| 鬼胎(クィテ) 黒い修道女 검은 수녀들/Dark Nuns | |
|---|---|
![]() 主演のソン・ヘギョ(2025年1月撮影。出典:Wikimedia Commons「Song Hye Kyo 2025 송혜교 01.jpg」、撮影:KPOPIT 케이팝잇、CC BY 3.0) | |
| 監督 | クォン・ヒョクチェ(日本公開時の表記はクォン・ヒョクチュ) |
| 製作 | 映画社チプ(영화사 집) |
| 脚本 | キム・ウジン |
| 脚色 | オ・ヒョジン |
| 原作 | 原案:パク・スミン |
| 出演 |
ソン・ヘギョ チョン・ヨビン イ・ジヌク ムン・ウジン ホ・ジュノ(特別出演) カン・ドンウォン(特別出演) |
| 撮影 | チェ・チャンミン |
| 音楽 | キム・テソン |
| ジャンル | オカルト、ホラー、ミステリー |
| 撮影期間 | 2024年2月22日 - 2024年5月25日 |
| 制作会社 | 映画社チプ |
| 配給 |
韓国:NEW(ネクスト・エンターテインメント・ワールド) 日本:クロックワークス |
| 劇場公開 |
韓国:2025年1月24日 北米:2025年2月7日 日本:2026年1月30日 |
| 配信 | Coupang Play(韓国)ほか |
| 上映時間 | 114分(日本公開版の表記は115分) |
| 製作費 | 約103億ウォン |
| 興行収入 |
約1,200万米ドル 韓国観客動員:約167万人 |
| 言語 | 韓国語 |
| レイティング | 韓国:15歳以上観覧可 |
| 前作 | 『プリースト 悪魔を葬る者』(2015年、スピンオフ元) |
概要[編集]
鬼胎(クィテ) 黒い修道女(原題:검은 수녀들、英題:Dark Nuns)とは、2025年1月に韓国で公開された韓国映画のオカルト・スリラーである。悪霊に憑かれた少年を救うため、禁じられた悪魔祓いに挑む二人の修道女をソン・ヘギョとチョン・ヨビンが演じた。2015年の『プリースト 悪魔を葬る者』のスピンオフ作品。
詳細[編集]
『黒い司祭たち』の世界線を修道女が引き継ぐ[編集]
本作の出発点は、2015年に韓国で約544万人を動員したヒット作『검은 사제들(黒い司祭たち)』である。日本では『プリースト 悪魔を葬る者』の邦題で、2016年10月の特集上映「韓国映画セレクション 2016 AUTUMN」で紹介された。キム・ユンソク演じる型破りな神父と、カン・ドンウォン演じる神学生が、悪霊に取り憑かれた少女(パク・ソダム)を救うために命がけの儀式に挑む――というのが前作の骨格だ。本作はその「司祭」を「修道女」に置き換えた、いわば女性版の続編。原題も『黒い司祭たち』をもじった『黒い修道女たち』で、英題は「Dark Nuns」、海外の一部では「The Priests 2: Dark Nuns」という副題付きでも売り出された。
監督は交代、でも製作会社と音楽は続投[編集]
前作の監督チャン・ジェヒョンは本作に関わっておらず、メガホンを取ったのはクォン・ヒョクチェ監督。韓国アクション映画の雄リュ・スンワン監督(『ベテラン』など)のもとで助監督を務めた叩き上げで、2010年の『解決士(해결사)』で長編デビュー、2023年の『カウント(카운트)』に続く3本目の長編が本作となる。一方で、製作は前作と同じ映画社チプ(영화사 집)が担当し、シリーズの権利も同社が持っているとされる。音楽も前作に続いてキム・テソンが手がけ、撮影はチェ・チャンミン。前作ファンが「あの空気感」を感じられるよう、要所はしっかり押さえた布陣になっている。
ソン・ヘギョ、11年ぶりの韓国映画[編集]
主演のソン・ヘギョにとって、本作は2014年の『世界で一番いとしい君へ(두근두근 내 인생)』以来、約11年ぶりの韓国映画出演作。2023年秋の時点で「出演を前向きに検討中」と報じられ、出演陣は2024年2月16日に確定、同月22日にクランクインした。ちょうどNetflixの『ザ・グローリー』で復讐劇のヒロインを演じ、メロドラマの女王から演技派へのイメージチェンジを果たした直後のタイミングで、次に選んだのがオカルトというジャンル映画だったことが大きな話題になった。
あらすじ[編集]
※物語の序盤から中盤の設定に触れる。
原因不明の激しい発作に苦しむ少年ヒジュン(ムン・ウジン)。精神科の治療では一向に良くならない彼を見て、修道女ユニア(ソン・ヘギョ)は、これは病気ではなく悪霊の仕業だと確信する。ヒジュンに取り憑いているのは、前作でも語られた「12形象」と呼ばれる強大な悪霊のひとつだという。
しかし教会は、正式な叙階を受けた司祭でもない修道女が悪魔祓いを行うことを認めない。精神科医でもあるパウロ神父(イ・ジヌク)は、ヒジュンの症状は医学で治せると主張し、ユニアと真っ向から対立する。パウロ神父の弟子で、彼の下で医療的なケアにあたっていた修道女ミカエラ(チョン・ヨビン)も、最初はユニアのやり方に懐疑的だった。
それでもユニアはヒジュンを救うため、教会が封印してきた過去の悪魔祓いの記録や禁じられた儀式を独自に探り当て、ついには自ら儀式を決行しようとする。やがてミカエラも彼女に協力するようになり、二人は巫女ヒョウォン(キム・グッキ)とその弟子エドン(シン・ジェフィ)の力まで借りて、悪霊との最終決戦に挑むことになる。
登場人物とキャスト[編集]
ユニア(演:ソン・ヘギョ)[編集]
本作の主人公。規則より目の前の少年の命を優先する型破りな修道女で、タバコも吸えば、教会の上層部にも平気で食ってかかる。ソン・ヘギョ本人は、ユニアについて「自分にはできない勇敢な選択ができる女性」だから惹かれたと語っている。オカルトというジャンルよりも、信念の違う二人の女性がひとりの少年を救おうとする人間ドラマに魅力を感じたという。
ミカエラ(演:チョン・ヨビン)[編集]
パウロ神父のもとで働く修道女。当初は医学的なアプローチを信じていたが、やがてユニアと手を組むことになる。チョン・ヨビンは役作りのために教会に通い、修道院の生活や祈り方を学び、撮影期間中は「朝晩ミカエラとして祈った」と明かしている。ドラマ『ヴィンチェンツォ』の弁護士役などで知られる彼女だが、本作では台詞よりも「反応」の演技を最も重視したとのこと。同時期には映画『ハルビン』にも出演しており、二作続けて年末年始の韓国の劇場をにぎわせた。
パウロ神父(演:イ・ジヌク)[編集]
精神科の専門医でもある神父。悪魔の存在を信じず、ヒジュンを医学的に治療しようとする「理性の側」の人物として、ユニアの前に立ちはだかる。演じるイ・ジヌクは、同時期に『イカゲーム』シーズン2にも出演していた。
ヒジュン(演:ムン・ウジン)[編集]
悪霊に取り憑かれた少年。青白い肌や浮き上がる血管など、特殊メイクを駆使して憑依状態が表現された。ムン・ウジンは撮影について、照明や小道具がそろったセットのベッドに横たわった瞬間に一気に役に入り込めたと振り返っている。ソン・ヘギョも、読み合わせの段階から素晴らしく、悪魔祓いの場面では圧倒されたと絶賛した。
その他の人物[編集]
悪魔祓いを執り行うアンドレア神父をホ・ジュノが、巫女ヒョウォンをキム・グッキが、その弟子エドンをシン・ジェフィが演じた。そして終盤には、前作『プリースト 悪魔を葬る者』の主人公の一人である神学生チェ・ジュノ役でカン・ドンウォンが特別出演している。
制作[編集]
ソン・ヘギョ、撮影の半年前からタバコを練習[編集]
本作で最も話題になった役作りエピソードがこれ。ソン・ヘギョはもともと非喫煙者だが、ユニアには喫煙シーンが多かったため、撮影の6か月前から喫煙の練習を始めたと2025年1月20日の試写会後の記者懇談会で明かした。「吸うふりは観客にすぐ見抜かれる」と考えたためだという。クォン監督も、喫煙シーンの練習や、相手役に合わせて呼吸まで変えるソン・ヘギョのプロ意識と繊細さに感動したと語っている。また、悪魔祓いの場面の撮影は3〜4日間に及び、体力的にかなり過酷だったという。
チョン・ヨビンはソン・ヘギョの推し[編集]
ソン・ヘギョはチョン・ヨビンについて「個人的に大ファン」で、脚本を読んだときにミカエラ役にぴったりだと感じたと語っている。監督側も、まるでテレパシーのように製作陣の希望とソン・ヘギョの意見が一致したキャスティングだったと振り返った。チョン・ヨビンの側も、ソン・ヘギョはユニアと似ている部分が多かったとし、「私もいつか誰かにとってそんな先輩になれたら」とコメントしている。
カトリックと巫俗のクロスオーバー[編集]
本作の大きな特徴は、カトリック式の悪魔祓いに、韓国の巫俗(シャーマニズム)やタロットカードといった別の信仰・占いの要素を組み合わせた点にある。クォン監督はこの融合こそが本作の新鮮な視点だと述べ、制作報告会では「現実に近いほどオカルトは強烈なスペクタクルとして感じられる」とも語った。美術ではユニアたちが拠点とする修道院、巫女ヒョウォンの祠、染色工場といった空間が作り込まれ、美術監督のチョ・ファソンは、空間そのものがジャンル的でグロテスクに見えるよう、物の配置や量を調整したという。タロットカードや木綿の布、「ペテロの鍵」といった小道具も物語上の重要なアイテムとして登場する。
撮影から公開まで[編集]
撮影は2024年2月22日から5月25日まで行われた。2024年12月16日にはソウル・龍山のCGVで制作報告会が開かれ、クォン監督とソン・ヘギョ、チョン・ヨビン、イ・ジヌク、ムン・ウジンが登壇。2025年1月20日にソウル・江南のメガボックスCOEXで試写会と記者懇談会を経て、旧正月(ソルラル)連休直前の1月24日に公開された。
興行成績[編集]
韓国:損益分岐点を突破[編集]
公開前日の1月23日時点で前売り数は約16万6千枚となり、『ヒットマン2』や『言えない秘密』を抑えて予約率1位に立った。公開初日には約16万人を動員し、公開直後の3日間はボックスオフィス首位を守った。最初の週末の興行収入は約57億ウォン(約390万米ドル)と報じられている。
製作費は約103億ウォン。当初の損益分岐点は230万人以上と見られていたが、160か国への海外先行販売によって約160万人ラインまで下がったとされる。公開から3週目の2025年2月9日にこのラインを突破し、2月10日時点の累計観客数は約160万人だった。ただしこの時点では『ヒットマン2』、『言えない秘密』、ハ・ジョンウ主演の『ブロークン』に次ぐ4位まで順位を落としており、最終的な韓国での動員は約167万人に落ち着いた。全世界の興行収入は約1,200万米ドルとされる。
インドネシアで大ヒット[編集]
本作は韓国と同じ2025年1月24日にインドネシア・台湾・モンゴルで封切られ、その後フィリピン、オーストラリア、タイ、北米(2月7日)、シンガポール、マレーシア、ベトナムと順次公開された。とくにインドネシアでの反響は大きく、公開初週に約31万人を動員して韓国映画として過去最高のオープニングと報じられ、2月11日までに累計約107万人を突破。2025年にインドネシアで100万人を超えた最初の映画になったという。フィリピンでも2週連続でボックスオフィス1位を記録した。インドネシアのメディアは、差別化された設定でオカルトジャンルに新しい方向性を示した作品として評価している。
日本公開[編集]
日本では『鬼胎(クィテ) 黒い修道女』の邦題で、クロックワークス配給により2026年1月30日からシネマート新宿ほかで公開された。字幕翻訳は石井絹香。原題の「黒い修道女たち」ではなく、「鬼胎(クィテ)」というホラー色の強い言葉を冠した邦題になっている。
評価[編集]
観客の評価は賛否[編集]
2025年2月10日時点で、CGVの観客評価指標「ゴールデンエッグ指数」は75%、ネイバーの実観客評点は6.53と、大ヒット作としてはやや控えめな数字にとどまった。ソン・ヘギョとチョン・ヨビンの演技、ムン・ウジンの憑依演技は高く評価された一方、前作ほどの緊張感がないという声もあった。
宗教的な設定へのツッコミ[編集]
カトリックの教会法では、正式な悪魔祓い(エクソシズム)を行えるのは叙階された司祭に限られる。本作はまさに「叙階を受けていない修道女が禁じられた儀式を行う」ことをドラマの核に置いているが、その一方で修道女の誓願と司祭の叙階の扱いなど、カトリックの設定や用語の描き方には細かな矛盾があるという指摘も出た。
賞レース[編集]
2025年の百想芸術大賞では、ソン・ヘギョが映画部門の主演女優賞、チョン・ヨビンが助演女優賞、ムン・ウジンが新人演技賞にノミネートされた。同年の青龍映画賞でもソン・ヘギョとチョン・ヨビンがノミネートされ、釜日映画賞ではチョン・ヨビンとムン・ウジンが候補入り。黄金撮影賞ではチョン・ヨビンが主演女優賞を受賞している。

前作『プリースト 悪魔を葬る者』との関係[編集]
どこがつながっているのか[編集]
本作は前作と同じ世界観の上に成り立っている。ヒジュンに取り憑いた悪霊は、前作でも語られた「12形象」と呼ばれる悪霊のひとつという設定で、悪霊の名前や儀式の手順など、前作を観た人ならピンとくる要素が随所にある。音楽のキム・テソンが続投しているため、劇伴の雰囲気も地続きだ。
カン・ドンウォンのサプライズ出演[編集]
最大のファンサービスは、終盤に前作の神学生チェ・ジュノ役でカン・ドンウォンが登場すること。韓国メディアは「カン・ドンウォンが支援射撃」と報じ、前作ファンを大いに喜ばせた。この登場によって、シリーズがさらに続く可能性もファンの間で取り沙汰されている。
前作監督のその後[編集]
前作のチャン・ジェヒョン監督は、その後『サバハ』(2019年)、『破墓/パミョ』(2024年)と、宗教や巫俗をモチーフにしたオカルト映画を撮り続け、「Kオカルト」ブームの立役者となった。本作はそのブームの中で、監督の異なる“もう一つの系譜”として公開された形だ。韓国オカルト映画としては、ナ・ホンジン監督の『哭声/コクソン』(2016年)なども同じ流れで語られることが多い。
余談[編集]
- 企画段階の2023年11月には、ソン・ヘギョが『黒い修道女たち(仮題)』への出演を前向きに検討中と報じられ、この時点で「女性版『黒い司祭たち』」として注目を集めた。
- ソン・ヘギョは本作でロマンス作品から距離を置きたかったとも語っており、「きれい」よりも「演技が良かった」と言われたいとコメントしている。
- 公開時期の韓国の興行は、クォン・サンウ主演『ヒットマン2』、D.O.(ド・ギョンス)主演『言えない秘密』と、ジャンルの違う作品が旧正月連休を争う構図だった。
- 前作の監督チャン・ジェヒョンが『破墓/パミョ』で大ヒットを飛ばした翌年の公開だったため、韓国では「Kオカルト」ブームの次の一手として期待された。
- 日本の邦題に入った「鬼胎(クィテ)」は原題にはない言葉で、作品のホラー色を前面に出した日本独自のタイトルである。
