キム・ユンソク
김윤석 / Kim Yoon-seok
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2014年、映画『タチャ-神の手-』の公式メイキング映像より(出典:Wikimedia Commons、作者:ロッテエンターテインメント、CC BY 3.0)
本名 김윤석(キム・ユンソク)
誕生日 1967年1月21日
年齢 59歳
出身地 大韓民国 忠清北道丹陽郡(生後すぐ釜山へ移り、釜山で育つ)
国籍 大韓民国
学歴 釜山・慧光高等学校、東義大学校 ドイツ語ドイツ文学科
ジャンル 映画・ドラマ・演劇・映画監督
活動期間 1988年 -
家族 妻:パン・ジュラン(俳優、2002年結婚)、娘2人
事務所 HBエンターテインメント(2025年7月 - )
代表作 『タチャ イカサマ師』『チェイサー』『哀しき獣』『10人の泥棒たち』『1987、ある闘いの真実』『モガディシュ 脱出までの14日間』『ノリャン 死の海』、監督作『未成年』
関連活動 映画監督(『未成年』2019年)
その他 大鐘賞・青龍映画賞・大韓民国映画大賞の主演男優賞を2008年に総なめ
リンク HBエンターテインメント 公式Instagram


概要[編集]

キム・ユンソク(김윤석、1967年1月21日 - )とは、韓国の俳優・映画監督である。10年以上の舞台経験を経て40歳目前で映画界にブレイクし、『チェイサー』『哀しき獣』『1987、ある闘いの真実』などで知られる韓国映画界屈指の実力派。2019年には『未成年』で監督デビューも果たした。

詳細[編集]

丹陽生まれ、釜山育ちの「遅咲き」[編集]

忠清北道丹陽郡で生まれ、生後まもなく家族とともに釜山へ移り住み、そこで20年以上を過ごした。生年は1967年とする韓国の資料が多いが、1968年とする資料もある。釜山の慧光(ヘグァン)高等学校を経て、1986年に東義大学校のドイツ語ドイツ文学科に入学。入学と同時に学内の演劇サークル「極芸術同好会」に飛び込み、ここから役者人生が始まった。当時のサークルでは段取りがうまくこなせず、最初は照明担当に回されたというエピソードも伝わっている。1988年、釜山の劇団で『欲望という名の電車』に出演し、プロの舞台に立った。

大学路で10年以上、舞台一筋[編集]

その後ソウルに上京し、1990年代には名門劇団「演友舞台(ヨヌ・ムデ)」のオーディションを突破して入団。大学路(テハンノ)の小劇場を拠点に、劇団サヌリム、学田(ハクチョン)などで『ゴドーを待ちながら』『夜への長い旅路』『地下鉄1号線』『汁がございます(국물 있사옵니다)』などに出演した。演友舞台ではソン・ガンホと出会っており、同じ時代に大学路で汗を流した仲である。学田を率いたキム・ミンギを師と仰ぎ、作品を磨き上げる姿勢を学んだと2011年のインタビューで語っている。1990年代後半には劇団「イェオ(예오)」の代表も務めた。

40歳目前でつかんだブレイク[編集]

映画では長く端役が続いたが、2004年の『犯罪の再構成』で注目され、2006年にはドラマ『人生よ、ありがとう(인생이여 고마워요)』などテレビでも存在感を示した。決定打となったのが同年の映画『タチャ イカサマ師』で演じた伝説の賭博師・アグィ(아귀)。登場シーンは多くないにもかかわらず、観客の記憶に強烈に焼き付き、一躍「顔は知らなくてもアグィは知っている」という存在に。そして2008年、ナ・ホンジン監督の長編デビュー作『チェイサー』で主演を務め、40歳を過ぎてトップ俳優の仲間入りを果たした。

『タチャ』のアグィ[編集]

「まさか自分がアグィとは」[編集]

チェ・ドンフン監督の『タチャ イカサマ師』(2006年)で、キム・ユンソクは主人公たちの前に立ちはだかる最強の賭博師アグィを演じた。本人は後に雑誌『シネ21』のインタビューで、役のオファーには面食らったと明かしている。アグィは全羅道出身という設定なのに、自分は慶尚道訛りの人間。てっきり別のキャラクター「チャックィ(짝귀)」の方を振られると思っていたという。それでも「アグィを連れてひと踊りしてやろう」という気持ちで撮影に臨み、衣装が歩き方や声まで決めてくれたと振り返っている。

サイワールドを慌てて非公開に[編集]

公開後の反響は本人の想像を超えていた。連休に故郷へ帰って戻ってきたら「本当に大騒ぎになっていた」そうで、当時の韓国で大流行していたSNS「サイワールド」のミニホームピーに人が押し寄せ、慌ててプロフィールを非公開に切り替えたという。チェ・ドンフン監督は「メイクをしてアグィになったキム・ユンソクには、スタッフが怖くて近寄れなかった」とも語ったとされる。

8年越しの再登板[編集]

アグィは2014年の続編『タチャ-神の手-』にも再登場し、ファンを沸かせた。共演のキム・ヘスとは、のちの2022年に同じ事務所に所属することになり、韓国メディアは「『タチャ』の縁で同じ釜の飯を食うことに」と報じている。

『チェイサー』とナ・ホンジン[編集]

新人監督の低予算スリラーに賭けた[編集]

2008年2月14日公開の『チェイサー』は、ナ・ホンジン監督の長編デビュー作。キム・ユンソクが演じたのは、刑事を辞めて風俗業の元締めになった男オム・ジュンホ。自分の店の女性たちが次々と姿を消し、ある客が最後に彼女たちと会っていたことに気づいたジュンホが、街を駆けずり回って犯人を追い詰めていく。連続殺人犯チ・ヨンミンを演じたハ・ジョンウとの息詰まる対決は、韓国スリラーの金字塔と評される。

主演男優賞を総なめ[編集]

観客動員は約512万人で、2008年の韓国映画興行3位を記録。キム・ユンソクはこの作品で大鐘賞、青龍映画賞、大韓民国映画大賞の主演男優賞をすべて獲得し、さらに春史映画祭や釜山映画評論家協会賞でも主演男優賞に輝いた。韓国の主要映画賞を一年で総なめにするのは異例で、「遅咲きの名優」の名を一気に全国区にした。ハリウッドのワーナー・ブラザースがリメイク権を約100万ドルで買ったことでも話題になった。

2010年『哀しき獣』で立場が逆転[編集]

ナ・ホンジン監督の2作目『哀しき獣』(2010年12月22日公開)でもハ・ジョンウと再共演。今度はキム・ユンソクが延辺の裏社会を牛耳る男ミョン・ジョンハクを演じ、韓国に送り込まれる殺し屋グナム(ハ・ジョンウ)を追い詰める側に回った。前作の「追う者・追われる者」が見事に入れ替わったキャスティングで、2011年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門にも出品された。中国朝鮮族の言葉を使いこなした演技は、延辺の現地の年配者から本物の朝鮮族と間違えられたとされるほど。斧を手に暴れ回るミョン・ジョンハクは、韓国映画史に残る悪役のひとりに数えられる。

興行俳優としての黄金期[編集]

5年で3400万人[編集]

『チェイサー』以降、キム・ユンソクは出演作がことごとくヒットする「興行保証」俳優になった。2009年は田舎刑事を演じた『거북이 달린다(亀は走る)』、チェ・ドンフン監督作『チョン・ウチ 時空道士』の道士ファダム役。2011年の『ワンドゥギ』では、ユ・アイン演じる不良少年の前に現れる型破りな担任教師イ・ドンジュを好演し、業界予想の300万人を大きく上回る約500万人を動員した。

『10人の泥棒たち』で歴代1位[編集]

2012年、チェ・ドンフン監督の『10人の泥棒たち』でカジノを狙う大泥棒集団のリーダー格マカオ・パクを演じた。チョン・ジヒョン、キム・ヘス、イ・ジョンジェ、キム・スヒョンら豪華キャストが揃った本作は約1300万人を動員し、公開当時の韓国映画歴代興行1位を記録。ワイヤーアクションや中国語のセリフにも挑み、半年後のアフレコでも中国語のセリフを一度も間違えなかったと伝えられている。この時期、キム・ユンソクは5年間で累計約3400万人の観客を動員し、当時の韓国映画界では類を見ない記録とされた。

ジャンルを問わない2010年代[編集]

2013年はチャン・ジュナン監督の『ファイ 悪魔に育てられた少年』で犯罪組織のリーダー・ソクテ、2014年はポン・ジュノが製作に携わったシム・ソンボ監督の『海にかかる霧』で漁船の船長チョルジュ。2015年はカン・ドンウォンと組んだオカルト『プリースト 悪魔を葬る者』で悪魔祓いを行う神父キム・ボムシン、2017年はファン・ドンヒョク監督の時代劇『天命の城』でイ・ビョンホンと対立する主戦派の重臣キム・サンホン、2018年はチュ・ジフンと対峙する『暗数殺人』で刑事キム・ヒョンミンを演じた。悪役から聖職者、刑事、歴史上の人物まで振れ幅が非常に大きい。

『1987、ある闘いの真実』[編集]

母校の先輩の事件を演じる[編集]

2017年12月27日公開、チャン・ジュナン監督の『1987、ある闘いの真実』で、キム・ユンソクは学生運動家パク・ジョンチョルの拷問死を隠蔽しようとする治安本部対共捜査処長パク・チョウォンを演じた。実はパク・ジョンチョル烈士は、キム・ユンソクの高校(慧光高校)の2年先輩。本人は「この役を誰かがやらなければ映画は作られない。どうせやるなら時代考証、人物考証に最善を尽くそうと思った」と出演の理由を語っている。

「タク!と叩いたらウッ!と」[編集]

当時、警察が発表した「机をタク!と叩いたらウッ!と言って倒れた」という釈明は、新聞の見出しを埋め尽くした悪名高いフレーズ。キム・ユンソクは「そのセリフを自分が言うことになるとは思ってもみなかった」と振り返っている。撮影前にはパク・ジョンチョル烈士の30周忌行事にも参列したという。

二度目の主演男優賞ラッシュ[編集]

作品は約720万人を動員。キム・ユンソクは2018年の百想芸術大賞で映画部門の最優秀演技賞(男性)、同年の青龍映画賞で主演男優賞を受賞し、『チェイサー』から10年を経て再び韓国映画賞の頂点に立った。権力側の冷酷な人物を、紋切り型の悪役ではなく「信念を持った怪物」として演じきった点が高く評価された。

監督デビュー作『未成年』[編集]

大学路の小劇場で出会った物語[編集]

2019年4月11日公開の『未成年』は、キム・ユンソクの長編監督デビュー作。きっかけは2014年12月、大学路の小劇場で観た芝居だった。「演劇の演出をやったことがあり、映画の演出もずっと夢だった」という本人は、原作者のイ・ボラム作家と数年かけて脚本を練り上げた。脚本作りの段階では、俳優として組んだナ・ホンジン、チャン・ジュナンらの監督たちにも相談しており、「自分で撮るべきだ」と背中を押されたという。

刑事もヤクザもヒーローも出てこない話[編集]

物語は、女子高生ジュリとユナが互いの親の不倫を知ってしまうところから始まる家族ドラマ。ヨム・ジョンア、キム・ソジン、キム・ヘジュン、パク・セジンが出演し、キム・ユンソク自身もジュリの父デウォン役で出演した。本人は「刑事もヤクザもヒーローも出てこない、ただの普通の人たちの話。細部を掘り下げることが大事だと考えた」と語っている。シーンごとに「左の靴から脱ぐ」といった細部にまでこだわる演出ぶりは、監督仲間を驚かせた。

評価[編集]

キム・ヘジュンが青龍映画賞の新人女優賞を受賞し、キム・ユンソクも各映画賞で新人監督賞にノミネートされた。本人は今後も俳優と演出を並行していく意向を示し、「普通の人の非凡な瞬間を描きたい」と語っている。

2020年代の主な活動[編集]

『モガディシュ』で全編海外ロケ[編集]

2021年7月28日公開、リュ・スンワン監督の『モガディシュ 脱出までの14日間』では、1991年のソマリア内戦に巻き込まれた韓国大使ハン・シンソンを演じた。撮影は2019年10月から2020年2月まで約4か月間、すべて海外で行われた。本人はハン・シンソンを「優柔不断な普通の人」と表現し、「人物の半分は自分自身。正義だけを追うより、制約の中で知恵を選ぶところが自分に似ている」と語っている。コロナ禍の中で約360万人を動員するヒットになった。

李舜臣三部作の完結編[編集]

2023年12月20日公開の『ノリャン 死の海』では、キム・ハンミン監督の李舜臣三部作の最終章で李舜臣を演じた。第1作『バトル・オーシャン 海上決戦』はチェ・ミンシク、第2作『ハンサン 龍の出現』はパク・ヘイルが演じており、三部作で3人の俳優が同じ英雄を演じ分けた形。キム・ハンミン監督は「知恵ある将軍・李舜臣の雰囲気を伝えられる、非常に稀なオーラを持った俳優」と起用理由を語った。約100分にわたる海戦シーンは、江陵のスケートリンクに組んだセットで水を使わずに撮影された。動員は約457万人。

18年ぶりのドラマと新作ラッシュ[編集]

2024年8月23日にはNetflixシリーズ『아무도 없는 숲속에서』(英題:The Frog)が配信。妻を亡くした後も森の中でペンションを営む男チョン・ヨンハを演じ、ユン・ゲサンらと共演した。ドラマ出演は2006年以来18年ぶり。同年12月11日公開のヤン・ウソク監督作『大家族(대가족)』では、一代で名店を築いたマンドゥ(餃子)店の主人ハム・ムオクを演じ、出家した一人息子との騒動を描く家族コメディに初挑戦した。2025年5月7日には、撮影から約5年を経てペ・ドゥナ主演の『바이러스(ウイルス)』が公開されている。

人物[編集]

家族[編集]

妻は俳優のパン・ジュラン。2000年の舞台『ブラッド・ブラザーズ(의형제)』で共演したのが縁で、2002年に結婚した。2人の娘がいる。

事務所の移籍[編集]

2022年10月25日、キム・ヘスが所属する「ホドゥ&ユー(호두앤유)エンターテインメント」と専属契約を結んだ。2025年7月24日には「HBエンターテインメント」へ移籍し、同じ事務所に移っていたイ・ソンミンと再び同じ所属となった。

演技スタイル[編集]

感情を極端に爆発させるよりも、一定のトーンを保ちながら決定的な瞬間に表情をわずかに変える演技が特徴とされる。2011年のインタビューでは作品選びの基準として「ドラマとしての完成度」と「監督への信頼」を挙げ、「パターンが出来上がった瞬間に終わり」とマンネリを強く警戒する姿勢を見せている。過去の役の焼き直しを求める脚本は避けるという。

炎上とバズ[編集]

「ソン・ガンホが説得して復帰」説を本人が否定[編集]

長らく「演技をやめて釜山でカフェを経営していたキム・ユンソクを、ソン・ガンホが訪ねて説得し俳優に復帰させた」という美談がネットで語られてきた。しかし2024年12月16日放送のSBSパワーFM『パク・ハソンのシネタウン』で、本人は「全部作り話。降りてきて説得したなんて全部嘘で、自分で勝手にソウルに上がっただけ」とあっさり否定し、話題になった。

2016年の「ひざ掛け」発言[編集]

2016年12月1日、映画『あなた、そこにいてくれますか(당신, 거기 있어줄래요)』のオンライン生配信トークで、ハートが20万を超えたら何をするかという公約を問われ、女性俳優のひざにかけられた毛布について不適切な発言をし、セクハラだと批判された。12月5日の同作の記者懇談会で、キム・ユンソクは深々と頭を下げて「軽率さと愚かさで怒りと不快感を覚えたすべての方に心から謝罪する。深く反省している」と謝罪した。

余談[編集]

  • 『チェイサー』と『哀しき獣』で組んだナ・ホンジン、『ファイ』『1987』のチャン・ジュナン、『タチャ』『チョン・ウチ』『10人の泥棒たち』のチェ・ドンフンと、同じ監督から繰り返し呼ばれるタイプ。
  • 『未成年』の公開時、雑誌『シネ21』でナ・ホンジン、チャン・ジュナン、ホン・ジヨンという「俳優キム・ユンソクを撮った監督たち」が逆に監督キム・ユンソクと語り合う座談会が組まれた。
  • 李舜臣役はチェ・ミンシク、パク・ヘイルに続く3人目。同じ監督の三部作で主人公の俳優が毎回替わるのは珍しい。
  • ソン・ガンホ、ファン・ジョンミンと並び、大学路の舞台から映画界のトップへ上り詰めた俳優の代表格として語られることが多い。
  • 『ワンドゥギ』は自身の娘たちのお気に入りの出演作だとされる。

外部リンク[編集]

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