キム・ウンスク
김은숙 / Kim Eun-sook
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2016年、『太陽の末裔』記者会見でのキム・ウンスク(出典:Wikimedia Commons/리플레이REplay TV/CC BY 3.0)
出身地 韓国・江原道江陵市
国籍 大韓民国
学歴 ソウル芸術大学 文芸創作科
職業 テレビドラマ脚本家
肩書 「ロマンスドラマの女王」「ヒットメーカー」
活動期間 2003年 -
代表的な実績 『パリの恋人』『シークレット・ガーデン』『紳士の品格』『相続者たち』『太陽の末裔』『トッケビ』『ミスター・サンシャイン』『ザ・グローリー』『魔法のランプにお願い』
受賞 百想芸術大賞 TV部門脚本賞(2005年・2011年)、同 TV部門大賞(2017年『トッケビ』)、同 TV部門作品賞(2023年『ザ・グローリー』)、ソウルドラマアワード ゴールデンバード賞(2026年)ほか
事務所 ファ&ダム・ピクチャーズ(スタジオドラゴン傘下)


概要[編集]

キム・ウンスク(김은숙、Kim Eun-sook)とは、韓国のテレビドラマ脚本家である。『パリの恋人』『シークレット・ガーデン』『太陽の末裔』『トッケビ』『ザ・グローリー』などを書き、20年以上にわたり韓国ドラマのヒットを量産してきた「名台詞メーカー」として知られる。

詳細[編集]

経理事務員から脚本家へ[編集]

江原道江陵市の出身。生年は1973年とする資料が多いが、1972年生まれとする資料もある。韓国メディアや韓国のネット百科によると、3きょうだいの長女として育ち、高校卒業後は地元の家具会社で7年ほど経理として働き、弟妹の生活を支えたとされる。そこで貯めたお金でソウル芸術大学の文芸創作科に入学し、卒業後は新春文芸に挑戦しつつ大学路(テハンノ)で戯曲を書く貧乏時代を過ごした。お金がなさすぎて、エビせん「セウカン」1袋で3日をしのいだというエピソードは今も語り草になっている。

『太陽の南側』でデビュー、そして『パリの恋人』の爆発[編集]

転機はドラマプロデューサーのユン・ハリムに勧められてテレビドラマの世界に入ったこと。2003年、同期のカン・ウンジョンとの共同執筆によるSBS『太陽の南側』(태양의 남쪽)でデビューした。翌2004年の『パリの恋人』は最終回で全国視聴率57.6%という怪物級の数字を叩き出し、無名に近かった新人作家は一気にスター脚本家の座に駆け上がった。パリやニースでの大規模海外ロケは、のちの韓国ドラマにおける「海外ロケブーム」のきっかけになったとも言われている。

地上波の女王から、ケーブル・配信の覇者へ[編集]

2000年代は主にSBSを主戦場に『プラハの恋人』『恋人』『オンエアー』『シティーホール』と話題作を連打。2010年の『シークレット・ガーデン』で頂点を極め、2013年の『相続者たち』まで地上波ロマンスの看板作家として君臨した。2016年からはKBSの『太陽の末裔』、tvNの『トッケビ』『ミスター・サンシャイン』とプラットフォームを移り、2022年の『ザ・グローリー』で初めてNetflixオリジナルを手がけた。地上波→ケーブル→グローバル配信と、韓国ドラマ産業の主戦場の移り変わりを、ほぼそのまま自分のフィルモグラフィーでなぞってきた作家と言える。

盟友ユン・ハリムとファ&ダム・ピクチャーズ[編集]

キム・ウンスクを語るうえで外せないのが、彼女をドラマの世界に引き込んだプロデューサー、ユン・ハリムの存在だ。二人の拠点である制作会社ファ&ダム・ピクチャーズは、現在スタジオドラゴン傘下で、キム・ウンスク作品の多くを手がけている。2023年には、大規模火災に見舞われたソウル・九龍村の復旧のためにユン・ハリム代表と共同で2,000万ウォンを寄付するなど、二人そろっての寄付活動もたびたび報じられている。

作風[編集]

「ウンスク・ドラマ」の黄金方程式[編集]

韓国では彼女の作品をまとめて「ウンスクドラマ(은숙드)」と呼ぶことがある。典型的な骨組みは、財閥御曹司や軍人・神様のような「ハイスペックすぎる男」と、貧しくも芯の強いヒロインとの身分違いのロマンス。いわゆる「シンデレラストーリー」を、ラブコメの軽さとメロドラマの切なさの両方で味付けするのが初期からの得意技である。韓国の女性誌『VOGUE KOREA』は、彼女を「韓国コンテンツの一大ジャンルである“階層上昇ロマンス”の公式を確立した作家」と評している。

名台詞がそのまま流行語になる[編集]

作風の最大の武器は、なんといっても台詞だ。キム・ウンスク作品が放送されると、翌週には劇中の台詞が韓国中のバラエティやCMでパロディされるのが恒例になっている。

  • 『パリの恋人』:「エギヤ、カジャ(애기야 가자/さあ行こう、お嬢ちゃん)」「この中に君がいる(이 안에 너 있다)」
  • 『シークレット・ガーデン』:「これが最善ですか? 確かですか?」「このジャージはイタリアの職人が一針一針刺繍した名品だ」
  • 『紳士の品格』:「贅沢にじゃなく、価値あるように履いて(사치스럽게 말고 가치스럽게)」、語尾の「〜する方向で(〜하는 걸로)」
  • 『相続者たち』:「俺、お前のこと好きなのか(나 너 좋아하냐)」
  • 『太陽の末裔』:「謝りましょうか、告白しましょうか」、軍隊式の語尾「〜であります(〜말입니다)」
  • 『トッケビ』:「天気が良かったから、天気が良くなかったから、天気がちょうどよかったから、すべての日が良かった」

文法的にちょっと変だったり、普通の人なら照れて言えないような言い回しを、トップ俳優にど真ん中で言わせる。その「こそばゆさ」こそが中毒性の正体であり、本人も「ドラマの最大の魅力は面白さだと思う」(2008年、聯合ニュースのインタビュー)と語っている。

「こそばゆい台詞」をめぐる俳優たちの攻防[編集]

台詞が独特すぎるがゆえに、俳優側にも葛藤がある。2023年8月、KBSラジオに初出演したキム・ウンスクは、『ミスター・サンシャイン』の台本を読んだイ・ビョンホンから連絡が来て、30分ほど「台詞がこそばゆい」と遠回しにほのめかされた、と明かした。ところが、いざ撮影になるとイ・ビョンホンは一字一句台本どおりに演じたという。どんなベテランも最後は台本に従わせてしまう、という意味で彼女らしいエピソードである。

ファンタジーと歴史へ、そして復讐劇へ[編集]

2010年代後半からはジャンルの幅を一気に広げた。体が入れ替わる『シークレット・ガーデン』、900年以上生きる鬼(トッケビ)を描いた『トッケビ』、パラレルワールドを行き来する『ザ・キング:永遠の君主』とファンタジー路線を深める一方、『ミスター・サンシャイン』では朝鮮末期の義兵を描く本格時代劇に挑んだ。さらに『ザ・グローリー』ではロマンスをほぼ封印し、学校暴力の被害者による復讐劇という完全な新境地を切り開いている。

代表作の解説[編集]

パリの恋人(2004年)[編集]

SBSで放送。財閥2世のハン・ギジュ(パク・シニャン)と貧しいヒロインのカン・テヨン(キム・ジョンウン)、そしてギジュの甥ユン・スヒョク(イ・ドンゴン)の三角関係を描いた。王道シンデレラ物語で最終回57.6%を記録したが、最終回で「物語全体がヒロインの書いた小説だった」とも取れる結末が示され、ポータルサイトDaumの投票では60.7%が「失望した」と回答するほどの大論争になった。キム・ウンスク本人も、のちに結末の台本は失敗だったと反省の弁を述べている。この作品で百想芸術大賞TV部門脚本賞を受賞した。

シークレット・ガーデン(2010〜2011年)[編集]

傲慢なデパート社長キム・ジュウォン(ヒョンビン)と、スタントウーマンのキル・ライム(ハ・ジウォン)の魂が入れ替わるファンタジーロマンス。最終回の視聴率は35.2%に達し、ヒョンビンを国民的スターに押し上げた。腹筋運動中のライムに「キル・ライムさんはいつからそんなに綺麗だったんですか」と迫るシーンなど、名場面の多くが今もパロディされ続けている。もともと『トッケビ』の構想が先にあったが、当時はCG技術が追いつかず制作費がかさむため、入れ替わりのCGだけで済む本作を先に書いたという裏話もある。2011年の百想芸術大賞で2度目のTV部門脚本賞を受賞した。

紳士の品格/相続者たち(2012年・2013年)[編集]

『紳士の品格』はチャン・ドンゴンを主演に、40代の男友達4人組の恋と友情を群像劇で描いた作品。「大人の男のラブコメ」という当時としては珍しい切り口で人気を集めた。翌年の『相続者たち』は、イ・ミンホとパク・シネ主演の財閥高校生ロマンスで、キム・ウビンらもブレイクした。一方で、いじめ加害者的な人物を美化しているという批判や、過剰な間接広告(PPL)への指摘も受けている。この「学園暴力の描き方」をめぐる批判は、のちの『ザ・グローリー』で別の形で回収されることになる。

太陽の末裔(2016年)[編集]

ソン・ジュンギとソン・ヘギョ主演の軍人×医師ロマンス。キム・ウォンソク作家との共同執筆で、演出は以後名コンビとなるイ・ウンボク。韓国では珍しい全話事前制作で作られ、最終回の視聴率は38.8%に到達、中国をはじめアジア全域で社会現象になった。ユ・シジン大尉の「〜であります(말입니다)」口調は、韓国で「ダナカ体」ブームを巻き起こしたほどである。

トッケビ(2016〜2017年)[編集]

コン・ユ演じる939歳のトッケビ(鬼)キム・シンと、その「花嫁」を名乗る女子高生チ・ウンタク(キム・ゴウン)、そして記憶を失った死神(イ・ドンウク)とサニー(ユ・インナ)の2組の恋を描くファンタジーロマンス。ケーブルチャンネルのtvNで放送されながら視聴率20%を突破し、当時のケーブルドラマの記録を塗り替えた。キム・ウンスクはコン・ユに何年もかけて出演を打診し続けたと言われる。この作品で第53回百想芸術大賞のTV部門大賞を受賞し、脚本家として頂点を極めた。日本では『トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜』のタイトルで知られ、英語圏では「Goblin」とも呼ばれる(ゴブリン (韓国ドラマ))。

ミスター・サンシャイン(2018年)[編集]

イ・ビョンホン、キム・テリ、ユ・ヨンソクらによる、朝鮮末期を舞台にした全24話の大作時代劇。Netflixが世界配信権を獲得し、韓国ドラマのグローバル展開の先駆けにもなった。一方で、放送初期に実在の親日団体を登場人物の所属組織として描いたことで「親日美化」の批判を受け、制作陣が謝罪して架空の組織名に修正する騒動もあった。

ザ・キング:永遠の君主(2020年)[編集]

SBSで放送された、大韓帝国が存続する並行世界の皇帝イ・ゴン(イ・ミンホ)と、現代韓国の刑事チョン・テウル(キム・ゴウン)のロマンス。期待値は最高潮だったが、複雑すぎる世界観や演出への批判が相次ぎ、視聴率は一時5.2%まで下落。キム・ウンスク作品としては異例の「不振作」となった。ただしNetflixを通じて海外では一定の人気を獲得している。

ザ・グローリー(2022〜2023年)[編集]

ソン・ヘギョ主演、アン・ギルホ演出のNetflixオリジナル。高校時代に壮絶ないじめを受けたムン・ドンウンが、大人になってから加害者たちへ復讐する物語で、イム・ジヨンやイ・ドヒョンを一躍スターにした。Part 2配信後は3週連続でNetflixグローバル非英語TV部門1位を獲得し、第59回百想芸術大賞ではTV部門作品賞を受賞。2023年の韓国放送作家賞(ドラマ部門)にも輝いた。『ザ・キング』の不振を経た起死回生の一作であり、「キム・ウンスクはロマンスしか書けない」という評価を完全にひっくり返した作品でもある。

魔法のランプにお願い(2025年)[編集]

『ザ・グローリー』以来約3年ぶりの新作で、2025年10月3日にNetflixで全13話が一挙配信された(魔法のランプにお願い)。千年ぶりに目覚めたランプの精ジニ(キム・ウビン)と、感情を持たずに生まれた女性キ・ガヨン(スジ)が「願い」をめぐって命がけの賭けをするファンタジー・ラブコメで、配信3日で400万視聴を記録し、46か国でTOP10入りした。一方、序盤のコメディが幼稚だという声と、後半の感情線に泣かされたという声で評価は大きく割れた。制作途中で演出がイ・ビョンホン監督(映画『エクストリーム・ジョブ』の監督で、俳優のイ・ビョンホンとは別人)からアン・ギルホに交代したことも報じられている。

本人の発言[編集]

『ザ・グローリー』を生んだ娘の質問[編集]

2022年12月の『ザ・グローリー』制作発表会で、キム・ウンスクは執筆のきっかけを率直に語った。当時高校2年生だった娘から「ママ、いつの時代のキム・ウンスクよ?」と言われたのが「1つ目の衝撃」。さらに娘から「ママは、私が誰かを死ぬほど殴ったら胸が痛い? それとも誰かに死ぬほど殴られて帰ってきたら胸が痛い?」と聞かれたことが「2つ目の衝撃」で、その瞬間に多くの物語が頭に浮かび、復讐劇の執筆を始めたという。『ザ・キング』の不振直後のタイミングでの“自虐ネタ”でもあり、会場を沸かせた。

「ドンウン、春にはきっと花開いて」[編集]

Part 2配信後の2023年3月のインタビューでは、Part 1と2の間の期間を「100日を超える地獄が待っていた」「ドラマ作家の宿命のようだ」と表現。主人公ドンウンに対しては「だから、いつかの春にはきっと、満開に咲いてほしい、ドンウン」と言葉を贈った。

「お前は私にとって宗教だ」[編集]

2023年7月、ソン・ヘギョが『ザ・グローリー』で青龍シリーズアワードの大賞を受賞した際、「先生のおかげです」とメッセージを送ったところ、キム・ウンスクは「お前は私にとって宗教だ」と返信したと、同年8月のKBSラジオ出演時に明かしている。『太陽の末裔』『ザ・グローリー』『魔法のランプにお願い』(カメオ)と、ソン・ヘギョは彼女の作品に3度登場した「ミューズ」的存在だ。

『魔法のランプにお願い』に込めたもの[編集]

2025年9月のインタビューでは、本作を「ストレスゼロ、さつまいも(もどかしさ)ゼロの“知ってる味”のファンタジー・ロマンティックコメディ」と紹介。日常に疲れた人が一番手軽に幸せになれる方法は「ドラマ」だと語った。ヒロインのガヨンについては「サイコパスという外見と“人間の善意”という中身を持つ、とても珍しいキャラクター」と説明し、難役にもかかわらずスジが「すごく楽しみ」と言ってくれて安心した、と明かしている。配信後のインタビューでは、作品のメッセージを「人がどう生まれたかより、どんな選択をするかが大事。その選択を正しい方向に導くのは人と人との愛だ」とまとめた。

2026年の動向[編集]

2026年9月29日、ソウルドラマアワード(ソウル国際ドラマアワード)組織委員会は、キム・ウンスクに最高賞にあたる「ゴールデンバード賞(Golden Bird Prize)」を授与すると発表した。この賞は2023年に新設されたもので、過去1年間に大きな話題を呼んだ作品や人物に贈られる。脚本家が受賞するのは初めてで、個人の受賞者としては4人目となる。組織委員会は「時代に合った物語を作り続け、唯一無二の世界観で世界中の視聴者を動かしてきた」と授賞理由を説明した。授賞式は2026年10月8日にMBCで生中継される予定と発表されている。なお彼女は過去にも同アワードで『シークレット・ガーデン』により脚本賞を受賞している。

2026年10月時点で、『魔法のランプにお願い』に続く次回作の正式発表は確認できない。

炎上とバズ[編集]

結末論争の元祖『パリの恋人』[編集]

「全部ヒロインの小説だった?」と受け取れるラストで視聴者の怒りが爆発し、ポータル投票で6割超が「失望」と回答。韓国ドラマの「ひどい最終回」談義では今も必ず名前が挙がる。主演のパク・シニャンと作家の間で結末の解釈が食い違っていたことも報じられた。

『ミスター・サンシャイン』の親日団体騒動[編集]

実在した親日団体を登場人物の所属先として描いたことが「親日美化」と批判され、制作陣が謝罪して架空の団体名に差し替えた。

『ザ・キング』の低迷[編集]

キム・ウンスク×イ・ミンホ×キム・ゴウンという豪華布陣ながら視聴率は右肩下がり。複雑な設定や美術・演出をめぐる批判も重なり、彼女のキャリアで最も厳しい評価を受けた作品になった。

『魔法のランプにお願い』の演出交代と賛否[編集]

制作中に監督が交代したことが報じられ、制作発表会に監督が出席しない異例の形になった。配信後は「キム・ウンスクらしさの劣化」と「後半で化けた」という評価が真っ二つに割れた。

余談[編集]

  • デビュー前の極貧時代、エビせん1袋で3日を過ごしたことがあるという。
  • 『プラハの恋人』で、ヒロインを大統領の娘に設定したことについて「ドラマはドラマ」と割り切った発言をしている。
  • 『トッケビ』の死神役をめぐっては、イ・ドンウクが台本を読んで「サブでもいいから出たい」と強く希望したという逸話が知られている。
  • 『トッケビ』で朴中軒を演じたキム・ビョンチョルは、その後『ミスター・サンシャイン』にも起用されている。
  • 2006年には映画の脚本も手がけ、『百万長者の初恋』ではヒョンビンが主演を務めている。のちに『シークレット・ガーデン』で再タッグを組んだ。
  • 山火事、洪水、ロシアのウクライナ侵攻による被害者支援など、寄付活動をたびたび行っていることでも知られる。
  • KBSが2023年に選んだ「KBSを輝かせた50人」では14位に選ばれている。

外部リンク[編集]

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