| モイ株式会社 TwitCasting / Moi Corporation | |
|---|---|
![]() ツイキャス(TwitCasting)のロゴ(出典:ウィキメディア・コモンズ) | |
| 略称 | ツイキャス |
| 国家 | 日本 |
| 種類 | 株式会社 |
| 市場情報 | 東証グロース 5031 |
| 業種 | 情報・通信業(ライブ配信プラットフォーム) |
| 本社所在地 | 東京都 |
| 設立日 | 2012年2月29日 |
| 年齢 | 14周年 |
| 設立者 | 赤松洋介 |
| 代表者 | 赤松洋介(代表取締役社長) |
| 上場 | 2022年4月27日(東証グロース) |
| 年間売上 | 66億8,800万円(2026年1月期) |
| 主要部門 | ツイキャス、ツイキャスゲームズ、ツイキャス・プレミア |
| 関係する人物 | 赤松洋介、コレコレ |
| 代表作品 | ツイキャス(TwitCasting) |
| 別名 | TwitCasting、キャス |
| リンク | https://twitcasting.tv/ |
概要[編集]
ツイキャス(TwitCasting、ついきゃす)とは、日本のモイ株式会社が運営するライブ配信サービスである。2010年2月にiPhone向けアプリとして始まり、スマートフォン1台で即座に生配信できる手軽さと、Twitter(現X (SNS))との強い連携で10〜20代を中心に広がった。累計登録ユーザーは2024年に4,000万人を突破したとされ、国内最大級の配信プラットフォームのひとつである。
詳細[編集]
誕生の経緯[編集]
開発者の赤松洋介は、もともとサイボウズに在籍していたエンジニアで、同社時代に手がけたサービスが3日で100万アクセスを集めた経験から「エンジニアリングで世の中を変えられる」と考えるようになったと語っている。2005年8月に独立してサイドフィード株式会社を設立し、2009年8月にはインターネット越しにラジコンカーを操作できる「Joker Racer」をリリースした。
このラジコンサービスは、30分ごとにバッテリー交換が必要になるなど事業化が難しかった。しかし、ラジコンを遠隔操作するために作り込んだ「低遅延のライブ映像配信技術」が手元に残り、これをiPhoneに転用したのがツイキャスの起源である。赤松本人は2022年の上場会見で「ラジコンからツイキャスが生まれた」という趣旨の説明をしている。
2010年2月に「TwitCasting」としてリリースされ、名前のとおりTwitterアカウントでログインし、配信開始をそのままツイートで告知できる仕組みが最大の売りだった。その後、2012年2月29日にサイドフィードから会社分割する形でモイ株式会社が設立され、ツイキャス事業を引き継いだ。社名の「モイ」はフィンランド語の気軽な挨拶「Moi!」(やあ、こんにちは)から取られており、赤松が2007年にフィンランドを訪れた際にこの言葉の響きを気に入ったことがきっかけとされる。
普及の経緯とTwitter連携[編集]
ツイキャスが広まった最大の要因は、フォロワーへの告知と視聴者のコメントがTwitter上でそのまま流れる設計にある。配信を始めると「○○がライブ配信中」というツイートがタイムラインに流れ、フォロワーがリンクをタップすれば即座に視聴できる。視聴者のコメントもツイートとして投稿できたため、配信の存在そのものがTwitter上で拡散していった。
2013年3月の時点で登録ユーザーは200万人を突破した。当時の報道によれば、ユーザー数は初年度に25万人、2011年に75万人、2012年に175万人と伸び、2012年11月ごろから急に成長のギアが上がったと赤松は語っている。この時点で既にユーザーの約半数が24歳以下で、10代がメイクを実演しながら雑談するといった気軽な配信が多かった。
同時期の競合だったUstreamやニコニコ動画系のニコニコ生放送が画質や番組性を重視していたのに対し、ツイキャスは画質よりも「ラジオのような双方向のやり取り」を重視した。この「質より手軽さ」という設計思想は、現在までサービスの根幹として受け継がれている。
運営会社モイ株式会社[編集]
モイ株式会社はツイキャス専業に近い企業で、2012年5月にはアメリカ合衆国に子会社Moi Corporationを設立して海外展開も試みたが、同社は2020年3月に清算されている。現在も英語・中国語・韓国語などの多言語版は提供されており、台湾や韓国などにも一定のユーザーがいる。
2022年3月に東京証券取引所から上場承認を受け、同年4月27日に東証グロース市場に上場した(証券コード5031)。公開価格470円に対して初値は902円と、約1.9倍の値を付けた。上場時の調達額は約6億円で、そのうち約3億8,000万円をインフラ投資、約2億1,000万円をマーケティングに充てる計画とされた。
業績面では、コロナ禍の巣ごもり需要で2021年1月期に売上が急増したのち伸び悩み、2025年1月期は売上高65億9,200万円(前期比2.5%増)、2026年1月期は売上高66億8,800万円(同1.5%増)、営業利益3億3,900万円(同45.9%増)と報じられている。
サービスの仕組み[編集]
配信と視聴[編集]
ツイキャスはiPhone・Androidのアプリ、PCのブラウザ、配信ソフトから配信できる。映像付きのライブ配信のほか、カメラを使わない「ラジオ配信(音声のみ)」も選べるのが特徴で、顔を出さずに雑談や歌を配信するスタイルが定着している。視聴はログインなしでも可能だが、コメントやアイテム送付にはアカウントが必要となる。
アカウントはTwitter(X)のほか、Instagram、Facebook、Googleなどの外部アカウントでも作成できる。2016年にはInstagramアカウントでのログインにも対応した。配信者をフォローする仕組みは「サポーター」と呼ばれ、サポーター数がそのまま配信者の人気指標として扱われる。
一枠30分とコンティニューコイン[編集]
ツイキャスの特徴的なルールが「一枠」の考え方である。通常の配信は1枠30分で自動的に区切られ、延長するには「コンティニューコイン」を消費する。コインは視聴者からのアイテムなどで貯まる仕組みで、長時間配信にはある程度の人気が必要という設計になっていた。
2024年11月20日のアップデートで、メンバーシップを開設している配信者は一枠が4時間に拡大され、コイン40枚でさらに4時間延長できるようになった。メンバーシップ非開設者は従来どおり30分枠で、コイン5枚で30分延長する方式が続いている。どちらも最大24時間までの連続配信が可能である。
派生サービス[編集]
2019年8月にはゲーム実況に特化したアプリ「ツイキャスゲームズ」がリリースされた。スマホゲームの画面をそのまま配信できるもので、TwitchやYouTubeのゲーム配信に対抗する位置づけである。このほか、特定のメンバー間だけで配信・視聴できる「グループキャス」(2017年)など、閉じたコミュニティ向けの機能も追加されてきた。
料金・課金と収益化[編集]
アイテム(投げ銭)[編集]
視聴者は無料で配信を見られるが、ポイントを購入して配信者に「アイテム」を送ることができる。代表的なのが「お茶」系のアイテムで、無料で送れるお茶に対し、有料ポイントを使う「お茶爆」は配信者の収益になる。公式の案内では、収益対象アイテムとして「お茶爆50」(500ポイント)、「お茶爆100」(1,000ポイント)、「お茶爆500」(5,000ポイント)などが挙げられている。
配信者に入る収益は「お団子」という単位で蓄積され、一定額を超えると現金として支払い申請できる。有料アイテムの配信者取り分はおおむね7割程度とされてきたが、2025〜2026年には「アイテムチケット」の導入でWeb決済比率が上がり、浮いた決済手数料を配信者と運営の取り分向上に充てたとモイは説明している。
収益化の条件[編集]
アイテムによる収益(ライブ収益)を受け取るには、18歳以上であること、日本・アメリカ(カリフォルニア州を除く)・台湾・韓国・香港など対象地域に居住していることに加え、「直近3か月の累計視聴時間30時間以上」「Xのフォロワー500人以上」「YouTubeチャンネル登録者100人以上」のいずれかを満たす必要がある。本人確認と口座登録も必須である。
メンバーシップ[編集]
2020年11月に始まった月額課金制度で、YouTubeのメンバーシップやPatreon、Fantiaに近い仕組みである。配信者は月額500円〜10,000円程度のプランを作り、会員限定配信や限定コンテンツを提供できる。手数料の低さ(販売手数料2.5%とされた時期がある)が売りで、2025年1月期の増収は主にメンバーシップが牽引したと報じられている。
2023年3月には、高校生を含む15〜24歳の配信者向けに、小額の固定プランに限定した「メンバーシップU」が導入された。未成年配信者にも月額制の収益手段を開放しつつ、金額を抑える設計になっている。
プレミア配信(有料配信)[編集]
2015年4月に始まった「キャスマーケット」を前身とするチケット制の有料配信で、2020年3月以降「プレミア配信」として本格展開された。コロナ禍でライブハウスや劇場の公演が止まった時期に、無観客ライブや演劇の配信手段として急速に利用が広がった。初期費用・月額費用はかからず、チケット売上に対して手数料(公式案内では6%)がかかる方式である。
配信者文化[編集]
歌い手とツイキャス[編集]
ツイキャスは歌い手文化と深く結びついている。ニコニコ動画で「歌ってみた」を投稿していた歌い手たちが、ファンとの雑談や生歌の場としてツイキャスを使ったことで、「動画はニコニコ・YouTube、日常の交流はツイキャス」という棲み分けが生まれた。
その代表例がすとぷりで、公式にも「ツイキャスを中心に活躍する」グループと紹介されてきた。2020年にはツイキャス10周年記念のキャンペーンソング「Streamer」をすとぷりが担当し、124名のツイキャス配信者が出演したミュージックビデオが公開され、東京都内のデジタルサイネージでも放映された。
コレコレと凸待ち配信[編集]
ツイキャスを語るうえで欠かせないのがコレコレである。2013年12月にツイキャスで配信を始め、視聴者からの悩み相談や、配信中に視聴者が通話で参加する「凸待ち」形式の配信で人気を集めた。2018年2月にはツイキャス史上初めてサポーター数20万人を達成し、2019年7月に30万人を突破した。
凸待ち配信では、視聴者が持ち込んだトラブルや告発がそのまま生放送で扱われることがあり、ネット上の騒動の「発火点」として注目されることも多い。コレコレは後にYouTubeにも活動を広げたが、2023年6月以降はツイキャスのメンバーシップによる有料配信へ軸足を移したとされ、ツイキャスの看板配信者であり続けている。
若年層ユーザーをめぐる議論[編集]
ツイキャスの利用者は10〜20代前半が中心で、上場時の説明でもその層を主要ユーザーとしていた。業界紙の分析では、ユーザーのうち19歳以下が約2割、29歳以下が約35%を占めるとされる。若年層中心であることは拡散力の源泉である一方、離反も早いという特徴として指摘されている。
利用規約上は13歳以上が利用可能で、未成年のポイント購入には保護者の同意が必要とされる。2021年6月からは未成年の課金に月額上限が設けられ、13〜17歳は月1万円まで、18〜19歳は月3万円までに制限された。センシティブな内容を含む配信の表示制限や、中高生と保護者向けの案内ページも用意されている。
また、2018年に警察庁がまとめたSNSを通じた児童被害の統計では、ツイキャスはTwitter、LINEなどに次ぐ位置に名前が挙がり、配信アプリ経由で未成年と大人が接触する問題が報道された。運営は業界団体のスマートフォン・アプリケーション・マーケット協会(SMAJ)の青少年保護の取り組みにも参加している。
ユーザー数の推移[編集]
ツイキャスは節目ごとに累計登録ユーザー数を公表してきた。以下は報道・公式発表で確認できる主な数字である。
| 時期 | 累計登録ユーザー数 | 備考 |
|---|---|---|
| 2010年(初年度) | 約25万人 | サービス開始 |
| 2011年 | 約75万人 | |
| 2012年 | 約175万人 | 11月ごろから急成長 |
| 2013年3月 | 200万人 | 約半数が24歳以下 |
| 2014年 | 750万人 | |
| 2015年 | 1,000万人 | |
| 2016年8月 | — | 累計配信回数3億回突破 |
| 2017年8月 | 2,000万人 | |
| 2019年 | 3,000万人 | 記念キャンペーン実施 |
| 2021年7月 | 3,360万人 | 上場時の開示 |
| 2024年5月 | 4,000万人 |
なお、これは累計の登録数であり、実際にアクティブなユーザー数とは異なる。モイの決算では、課金ユーザー数や課金ユーザー1人当たりの平均課金額(ARPPU)が重視されており、2026年1月期の月間平均ポイントARPPUは7,474円(前期比10.4%増)とされた。
規制とプラットフォーム健全化[編集]
上場を控えた2021年12月31日、ツイキャスは音声配信に関する新基準を導入した。いわゆるASMR系の配信や、きわどい表現を含む音声配信が規制対象となり、ガイドライン違反の取り締まりが強化された。
この措置はプラットフォームの健全化を目的としたものだったが、一部の課金ユーザーが離れる結果にもつながり、2023年ごろの業績分析では「健全化と課金ユーザーの維持の板挟み」と評された。一方で、この時期に強化されたメンバーシップが後の増収の柱となっている。
2024年12月には、VTuber向けの専用プログラムが終了した。VTuberの配信自体は引き続き可能で、ホロライブやにじさんじのような大手事務所ではなく、個人勢のVTuberが雑談やゲーム配信に使う例が多い。
他サービスとの比較[編集]
| サービス | 運営 | 主な特徴 | 主な収益手段 |
|---|---|---|---|
| ツイキャス | モイ(日本) | 1枠30分、ラジオ配信、X連携、若年層中心 | アイテム、メンバーシップ、プレミア配信 |
| YouTube Live | 動画との一体運用、アーカイブ文化 | スーパーチャット、メンバーシップ、広告 | |
| ニコニコ生放送 | ドワンゴ(KADOKAWAグループ) | コメント文化、ゲーム実況の老舗 | ギフト、チャンネル会員 |
| Twitch | Amazon | ゲーム配信特化、海外ユーザー多数 | サブスク、ビッツ |
| TikTok LIVE | ByteDance | ショート動画からの流入 | ギフト |
| 17LIVE | 17LIVE(台湾発) | ライバー事務所・イベント文化 | ギフト(イベント順位連動) |
| Pococha | DeNA | ライバーのランク制度 | 時間ダイヤ・ギフト |
| SHOWROOM | SHOWROOM(DeNA系) | アイドル・芸能系に強い | ギフト、有料配信 |
ライバー事務所に所属して「稼ぐ」ことを前面に出す17LIVEやPocochaに比べ、ツイキャスは友人やファンとの雑談、歌い手の生歌、ゲーム実況など、個人のコミュニケーションの延長としての配信が中心である。一方で、動画プラットフォームとしてのアーカイブ機能はYouTubeほど重視されておらず、「その場限りのライブ感」が文化として残っている。
炎上とバズ[編集]
診察の誤配信(2023年)[編集]
2023年1月、埼玉県の病院に勤務する医師が、私用のスマートフォンでツイキャスを起動したまま休憩中に眠ってしまい、目覚めた後に呼び出しを受けて診察に向かった結果、発熱外来などの診察の様子が約90分にわたって配信される事故が起きた。患者8人の個人情報が漏れたとされ、病院は医師を停職2か月の懲戒処分とし、医師は同日付で依願退職した。
この件は「配信の切り忘れ」の典型例として広く報道され、スマホ1台で即座に配信できるツイキャスの手軽さの裏側として話題になった。
凸待ち配信発の騒動[編集]
コレコレの配信では、視聴者からの持ち込みをきっかけに、YouTuberや配信者、インフルエンサーの不祥事や人間関係のトラブルが生放送で取り上げられ、ネットニュースに発展するケースが繰り返されてきた。ツイキャスはこうした「ネット上の告発・暴露」の舞台として認知される側面も持つ。
配信中のトラブル[編集]
ツイキャスは屋外からでも即座に配信できるため、配信中の事故や危険行為がそのまま中継されてしまう事例が過去に報道されている。ガイドラインでは危険行為の配信が禁止されており、違反した配信は停止やアカウント制限の対象となる。
余談[編集]
- ツイキャスの原点は「ネットで操作するラジコン」であり、ラジコンの遠隔操作のために開発された低遅延配信技術がそのままツイキャスに流用された。
- 「モイ!」はツイキャス内の定番の挨拶として定着しており、2014年3月には登録ユーザーが545万人に達して「フィンランドの人口を超えた」と発表された。同時期の調査では、「モイ」がフィンランド語だと知っていたユーザーは約48%だったとされる。
- 2020年のツイキャス10周年キャンペーンソング「Streamer」は、すとぷりが担当し、MVには124人のツイキャス配信者が出演した。
- コレコレは2018年に「ツイキャス史上初のサポーター20万人」を達成しており、ツイキャスの歴史そのものと言える配信者である。
- 2013年当時の報道では、収益は広告とアプリ内課金がほぼ半々だったとされ、現在のようなアイテム・メンバーシップ中心の構造とは大きく異なっていた。
- 配信者の収益単位が「お団子」、投げ銭の代表格が「お茶」と、全体的に和風のネーミングで統一されている。
