| パク・チャヌク 박찬욱 / Park Chan-wook | |
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![]() 2025年トロント国際映画祭でのパク・チャヌク(出典:ウィキメディア・コモンズ、Desmond Herzfelder撮影、CC BY 4.0) | |
![]() 『渇き』で審査員賞を受けた2009年カンヌ国際映画祭にて(出典:ウィキメディア・コモンズ、Masha Kuvshinova撮影、CC BY 3.0) | |
| 本名 | 朴贊郁(박찬욱) |
| 誕生日 | 1963年8月23日 |
| 年齢 | 63歳 |
| 出身地 | 韓国・ソウル |
| 国籍 | 韓国 |
| 家族 | 弟・パク・チャンギョン(美術家・映像作家) |
| 学歴 | 西江大学校 哲学科 |
| 職業 | 映画監督、脚本家、映画プロデューサー |
| 肩書 | 2026年カンヌ国際映画祭 審査委員長 |
| 活動期間 | 1992年 - |
| 代表的な実績 | 『JSA』『オールド・ボーイ』『お嬢さん』『別れる決心』『しあわせな選択』、ドラマ『シンパサイザー』 |
| 受賞 | カンヌ国際映画祭グランプリ(『オールド・ボーイ』)、同審査員賞(『渇き』)、同監督賞(『別れる決心』)、英国アカデミー賞 非英語作品賞(『お嬢さん』)、ベルリン国際映画祭 短編金熊賞(『パランマンジャン』)ほか |
| 事務所 | モホフィルム(2002年設立の自身の制作会社) |
| 関連活動 | 弟との映像ユニット「PARKing CHANce」 |
概要[編集]
パク・チャヌク(박찬욱、Park Chan-wook、1963年8月23日 - )とは、韓国・ソウル出身の映画監督・脚本家である。『JSA』『オールド・ボーイ』『お嬢さん』『別れる決心』などで知られ、カンヌ国際映画祭でグランプリ・審査員賞・監督賞を受けた、韓国映画を代表する巨匠の一人である。
詳細[編集]
映画評論家から監督へ[編集]
1963年、ソウル生まれ。父は大学で建築学を教えた教授で、本人は美術評論家を目指して西江大学校の哲学科に進んだ。ところが大学には美術系の課程がなく、写真サークルや映画サークルに出入りするうちに、そこで観たアルフレッド・ヒッチコックの『めまい』(1958年)に衝撃を受け、映画を撮る側に進路を変えたという。卒業後は映画評論を書きながら助監督として現場を経験し、1992年に『月は…太陽が見る夢』で長編監督デビューした。
「黒歴史」の2本と評論家時代[編集]
デビュー作『月は…太陽が見る夢』と2作目『三人組』(1997年)は、どちらも興行的に振るわなかった。この時期のパク・チャヌクは、テレビやラジオで映画評論をして生計を立てていたとされる。評論家としての文章は本にもまとまっており、1994年の評論集をはじめ、2005年には自身の映画遍歴を語った著書を複数出している。「映画オタクの評論家が、そのまま世界的な監督になった」という異色のキャリアの持ち主なのだ。
『JSA』での大逆転[編集]
3作目の『JSA』(2000年)で状況は一変する。南北の軍事境界線にある共同警備区域を舞台に、韓国軍と北朝鮮軍の兵士がひそかに友情を育むという物語で、ソン・ガンホ、イ・ビョンホンらが出演した。公開当時、韓国映画史上最高の興行成績を記録し、パク・チャヌクを一気にヒットメーカーへ押し上げた。本人は、実質的なデビュー作として『JSA』を挙げることを好むとされる。クエンティン・タランティーノもこの作品を高く評価したことで知られる。
モホフィルム設立と「復讐」の時代へ[編集]
『JSA』の成功を受けて、2002年に自身の制作会社モホフィルムを設立。ここから『復讐者に憐れみを』(2002年)、オールド・ボーイ(2003年)、『親切なクムジャさん』(2005年)と続く、いわゆる「復讐三部作」に突入する。暴力と罪と贖いを徹底的に見つめるこの3本が、「パク・チャヌク」という名前を世界に刻みつけることになった。
復讐三部作[編集]
『復讐者に憐れみを』(2002年)[編集]
三部作の1本目。耳の聞こえない青年が、病気の姉の手術費のために誘拐に手を染め、娘を失った父親が復讐に乗り出す……という、誰も救われない連鎖を描いた作品。ソン・ガンホ、シン・ハギュン、ペ・ドゥナが出演した。乾いた暴力描写と救いのなさで批評家の評価は割れ、興行的にも失敗に終わった。それでも後年は「三部作で最も冷たく、最も純度の高い1本」として再評価する声も多い。
『オールド・ボーイ』(2003年)[編集]
理由もわからないまま15年間監禁された男オ・デスが、突然解放され、自分を閉じ込めた相手を探す物語。原作は日本の漫画『ルーズ戦記 オールドボーイ』(作:土屋ガロン、画:嶺岸信明)。チェ・ミンシクが主人公オ・デスを、ユ・ジテが謎の男イ・ウジンを演じた。2004年のカンヌ国際映画祭でグランプリ(最高賞パルム・ドールに次ぐ賞)を受賞し、この年の審査委員長だったタランティーノがパルム・ドールを推したという話も有名。廊下での長回しの乱闘シーンや、生きたタコを食べるシーンなど、映画史に残る名場面だらけの1本で、2013年にはスパイク・リー監督によるハリウッド版リメイクも作られた。
『親切なクムジャさん』(2005年)[編集]
三部作の完結編。無実の罪で13年間服役した女性クムジャが、出所後に真犯人への復讐を実行していく。主演は『チャングムの誓い』で日本でも人気だったイ・ヨンエで、「優しく微笑むクムジャ」と「赤いアイシャドウの復讐者」のギャップが強烈なインパクトを残した。前2作と比べると様式美と寓話性が一段と増しており、批評・興行ともに成功を収めた。三部作を通して「復讐は誰も救わない」というテーマが一貫している点が、単なるバイオレンス映画との大きな違いだ。
三部作以後の長編[編集]
『サイボーグでも大丈夫』(2006年)と『渇き』(2009年)[編集]
復讐三部作の後に撮った『サイボーグでも大丈夫』は、自分をサイボーグだと思い込む少女が主人公の、まさかのラブコメ。イム・スジョンと歌手のRAIN(ピ)が主演し、2007年のベルリン国際映画祭でアルフレッド・バウアー賞(新たな視点を開いた作品に贈られる賞)を受賞した。続く『渇き』は、ソン・ガンホが吸血鬼になってしまった神父を演じるヴァンパイア映画で、2009年のカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞。宗教と欲望の衝突を描く、パク・チャヌクらしい背徳ロマンだ。
ハリウッド進出『イノセント・ガーデン』(2013年)[編集]
初の英語作品『イノセント・ガーデン』(原題:Stoker)は、ミア・ワシコウスカ、ニコール・キッドマン、マシュー・グードが出演したゴシック・スリラー。父を亡くした少女の前に、存在すら知らなかった叔父が現れることから始まる物語だ。パク・チャヌクは英語を話せるものの、撮影現場では通訳を介して演出したとされる。
『お嬢さん』(2016年)[編集]
イギリスの作家サラ・ウォーターズの小説『荊の城』を、1930年代の日本統治下の朝鮮に置き換えて映画化した作品。莫大な財産を持つ令嬢(キム・ミニ)、彼女に仕えるメイドとして送り込まれた詐欺師の少女(キム・テリ)、伯爵を名乗る詐欺師(ハ・ジョンウ)、そして令嬢の叔父(チョ・ジヌン)の騙し合いが三部構成で描かれる。台詞の多くが日本語で話される点でも話題になった。2016年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門で上映され、美術監督リュ・ソンヒがヴァルカン賞(技術賞)を受賞。のちに英国アカデミー賞の非英語作品賞も受賞し、世界的なヒット作となった。主演のキム・テリは、この作品でのデビューをきっかけにスターへの道を歩んでいる。
『別れる決心』(2022年)[編集]
『別れる決心』は、山で起きた転落死事件を担当する刑事ヘジュン(パク・ヘイル)が、被害者の妻ソレ(タン・ウェイ)に惹かれていく、サスペンスとメロドラマが溶け合った作品。露骨な暴力や過激な描写を抑えた「大人の恋愛映画」として、これまでの作品とは違う顔を見せた。2022年のカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞。同じ年のカンヌではソン・ガンホが是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』で男優賞を受けており、韓国映画にとって記念すべき年になった。編集のキム・サンボムも、この作品でスペインのバリャドリッド国際映画祭の編集賞を受けている。
最新作『しあわせな選択』[編集]
16年越しの企画[編集]
2025年の『しあわせな選択』(原題:어쩔수가없다、英題:No Other Choice)は、アメリカの作家ドナルド・E・ウェストレイクの小説『斧』の映画化。パク・チャヌクは2009年ごろからこの小説の映画化を構想し、当初は英語作品として企画していたが、ほかの作品が優先されるうちに時間が経ち、最終的に韓国語映画として2024年に撮影された。同じ小説は2005年にコスタ=ガヴラス監督がフランスで映画化しており、そのコスタ=ガヴラスもパク版を後押しした。本作のエンドクレジットは彼に捧げられている。
あらすじとキャスト[編集]
製紙業界一筋で働いてきたユ・マンスが突然リストラされ、再就職のために「ライバルを一人ずつ消していく」という最悪の選択に走るブラックコメディ・スリラー。主人公マンスをイ・ビョンホン、妻ミリをソン・イェジンが演じ、パク・ヒスン、イ・ソンミン、ヨム・ヘラン、チャ・スンウォンが共演した。イ・ビョンホンにとっては、長編では『JSA』以来となるパク・チャヌク作品での主演である。脚本はパク・チャヌクのほか、イ・ギョンミ、ドン・マッケラー、イ・ジャヘが共同で手がけた。
公開と評価[編集]
2025年8月29日、第82回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門でワールドプレミア上映され、約9分間のスタンディングオベーションを受けたと報じられた。韓国では同年9月24日に公開され、パク・チャヌク作品として過去最高のオープニング成績を記録。韓国国内で約290万人を動員し、世界興行収入は約4,000万ドルに達した。ゴールデングローブ賞では非英語作品賞と、イ・ビョンホンの主演男優賞にノミネート。韓国代表としてアカデミー賞国際長編映画賞に出品され、ショートリストまで残ったが、最終ノミネートは逃した。日本では2026年3月6日にキノフィルムズの配給で公開された(上映時間139分)。
笑いで社会を刺す[編集]
インタビューでパク・チャヌクは、原作の静かなユーモアを、状況喜劇やスクリューボール・コメディの要素を使った能動的な笑いに変えたと語っている。笑いは観客を慰めるためではなく、社会批判をより鋭くするためのものであり、1997年の原作から舞台を現代の韓国に移すことで、グローバル資本主義の厳しさや、「家族を養わなければならない」という韓国的な男性像へのプレッシャーを描き込んだという。主人公を「犯罪の素人」として描き、その不器用さとためらいが笑いを生む構造になっている。
ドラマ作品[編集]
『リトル・ドラマー・ガール』(2018年)[編集]
ジョン・ル・カレのスパイ小説を原作とする英語のミニシリーズで、イギリスのBBC Oneなどで放送された。フローレンス・ピュー、アレクサンダー・スカルスガルド、マイケル・シャノンが出演。パク・チャヌクにとって初のテレビドラマ演出作で、英語圏のテレビ界に本格進出するきっかけになった。
『シンパサイザー』(2024年)[編集]
ベトナム系アメリカ人作家ヴィエト・タン・ウェンのピューリッツァー賞受賞小説を、A24の企画でドラマ化した全6話のミニシリーズ。2024年4月14日にアメリカのHBOで放送が始まった。ベトナム戦争末期、南ベトナム軍の大尉でありながら北側のスパイでもある「大尉」(ホア・シュアンデ)の二重生活を描く。パク・チャヌクはドン・マッケラーとともに共同ショーランナーを務め、第1話から第3話を自ら監督した。最大の話題は、ロバート・ダウニー・Jr.がCIA工作員、大学教授、下院議員、映画監督など複数の役を一人で演じたこと。ダウニー・Jr.はこの演技でエミー賞にノミネートされた。サンドラ・オーも出演している。
作風とチーム[編集]
映像と様式美[編集]
パク・チャヌク作品の特徴は、計算され尽くした撮影とフレーミング、ブラックユーモア、そして容赦ない暴力描写にある。犯罪・ミステリー・スリラーを軸にしながら、メロドラマ、コメディ、ホラーなど別のジャンルを大胆に混ぜ込むのがお約束。笑えるシーンの直後に凄惨な場面が来るような「トーンの急変」は、韓国映画らしさの代名詞として語られることも多い。本人は影響を受けた作家としてソポクレス、シェイクスピア、カフカ、ドストエフスキー、バルザック、カート・ヴォネガットを挙げ、最も好きな映画にはマーティン・スコセッシの『タクシードライバー』を挙げている。
長年の固定メンバー[編集]
パク・チャヌク組は「同じ仲間と何十年も組む」ことで知られる。撮影監督チョン・ジョンフンは『オールド・ボーイ』から参加し、独特の照明とカメラワークで監督の世界観を支えてきた。編集のキム・サンボムは『JSA』以降ほぼすべての長編を担当し、父キム・ヒスもデビュー作の編集を手がけた親子二代の付き合い。音楽のチョ・ヨンウク、脚本家のチョン・ソギョン(『親切なクムジャさん』から『別れる決心』まで約20年にわたり共作)、美術のリュ・ソンヒ、衣装のチョ・サンギョンらも常連だ。
常連俳優[編集]
俳優ではソン・ガンホが長編6作品に出演しており、最多の常連。ほかにもシン・ハギュン、パク・ヘイル、イ・ビョンホン、チェ・ミンシク、ハ・ジョンウ、イ・ヨンエ、ムン・ソリ、ソン・イェジン、キム・ミニらが、パク・チャヌク作品で強烈な印象を残してきた。新人だったキム・テリを『お嬢さん』で見出したことも、のちに『ミスター・サンシャイン』などで活躍する彼女のキャリアの起点として語られる。
短編と「PARKing CHANce」[編集]
美術家・映像作家である弟パク・チャンギョンと組んだ映像ユニット「PARKing CHANce」名義でも活動している。名前は二人の姓と名を掛け合わせつつ、「チャンスをつかみたい」という願いを込めた英語のダジャレになっている。2011年の短編『パランマンジャン』(英題:Night Fishing)は、全編をiPhone 4で撮影したファンタジー・ホラーで、通信会社KTの出資で制作された。この作品は第61回ベルリン国際映画祭で短編部門の金熊賞を受賞し、「スマホで撮った映画が三大映画祭で受賞」と大きな話題になった。そのほか、パンソリを取り入れた短編や、高級ブランドのエルメネジルド・ゼニアとのコラボ短編なども手がけている。
受賞と評価[編集]
カンヌとの深い縁[編集]
カンヌ国際映画祭との縁は特に深く、2004年の『オールド・ボーイ』でグランプリ、2009年の『渇き』で審査員賞、2022年の『別れる決心』で監督賞を受賞。『お嬢さん』もコンペティション部門に出品されている。2026年2月には第79回カンヌ国際映画祭(5月12日〜23日)の長編コンペティション部門の審査委員長に指名され、韓国人として初めてこの役職を務めた。この年のパルム・ドールはクリスティアン・ムンジウ監督の『Fjord』に贈られている。
国家からの勲章[編集]
韓国政府からは2002年に宝冠文化勲章、2022年に銀冠文化勲章を受章。2026年にはフランスの芸術文化勲章コマンドゥールも受けている。ポン・ジュノの『パラサイト 半地下の家族』と並び、パク・チャヌクの作品群は、2000年代以降の「韓国映画は世界レベル」という評価をつくった柱の一つといえる。
余談[編集]
- 映画監督を志したきっかけはヒッチコックの『めまい』。大学の映画サークルで観たことが人生を変えたという。
- 『お嬢さん』のキム・テリは、非常に高い倍率のオーディションを勝ち抜いて抜擢されたと報じられている。
- 『パランマンジャン』の制作費は1億5,000万ウォンで、iPhone 4で撮影された。スマホ撮影映画のはしりとしてよく引き合いに出される。
- 『しあわせな選択』の主演イ・ビョンホンは、近年では『イカゲーム』のフロントマン役でも世界的に知られる。パク・チャヌクとの再タッグは、韓流ファンの間でも大きな話題になった。
- 妻役のソン・イェジンは『愛の不時着』で日本でも大人気の女優。パク・チャヌク作品への出演は本作が初めてで、イ・ビョンホンとの夫婦役が話題になった。
- 弟のパク・チャンギョンも美術家・映画監督として活躍しており、兄弟ユニットで作品を発表している。

