギハ、キム・ユンソクと共演した。

出演理由については「シナリオがとても独特で、武装解除されて感染するように恋に落ちるというアイデアがよかった」と語り、今後については「コメディをやってみたい。人を笑わせるコンテンツが最近いいなと思う」とも話している。

2026年:ベルリン国際映画祭の審査員に[編集]

2026年2月12日から22日まで開かれた第76回ベルリン国際映画祭で、コンペティション部門の審査員7人のひとりに選ばれた。審査員長はドイツの巨匠ヴィム・ヴェンダース。韓国人がベルリンの審査員を務めるのは、2006年の女優イ・ヨンエ、2015年のポン・ジュノ監督に続いて3人目である。

さらに2026年は、『クミコ、ザ・トレジャー・ハンター』のゼルナー兄弟が監督したSFコメディ『Alpha Gang』にも出演。地球を滅ぼしに来たはずの宇宙人たちが人間の感情に毒されていく物語で、ケイト・ブランシェット、クリス・パイン、デイヴ・バウティスタ、レア・セドゥ、リリー=ローズ・デップら豪華キャストに名を連ね、第51回トロント国際映画祭のスペシャル・プレゼンテーション部門にも選ばれた。

演技スタイルと評価[編集]

ペ・ドゥナの持ち味は、作り込みすぎない自然体の存在感と、どこか浮世離れした透明感である。『リンダ リンダ リンダ』のとぼけた留学生、『空気人形』の人形、『クラウド アトラス』のクローンと、「この世の人ではない」ような役がやたら似合う一方、『秘密の森』『私の少女』『あしたの少女』『ベイビー・ブローカー』と警察官役も多く、地に足のついた職業人もリアルに演じ分ける。

また、言語の壁をほとんど気にしないのも大きな特徴。韓国語に加えて日本語・英語で主要な役を演じ切っており、チョン・ドヨンやムン・ソリと並ぶ「韓国映画の顔」でありながら、ハリウッドと日本映画の両方に代表作を持つ韓国人女優はかなり珍しい。大作からインディー、配信ドラマまで規模を問わず出演する作品選びも、長く第一線に立ち続けている理由として挙げられることが多い。

炎上とバズ[編集]

大きな炎上騒動で話題になるタイプの女優ではなく、話題になるのはもっぱら作品と賞レースである。2026年のベルリン国際映画祭審査員選出は「イ・ヨンエ、ポン・ジュノに続く3人目」として韓国メディアで大きく報じられた。

また、2024年の『家族計画』はCoupang Playの視聴量ランキングで首位を獲得し、韓国メディアでは「Coupang Play歴代最高のヒット作」と紹介されるほどの反響を呼んだ。日本では2025年の『リンダ リンダ リンダ』4Kリバイバルで、20年ぶりに「ソンちゃん」が話題になった。

余談[編集]

  • 2003年〜2004年頃の写真活動から生まれたフォトエッセイ「プレイ」シリーズは、ロンドン・東京・ソウルの3冊。女優の旅行記というより、彼女自身の視点で撮られた写真集として楽しめる。
  • 本人のInstagramでは飾らない日常写真がたびたび話題になる。2022年11月には、ジャケットを頭からかぶったいたずらっぽい写真とともに「フィルターのおかげで、おととい撮った写真が昔の写真みたいに思い出をよみがえらせてくれる」という趣旨のコメントを投稿し、韓国メディアで「少年のような魅力」と報じられた。
  • ソン・ガンホとは『復讐者に憐れみを』『グエムル -漢江の怪物-』『麻薬王』『ベイビー・ブローカー』で共演しており、20年以上にわたる長い付き合いである。
  • 2019年には釜山国際映画祭で、韓国映画を代表するスターに贈られる「今年のシネマスター(Etoile du Cinéma)」に選ばれた。
  • 『家族計画』の夫役リュ・スンボムは、出演を決めた理由について「ペ・ドゥナとペク・ユンシクが出ると聞いて欲が出た」と語っている。

外部リンク[編集]

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