| 男はつらいよ It's Tough Being a Man / Tora-san | |
|---|---|
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東京・葛飾柴又の「葛飾柴又寅さん記念館」(出典:Wikimedia Commons) | |
| 監督 | 山田洋次(第3作は森崎東、第4作は小林俊一) |
| 製作 | 松竹 |
| 脚本 | 山田洋次 ほか |
| 原作 | 山田洋次 |
| 出演 | 渥美清、倍賞千恵子、前田吟、三崎千恵子、森川信/松村達雄/下條正巳、太宰久雄、笠智衆、佐藤蛾次郎、吉岡秀隆 ほか |
| 撮影 | 高羽哲夫 ほか |
| 音楽 | 山本直純 |
| ジャンル | 人情喜劇 |
| 制作会社 | 松竹 |
| 配給 | 松竹 |
| 劇場公開 | 1969年8月27日(第1作)〜2019年12月27日(第50作) |
| 配信 | U-NEXT、Hulu ほか(2026年時点) |
| 興行収入 | 配給収入 約464億円(第48作までの累計) |
| 言語 | 日本語 |
| 前作 | 男はつらいよ(1968年 - 1969年、フジテレビのテレビドラマ) |
| リンク | https://www.cinemaclassics.jp/tora-san/ |
概要[編集]
男はつらいよ(おとこはつらいよ)とは、山田洋次が原作・脚本を手がけ、渥美清が主人公「フーテンの寅」こと車寅次郎を演じた松竹の映画シリーズである。1969年の第1作から2019年の第50作『お帰り 寅さん』まで全50作が作られ、「一人の俳優が演じた最も長い映画シリーズ」としてギネスブックに認定された。
詳細[編集]
どんな話?[編集]
舞台は東京都葛飾区柴又。柴又帝釈天の参道で団子屋「とらや」(のちの「くるまや」)を営む叔父夫婦のもとへ、テキ屋稼業で全国を渡り歩く寅次郎がふらりと帰ってくる。腹違いの妹・さくらやその家族と再会して大喜びするのも束の間、ささいなことから大ゲンカ。そこへ毎回「マドンナ」と呼ばれる美しい女性が現れ、寅さんは一目ぼれ。ところが恋は実らず、最後はトランク片手に再び旅へ出る……というのが基本の流れだ。
いわば「毎回フラれる男の話」なのだが、そのワンパターンこそが最大の魅力。観客は寅さんが失恋すると分かっていて劇場に通い、お盆と正月に寅さんの顔を見ることが日本の季節の風物詩になった。昭和の家族の風景、日本各地の美しいロケ地、ちょっと寂しいラストが詰まった、いわば「動く昭和の日本」とも言えるシリーズである。
数字で見るシリーズ[編集]
第1作の観客動員は54万3000人とスタートは控えめだったが、作を重ねるごとに人気が上昇。シリーズ平均は1作あたり約165万人、第48作までの累計では観客動員約7957万人、配給収入約464億円に達した。1972年から1985年ごろまではお盆と年末年始の年2回公開が定番となり、松竹の「ドル箱」として長く会社を支えた。
山田洋次が「完結編」のつもりで撮った作品もあったが、そのたびにヒットして続行が決まり、結局は主演の渥美清が亡くなる1996年まで新作が作られ続けた。その後、特別篇(第49作)と、22年ぶりの新作となる第50作『お帰り 寅さん』が公開されている。
監督・スタッフ[編集]
50作のうち48作は山田洋次が監督。例外は第3作『フーテンの寅』(森崎東監督)と第4作『新 男はつらいよ』(小林俊一監督)の2本だけである。小林俊一はテレビドラマ版の演出を担当した人物で、ドラマ版と映画版の橋渡し役でもあった。
撮影は高羽哲夫、音楽は山本直純が長く担当し、あの「どうせおいらはヤクザな兄貴〜」で始まる主題歌は作詞が星野哲郎、作曲が山本直純、歌は渥美清本人。主題歌のシングルは1970年に発売され、38万枚を売り上げたとされる。
歴史[編集]
始まりはフジテレビのドラマ[編集]
『男はつらいよ』の原点は映画ではなく、フジテレビで1968年10月3日から1969年3月27日まで、木曜22時に放送されたテレビドラマ(全26話)である。脚本は山田洋次、主演はもちろん渥美清。さくら役はこの時点では長山藍子だった。
最初は視聴率に苦戦したが、回を追うごとに数字を伸ばし、最終的には20%台を記録するまでに成長。そして迎えた最終回、寅次郎はハブ酒で一儲けしようと奄美大島へ渡り、なんとハブに噛まれて死んでしまう。この結末に視聴者から「なぜ寅を殺した」とテレビ局に抗議が殺到し、その反響が映画化への追い風になった。
ちなみにドラマ版は柴又でのロケを一度も行わず、全てセット撮影。また当時は放送用テープを使い回すのが一般的だったため、現存しているのは第1話と最終話だけとされる。最終回のロケは当時アメリカ統治下だった沖縄を避け、徳之島で行われた。
1969年、松竹で映画化[編集]
「テレビ番組の映画化」に松竹は当初乗り気ではなかったが、山田洋次とプロデューサーの上村力が説得し、城戸四郎社長のゴーサインで実現した。こうして1969年8月27日に第1作『男はつらいよ』が公開される。現在、8月27日は「『男はつらいよ』の日」とされている。
実はこの時点では2作で終わる予定だった。ところが評判が評判を呼び、第2作『続 男はつらいよ』、第3作、第4作……と続々製作。山田洋次は第5作『望郷篇』を完結編のつもりで撮ったものの、これがさらにヒットしてシリーズは継続。第8作『寅次郎恋歌』のころには完全に松竹の看板シリーズとなっていた。
黄金期とギネス認定[編集]
1970年代から80年代にかけては、まさに寅さんの黄金時代。吉永小百合、浅丘ルリ子、松坂慶子ら当代の人気女優が次々とマドンナを務め、「マドンナに選ばれること」自体がニュースになった。シリーズが30作を超えたあたりで、作品数として世界最長の映画シリーズとしてギネスブック国際版に認定され、「一人の俳優が演じた最も長い映画シリーズ」として語り継がれている。
1980年代後半からは寅さんの甥・満男(吉岡秀隆)の恋の行方が物語の軸に加わり、第42作『ぼくの伯父さん』からは満男と後藤久美子演じる泉の青春物語が並行して描かれるようになった。1990年以降は年末年始のみの年1本ペースとなる。
渥美清の死去と特別篇[編集]
1995年12月公開の第48作『寅次郎紅の花』が、渥美清の生前最後の作品となった。1996年8月、渥美清が死去し、シリーズはここで一度幕を下ろす。
翌1997年には、第25作『寅次郎ハイビスカスの花』に新たな映像を加えた『寅次郎ハイビスカスの花 特別篇』が公開され、これが公式に第49作として数えられている。特別篇では主題歌を八代亜紀が歌った。
2019年『お帰り 寅さん』[編集]
第1作から50周年となる2019年、シリーズ全49作の4Kデジタル修復が完了。その仕上がりに山田洋次自身が驚いたことが、新作製作のきっかけの一つになったという。そして2019年12月27日、第50作『男はつらいよ お帰り 寅さん』が公開された。特別篇から22年ぶりの新作である。
物語は小説家になった満男と、かつて思いを寄せた泉の再会を軸に、過去作の寅さんの名場面を織り込んで描かれる。倍賞千恵子、前田吟、吉岡秀隆、後藤久美子、夏木マリ、浅丘ルリ子らおなじみの面々が再集結し、オープニングでは桑田佳祐が主題歌を歌った。第32回東京国際映画祭のオープニング作品にも選ばれている。公開前夜の舞台挨拶では、倍賞千恵子が涙を見せ、前田吟は「寅さんがいつ帰ってきてもいいように、くるまやの2階を掃除している」と語って会場を和ませた。
同じ2019年にはNHK土曜ドラマ『少年寅次郎』(寅さんの少年時代を描くドラマ)も放送され、50周年は一大プロジェクトとして盛り上がった。
とらや(くるまや)の人々[編集]
シリーズの舞台となる柴又の団子屋には、毎回おなじみの顔ぶれがそろう。寅さんが帰ってくる「家」であり、マドンナと並ぶもう一つの主役と言ってもいい。
| 役名 | 立場 | 演者 |
|---|---|---|
| 車寅次郎(寅さん) | 主人公。テキ屋稼業で全国を旅するフーテン | 渥美清 |
| 諏訪さくら | 寅の腹違いの妹。博の妻 | 倍賞千恵子(ドラマ版は長山藍子) |
| 車竜造(おいちゃん) | 寅の叔父。団子屋の主人 | 森川信(第1〜8作)→松村達雄(第9〜13作)→下條正巳(第14〜48作) |
| 車つね(おばちゃん) | 竜造の妻 | 三崎千恵子(ドラマ版は杉山とく子) |
| 諏訪博 | さくらの夫。裏の印刷工場の職工 | 前田吟 |
| 諏訪満男 | さくらと博の息子 | 中村はやと ほか→吉岡秀隆(第27作以降) |
| 桂梅太郎(タコ社長) | 裏の印刷工場の社長 | 太宰久雄 |
| 御前様 | 柴又帝釈天の住職 | 笠智衆(第1〜45作)。第50作では笹野高史が当代の御前様を演じた |
| 源公 | 帝釈天の寺男。寅の舎弟分 | 佐藤蛾次郎 |
| リリー | 旅回りの歌手。寅の「最愛の相手」とも言われる | 浅丘ルリ子 |
| 及川泉 | 満男の初恋の相手 | 後藤久美子 |
さくら[編集]
寅さんのたった一人の妹で、シリーズの「良心」とも言える存在。兄の無鉄砲ぶりに呆れながらも、最後には必ず味方になり、柴又駅のホームで旅立つ兄を見送る。演じた倍賞千恵子は全50作に出演しており、寅さんと並ぶもう一人の「顔」である。「寅さんファミリー」の中心として、第50作の公開前夜の舞台挨拶では涙を見せた。
おいちゃん・おばちゃん[編集]
寅さんの育ての親とも言える叔父夫婦。おいちゃん役は森川信、松村達雄、下條正巳と3人が演じ継いだ。甥っ子の寅さんに手を焼きつつ、帰ってくればつい甘やかしてしまう二人と寅さんとの言い合いは毎回の見どころ。おばちゃん役の三崎千恵子は、第1作から第48作まで同じ役を務め、柴又の下町のおかみさん像を体現した。
博と満男[編集]
博は裏の印刷工場で働く実直な青年で、第1作でさくらと結ばれる。映画版ではシリーズを通して前田吟が演じた。満男は第27作から吉岡秀隆が演じ、少年期から大人になるまでをスクリーンで見せた。吉岡秀隆はのちに『ゴジラ-1.0』にも出演し、インタビューで寅さんとの縁に触れている。
タコ社長・御前様・源公[編集]
裏の印刷工場のタコ社長は、資金繰りに頭を抱えながら、寅さんとの取っ組み合いのケンカ要員としても大活躍。帝釈天の御前様を演じた笠智衆は、「バター」とカメラの前で言ってしまう写真撮影の場面などで笑いを取った。源公役の佐藤蛾次郎は第8作を除くほぼ全作に出演し、2022年に78歳で死去した。
歴代マドンナ[編集]
毎回寅さんが恋をする女性が「マドンナ」。日本映画界を代表する女優たちが顔をそろえ、複数回マドンナを務めた女優もいる。以下は松竹公式サイトのマドンナ一覧に基づく全作品の一覧である。
| 作 | 公開年 | タイトル | マドンナ |
|---|---|---|---|
| 1 | 1969 | 男はつらいよ | 光本幸子 |
| 2 | 1969 | 続 男はつらいよ | 佐藤オリエ |
| 3 | 1970 | フーテンの寅 | 新珠三千代 |
| 4 | 1970 | 新 男はつらいよ | 栗原小巻 |
| 5 | 1970 | 望郷篇 | 長山藍子 |
| 6 | 1971 | 純情篇 | 若尾文子 |
| 7 | 1971 | 奮闘篇 | 榊原るみ |
| 8 | 1971 | 寅次郎恋歌 | 池内淳子 |
| 9 | 1972 | 柴又慕情 | 吉永小百合(歌子) |
| 10 | 1972 | 寅次郎夢枕 | 八千草薫 |
| 11 | 1973 | 寅次郎忘れな草 | 浅丘ルリ子(リリー) |
| 12 | 1973 | 私の寅さん | 岸惠子 |
| 13 | 1974 | 寅次郎恋やつれ | 吉永小百合(歌子) |
| 14 | 1974 | 寅次郎子守唄 | 十朱幸代 |
| 15 | 1975 | 寅次郎相合い傘 | 浅丘ルリ子(リリー) |
| 16 | 1975 | 葛飾立志篇 | 樫山文枝 |
| 17 | 1976 | 寅次郎夕焼け小焼け | 太地喜和子 |
| 18 | 1976 | 寅次郎純情詩集 | 京マチ子 |
| 19 | 1977 | 寅次郎と殿様 | 真野響子 |
| 20 | 1977 | 寅次郎頑張れ! | 藤村志保 |
| 21 | 1978 | 寅次郎わが道をゆく | 木の実ナナ |
| 22 | 1978 | 噂の寅次郎 | 大原麗子 |
| 23 | 1979 | 翔んでる寅次郎 | 桃井かおり |
| 24 | 1979 | 寅次郎春の夢 | 香川京子 |
| 25 | 1980 | 寅次郎ハイビスカスの花 | 浅丘ルリ子(リリー) |
| 26 | 1980 | 寅次郎かもめ歌 | 伊藤蘭 |
| 27 | 1981 | 浪花の恋の寅次郎 | 松坂慶子 |
| 28 | 1981 | 寅次郎紙風船 | 音無美紀子 |
| 29 | 1982 | 寅次郎あじさいの恋 | いしだあゆみ |
| 30 | 1982 | 花も嵐も寅次郎 | 田中裕子 |
| 31 | 1983 | 旅と女と寅次郎 | 都はるみ |
| 32 | 1983 | 口笛を吹く寅次郎 | 竹下景子 |
| 33 | 1984 | 夜霧にむせぶ寅次郎 | 中原理恵 |
| 34 | 1984 | 寅次郎真実一路 | 大原麗子 |
| 35 | 1985 | 寅次郎恋愛塾 | 樋口可南子 |
| 36 | 1985 | 柴又より愛をこめて | 栗原小巻 |
| 37 | 1986 | 幸福の青い鳥 | 志穂美悦子 |
| 38 | 1987 | 知床慕情 | 竹下景子 |
| 39 | 1987 | 寅次郎物語 | 秋吉久美子 |
| 40 | 1988 | 寅次郎サラダ記念日 | 三田佳子 |
| 41 | 1989 | 寅次郎心の旅路 | 竹下景子 |
| 42 | 1989 | ぼくの伯父さん | 檀ふみ、後藤久美子 |
| 43 | 1990 | 寅次郎の休日 | 夏木マリ、後藤久美子 |
| 44 | 1991 | 寅次郎の告白 | 吉田日出子、後藤久美子 |
| 45 | 1992 | 寅次郎の青春 | 風吹ジュン、後藤久美子 |
| 46 | 1993 | 寅次郎の縁談 | 松坂慶子 |
| 47 | 1994 | 拝啓車寅次郎様 | かたせ梨乃 |
| 48 | 1995 | 寅次郎紅の花 | 浅丘ルリ子、後藤久美子 |
| 49 | 1997 | 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇 | 浅丘ルリ子 |
| 50 | 2019 | お帰り 寅さん | 後藤久美子、浅丘ルリ子 |
※第2作以降は「男はつらいよ」に続く副題のみを記載。
最多出演マドンナはリリー[編集]
マドンナとして最多の登場を誇るのが、浅丘ルリ子演じる旅回りの歌手・リリー。第11作『寅次郎忘れな草』で初登場し、第15作、第25作、第48作、さらに特別篇と第50作にも登場する。寅さんと同じく根なし草の生き方をするリリーは、ほかのマドンナとは違って寅さんと「対等」な存在として描かれ、ファンの間でも「寅さんが本当に結ばれるべき相手」と語られることが多い。
2回以上務めた女優たち[編集]
吉永小百合は第9作と第13作で同じ歌子役を演じ、竹下景子は第32作・第38作・第41作の3回、松坂慶子は第27作・第46作、大原麗子は第22作・第34作、栗原小巻は第4作・第36作と、それぞれ別の役でマドンナを務めた。後藤久美子は満男の恋人役としての出演で、寅さんのマドンナとは少し立ち位置が違う「満男のマドンナ」である。
マドンナ以外の注目ゲスト[編集]
マドンナでなくとも、のちのスターが若き日に出演しているのもこのシリーズの楽しみ。第16作『葛飾立志篇』では桜田淳子が、寅さんを実の父親だと思い込んで山形から修学旅行で上京してくる女子高生・最上順子を演じた。第20作『寅次郎頑張れ!』では大竹しのぶが中村雅俊演じる青年の恋の相手・福村幸子役で出演している。第30作『花も嵐も寅次郎』には沢田研二が出演し、田中裕子との共演も話題になった。
決まり事[編集]
寅さん映画にはファンなら誰もが知る「お約束」がある。毎回ほぼ同じ流れなのに飽きないのは、このお約束を役者陣が絶妙に演じ切っているからだ。
冒頭の夢[編集]
初期から中期の作品では、映画の冒頭で寅さんが旅先で居眠りをして見る「夢」のシーンから始まるのが恒例だった。時代劇やSF風など、毎回ありえない設定の中で寅さんが大活躍し、目が覚めるとそこはしけた旅館や駅のベンチ……というオチ。後期の作品ではこの夢のシーンは次第に見られなくなった。
口上[編集]
寅さんといえば、テキ屋としての流れるような口上。とりわけ有名なのが自己紹介の名乗りで、「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯を使い、姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの寅と発します」というフレーズは、シリーズを見たことがない人でも聞き覚えがあるほど。啖呵売の名調子は、渥美清自身が若い頃にテキ屋の世界を見聞きした経験が生かされていると言われる。
ケンカと旅立ち[編集]
久々に柴又へ帰った寅さんは、最初こそ大歓迎されるものの、些細な行き違いから、おいちゃんやタコ社長と大ゲンカになるのがお約束。ついには「それを言っちゃあおしまいよ」と捨て台詞を残し、トランクを持って再び旅へ出てしまう。マドンナとの恋に破れた後、さくらに見送られて柴又駅から旅立つ場面もシリーズの定番である。
寅のアリア[編集]
とらやの茶の間で、寅さんがマドンナとの夢のような未来や旅先での出来事を、身振り手振りで大げさに語る場面は、ファンの間で「寅のアリア」と呼ばれる名物シーン。渥美清の語り芸が最も光る見せ場として知られる。
柴又帝釈天と寅さん記念館[編集]
柴又帝釈天と参道[編集]
寅さんの故郷として描かれた柴又帝釈天は、葛飾区柴又にある実在の寺。その参道には団子屋や川魚料理の店が並び、映画を通じて全国から観光客が訪れる名所となった。参道の老舗「髙木屋老舗」は撮影時に休憩や衣装替えの部屋を貸したことから「とらや」のモデルとされるようになり、「門前とらや」は第1作から第4作まで寅さんの実家として撮影に使われたとされる。
映画の団子屋の屋号は、第40作以降「とらや」から「くるまや」に変わっている。改称の理由については諸説ある。
葛飾柴又寅さん記念館[編集]
1997年に開館した、『男はつらいよ』の世界を体感できる記念館。映画で実際に使われた「くるまや」のセットを大船撮影所から移設して展示しているほか、衣装や台本、ジオラマ模型、帝釈人車鉄道の客車の再現などがあり、映画を見たことがなくても昭和の空気を味わえる。2019年の50周年に合わせてリニューアルされ、敷地内には山田洋次監督の仕事を紹介する「山田洋次ミュージアム」も併設されている。名誉館長は葛飾区名誉区民でもある山田洋次が務める。
寅さん像とさくら像[編集]
京成柴又駅前には、トランクを提げて商店街の方を振り返る寅さんの銅像「フーテンの寅像」が立つ。1999年7月に、参道商店街と観光客の募金によって建立されたもので、作者は彫刻家の吉田穂積。失恋して旅立つ途中、名残惜しそうに柴又を振り返る姿をかたどっている。
その後、ファンから「振り返る寅さんの視線の先に、見送るさくらがいてほしい」という声が寄せられ、2017年3月に同じ作者による「見送るさくら像」が完成した。さくら像の台座には山田洋次の短い脚本『ある別れ』が刻まれている。2体そろうと、まさに映画のラストシーンそのものになる。
2025年 - 2026年の動き[編集]
「土曜は寅さん!」全50作放送[編集]
テレビ東京系のBSテレ東では、シリーズを毎週土曜の夕方に放送する「土曜は寅さん!」が長く続いており、2025年にも『寅次郎かもめ歌』『花も嵐も寅次郎』などが放送された。2026年4月4日からは、4Kデジタル修復版で全50作をあらためて放送するシリーズがスタートし、毎週土曜18時45分から第1作から順に放送。9月には第19作『寅次郎と殿様』まで進んでいる。
同じ2026年4月には、NHKのBSで2019年のドラマ『少年寅次郎』の再放送も告知された。
記念館の企画展とコラボ[編集]
2025年は、仮面ライダー響鬼の放送20周年と『男はつらいよ』55周年が重なったことから、葛飾柴又寅さん記念館で異色のコラボ企画「響鬼はつらいよ」が7月19日から8月31日まで開催され、撮影会なども行われた。2026年には恋をテーマにした企画展「アイラブユーできるか?展」(2月14日〜3月22日)、夏には「旅と遊びと寅次郎」(8月31日まで)が開かれている。
ファン感謝祭と上映イベント[編集]
第1作の公開日にちなみ、葛飾区のMOVIX亀有では毎年8月27日前後にファン感謝祭が開かれている。2024年の55周年ファン大感謝祭には山田洋次、玉袋筋太郎、ミキの昴生が登壇。2026年8月27日の回には山田洋次、劇団ひとり、三平役の北山雅康が登壇し、劇団ひとりが一番好きな作品という第17作『寅次郎夕焼け小焼け』が上映された。ファンからの「令和の寅さんは何を売るか」という質問に、山田監督が「AIの利用の仕方」という怪しげな古本を挙げて会場を沸かせた。
ほかにも2026年5月1日には池袋・新文芸坐で山田洋次登壇の『柴又慕情』上映会、6月20日には名古屋で『お帰り 寅さん』のシネマ・コンサート(2024年に初開催)が行われた。地域の図書館などでも上映会が開かれており、2026年7月には江戸川区の小岩図書館で特別篇の上映会が開催されている。秋には毎年恒例の「寅さんサミット2026」が10月31日・11月1日に開催予定と発表された。
グッズと関連作[編集]
干支にちなんだデザインシリーズの2026年版「午年の寅さん」が元日に登場したほか、2025年には55周年記念グッズ、2026年には寅さんモチーフのイラストTシャツ(キッズの「ちび寅」サイズも登場)などが発売された。2024年12月には55周年を記念した4K ULTRA HD Blu-rayも発売されている。
また山田洋次は、さくら役の倍賞千恵子と木村拓哉が初共演した映画『TOKYOタクシー』を監督し、2025年11月21日に公開。シリーズは完結しても、「寅さんファミリー」の監督と女優のタッグは続いている。
どこで見れる?(配信状況)[編集]
2026年9月時点の各種配信情報サイトによると、シリーズは主に次のサービスで視聴できる。配信状況は時期によって変わるため、最新情報は各サービスで確認したい。
- U-NEXT:見放題で配信
- Hulu:見放題で配信
- FOD:配信あり(作品により見放題・レンタルの扱いが異なる場合あり)
- Prime Video:レンタル(1作330円など)
- DMM TV:レンタル
- Netflix:2026年時点では配信一覧に掲載なし
テレビ放送では、BSテレ東の「土曜は寅さん!」で2026年4月から全50作を順次放送中。DVD・Blu-rayは松竹から発売されており、宅配レンタルでも借りられる。
余談[編集]
- ドラマ版は放送用テープの使い回しが当たり前の時代だったため、全26話のうち現存するのは第1話と最終話だけとされる。
- テレビ版が終わったあと、スタッフが小道具を記念に持ち帰ってしまい、映画化が決まって慌てて回収したという逸話がある。
- 寅さんのトレードマークの帽子は、渋谷・道玄坂の店で作られた特注品で、ツバが短めに作られているという。
- 御前様(笠智衆)が写真撮影で「チーズ」の代わりに「バター」と言ってしまう場面は、ファンの間で語り草になっている。
- 2021年12月には、フランス・パリで全50作が一挙上映され、「寅さんパリへ上陸」と報じられた。
- 2024年のファン感謝祭で、ミキの昴生はコロナ禍に全49作を3日間で一気に見て元気をもらったと明かしている。
- 寅さんの魅力を問われた山田洋次は「一言で言って、自由ってことだと思う」と答えている。