是枝裕和
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第83回ヴェネツィア国際映画祭(2026年)(出典:Wikimedia Commons「Hirokazu Koreeda Venice Film Festival.jpg」・CC BY-SA 4.0)
本名 是枝裕和
出身地 東京都練馬区
国籍 日本
職業 映画監督、脚本家、テレビディレクター
活動期間 1987年 -


概要[編集]

是枝裕和(これえだ ひろかず)とは、日本の映画監督・脚本家・テレビディレクターである。ドキュメンタリー出身で、家族や「居場所のない人々」を見つめる作風で知られ、『万引き家族』でカンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールを受賞した。2026年には『箱の中の羊』でカンヌ、実写版『ルックバック』でヴェネツィアの両コンペに参加している。

詳細[編集]

キャリアの出発点はテレビドキュメンタリー。制作会社テレビマンユニオンでフジテレビの深夜ドキュメンタリー枠『NONFIX』などを手がけ、福祉や教育、社会の片隅にいる人々を取材してきた。この「現実をじっと観察する」視線が、のちの劇映画にもそのまま持ち込まれている。

作風の核は「誰かを悪者として描かない」こと。育児放棄、取り違え、万引き、赤ちゃんポストといった重い題材を扱いながら、特定の人物を断罪せず、観客に判断を委ねる構造をとる。企画・脚本・監督・編集まで自分で担当するスタイルも特徴で、クレジットに「編集」が並ぶのは是枝作品のお約束になっている。

もう一つの看板が子役演出。子どもには台本を渡さず、現場で口頭で状況を伝えて自分の言葉で喋らせる手法をとり、『誰も知らない』では柳楽優弥がカンヌ史上最年少かつ日本人初の男優賞を獲得した。

2010年代以降は海外との仕事も増え、フランスで『真実』、韓国で『ベイビー・ブローカー』を撮影。日本国内では坂元裕二脚本の『怪物』、Netflixシリーズ『阿修羅のごとく』などで他者の脚本・原作にも積極的に取り組むようになった。2026年は新作2本が三大映画祭のうち2つのコンペに選ばれる、キャリアでも屈指の当たり年になっている。

経歴[編集]

生い立ち[編集]

1962年、東京都練馬区に生まれ、9歳からは清瀬市の旭が丘団地で育つ。映画好きの母に連れられて池袋の映画館に通ったのが映画体験の原点。子ども時代は『ウルトラマン』『ウルトラセブン』に夢中で、作品に込められた差別や戦争のメタファーに影響を受けたと語っている。

1972年のミュンヘン五輪で男子バレーボールが金メダルを取ったのに感動し、中学・高校ではバレーボール部に所属して部長も務めた。東京都立武蔵高校を経て早稲田大学第一文学部文芸学科に進学する。

大学時代[編集]

小説家志望で入学したが、大学近くのミニシアターに年会費1万円で毎日のように通い詰めるうちに映画にのめり込む。フェデリコ・フェリーニ作品に衝撃を受けたのが決定打だった。同時に倉本聰、向田邦子、山田太一、市川森一といったテレビドラマ作家のシナリオ集を買い集め、脚本の勉強も独学で進めた。

テレビマンユニオン時代(1987年〜)[編集]

1987年、テレビマンユニオンに入社。フジテレビ『NONFIX』などでドキュメンタリーを制作し、1991年の『しかし…福祉切り捨ての時代に』でギャラクシー賞優秀作品賞、同年の『もう一つの教育〜伊那小学校春組の記録〜』でATP賞優秀賞を受賞した。

映画監督デビュー(1995年〜)[編集]

1995年、『幻の光』で劇映画デビュー。いきなりヴェネツィア国際映画祭で金のオゼッラ賞を獲得する。1999年の『ワンダフルライフ』はナント三大陸映画祭でグランプリ。2001年には『DISTANCE』を発表した。

2004年の『誰も知らない』は、実際の置き去り事件に着想を得た作品。主演の柳楽優弥が第57回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞し、是枝の名前は一気に世界へ広がった。

家族映画の名手へ(2006年〜)[編集]

時代劇『花よりもなほ』(2006年)、自身の家族をモチーフにした『歩いても歩いても』(2008年)、ペ・ドゥナ主演のファンタジー『空気人形』(2009年)、九州新幹線を題材にした『奇跡』(2011年)と、題材の幅を広げていく。

2011年、若手監督を育てる制作者集団「分福」を設立し、2014年に株式会社化した。2012年にはフジテレビの連続ドラマ『ゴーイング マイ ホーム』で阿部寛主演の連ドラ演出にも挑戦している。

2013年、福山雅治主演の『そして父になる』が第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞。続く『海街diary』(2015年)では綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずの四姉妹を描き、国内でも大ヒットした。2016年の『海よりもまだ深く』、法廷サスペンス『三度目の殺人』(2017年)と続く。

パルム・ドール受賞(2018年)[編集]

2018年、『万引き家族』が第71回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞。日本人監督としては今村昌平の『うなぎ』以来21年ぶりの快挙だった。リリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林らが出演し、国内でも大ヒット作になった。

海外製作と共同作業(2019年〜)[編集]

2019年、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュを迎えたフランス映画『真実』が、日本人監督として初めてヴェネツィア国際映画祭のオープニングを飾る。2022年にはソン・ガンホ主演の韓国映画『ベイビー・ブローカー』を発表した。

2023年の『怪物』は、是枝にとって長編デビュー作『幻の光』以来となる他者の脚本による監督作。脚本の坂元裕二が第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した。配信では、Netflixで『舞妓さんちのまかないさん』(2023年)、向田邦子原作の『阿修羅のごとく』(2025年1月配信、宮沢りえ・尾野真千子・蒼井優・広瀬すず出演)を手がけている。

2025〜2026年の動向[編集]

2026年5月29日公開の『箱の中の羊』は、是枝のオリジナル脚本による「少し先の未来」の家族劇。息子を亡くした夫婦が、息子そっくりのヒューマノイドを迎え入れる物語で、主演は綾瀬はるかと千鳥の大悟という異色の組み合わせ。第79回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で公式上映され、スタンディングオベーションで迎えられた。国内では公開3日間で興行収入約1.9億円を記録している。

同年9月11日には、藤本タツキの漫画を実写化した『ルックバック』が公開。出口夏希と蒔田彩珠のダブル主演で、菅田将暉、宮藤官九郎らが脇を固める。藤本の故郷である秋田県にかほ市で35ミリフィルム撮影され、第83回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門に選出された。是枝のヴェネツィア参加は7年ぶり4度目。最高賞には届かなかったものの、シグニス賞など公式独立賞5つを受賞・表彰され、是枝は「これまでに経験のない事態」とコメントしている。

主な作品[編集]

映画(監督)[編集]

  • 1995年『幻の光』 - 監督
  • 1999年『ワンダフルライフ』 - 監督・脚本・編集
  • 2001年『DISTANCE』 - 監督・脚本・編集
  • 2004年『誰も知らない』 - 監督・脚本・編集・プロデューサー
  • 2006年『花よりもなほ』 - 監督・脚本・編集
  • 2008年『歩いても歩いても』 - 監督・脚本・編集
  • 2009年『空気人形』 - 監督・脚本・編集
  • 2011年『奇跡』 - 監督・脚本・編集
  • 2013年『そして父になる』 - 監督・脚本・編集
  • 2015年『海街diary』 - 監督・脚本・編集
  • 2016年『海よりもまだ深く』 - 監督・脚本・編集
  • 2017年『三度目の殺人』 - 監督・脚本・編集
  • 2018年『万引き家族』 - 監督・脚本・編集
  • 2019年『真実』 - 監督・脚本・編集(日仏合作)
  • 2022年『ベイビー・ブローカー』 - 監督・脚本・編集(韓国映画)
  • 2023年『怪物』 - 監督(脚本:坂元裕二)
  • 2026年『箱の中の羊』 - 監督・原案・脚本・編集
  • 2026年『ルックバック』 - 監督・脚本・編集(原作:藤本タツキ)

テレビ・配信[編集]

  • 1991年『しかし…福祉切り捨ての時代に』(フジテレビ『NONFIX』) - ドキュメンタリー
  • 1991年『もう一つの教育〜伊那小学校春組の記録〜』 - ドキュメンタリー
  • 2012年『ゴーイング マイ ホーム』(フジテレビ) - 連続ドラマ
  • 『有村架純の撮休』(WOWOW) - 有村架純主演のオムニバスドラマ
  • 2023年『舞妓さんちのまかないさん』(Netflix) - 総合演出
  • 2025年『阿修羅のごとく』(Netflix) - 監督・脚本

人物・エピソード[編集]

  • 映画の師として意識するのは小津安二郎より成瀬巳喜男の方だと語っている。「小津の後継者」と海外メディアに書かれがちなのとは対照的。
  • 脚本家の目線も強く、学生時代は倉本聰や向田邦子のシナリオを読み込んだ。後年、その向田作品『阿修羅のごとく』をリメイクすることになる。
  • 子役に台本を渡さない演出は、ドキュメンタリー時代の「目の前で起きることを撮る」感覚の延長線上にある。
  • 分福では若手監督の育成に力を入れており、所属監督のデビュー作をプロデュースすることもある。
  • 大学教員の顔も持ち、早稲田大学基幹理工学部表現工学科の教授、立命館大学産業社会学部の客員教授を務める。
  • 家族のルーツは鹿児島・奄美・台湾にまたがる。台湾生まれの父はシベリア抑留を経験している。
  • 実写版『ルックバック』は、書店で原作漫画を手に取って「映画にしなければ」と感じたことが出発点だという。

受賞歴[編集]

  • 1991年 - ギャラクシー賞優秀作品賞(『しかし…福祉切り捨ての時代に』)
  • 1995年 - ヴェネツィア国際映画祭 金のオゼッラ賞(『幻の光』)
  • 1999年 - ナント三大陸映画祭 グランプリ(『ワンダフルライフ』)
  • 2013年 - カンヌ国際映画祭 審査員賞(『そして父になる』)
  • 2016年 - 第8回伊丹十三賞
  • 2018年 - カンヌ国際映画祭 パルム・ドール(『万引き家族』)
  • 2018年度 - 朝日賞
  • サン・セバスティアン国際映画祭 ドノスティア賞
  • 2019年 - 第24回釜山国際映画祭 アジア映画人賞
  • 2021年度 - 国際交流基金賞
  • 2022年 - 第79回ヴェネツィア国際映画祭 ロベール・ブレッソン賞
  • 2026年 - 第83回ヴェネツィア国際映画祭 公式独立賞5部門で受賞・表彰(『ルックバック』)

炎上とバズ[編集]

  • 2018年、パルム・ドール受賞後に当時の文部科学大臣から祝意を伝えたいとの話があった際、是枝は公式サイト上で「公権力とは潔く距離を保つ」との考えを示して辞退した。これが大きく報道され、賛否を含めて議論を呼んだ。
  • 2026年、『箱の中の羊』でのカンヌ参加時、レッドカーペットで大悟が綾瀬はるかをエスコートした様子が話題に。大悟は「手汗びしょびしょ」とコメントし、綾瀬は「ちょっと面白かった」と振り返った。

余談[編集]

  • デビュー作『幻の光』から31年、2026年の『ルックバック』でヴェネツィアに戻り「もう一度出発点に立ち返った気持ち」と語った。
  • 『ルックバック』のヴェネツィアでの独立賞のうち2つは10代の審査員が選ぶ賞で、是枝は「若い人たちが支持をしてくれた」と喜んだ。
  • 『ルックバック』は秋田県にかほ市で約300人の地元エキストラが参加して撮影された。
  • 『海街diary』の長女役・綾瀬はるかは、11年後の『箱の中の羊』で主演として再タッグを組んだ。
  • 『怪物』でカンヌ脚本賞を得た坂元裕二とは、是枝作品史上でも珍しい「他人の脚本」での組み合わせだった。
  • 『真実』はヴェネツィアのオープニング作品に選ばれた初の日本人監督作品でもある。

外部リンク[編集]

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