チャン・ジェヒョン

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チャン・ジェヒョン
장재현 / Jang Jae-hyun
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長編デビュー作『プリースト 悪魔を葬る者』でチェ補祭を演じたカン・ドンウォン(2016年2月撮影/撮影:Kimetc、Wikimedia Commons、CC BY 4.0)※監督本人の自由ライセンス画像は見つかっていない
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『プリースト 悪魔を葬る者』で悪魔に憑かれた少女ヨンシンを演じたパク・ソダム(2015年撮影/撮影:kimmimi.net、Wikimedia Commons、CC BY 4.0)
誕生日 1981年
出身地 韓国・慶尚北道栄州市とされる
国籍 韓国
宗教 キリスト教(プロテスタント)
学歴 成均館大学校 映像学科、韓国芸術総合学校 映像院
職業 映画監督、脚本家
活動期間 2009年 -
代表的な実績 『プリースト 悪魔を葬る者』『サバハ』『破墓/パミョ』
受賞 百想芸術大賞 映画部門監督賞、青龍映画賞 監督賞(ともに『破墓/パミョ』)、ディレクターズ・カット・アワード新人監督賞(『プリースト』)ほか
別名 「K-オカルトの職人」
その他 『破墓/パミョ』で韓国オカルト・ホラー映画として初の1000万人動員を達成


概要[編集]

チャン・ジェヒョン(장재현、Jang Jae-hyun、1981年 - )とは、韓国の映画監督・脚本家である。『プリースト 悪魔を葬る者』『サバハ』『破墓/パミョ』と、長編3本すべてをオカルトで撮り続け、「K-オカルトの職人」と呼ばれる韓国映画界きってのジャンル監督である。

詳細[編集]

1981年生まれ、遅咲きの映画青年[編集]

1981年生まれ。慶尚北道栄州市の出身とされる。韓国のファンサイト等によれば、高校卒業後にソウルへ出て、たまたま映画の撮影現場を目にしたことが映画の道を志すきっかけになったという。兵役中に大学受験の準備を進め、除隊後に成均館大学校の映像学科へ入学。その後、韓国芸術総合学校の映像院(大学院課程)でも学んだ。同世代の監督と比べるとスタートは決して早くないが、ここから短編で着実に実績を積み上げていくことになる。

短編時代と「12番目の補助司祭」[編集]

学生時代から短編を撮り始め、2009年に『インドから来たマリ』、2010年に『バス』を発表。2012年にはイ・ビョンホン主演の時代劇『王になった男』(原題:光海、王になった男)で助監督も経験した。転機は2014年の短編『12番目の補助司祭』。悪魔祓いを題材にしたこの作品が、第13回ミジャンセン短編映画祭「絶対悪夢」部門の最優秀作品賞、第15回全州国際映画祭の韓国短編コンペティション監督賞をダブル受賞し、一気に業界の注目株となった。この短編こそが、翌年の長編デビュー作の原型である。

3本連続オカルトという異色のキャリア[編集]

長編はここまで3本。2015年の『プリースト 悪魔を葬る者』、2019年の『サバハ』、2024年の『破墓/パミョ』で、すべて本人の監督・オリジナル脚本、しかもすべてオカルトだ。カトリックの悪魔祓い、仏教系の新興宗教、韓国の巫俗(シャーマニズム)と風水――と、扱う宗教や信仰を作品ごとに替えながら、韓国ではほとんど開拓されていなかった「東洋的オカルト」というジャンルをメインストリームに押し上げた。最新作の『破墓/パミョ』は韓国で約1191万人を動員し、オカルト・ホラー系の作品として初めて「1000万映画」の仲間入りを果たしている。

長編作品[編集]

『プリースト 悪魔を葬る者』(2015年)[編集]

原題は『黒い司祭たち(검은 사제들)』。2015年11月5日に韓国で公開された。ひき逃げ事故のあと原因不明の昏睡状態に陥った女子高生ヨンシン(パク・ソダム)を救うため、教会内で浮いた存在のキム神父(キム・ユンソク)と、補佐役の神学生チェ補祭(カン・ドンウォン)が命がけの悪魔祓いに挑む物語である。製作はZip Cinema、配給はCJ ENM系のCJエンターテインメント。

韓国で悪魔祓いを正面から扱った初の商業映画とも評され、カトリックの儀式だけでなく韓国の巫俗儀礼「クッ」の要素も盛り込んだ点が新鮮だった。最終的に約544万人を動員する大ヒットとなり、映画館の正面と左右の壁に映像を投影する「ScreenX」方式で撮影された初の長編映画という技術的な話題もあった。監督は、ファストフード店の窓越しに誰かを不安げに待つ神父の姿を見て妙な感覚を覚えたのが本作の始まりだったと語っている。

日本では2016年10月22日から、シネマート新宿・シネマート心斎橋の「韓国映画セレクション 2016 AUTUMN」で上映された(上映時間108分)。

『サバハ』(2019年)[編集]

前作から約4年ぶりとなる長編第2作で、2019年2月20日に韓国で公開。新興宗教の問題を追う牧師(イ・ジョンジェ)が、怪しげな仏教系の教団「東方教」を調べるうちに、不吉な双子の姉妹をめぐる出来事や、謎めいた事件とつながっていくミステリー・スリラーである。共演にパク・ジョンミン、イ・ジェイン、チン・ソンギュ、チョン・ジニョン、イ・デヴィッドら。

タイトルの「サバハ」について、監督は制作発表会で「仏教の経典に由来する言葉で、『アーメン』のような役割を果たす」と説明。世界観は「仏教観が70%、キリスト教観が30%混ざっている」とも語った。また、物語の出発点については「パク牧師が神を探しながら悪に出会った、というワンラインから始まった」と明かしている。撮影は2017年11月から2018年4月にかけて行われ、シーンの約9割を江原道などのロケで撮ったとされる。厳冬期のロケは過酷だったという。

韓国では初登場1位スタートを切り、最終的に約239万人を動員。双子の妹クムファを演じたイ・ジェインは第55回百想芸術大賞で新人演技賞を受賞した。配給はCJエンターテインメントで、Netflixが配信権を獲得しており、日本ではNetflixで視聴できる作品として知られる。

『破墓/パミョ』(2024年)[編集]

長編第3作。代々の長男が原因不明の病に苦しむ富豪一家の依頼で、巫堂ファリム(キム・ゴウン)、風水師サンドク(チェ・ミンシク)、葬儀師ヨングン(ユ・ヘジン)、弟子ボンギル(イ・ドヒョン)の4人が先祖の墓を掘り返す――というオカルト・スリラーで、詳細は個別記事破墓/パミョを参照。

2024年2月16日に第74回ベルリン国際映画祭のフォーラム部門で世界初上映され、同年2月22日に韓国で公開。公開32日目に1000万人を突破し、2024年の韓国映画No.1ヒットとなった。この大ヒットで、それまで監督のキャリア最高だった『プリースト』の544万人を一気に塗り替え、ナ・ホンジンの『哭声/コクソン』(約687万人)も超えて韓国オカルト映画の歴代最高記録を打ち立てた。日本ではKADOKAWA配給で2024年10月18日に公開されている。

作風と特徴[編集]

CGより「本物」[編集]

チャン・ジェヒョン作品の大きな特徴が、CGを最小限に抑え、セットや小道具、ロケ撮影の「本物らしさ」にこだわる姿勢だ。『破墓/パミョ』のメイキングでも「すべての小道具やセットが主役になるように、本物らしさにこだわった」と語っており、秋のもの寂しい空気をスクリーンに映すために韓国全土をロケハンしたことも伝えられている。暗く湿ったトーンの画づくりは、どの作品にも共通する「チャン・ジェヒョン印」になっている。

徹底した取材[編集]

題材への取材の深さもよく語られる。『破墓/パミョ』では韓国の葬儀協会を訪ね、葬儀師や風水師を紹介してもらって取材を重ねたという。本人は「素材に近づくときは、表面ではなく核心を見るようにしている」と話しており、実際に第45回青龍映画賞で監督賞を受けた際には、巫堂や葬儀社、風水師など取材に協力してくれた人々に感謝を述べている。

「俗っぽいけどプロ」な主人公たち[編集]

主人公の造形にも一貫したパターンがある。お金や世間体を気にする俗っぽさを見せながら、いざとなれば報酬とは関係なく職業的な責任感で動く専門家――というキャラクターだ。『プリースト』の破天荒なキム神父、『サバハ』で新興宗教を暴く牧師、『破墓』の金に細かいが土地を守ることに命を懸ける風水師サンドクは、まさにこの系譜に当たる。

新人の登竜門になる「憑依役」[編集]

悪霊や「ヤバいもの」に関わる難役に若手を抜擢し、その俳優の出世作にしてしまうのも特徴。『プリースト』のパク・ソダムは第52回百想芸術大賞で新人演技賞、『サバハ』のイ・ジェインは第55回で新人演技賞、『破墓』のイ・ドヒョンは第60回で新人演技賞と、3作連続で百想の新人賞受賞者を生み出している。パク・ソダムはその後、ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』で世界的にブレイクした。

信仰と宗教観[編集]

自身はクリスチャンの家庭に生まれた「モテシナン(母胎信仰=生まれながらの信者)」で、教会にも通うプロテスタントの信者として知られる。インタビューでは、すべての宗教を尊重していると語る一方で、「時には神を恨み、憎むこともある」とも率直に告白している。

韓国メディアからは「宗教オタク」と呼ばれることもあるほどで、本人も「宗教は人間的で、ジャンル的な要素が豊富なので昔から好きだ」と話している。『サバハ』については「世の中が不合理で暗いとき、『本当に神はいるのか』という疑問が生まれた」と制作動機を明かし、マタイによる福音書のキリスト降誕とヘロデ王の物語がずっと心にあったこと、「祝福の裏にある悲劇」を描きたかったことを語っている。作中に登場する鹿についても「仏教では不老長生を意味するが、同時に食物連鎖の底辺にいる存在」と解説するなど、宗教的モチーフの扱いは非常に緻密だ。

『破墓/パミョ』の舞台裏[編集]

子どもの頃に見た「改葬」[編集]

企画の原点は、幼い頃に実際の改葬(墓を掘り返して移す儀式)を目撃した強烈な記憶だったという。取材を進めるうちに、「破墓とは過去を掘り起こし、間違ったものを取り出して消すこと」という核心のテーマにたどり着いたと話している。

コロナ禍で方向転換[編集]

当初は陰鬱なホラー映画として構想していたが、コロナ禍を経て方針を変えた。監督は「観客が本当に劇場に来なくなったと感じ、主人公を専門家たちに変えた」と説明しており、暗いだけではなく、観客がワクワクできる「体験型」の娯楽作へと作り直したことが、結果的に1000万人動員につながった。

小山力也の起用[編集]

日本公開時に話題をさらったのが、「ヤバいもの」の声に日本の声優・小山力也を起用した理由だ。監督は「日本でナンバーワンの声優さんが必要だった」と語り、自身が『バキ』や『名探偵コナン』などのアニメが好きで、スタッフに「すばらしい声優さんを探してほしい」と頼んだところ、10人中8人が小山の名前を挙げたという。仮編集版を見た投資家からは「オーラが全然足りない」と言われていたが、小山の声が入るとすぐにOKが出たとのこと。録音後のエンジニアによる調整もほぼせず、演じた声をそのまま採用したと明かしている。

続編は「作らない」[編集]

大ヒットを受けて続編を期待する声も多かったが、監督は「興行のために無理に続編を作るのは自分の演出観ではない」と明言。「繰り返すのではなく新しいものに挑戦したい」「オカルトという狭い枠の中で進歩していきたい」と語り、キャラクターは魅力的なので誰かが作ってくれたらありがたい、とも付け加えている。

受賞歴[編集]

  • 第13回ミジャンセン短編映画祭(2014年):「絶対悪夢」部門 最優秀作品賞(『12番目の補助司祭』)
  • 第15回全州国際映画祭(2014年):韓国短編コンペティション 監督賞(『12番目の補助司祭』)
  • ディレクターズ・カット・アワード(2016年):新人監督賞(『プリースト 悪魔を葬る者』)
  • 第37回青龍映画賞(2016年):新人監督賞ノミネート(『プリースト 悪魔を葬る者』)
  • 第60回百想芸術大賞(2024年):映画部門 監督賞(『破墓/パミョ』)。作品賞・脚本賞にもノミネート。
  • 第45回青龍映画賞(2024年):監督賞(『破墓/パミョ』)
  • シネ21映画賞(2024年):今年の監督(『破墓/パミョ』)
  • 第23回ディレクターズ・カット・アワード(2025年):監督賞・脚本賞(『破墓/パミョ』)

青龍映画賞の授賞式では、「キム・ゴウンさん、あなたが韓国の俳優で本当にうれしい」と主演女優をたたえ、さらに「チェ・ミンシク先輩と今日の栄光を分かち合いたかった」と涙ぐむ場面も見られた。

フィルモグラフィー[編集]

長編(監督・脚本)[編集]

  • 2015年『プリースト 悪魔を葬る者』(검은 사제들)
  • 2019年『サバハ』(사바하)
  • 2024年『破墓/パミョ』(파묘)

短編(監督・脚本)[編集]

  • 2009年『インドから来たマリ』(인도에서 온 말리)
  • 2010年『バス』(버스)
  • 2014年『12番目の補助司祭』(12번째 보조사제)

その他[編集]

  • 2012年『王になった男』助監督(端役で出演も)
  • 2017年『時間回廊の殺人』(시간위의 집)脚本(監督:イム・デウン、主演:キム・ユンジン。日本公開は2018年3月17日)
  • 2025年『焼酎戦争』(소주전쟁、英題:Big Deal)特別出演

次回作『ヴァンピール』[編集]

2026年5月、韓国メディアは監督の次回作として、吸血鬼を題材にした『ヴァンピール(뱀피르)』の概要を報じた。報道によれば、『プリースト』よりも拡張された世界観を持ち、吸血鬼ハンターと神父、そして彼らと絡み合う人物たちが主人公。ロシア正教会が背景設定に使われ、主要な韓国人キャラクター約5人に加えてロシア人キャストの出演も予定されているという。神父役にイ・ソンミン、重要な役にユン・ギョンホの出演が伝えられ、シナリオは完成済みで、2026年11月のクランクインを目指しているとされる。オカルト一筋の監督が、ついに西洋モンスターの代表格・吸血鬼に挑むということで、ファンの期待は大きい。

炎上とバズ[編集]

『破墓』の「抗日コード」大喜利[編集]

『破墓/パミョ』の公開直後、登場人物の名前が独立運動家と同じだったり、車のナンバーが「0301」「0815」だったりする「抗日コード」がSNSで次々と発見され、コード探しのためのリピート鑑賞が流行した。監督は登場人物名については「ノーコメント」としつつ、観客が早く気づいたことに驚いたと語っている。一方で一部の保守系論客から「反日映画」と批判されるなど、作品が政治論争に巻き込まれる一幕もあった(詳細は破墓/パミョを参照)。

「パクリでは?」という辛口評価[編集]

興行面で大成功を収める一方、韓国のネットでは「完成度は高いが独創性には欠ける」という辛口の評価も一定数ある。『プリースト』には『エクソシスト』、『サバハ』には『ダ・ヴィンチ・コード』の影響が見えるといった指摘で、「ジャンルに養分を与える力はあるが、真の独創性はまだ」という声もある。もっとも、これは裏を返せば、海外ジャンル映画の型を韓国の宗教・土着信仰に見事に移植した手腕の証ともいえる。

余談[編集]

  • 大のバスケットボール好きで、韓国芸術総合学校のバスケットボールチームでガードを務めていたと報じられている。韓国のファンの間では、NBAのクリス・ポールにちなんだあだ名で呼ばれることもあるとされる。
  • 大学在学中に、ナミビアのNGO団体で1年間教師として働いた経験があるとされる。
  • 『破墓/パミョ』でユ・ヘジンと組んだ縁で、ユ・ヘジン主演の『焼酎戦争』(2025年)の撮影現場を応援に訪れ、そのまま特別出演したとされる。
  • 『破墓/パミョ』の日本プロモーションでキム・ゴウンは、監督について「真面目でちょっと怖い方なのかなと予想していたら、とてもキュートな方でした」と語り、一方で「撮りたい画が撮れるまでこだわる」ギャップのある人物だと評した。キム・ゴウンは出演の最大の決め手も「チャン・ジェヒョン監督でした」と明かしている。
  • 『破墓/パミョ』の小山力也の録音日について、監督は「映画づくりは非常に疲れる仕事だが、あの日は本当にハッピーな気持ちだった」と振り返り、録音後は小山やスタッフと焼肉屋に行ったという。
  • 『破墓/パミョ』の日本公式X(@pamyomovie)のプロフィールでは「監督・脚本:#チャン・ジェヒョン」と紹介されており、Blu-ray&DVDの発売やテレビ放送の情報が発信されている。
  • 短編『12番目の補助司祭』は、ミジャンセン短編映画祭の受賞作をまとめたNetflixの企画で、韓国で配信されたと報じられている。

外部リンク[編集]

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