ソル・ギョング
설경구 / 薛景求 / Sol Kyung-gu(Sul Kyung-gu)
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2019年ベルリン国際映画祭でのソル・ギョング(撮影:Harald Krichel/Wikimedia Commons/CC BY-SA 4.0)
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2026年のソル・ギョング(出典:Wikimedia Commons、作者:Republic of Korea、CC BY-SA 4.0)
本名 薛景求(설경구)
誕生日 1967年5月1日
年齢 59歳
出身地 大韓民国 忠清南道舒川郡
国籍 大韓民国
学歴 漢陽大学校 演劇映画学科 卒業
ジャンル 映画・ドラマ・舞台
活動期間 1993年 -
家族 妻:ソン・ユナ(女優、2009年結婚)
身長 / 体重 178cm cm / ― kg
血液型 O型
事務所 Actors99(액터스99)
代表作 『ペパーミント・キャンディー』『オアシス』『シルミド』『公共の敵』『名もなき野良犬の輪舞』『キングメーカー 大統領を作った男』
あだ名 지천명 아이돌(知天命アイドル)


概要[編集]

ソル・ギョング(설경구、1967年5月1日 - )とは、韓国の俳優である。イ・チャンドン監督の『ペパーミント・キャンディー』『オアシス』で主演し、韓国映画史上初の観客動員1000万人突破作『シルミド』の主演も務めた、2000年代韓国映画ルネサンスを代表する演技派である。

詳細[編集]

大学演劇から始まった「遅咲き」[編集]

忠清南道舒川郡生まれ。父親の転勤でソウル・麻浦区の桃花洞へ移り、麻浦高校を経て1986年に漢陽大学校演劇映画学科へ入学した。もともと俳優志望一直線というタイプではなかったが、学内の仲間に勧められて演技の道へ。1993年に劇団「漢陽レパートリー」の舞台『심바새매』でデビューし、その後は大学路(テハンノ)の小劇場で下積みを重ねた。1994年から1996年にかけて上演されたロック・ミュージカル『地下鉄1号線』では、80役のうち78役をこなすという伝説的な「何でも屋」ぶりを見せている。

スクリプターが救った出世作[編集]

映画デビューは1996年の『花びら』(チャン・ソヌ監督)の端役。転機になったのは1998年の『処女たちの晩餐』(イム・サンス監督)で、本人が後にテレビ番組で語ったところによると、編集段階でスクリプターが「この俳優の分量は切らないで」と残してくれたおかげで出番が生き残り、その映像を観たイ・チャンドンが次回作『ペパーミント・キャンディー』の主演に抜擢したという。ソル・ギョングは番組内でそのスクリプターに改めて感謝を伝えている。イ・チャンドンも「他の俳優と違って、彼がためらうところがむしろ気に入った。会うたびに顔が違って見えた」と起用理由を語っている。

2000年代の頂点、そして長い停滞と再評価[編集]

『ペパーミント・キャンディー』(1999年釜山国際映画祭開幕作、韓国公開2000年)で新人賞・主演男優賞を総なめにし、2002年には『公共の敵』『オアシス』などで再び賞レースを席巻。2003年の『シルミド』は韓国映画として初めて観客1000万人を突破し、2009年の『TSUNAMI-ツナミ-』(原題:해운대)でも再び1000万人を達成した。いわゆる「忠武路(チュンムロ)」の看板俳優としてソン・ガンホ、チェ・ミンシクと並び称されたが、その後は作品選びの迷走期もあった。そんな中、2017年の『名もなき野良犬の輪舞』で若いファン層が爆発的に増え、50代にして「知天命アイドル」と呼ばれる第二の全盛期を迎えている。

主な出演作[編集]

映画[編集]

  • 1996年『花びら』 - 映画デビュー作(端役)
  • 1998年『処女たちの晩餐』
  • 1999年『ユリョン』
  • 2000年『ペパーミント・キャンディー』 - キム・ヨンホ役
  • 2000年『燃ゆる月』
  • 2002年『公共の敵』 - カン・チョルジュン刑事役
  • 2002年『ジェイル・ブレーカー』
  • 2002年『オアシス』 - ホン・ジョンドゥ役
  • 2003年『シルミド/SILMIDO』 - カン・インチャン役
  • 2004年『力道山』 - 力道山役
  • 2009年『TSUNAMI-ツナミ-』
  • 2012年『ザ・タワー 超高層ビル大火災』
  • 2013年『監視者たち』 - ファン班長役
  • 2013年『ザ・スパイ シークレット・ライズ』
  • 2013年『ソウォン/願い』
  • 2014年『22年目の記憶』
  • 2015年『西部戦線1953』
  • 2017年『名もなき野良犬の輪舞』 - ハン・ジェホ役
  • 2017年『殺人者の記憶法』 - キム・ビョンス役
  • 2017年『1987、ある闘いの真実』
  • 2019年『悪の偶像』
  • 2019年『君の誕生日』
  • 2021年『茲山魚譜-チャサンオボ-』 - 丁若銓(チョン・ヤクチョン)役
  • 2022年『キングメーカー 大統領を作った男』 - キム・ウンボム役
  • 2022年『PHANTOM/ユリョンと呼ばれたスパイ』
  • 2023年『キル・ボクスン』(Netflix)
  • 2023年『THE MOON』
  • 2023年『罪深き少年たち』
  • 2024年『満ち足りた家族』
  • 2025年『グッドニュース』(原題:굿뉴스、Netflix) - アムゲ(Nobody)役
  • 2026年『もしもの愛』(原題:가능한 사랑) - ホソク役

ドラマ・配信シリーズ[編集]

  • 2024年『旋風』(原題:돌풍、Netflix) - 国務総理パク・ドンホ役
  • 2025年『ハイパーナイフ』(原題:하이퍼나이프、ディズニープラス) - チェ・ドッキ役
  • 2026年『Mousetrap』(原題:들쥐、Netflix) - ノジャ役

イ・チャンドン作品とソル・ギョング[編集]

『ペパーミント・キャンディー』[編集]

鉄橋の上で迫りくる列車に向かって「帰りたい!」と叫ぶ中年男キム・ヨンホ。そこから時間を20年さかのぼり、彼がなぜそこまで壊れてしまったのかを逆再生でたどっていく構成の作品で、ソル・ギョングは40代の絶望した男から、純朴な20歳の青年までを一人で演じ分けた。光州事件、軍事政権下の警察、IMF経済危機といった韓国現代史をひとりの男の転落に重ねた作品で、1999年の第4回釜山国際映画祭の開幕作として上映された。この一本で、ほぼ無名だった舞台俳優が一躍映画賞を総なめにする存在になり、韓国のメディアでは「この年の賞を10個さらった」と語り草になっている。

『オアシス』[編集]

2002年の『オアシス』では、ひき逃げ事件の服役を終えて出所したばかりの男ホン・ジョンドゥを演じた。脳性まひのある女性コンジュ役のムン・ソリとの関係を、甘くも美化もせずに描いたイ・チャンドンの問題作で、第59回ヴェネツィア国際映画祭ではイ・チャンドンが監督賞(銀獅子賞)、ムン・ソリがマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞した。ソル・ギョングは社会からはみ出した落ち着きのない男を、ちょっとした仕草や視線まで作り込んで体現しており、同年の『公共の敵』の荒くれ刑事と並べると「同一人物とは思えない」と言われるほど振れ幅が大きい。

24年ぶりの再タッグ『もしもの愛』[編集]

2026年、イ・チャンドンが『バーニング 劇場版』以来8年ぶりに撮った長編『もしもの愛』(原題:가능한 사랑、英題:Possible Love)で、ソル・ギョングは会社を解雇された男ホソクを演じた。妻ミオク役はチョン・ドヨンで、二人の共演は本作で4度目。ソル・ギョングにとっては『オアシス』以来24年ぶりのイ・チャンドン作品となる。本作は第83回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門に出品され、審査員大賞(銀獅子賞)を受賞。日本では2026年10月23日から一部劇場で先行公開され、11月6日からNetflixで配信される予定とされている。

役作りの鬼[編集]

『力道山』で28キロ増量&日本語マスター[編集]

ソル・ギョングといえば、とにかく役のために体を作り変える俳優として有名である。代表例が2004年の日韓合作映画『力道山』で、戦後日本のプロレス界を作り上げた力道山を演じるため、短期間で体重を約28キロ増やしたとされる(韓国側の資料では20キロ、30キロとも)。しかも劇中のセリフのほとんどが日本語で、吹き替えの提案もあったものの、本人は数か月にわたって日本語を猛特訓し、自分の声で演じ切った。プロレスの試合シーンも代役なしで挑み、撮影中に目が腫れるほどのケガもしている。インタビューでは、撮影前は力道山のことを全く知らなかったが、脚本を読むうちに「激しい人生と孤独」に引き込まれたと語っており、中谷美紀と大根を食べるシーンの「実は辛い」というセリフはアドリブだったと明かしている。

激やせ・白髪・認知症の殺人者[編集]

2017年の『殺人者の記憶法』では、アルツハイマー病を患う元連続殺人犯キム・ビョンスを演じた。体重を落とし、やつれた顔つきと白髪混じりの姿で現れたことから、公開当時は「ソル・ギョングの顔が別人」と話題になった。記憶が抜け落ちていく恐怖と殺人衝動を同居させた演技は評価が高く、韓国の映画賞でも主演男優賞を受けている。共演はキム・ナムギル。

「体」で語る俳優[編集]

『シルミド』では北派工作員として過酷な訓練を受ける死刑囚カン・インチャンを演じ、泥まみれの肉体アクションをこなした。『茲山魚譜-チャサンオボ-』では流刑先の黒山島で魚類図鑑を書いた学者・丁若銓を、モノクロ映像の中で穏やかに演じている。イ・チャンドンが評した「会うたびに顔が違う」という特性は、まさに体ごと役に入っていくこのスタイルから来ていると言ってよい。

「知天命アイドル」現象[編集]

『名もなき野良犬の輪舞』と「不汗党員」[編集]

2017年の『名もなき野良犬の輪舞』(原題:불한당: 나쁜 놈들의 세상、ピョン・ソンヒョン監督)は、第70回カンヌ国際映画祭のミッドナイト・スクリーニングに招待された犯罪ノワール。ソル・ギョングは刑務所で出会った若者ヒョンス(イム・シワン)と危うい絆を結ぶ犯罪組織のナンバー2、ハン・ジェホを演じた。興行成績自体は大ヒットとは言い難かったが、公開後に二人の関係性に熱狂するファンが急増し、「불한당원(不汗党員)」と名乗るファンダムが誕生。再上映運動や応援広告など、アイドル顔負けの活動を展開した。

50代で初のファンミーティング[編集]

この現象からついた呼び名が「지천명 아이돌(知天命アイドル)」。知天命は論語の「五十にして天命を知る」に由来する、50歳を指す言葉である。2018年10月13日にはソウルのYES24 LIVE HALLで生涯初のファンミーティングを開催し、チケットは発売1分で完売。約1,000人のファン全員と1人ずつハイタッチし、手紙では「俳優にならなかったらファンの皆さんに会えなかった」と語った。2019年のテレビ出演では、自身の俳優人生は『名もなき野良犬の輪舞』の前と後に分かれると振り返り、この呼び名にも感謝を示している。

推し活は今も継続中[編集]

ファンダムの勢いはその後も続き、ファン投票サービスでは「中年の魅力が光る男性俳優」部門で35万票超を集めて1位に。誕生日の5月1日に合わせてファンがソウル地下鉄7号線の駅に広告を出すなど、いわゆる「生誕祭」文化が中年俳優にまで広がった象徴的な存在となっている。ファンに対して丁寧な敬語を崩さないマナーの良さも人気の理由に挙げられる。

2020年代:配信時代の大黒柱[編集]

政治もの・時代劇で円熟[編集]

2022年の『キングメーカー 大統領を作った男』(ピョン・ソンヒョン監督)では、金大中元大統領をモデルにした政治家キム・ウンボムを演じ、選挙参謀ソ・チャンデ役のイ・ソンギュンと火花を散らした。この演技で第58回百想芸術大賞の映画部門男性最優秀演技賞を受賞している。2017年の『1987、ある闘いの真実』では民主化運動を描く群像劇の一角を担い、キム・テリやカン・ドンウォンらと共演。社会派作品への出演が多いのも特徴で、2019年の『君の誕生日』ではセウォル号事故で息子を失った父親を演じた。

Netflix・ディズニープラスの常連に[編集]

2023年の『キル・ボクスン』では、主人公の殺し屋が所属する暗殺請負会社の代表チャ・ミンギュを演じ、Netflixで世界的に配信された。2024年のNetflixシリーズ『旋風』では、大統領を暗殺してでも腐敗を断とうとする国務総理パク・ドンホ役でキム・ヒエと初共演し、本格的な連続ドラマ主演を果たした。2025年はディズニープラスの医療スリラー『ハイパーナイフ』で、パク・ウンビン演じる天才外科医セオクを破滅させたかつての師チェ・ドッキを怪演。同年のNetflix映画『グッドニュース』では、1970年のよど号ハイジャック事件を題材にした風刺劇で、正体不明のフィクサー「アムゲ(Nobody)」を演じ、トロント国際映画祭でワールドプレミアを迎えた。

2026年もフル稼働[編集]

2026年8月28日には、リュ・ジュンヨルと共演したNetflixシリーズ『Mousetrap』(原題:들쥐、全10話)が配信開始。自分の顔・指紋・財産まで何者かに奪われた小説家(リュ・ジュンヨル)と手を組む、冷酷な高利貸し上がりの探偵ノジャを演じている。さらに同年秋は『もしもの愛』のヴェネツィア受賞で再び国際的な注目を集め、新人監督イ・ドクチャンによるオカルト映画『바위(岩)』への出演も報じられた。50代後半になっても出演作が途切れない、まさに韓国映像業界の大黒柱である。

受賞歴(主なもの)[編集]

  • 2000年 - 『ペパーミント・キャンディー』で大鐘賞主演男優賞ほか、新人賞・主演男優賞を多数受賞
  • 2002年 - 『公共の敵』『オアシス』で青龍映画賞・大鐘賞・春史映画賞などを受賞
  • 2009年 - 『TSUNAMI-ツナミ-』で韓国文化芸能大賞の大賞
  • 2010年 - 『ノー・マーシー 非情の愛』(原題:용서는 없다)で春史映画賞
  • 2014年 - 『22年目の記憶』で黄金撮影賞 主演男優賞
  • 2017〜2018年 - 『殺人者の記憶法』でディレクターズ・カット・アワード、韓国映画記者協会賞の主演男優賞
  • 2022年 - 『キングメーカー 大統領を作った男』で第58回百想芸術大賞 映画部門男性最優秀演技賞
  • 2022年 - 第26回富川国際ファンタスティック映画祭で特別展「俳優、ソル・ギョング」開催

人物・私生活[編集]

結婚と家族[編集]

1996年に一般人女性と結婚し娘を一人もうけたが、2006年に離婚した。2009年5月28日、ソウル・方背洞のカトリック教会で女優のソン・ユナと再婚。二人は漢陽大学校の先輩・後輩にあたり、2002年の『ジェイル・ブレーカー』と2006年の『사랑을 놓치다』(英題:Lost in Love)で共演した仲である。2010年には息子が誕生している。

母校で教壇にも[編集]

2014年からは母校・漢陽大学校の公演芸術学部で兼任教授を務めた。漢陽大学校や韓国芸術総合学校の大学院から進学の誘いがあったものの、断ったというエピソードもある。

寄付・社会貢献[編集]

2010年には先天性心疾患の子どもの手術費を負担し、自ら病院を訪れて励ました。2014年にはセウォル号事故の被害者支援として、ユニセフ韓国委員会を通じて1億ウォンを寄付。2023年にはトルコ・シリア大地震の被災地支援として5,000万ウォンを寄付している。

事務所[編集]

長年C-JeSエンターテインメント(씨제스)に所属していたが、2025年に同社が俳優マネジメント部門を終了したことで約12年の契約に区切りがついた。複数の事務所から誘いがあったものの、旧事務所時代のマネージャーと一人事務所「Actors99(액터스99)」を設立している。

炎上とバズ[編集]

  • 『名もなき野良犬の輪舞』のファンダム爆誕:公開時の興行は控えめだったにもかかわらず、口コミとSNSで熱狂的ファンが増え、50代俳優としては異例の「アイドル化」が起きた。韓国芸能界で「中年俳優の推し活」が注目されるきっかけの一つになったとされる。
  • イム・シワンとの「ブロマンス」:同作で共演したイム・シワンとは21歳差ながら親交が深く、2017年のイム・シワン入隊日と2019年の除隊日にどちらも駆けつけた。入隊時に一緒に撮った写真を除隊日に公開したことも話題に。お互いの撮影現場にコーヒーカーを送り合う仲としても知られる。
  • 妻をめぐる悪質な噂:2014年、妻ソン・ユナが前の結婚中の不倫説などを流したネットユーザー57人を名誉毀損で告訴した。夫婦はいずれも噂を否定し、交際は2007年から始まったと説明している。

余談[編集]

  • 『地下鉄1号線』で80役中78役をこなした経験から、舞台出身俳優の「伝説」として語られることがある。
  • 2001年には日本のNHKで制作された2回シリーズのドラマにも出演しており、『力道山』以前から日本の現場と縁があった。
  • 『シルミド』と『TSUNAMI-ツナミ-』という、韓国映画史で最初期の観客1000万人突破作の2本で主演を務めている。
  • 2019年のベルリン国際映画祭には、パノラマ部門に招待された主演作『悪の偶像』で参加した。共演はハン・ソッキュ、チョン・ウヒ。
  • 『THE MOON』ではEXOのD.O.(ト・ギョンス)と共演。宇宙に取り残された宇宙飛行士を地上から救おうとする元フライトディレクター役だった。
  • 『PHANTOM/ユリョンと呼ばれたスパイ』では日本軍側の人物を演じ、パク・ソダムらと共演した。
  • 2013年の『監視者たち』では、ハン・ヒョジュ演じる新人刑事を導く監視班のベテラン班長を演じた。

外部リンク[編集]

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