| チョン・ドヨン 전도연/全度妍/Jeon Do-yeon | |
|---|---|
![]() 映画『リボルバー』の報道試写会でのチョン・ドヨン(2024年、出典:ウィキメディア・コモンズ、撮影:K-POPIT 케이팝잇、CC BY 3.0) | |
| 本名 | 全度妍(チョン・ドヨン) |
| 誕生日 | 1973年2月11日 |
| 年齢 | 53歳 |
| 出身地 | 大韓民国・ソウル特別市 |
| 国籍 | 大韓民国 |
| 学歴 | ソウル芸術大学 放送演芸科 |
| ジャンル | 映画、テレビドラマ、舞台 |
| 活動期間 | 1990年〜(CMモデル)、1992年〜(女優) |
| 家族 | 夫(実業家、2007年結婚)、娘1人 |
| 身長 / 体重 | 165cm cm / ― kg |
| 事務所 | マネジメントSOOP(매니지먼트 숲) |
| 代表作 | 『接続 ザ・コンタクト』『ユア・マイ・サンシャイン』『シークレット・サンシャイン』『ハウスメイド』『無頼漢 渇いた罪』『グッドワイフ』『イルタ・スキャンダル』『キル・ボクスン』『リボルバー』 |
| 関連活動 | 第67回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門審査員(2014年) |
| あだ名 | カンヌの女王、メロの女王 |
| その他 | 2007年 玉冠文化勲章、2009年 フランス芸術文化勲章シュヴァリエ |
| リンク | マネジメントSOOP公式サイト |
概要[編集]
チョン・ドヨン(전도연、全度妍、Jeon Do-yeon、1973年2月11日 - )とは、韓国・ソウル出身の女優である。イ・チャンドン監督の『シークレット・サンシャイン』(2007年)で韓国の俳優として初めてカンヌ国際映画祭の女優賞を受賞し、「カンヌの女王」と呼ばれる韓国映画界のトップ女優である。
詳細[編集]
CMモデルから「青春ドラマの妹」へ[編集]
1973年、ソウルの西大門区で3人きょうだいの末っ子として生まれた。兄が2人いる末娘で、家族に溺愛されて育ち、親孝行な娘としても知られる。本人いわく子どもの頃は「とても平凡で恥ずかしがり屋」だったが、デビュー後に几帳面な完璧主義者へと変わったという。1990年にジョンソン・エンド・ジョンソンの広告モデルとして芸能界入りし、1992年のKBSドラマ『私たちの天国(우리들의 천국)』で女優デビューした。
その後は『愛の香り』(1994年)、『総合病院』(1994年)、そして最高視聴率62.7%を記録した『若者の陽地』(1995年)など、テレビドラマの助演で経験を積む。当時の演出家からは「タフで野心のある新人」と評されたとされ、明るく爽やかな「隣の家の妹」キャラで人気を集めていった。
映画デビューで一気に主役級へ[編集]
転機は1997年。ハン・ソッキュと共演した映画『接続 ザ・コンタクト(접속)』でスクリーンデビューを果たし、同作はその年の韓国映画興行2位の大ヒットとなった。いきなり大鐘賞と青龍映画賞の新人女優賞をダブル受賞し、映画女優としての道が一気に開ける。
翌年の『約束』(1998年)、イ・ビョンホンと共演した『我が心のオルガン』(1999年)、さらに不倫に溺れる妻を演じた『ハッピーエンド』(1999年)と、まったく違うタイプの役を立て続けにこなし、「カメレオン女優」と呼ばれるようになった。1990年代末から2000年代にかけては「映画の国の興行プリンセス」という異名まで付いていたという。
カンヌの女王へ[編集]
2007年、イ・チャンドン監督の『シークレット・サンシャイン(密陽)』で、息子を誘拐事件で失い、信仰と赦しのはざまで壊れていく母親シネを演じた。この演技で第60回カンヌ国際映画祭の女優賞を受賞し、韓国の俳優として初めてカンヌの演技賞を手にした。相手役の自動車整備工を演じたのはソン・ガンホである。
その後もカンヌとの縁は続き、2010年には『ハウスメイド』でコンペティション部門に再び参加。2014年には韓国の俳優として初めてコンペティション部門の審査員を務め、2015年には『無頼漢 渇いた罪』がある視点部門に招待された。通算4度もカンヌに足を運んだことになり、「カンヌの女王」というあだ名が定着した。
主な出演作品[編集]
映画[編集]
- 『接続 ザ・コンタクト』(1997年) - スヒョン役。映画デビュー作。
- 『約束』(1998年)
- 『ハッピーエンド』(1999年) - チェ・ボラ役。
- 『我が心のオルガン』(1999年) - ホンヨン役。
- 『僕にも妻がいればいいのに』(2000年) - ウォンジュ役(塾講師)。
- 『血も涙もなく』(2002年)
- 『スキャンダル』(2003年) - 貞節を守る未亡人スク夫人役。
- 『人魚姫』(2004年) - ナヨン/ヨンスンの一人二役。
- 『ユア・マイ・サンシャイン』(2005年) - ウナ役。相手役はファン・ジョンミン。
- 『シークレット・サンシャイン』(2007年) - シネ役。カンヌ国際映画祭 女優賞。
- 『素晴らしい一日』(2008年) - ヒス役。
- 『ハウスメイド』(2010年) - ウニ役。
- 『カウントダウン』(2011年) - チャ・ハヨン役。
- 『マルティニークからの祈り』(2013年) - ソン・ジョンヨン役。
- 『無頼漢 渇いた罪』(2015年) - キム・ヘギョン役。
- 『メモリーズ 追憶の剣』(2015年) - 盲目の女剣士ウォルソ役。
- 『男と女』(2016年) - サンミン役。
- 『君の誕生日』(2019年)
- 『藁にもすがる獣たち』(2020年)
- 『非常宣言』(2022年)
- 『キル・ボクスン』(2023年、Netflix) - キル・ボクスン役。
- 『リボルバー』(2024年) - ハ・スヨン役。
- 『もしもの愛(가능한 사랑)』(2026年) - ミオク役。
テレビドラマ・配信ドラマ[編集]
- 『私たちの天国』(1992年、KBS) - デビュー作。
- 『総合病院』(1994年) - 看護師役。
- 『若者の陽地』(1995年) - イム・ジョンヒ役。
- 『星を射る』(2002年) - ソラ役。
- 『プラハの恋人』(2005年、SBS) - 大統領の娘ユン・ジェヒ役。
- 『グッドワイフ』(2016年、tvN) - キム・ヘギョン役。
- 『너를 닮은 사람』(英題『Lost』、2021年、JTBC)
- 『イルタ・スキャンダル』(2023年、tvN) - ナム・ヘンソン役。
- 『The Price of Confession(자백의 대가)』(2025年、Netflix) - アン・ユンス役。
舞台[編集]
- 『リタの教育(리타 길들이기)』(1997年)
- 『桜の園(벚꽃동산)』(2024年〜) - ソン・ドヨン役。
演技スタイルと評価[編集]
「メロの女王」から何でも屋へ[編集]
初期は清純で明るい役が多かったが、2000年代以降は感情の振れ幅が極端に大きい人物を次々と引き受けるようになった。『ユア・マイ・サンシャイン』では過去を抱えたヒロイン、『スキャンダル』では貞節を誓った未亡人、『人魚姫』では母と若き日の母の一人二役と、作品ごとに顔つきから変わってしまうタイプの女優である。恋愛映画での評価が高く「メロの女王」とも呼ばれた。
2005年には、映画『ユア・マイ・サンシャイン』とドラマ『プラハの恋人』を同時期にヒットさせている。韓国の英字紙は、同じ主演女優が映画とテレビで同時に興行的成功を収めるのは珍しく、彼女は2つの役を混同させることなく完璧にやり遂げたと評した。『プラハの恋人』では2005年のSBS演技大賞で大賞(最高賞)も受賞している。
イ・チャンドン流の「演技をしない演技」[編集]
『シークレット・サンシャイン』を撮ったイ・チャンドン監督は、俳優に「演技をしないでほしい、役の中に自分自身を見つけてほしい」と求めることで知られる。チョン・ドヨンもその現場で、細かな指示ではなく感情が自然に湧き上がるのを待つ演出を受けた。その結果生まれた、悲しみが限界を超えて表情が壊れていくような芝居は、今なお韓国映画史に残る名演として語られる。
同作で彼女に片想いする男を演じたソン・ガンホとのコンビも評価が高く、重すぎる物語の中で、ソン・ガンホの朴訥さとチョン・ドヨンの張り詰めた演技が絶妙なコントラストを生んだ。
後輩たちの目標[編集]
「第2のチョン・ドヨン」という言葉は、韓国映画界で若手女優への最上級の褒め言葉として使われることがある。たとえばキム・ゴウンは『コインロッカーの女』でカンヌ批評家週間の関係者から「第2のチョン・ドヨンになるだろう」と評されたという。その後キム・ゴウンは『メモリーズ 追憶の剣』でチョン・ドヨン本人と共演し、2025年のNetflixドラマ『The Price of Confession』でも再びタッグを組んでいる。
2000年代後半〜2010年代の挑戦[編集]
カンヌ後の意外な時期[編集]
カンヌで女優賞を受賞する直前の2007年3月には、9歳年上の実業家と結婚している。2008年にはハ・ジョンウとの共演作『素晴らしい一日』に出演し、2009年1月に娘を出産して一時活動を休止した。
復帰後に選んだのは、イム・サンス監督による1960年の名作のリメイク『ハウスメイド』(2010年)。上流家庭に雇われたメイドが家族の欲望に呑み込まれていくという、欲望と階級を描いたサスペンスで、カンヌのコンペティション部門に出品された。
実話もの、時代劇、そしてテレビ復帰[編集]
2013年の『マルティニークからの祈り』は、麻薬運び屋に仕立て上げられ、遠く離れた大西洋の島の刑務所に収監された韓国人主婦の実話がベース。言葉も通じない異国で家族のもとへ帰ろうとする母親を演じ、年間映画賞などで女優賞を受けた。
2015年は『無頼漢 渇いた罪』で殺人犯の恋人というハードボイルドなヒロインを演じ、百想芸術大賞の映画部門女性最優秀演技賞などを受賞。同年にはイ・ビョンホン、キム・ゴウンと共演した武侠時代劇『メモリーズ 追憶の剣』で盲目の女剣士にも挑んだ。翌2016年にはコン・ユと北欧フィンランドを舞台にした大人のメロドラマ『男と女』に主演している。
そして同じ2016年、アメリカドラマのリメイク『グッドワイフ』で『プラハの恋人』以来約11年ぶりにテレビドラマへ本格復帰。夫のスキャンダルをきっかけに長いブランクを経て弁護士へ復職する女性を演じ、映画女優のテレビ復帰作として大きな話題になった。
2020年代の快進撃[編集]
『イルタ・スキャンダル』でラブコメ復帰[編集]
2023年の『イルタ・スキャンダル』では、元ハンドボール国家代表で惣菜店を営むナム・ヘンソンを演じ、およそ17年ぶりにロマンティック・コメディへ戻ってきた。相手役は10歳年下のチョン・ギョンホ。本人はインタビューで、撮影初期は彼の親切さが「やりすぎだ」と思って避けていたものの、次第にその真心を信じたくなったと明かしている。
明るく笑う自分の姿について「実は私も見たかった姿だった」と語り、家族みんなで観られる作品に出られたことにも意味があったと話している。作品はNetflixでも上位に入り、映画界の大女優がテレビのラブコメに参戦したこと自体が大きな話題になった。
『キル・ボクスン』で殺し屋ママに[編集]
同じ2023年には、ピョン・ソンヒョン監督のNetflix映画『キル・ボクスン』で、腕利きの殺し屋でありながら思春期の娘を育てるシングルマザーを演じた。2023年2月のベルリン国際映画祭でお披露目されたのち、3月31日にNetflixで全世界配信。公開4日で非英語映画部門のグローバル1位となり、韓国・香港・インドネシアなど6か国で1位、82か国でトップ10入りしたと報じられた。
韓国国内ではアクションが『キル・ビル』『ジョン・ウィック』『キングスマン』を思わせるという指摘もあったが、チョン・ドヨンの演技そのものへの評価は高かった。共演はソル・ギョング、キム・シア、イソム、ク・ギョファンら。2025年にはスピンオフ作品『Mantis(사마귀)』も配信され、彼女はカメオで顔を出している。
『リボルバー』で百想女優賞[編集]
2024年のオ・スンウク監督作『リボルバー』では、多額の報酬を約束されて罪を被った元刑事ハ・スヨンを演じた。出所後に約束を反故にされた彼女が、報酬を取り立てるために動き出すというクライム・アクションで、チ・チャンウク、イム・ジヨンが共演している。
興行は控えめだったものの評価は高く、2025年5月の第61回百想芸術大賞で映画部門の女性最優秀演技賞を受賞。授賞式では「オ監督が受賞した時点でもう十分だと思っていたのに、どうしよう」と驚きを見せ、完成まで4年かかった作品だったことを振り返った。
Netflixドラマとイ・チャンドン作品への帰還[編集]
2025年12月にはNetflixシリーズ『The Price of Confession(자백의 대가)』が配信された。夫殺しの容疑をかけられた高校の美術教師アン・ユンスを演じ、謎の女「魔女」役のキム・ゴウンと危険な取引に巻き込まれていく全12話のサスペンスである。共演にはチン・ソンギュらが名を連ねる。
さらに2026年には、イ・チャンドン監督の8年ぶりの新作『もしもの愛(가능한 사랑)』に出演。会社をクビになった夫ホソク(ソル・ギョング)の妻ミオク役で、ドキュメンタリー監督役のチョ・ヨジョンらと共演した。チョン・ドヨンにとっては『シークレット・サンシャイン』以来19年ぶりのイ・チャンドン作品で、ソル・ギョングとは4度目の共演となる。
舞台『桜の園』で世界へ[編集]
2024年、オーストラリア出身の演出家サイモン・ストーンがチェーホフの『桜の園』を現代韓国に置き換えた舞台で、主人公ソン・ドヨンを演じた。1997年の舞台以来、実に27年ぶりの演劇出演である。19世紀ロシアの没落貴族を、崩壊しつつある韓国の財閥一家に読み替えた大胆な翻案で、ソウルのLGアートセンターで初演された。
本人はインタビューで、自分の苦しみを子どもたちと分け合う主人公の姿が「母親として理解しにくかった」と語りつつ、演出家から「澄んだ魂を表現してほしい」と導かれて役をつかんでいったと振り返っている。初日の舞台では「死にたかったし、逃げ出したかった」ほど不安だったが、やがてその不安を楽しめるようになり、不安定さを原動力に「失敗を通して成長する」と考えるようになったという。
公演はその後、香港、オーストラリア・アデレード、そして2026年9月にはニューヨークのパーク・アベニュー・アーモリーへとツアー。ウォール・ストリート・ジャーナルは彼女の「抑制された静かな解釈」を称賛した一方、ニューヨーク・タイムズは財閥一家への置き換えに疑問を呈するなど、現地の批評は賛否が分かれた。共演はパク・ヘスで、彼とは『The Price of Confession』でも顔を合わせている。
主な受賞歴[編集]
- カンヌ国際映画祭 女優賞(2007年、『シークレット・サンシャイン』)
- アジア太平洋映画賞 女優賞(2007年、『シークレット・サンシャイン』)
- 青龍映画賞 新人女優賞(1997年、『接続 ザ・コンタクト』)、主演女優賞(2007年、『シークレット・サンシャイン』)
- 大鐘賞 新人女優賞(1997年)、主演女優賞(1999年『我が心のオルガン』、2005年『ユア・マイ・サンシャイン』、2007年『シークレット・サンシャイン』)
- 百想芸術大賞 映画部門 女性最優秀演技賞(1998年『約束』、2000年『僕にも妻がいればいいのに』、2015年『無頼漢 渇いた罪』、2025年『リボルバー』ほか)
- SBS演技大賞 大賞(2005年、『プラハの恋人』)
- ウーディネ・ファーイースト映画祭 ゴールデン・マルベリー生涯功労賞(2019年)
- 玉冠文化勲章(2007年)、フランス芸術文化勲章シュヴァリエ(2009年)
炎上とバズ[編集]
大きなスキャンダルとは無縁のキャリアだが、話題になった場面はある。2023年の『ユ・クイズ・オン・ザ・ブロック』では、ラブコメ出演について「誰も私に後ろ指をさすことはできない」と考えたからこそ選べたと語り、司会のユ・ジェソクから「堂々としている」と言われると「堂々としない理由がない」と即答。この潔さがネットで大きくバズった。
また、ユ・ジェソクが学生時代のトッポッキにまつわる思い出話を持ち出すと「覚えていない」とバッサリ切り捨て、同期ならではの容赦ないやり取りが笑いを呼んだ。
一方、2015年の『メモリーズ 追憶の剣』は公開前から周辺の騒動で公開が遅れたうえ、雪の代わりに綿を飛ばして撮影したシーンなどのCG処理が粗いと酷評され、チョン・ドヨンとイ・ビョンホンが手を取り合う美しいはずの場面が笑いを誘ってしまうという不運に見舞われた。
余談[編集]
- 大学の同期にはユ・ジェソクのほか、タレントのチェ・スンギョンらがいる。学生時代はひどい人見知りで、図書館で友人が他の学生と一緒にいるのを見て「一人で勉強する」と帰ってしまったこともあるという。
- ファンの間では「젼뎐(ジョンデョン)」という愛称で呼ばれている。
- 1999年の『我が心のオルガン』ではイ・ビョンホン相手に、先生に恋する田舎の少女を演じた。その2人が2015年の『メモリーズ 追憶の剣』、2022年の『非常宣言』でも再び共演している。
- 『シークレット・サンシャイン』は、是枝裕和監督が21世紀最高の映画の一本に挙げたことでも知られる。
- 出演映画『スキャンダル』(2003年)は、のちにドラマ『スキャンダル』としてリメイクされている。
