| 別れる決心 헤어질 결심 Decision to Leave | |
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![]() ソレ役のタン・ウェイ(2022年8月、Marie Claire Koreaの撮影時)(出典:ウィキメディア・コモンズ、作者:Marie Claire Korea、CC BY 3.0) | |
![]() ヘジュン役のパク・ヘイル(2022年7月)(出典:ウィキメディア・コモンズ、作者:Lotte Entertainment、CC BY 3.0) | |
| 監督 | パク・チャヌク |
| 製作 | パク・チャヌク |
| 脚本 |
チョン・ソギョン パク・チャヌク |
| 出演 |
タン・ウェイ パク・ヘイル イ・ジョンヒョン コ・ギョンピョ パク・ヨンウ キム・シニョン ユ・スンモク |
| 撮影 | キム・ジヨン |
| 音楽 | チョ・ヨンウク |
| ジャンル | サスペンス、ロマンス、ミステリー |
| 撮影期間 | 2020年10月 - |
| 制作会社 | モホフィルム(Moho Film) |
| 配給 |
CJエンタテインメント(現・CJ ENM、韓国) MUBI(北米・英国) ハピネットファントム・スタジオ(日本) |
| 劇場公開 |
2022年5月23日(カンヌ国際映画祭) 2022年6月29日(韓国) 2022年10月14日(北米・英国) 2023年2月17日(日本) |
| 配信 | Amazon Prime Videoほか |
| 配信公開 | 2023年5月17日(日本・Prime Video独占配信開始) |
| 上映時間 | 138分 |
| 製作費 | 135億ウォン(約1,040万ドル) |
| 興行収入 |
韓国観客動員 約190万人 世界 約2,170万ドル |
| 言語 | 韓国語、中国語 |
| リンク | 日本公式サイト |
概要[編集]
別れる決心(헤어질 결심、Decision to Leave)とは、2022年に公開された韓国映画である。監督はパク・チャヌク、主演はパク・ヘイルとタン・ウェイ。転落死事件を追う刑事と、容疑者である被害者の妻が惹かれ合っていくサスペンス・ロマンスで、第75回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した。
詳細[編集]
刑事と容疑者の「捜査みたいな恋」[編集]
舞台は韓国の港町・釜山。不眠症に悩む几帳面な刑事チャン・ヘジュンは、山頂から男性が転落死した事件を担当する。死んだのは元出入国管理局職員のキ・ドス。捜査線上に浮かんだのは、夫の死にまったく動じない若い妻、ソン・ソレだった。中国出身で、介護の仕事をしながら暮らす彼女は、どこか謎めいていて、取り調べのたびにヘジュンの心を揺らしていく。
張り込みと尋問を重ねるうちに、「疑う」と「知りたい」の境目がどんどん曖昧になっていく。双眼鏡で彼女の生活をのぞくヘジュンの視線は、いつしか刑事のものではなくなっていく。物語の骨組みはオーソドックスな刑事サスペンスなのに、見終わったときに残るのはラブストーリーの余韻、という不思議な構造の作品である。
『お嬢さん』から6年ぶりの長編[編集]
本作はパク・チャヌクにとって『お嬢さん』(2016年)以来、6年ぶりの長編映画にあたる。『オールド・ボーイ』をはじめとする「復讐三部作」で知られる監督だが、本作では露骨な暴力描写や過激な性描写を意図的に抑え、大人の感情の機微そのものをサスペンスに仕立てた。監督自身、2022年12月の来日イベントで本作を「コロナ禍を経て初めて作った映画」と語っている。
脚本は『親切なクムジャさん』以来の長年の相棒であるチョン・ソギョンとの共同執筆。製作はパク・チャヌク自身が率いるモホフィルムで、2020年10月にクランクインした。
海と山、ふたつの町[編集]
物語は海辺の大都市・釜山と、霧の立ちこめる架空の町「イポ(이포)」を行き来する。ヘジュンは釜山で働き、妻のジョンアンはイポの原子力発電所に勤めているため、夫婦は週末だけ一緒に暮らす週末婚状態。前半は山、後半は海と、画面の中心となる風景も大きく切り替わる。
監督は「韓国らしい映画を撮りたかった」と語っており、山と海という韓国の地形そのものを物語の装置にしている。山は誇りと規律を重んじるヘジュンの側、海は形を変えながら何もかもを飲み込むソレの側を象徴する、という読み解きが広く語られている。
あらすじ[編集]
※以下、結末を含むネタバレがあります。
第1部:山[編集]
釜山の刑事チャン・ヘジュンは、相棒の後輩刑事スワンとともに、岩山の頂上から転落死したキ・ドスの事件を担当する。妻のソン・ソレは中国から韓国に渡ってきた女性で、高齢者の訪問介護の仕事をしている。夫の死を知らされても取り乱さない彼女に、ヘジュンは違和感と同時に強い興味を抱く。
ソレの体には夫から受けたとみられる傷やあざがあり、入れ墨まで刻まれていた。動機は十分。しかし彼女には、事件当時は介護先の老婦人の家にいたというアリバイがあった。ヘジュンは張り込みを続けるうち、彼女の生活ぶりに惹かれていき、取調室で寿司の出前を一緒に食べるような、奇妙に親密な時間を過ごすようになる。
やがてソレは、中国で末期の病に苦しんでいた母親を、母親自身の頼みで死なせた過去を打ち明ける。さらにキ・ドスの遺書とみられる手紙も見つかり、ヘジュンは事件を自殺として処理する。二人の距離は一気に縮まっていく。
ところがヘジュンは、ソレが介護先の老婦人のスマートフォンと自分のスマートフォンを入れ替え、アリバイを偽装していたことに気づいてしまう。山を登ったのはソレ本人だった。真相を突きつけたヘジュンは、刑事としての誇りが「崩壊」したと告げ、証拠となるスマートフォンを「海に捨てろ」と言い残して彼女の前から去る。
第2部:海[編集]
13か月後。不眠症が悪化したヘジュンは、妻の住むイポへ移っていた。そこでヘジュンは、新しい夫イム・ホシンと暮らすソレと再会する。直後、ホシンが自宅のプールで死体となって発見され、ソレは再び事件の関係者となる。
ホシンの事件は別の人物の自供によって片づくが、その背後にソレの関与がうかがえる事実が次々と浮かび上がる。ソレは、あの日ヘジュンが「海に捨てろ」と言ったスマートフォンを手放していなかった。彼女にとってあの言葉は、ヘジュンからの愛の告白だったのだ。
ソレは自分が「ヘジュンの未解決事件」として残り続けることを選ぶ。満ち潮が迫る砂浜で、彼女は自ら掘った穴に身を沈め、ヘジュンは彼女の名前を叫びながら波打ち際を探し続ける。そこで物語は幕を閉じる。
キャスト[編集]
主要人物[編集]
- ソン・ソレ(演:タン・ウェイ)
- 転落死したキ・ドスの妻。中国出身で、韓国語はまだ不慣れ。介護の仕事をしながら暮らす。言葉の壁があるため、ときに翻訳アプリを使って会話する。演じたタン・ウェイは中国出身の俳優で、アン・リー監督の『ラスト、コーション』(2007年)で世界的に知られる。パク・チャヌクは同作の彼女を見て起用を決めたとされる。
- チャン・ヘジュン(演:パク・ヘイル)
- 釜山警察の警部。礼儀正しく端正で、刑事という仕事に誇りを持つ男。重い不眠症を抱えている。演じたパク・ヘイルは『殺人の追憶』(2003年)や『グエムル -漢江の怪物-』(2006年)で知られる実力派。役名の「ヘジュン」はパク・ヘイル本人の名前の「ヘ(海)」にちなむという。
- アン・ジョンアン(演:イ・ジョンヒョン)
- ヘジュンの妻。イポの原子力発電所で働く合理的な女性で、週末だけ夫と過ごす。
- スワン(演:コ・ギョンピョ)
- ヘジュンの部下の若手刑事。直情的で、ソレを最初から強く疑っている。
そのほかの人物[編集]
- イム・ホシン(演:パク・ヨンウ):ソレの二番目の夫。
- ヨンス(演:キム・シニョン):イポ警察でヘジュンと組む刑事。
- キ・ドス(演:ユ・スンモク):第1部の被害者。ソレの最初の夫で、元出入国管理局職員。
- そのほか、チョン・ヨンスク、パク・ジョンミン、ソ・ヒョヌ、ユ・テオらが出演している。
日本語吹替版[編集]
日本公開にあたっては吹替版も制作され、ヘジュン役を諏訪部順一、ソレ役を沢城みゆきが担当した。諏訪部は、パク・ヘイルの抑制の効いた演技に合わせて「ブレーキ主体でコントロールしながら」演じたとコメントしている。
制作[編集]
着想は歌謡曲と北欧ミステリー[編集]
パク・チャヌクが本作の発想源として挙げているのが、韓国の往年のヒット歌謡「霧(안개)」と、スウェーデンの警察小説シリーズ「マルティン・ベック」である。「霧」は劇中でさまざまなバージョンで流れ、霧の町イポのイメージとも重なる。一方、礼儀正しく穏やかで品のある刑事ヘジュンの人物像は、マルティン・ベックをモデルにしたという。
タン・ウェイの「韓国語特訓」[編集]
ソレは韓国語がうまく話せない中国人女性という設定だが、演じるタン・ウェイ自身も韓国語はほぼ話せなかった。韓国人の映画監督と結婚している彼女だが、家庭ではほとんど韓国語を使っていなかったという。撮影前は空き時間のほとんどを、パク・チャヌクとパク・ヘイルが一文ずつ録音してくれた韓国語のセリフを聞くことに費やした。
タン・ウェイは、監督が「赤ちゃんに歩き方を教えるように」辛抱強くセリフを教えてくれたと振り返っている。パク・ヘイルもヘジュンのセリフを録音して渡し、逆にタン・ウェイからは中国語の録音を受け取った。ソレのややぎこちない、どこか古風な韓国語は、こうした実際の言語習得の過程がそのまま役に生きたものだとパク・ヘイルは語っている。
パク・ヘイルの起用[編集]
パク・ヘイルは、脚本が完成する前にパク・チャヌクとチョン・ソギョンから出演を打診された。脚本がまだなかったため、監督は1時間ほどノンストップで物語を説明したという。パク・ヘイルはヘジュンを「控えめで礼儀正しく、威厳があり、自分の仕事に誇りを持つ」人物と表現し、これまで想像したこともないタイプの役だったと語っている。ソレへの感情が芽生える転機は、遺体安置所の場面だったと分析している。
撮影前、二人は釜山のチャイナタウンにある寺を訪れ、本堂で並んで座った。この出来事がのちの劇中の場面とそっくりだったことも、タン・ウェイがインタビューで明かしている。
おなじみの「パク・チャヌク組」[編集]
脚本のチョン・ソギョンのほか、美術のリュ・ソンヒ、編集のキム・サンボム、音楽のチョ・ヨンウク、衣装のクァク・ジョンエら、長年の常連スタッフが再集結した。一方、撮影監督にはパク・チャヌク作品初参加のキム・ジヨンを起用。スマートフォンの画面越しや死者の視点など、ありえない位置からのカメラワーク、夢と現実の境目をぼかす大胆な場面転換が、本作の大きな見どころになっている。
公開と興行[編集]
カンヌから韓国公開へ[編集]
2022年5月23日、第75回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で世界初上映され、パク・チャヌクが監督賞を受賞した。同じ年のカンヌでは、ソン・ガンホが是枝裕和監督の韓国映画『ベイビー・ブローカー』で男優賞を受けており、韓国映画にとって二冠の年となった。
韓国では2022年6月29日に1,374スクリーンで公開。初日に約11万4,000人を動員して興行ランキング1位でスタートし、公開2週間で観客100万人を突破した。最終的な韓国での観客動員は約190万人で、2022年の韓国映画では興行収入10位。世界興行収入は約2,170万ドルとされる。
リピーター続出と脚本集ベストセラー[編集]
韓国では興行成績以上に、熱心なリピーターの存在が話題になった。2022年7月に予約販売が始まった脚本集は、韓国の大手書店YES24のベストセラー1位を獲得し、2週連続でトップを維持している。日本の配給元も、韓国で「社会現象レベルのブーム」を巻き起こしたと紹介した。
海外での公開[編集]
北米と英国では配信サービスも手がけるMUBIが配給し、2022年10月14日に劇場公開された。同年12月9日からはMUBIで配信が始まり、同サービスでもっとも視聴された作品になったとされる。
評価[編集]
批評家の反応[編集]
批評サイトRotten Tomatoesでは批評家の支持率94%、Metacriticでは85点で「普遍的な称賛」に分類された。The Hollywood Reporterは監督を「キャリアの頂点にいる世界的芸術家」と絶賛し、英The Observerは五つ星評価をつけた。
年間ベストにも数多く選ばれ、ニューヨーク・タイムズの2022年ベスト10では8位、IndieWireでは5位にランクイン。2025年にはIndieWireの「2020年代ベスト映画100」で10位、ローリング・ストーン誌の「21世紀ベスト映画100」で89位に選ばれている。
日本での評価[編集]
日本でも評価は高く、「週刊文春CINEMA」の2023年公開作品ベストテンでは5位に入った。選者からは「有名作品のオマージュに留まらない強靭なメロドラマ」といった評が寄せられている。第78回毎日映画コンクールでは外国映画ベストワン賞の候補にも選ばれた。
受賞[編集]
国際映画賞[編集]
- 第75回カンヌ国際映画祭:監督賞(パク・チャヌク)。パク・チャヌクにとっては『オールド・ボーイ』のグランプリ、『渇き』の審査員賞に続く3度目のカンヌ受賞となった。
- 第95回アカデミー賞:国際長編映画賞の韓国代表作品に選出され、ショートリスト(最終候補15本)入り。ただしノミネートには至らなかった。
- 第80回ゴールデングローブ賞:非英語映画賞ノミネート
- 第76回英国アカデミー賞:非英語作品賞、監督賞ノミネート
- アジア・フィルム・アワード:主演女優賞(タン・ウェイ)、脚本賞、美術賞ほか
韓国国内の映画賞[編集]
- 第43回青龍映画賞:13部門ノミネート、作品賞・監督賞・主演男優賞(パク・ヘイル)・主演女優賞(タン・ウェイ)・脚本賞・音楽賞・人気スター賞の7冠
- 百想芸術大賞(2023年):映画部門大賞、監督賞など3冠
- 大鐘賞(2022年):作品賞・主演男優賞・脚本賞の3冠
タン・ウェイは青龍映画賞の主演女優賞をはじめ、韓国国内の複数の映画賞で主演女優賞を受けている。
日本での公開・配信[編集]
劇場公開[編集]
日本ではハピネットファントム・スタジオの配給(提供:ハピネットファントム・スタジオ、WOWOW)で、2023年2月17日に全国公開された。上映時間は138分。公開に先立つ2022年12月26日にはTOHOシネマズ日比谷でジャパンプレミアが開かれ、パク・チャヌクが『お嬢さん』以来5年10か月ぶりに来日。特別ゲストとして俳優の磯村勇斗も登壇し、「何度も観たくなる大人の危険なラブストーリー」とコメントした。
配信[編集]
2023年5月17日からAmazon Prime Videoで独占配信が始まった。2026年10月時点で配信サービス比較サイトJustWatchの日本版では、Prime VideoのほかU-NEXT、Huluが見放題、FODがレンタルとして掲載されている。配信状況は変わることがあるので、視聴前に各サービスで確認したい。
パッケージ[編集]
Blu-rayとDVDも発売されており、監督コメンタリーやカンヌの舞台裏映像などの特典映像、前述の吹替版を収録している。
炎上とバズ[編集]
BTSのRMが「何度も観た」[編集]
BTSのリーダーRMが本作に心酔したことは韓国でも大きな話題になった。RMはバラエティ番組で本作への愛を語り、パク・チャヌク監督もジャパンプレミアで、RMが何度も観てくれたことに感謝を述べている。さらに2023年2月21日には、RMのソロアルバム『Indigo』の収録曲「Closer (with Paul Blanco, Mahalia)」のミュージックビデオが、本作とのコラボレーション映像として公開された。
セリフがネットミームに[編集]
韓国では、ソレの独特な言い回しや「崩壊(붕괴)」「ついに(마침내)」といったセリフが、ファンの間で繰り返し引用された。ぎこちない韓国語の語感がかえって印象に残り、SNSでパロディ化されるほどの人気になったとされる。
余談[編集]
- パク・チャヌクが映画監督を志すきっかけになったのは、アルフレッド・ヒッチコックの『めまい』(1958年)だといわれる。刑事が謎めいた女性に囚われていく本作の構図に、『めまい』の影響を見る批評は多い。
- ヘジュンを演じたパク・ヘイルは、同じ2022年に公開された戦争映画『ハンサン -龍の出現-』でも主演しており、韓国の夏の劇場で主演作2本が並ぶ形になった。
- 日本の公式Xアカウント(@wakare_movie)は2022年10月に開設され、プロフィールでは監督・脚本・主要キャスト4人を紹介。Blu-ray・DVDの発売告知や、毎日映画コンクールのノミネート報告などを発信している。
- 2022年のカンヌ国際映画祭では、本作の監督賞と、ソン・ガンホの男優賞(『ベイビー・ブローカー』)によって韓国映画が二冠を達成した。3年前の2019年にはポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』がパルム・ドールを受けており、カンヌにおける韓国映画の存在感を改めて示した年となった。
- ジャパンプレミアで来日したパク・チャヌクは、撮影現場で何より大事にしているのはスタッフとの「対話」だと語り、日本語を身につけて日本映画と組んでみたいという意欲ものぞかせた。

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