| ザ・グローリー | |
|---|---|
| ジャンル | 復讐サスペンス、ヒューマンドラマ |
| 放送期間 | 2022年12月30日(Part 1)、2023年3月10日(Part 2) |
| 放送国家 | 大韓民国 |
| 制作 | |
| 脚本 | キム・ウンスク |
| 出演者 | ソン・ヘギョ、イ・ドヒョン、イム・ジヨン、パク・ソンフン、チョン・ソンイル |
| その他 | |
概要[編集]
『ザ・グローリー』(원제:더 글로리、英:The Glory)は、Netflixが2022年12月(前半8話)と2023年3月(後半8話)の2部作で配信した全16話の韓国ドラマだ。高校時代にすさまじいいじめを受けたヒロインが、16年後に復讐を果たすまでを描いた重厚なサスペンスドラマで、日本を含む世界各国のNetflixランキングで1位を獲得した。
主演は太陽の末裔で一世を風靡したソン・ヘギョ。これまでのラブストーリー路線とは一線を画した冷徹な復讐者役を熱演し、俳優人生の転換点となった。脚本は太陽の末裔やゴブリン (韓国ドラマ)を手掛けたキム・ウンスク、監督は秘密の花園等で知られるアン・ギルホというドリームチームで制作された。
ストーリー[編集]
高校生のムン・ドンウン(ソン・ヘギョ)は、クラスメートのパク・ヨンジンらによる凄惨ないじめを受ける。熱く焼けたヘアアイロンを肌に押し当てられるなどの暴力が繰り返されたが、教師・親・警察いずれも助けにならず被害は放置された。ドンウンは学校を中退し、ひとりで復讐の計画を立て始める。
16年後、ドンウンは加害者の子供が入学する小学校の教師として就職し、水面下で復讐の準備を整えていく。加害者グループはそれぞれ社会的成功を収めた大人になっていたが、ドンウンの静かで執念深い復讐劇が一人ひとりの人生を崩壊させていく。
キャスト[編集]
主要キャスト[編集]
- ソン・ヘギョ(ムン・ドンウン役):主人公。高校時代に壮絶ないじめを受けた女性。16年後、加害者への復讐を計画・実行するために小学校教師となる。ソン・ヘギョはこれまでのロマンス系女優のイメージを覆す冷徹な演技で絶賛された。
- イ・ドヒョン(チュ・ヨジョン役):ムン・ドンウンの復讐を共に支える男性。ドンウンへの想いを抱きながら、危険な計画に加担していく。イ・ドヒョンは本作で一躍トップスターの地位を確立した。
- イム・ジヨン(パク・ヨンジン役):高校時代のいじめの主犯格。成人後は富裕層の主婦として何不自由ない生活を送っている。圧倒的な悪役を熱演し、イム・ジヨンの演技は国内外で高評価を得た。
- パク・ソンフン(ハ・ドヨン役):パク・ヨンジンの夫。財閥系建設会社の社長息子で、妻の過去を知らずに結婚した。
- チョン・ソンイル(ジュン役):いじめグループの一員。整形外科医として活躍している。
- キム・ヒョンスク(ソン・ミョファン役):ムン・ドンウンの小学校時代の恩師的存在。
- ヨム・ヘラン(カン・ヒョンナム役):複雑な事情を抱えるドンウンの協力者。コミカルな要素も担いながら重要な役割を果たす。
制作[編集]
脚本家キム・ウンスク[編集]
本作の脚本を手掛けたキム・ウンスクは、韓国ドラマ界を代表するトップ脚本家だ。過去にパリの恋人(2004)、シンデレラのお姉さん(2010)、太陽の末裔(2016)、ゴブリン(2016)、Mr. サンシャイン(2018)などの大ヒット作を次々と生み出してきた。
本作はキム・ウンスクのキャリアにおいても異色の作品で、これまでのファンタジー・ロマンス路線を大きく転換して社会問題に正面から向き合うダークな復讐劇に挑んだ。韓国社会における「私的制裁」や「司法不信」「上流階級による加害の隠蔽」というテーマを深く掘り下げており、単純な勧善懲悪ではなく被害者の感情の複雑さも丁寧に描いている点で評価が高い。
監督アン・ギルホ[編集]
監督を務めたアン・ギルホは秘密の花園(2010)やスポットライト (韓国ドラマ)などを手掛けてきたベテラン。本作では重苦しいテーマを扱いながらも視聴者を引きつけるテンポとビジュアル演出で高い評価を受けた。16年という時間軸を行き来する回想シーンの切り替えも巧みで、物語の深みを増す演出が随所に見られる。
撮影と音楽[編集]
作品全体を覆う冷たく青みがかった色調は、ドンウンの凍りついた怒りと計算高さを視覚的に表現している。BGMは全体的に静謐で、セリフと間が多用されることでサスペンスの緊張感が持続する構成となっている。
テーマと社会的背景[編集]
本作が韓国・世界で大きな反響を呼んだのは、フィクションでありながら韓国社会の実態を鋭く照射しているからだ。
学校いじめ問題[編集]
韓国では2010年代以降、著名スポーツ選手やアイドルによる過去のいじめが相次いで告発され社会問題化してきた(이른바「학폭 미투(ハクポン・ミトゥー)」運動)。本作に描かれるヘアアイロンを使った暴力や集団による孤立・侮辱は、実際の告発事例に類似しており、多くの視聴者がリアリティを感じる内容となっている。
階層社会と「上流階級の免責」[編集]
加害者グループがそれぞれ成人後に社会的な成功を収めており、被害者側だけが人生を大きく歪められているという構図は、富裕層による不正が見逃されやすい階層社会への批判として読み取れる。韓国のみならず日本やその他の国々でも共感を呼んだ理由のひとつだ。
被害者の「復讐」を正面から描く[編集]
従来のドラマでは被害者が法や他者の助けにより救済されることが多いが、本作では制度が機能しなかったという現実を踏まえた上で、主人公が自らの手で復讐を果たすことを肯定的に描いている。これは被害を訴えても社会に無視された経験を持つ視聴者に強く刺さるテーマだ。
配信と評価[編集]
Netflixランキング[編集]
Part 1(2022年12月30日配信)は公開直後から多くの国でランキングトップに入り、日本でも配信開始後すぐにNetflixの週間ランキング1位を獲得した。2023年3月のPart 2公開後はさらに視聴が加速し、全世界の非英語圏ドラマとして史上有数の視聴数を記録した。
批評家・視聴者の評価[編集]
ドラマレビューサイトでの評価も軒並み高く、脚本の緻密さ、ソン・ヘギョの演技変容、悪役イム・ジヨンの圧倒的な存在感、そして歯車が噛み合っていくような復讐劇の展開が特に称賛された。一方でPart 2後半のスピーディな展開を「駆け足」と指摘する声もある。
賞[編集]
2023年の主要韓国ドラマ賞において多数のノミネートを受け、イム・ジヨンが悪役としての演技で助演女優賞を複数獲得した。ソン・ヘギョも主演女優賞候補として注目されたが、ライバル作品との激戦となった。
日本での反響[編集]
Netflixの普及とともに韓国ドラマを視聴する日本人視聴者が増える中、本作は特に20代〜40代の女性を中心に「#ザグローリー」のハッシュタグがX(旧Twitter)でトレンド入りするほどの反響を呼んだ。「学校のいじめが今も心に残っている」という体験談とともに感想を投稿するユーザーも多く、フィクションとして楽しむ以上の感情的な共鳴を呼んだ作品として語られている。
また「ソン・ヘギョが怖い(褒め言葉)」「イム・ジヨンが憎すぎる」といった感想が飛び交い、キャスト個人の注目度も高まった。イ・ドヒョンは本作の人気をきっかけに日本でもファンが急増し、以後の来日イベントは即座に完売する状況となった。
ブレイクしたキャストのその後[編集]
ソン・ヘギョの変貌[編集]
ソン・ヘギョは1980年生まれ、太陽の末裔(2016)でソン・ジュンギと共演した際には韓国中を熱狂させたが、その後の作品では評価が分かれる時期もあった。本作で演じたムン・ドンウンは微笑みを封印した無表情の復讐者で、華やかなラブストーリーとは真逆の役柄だ。撮影を通じて感情を押し殺した演技を追求し「これまでで最も準備した作品」とコメント。本作の成功でソン・ヘギョは40代に入ってなお最前線で活躍する「演技者」としての地位を確立した。
イ・ドヒョンの急浮上[編集]
1995年生まれのイ・ドヒョンは本作以前も着実にキャリアを積んでいたが、本作のヨジョン役で爆発的な知名度を獲得した。ソン・ヘギョとの共演はW主演的な扱いで、恋愛パートのみならず緊迫したシーンでも確かな演技力を見せた。本作後は映画・ドラマへのオファーが殺到し、K-POPファン層以外にもファンベースを大幅に拡大している。
イム・ジヨンの悪役評価[編集]
1990年生まれのイム・ジヨンは本作のパク・ヨンジン役で初めて全国・全世界的な注目を浴びた。視聴者から「史上最高の悪役」「憎しみが止まらない」と評されるほどの没入型演技で、普段は温和な人柄とのギャップも話題を呼んだ。本作の後、悪役・複雑な人物を演じる機会が増えており、演技派として確固たるポジションを得ている。
余談[編集]
- タイトルの「グローリー」(Glory)は「栄光」を意味する英語だが、本作では「正義の実現」「尊厳の回復」というニュアンスで使われている。ドンウンが人生を捧げた復讐の果てに得るものが「栄光」なのか「虚無」なのかを問う深い意味も込められている。
- キム・ウンスク脚本はセリフに独特のリズムがあり、登場人物の一言一言が伏線や人物の深層心理を含んでいる。特にドンウンのセリフは「詩的でありながら凍てついた」独特のトーンとして高く評価されている。
- 本作にはチェスのモチーフが繰り返し登場し、ドンウンがチェスを通じてヨジョンと知り合う場面は物語の重要な転換点となっている。チェスの対局シーンは駒一つひとつが人物や策略を象徴する演出として視聴者に深く印象づけられた。
- ソン・ヘギョは撮影中、役を深く生きるため私生活でも笑顔を意識的に制限していたと語っている。それほど役への没入度が高く、撮影終了後には精神的な疲労感も大きかったと明かした。
- 本作の大ヒットをきっかけに、韓国の学校暴力(학폭)問題に関する議論が再活性化し、韓国政府機関による被害者支援の拡充を求める声も高まった。フィクションが社会変化を後押しする例として国際的にも注目されている。
- * 主要撮影ロケ地は仁川・ソウルを中心に行われ、ドンウンが子供たちを教える小学校のシーンには実際の学校施設が使用された。ロケ地巡りを楽しむファンも国内外から訪れている。
- Part 1と2の間(2022年末〜2023年3月)の3ヶ月間、視聴者は「続きが見たい」と世界中でトレンドを作り続けた。この独特の配信形式がかえって話題持続に貢献したとも分析される。