Patreon, Inc.
Patreon
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Patreonのロゴ(2023年〜・出典:ウィキメディア・コモンズ)
略称 パトレオン
国家 アメリカ合衆国
種類 非公開会社
市場情報 非上場
業種 インターネットサービス(クリエイター支援・メンバーシップ)
本社所在地 カリフォルニア州サンフランシスコ
設立日 2013年5月2日
年齢 13周年
設立者 ジャック・コンテ、サム・ヤム
代表者 ジャック・コンテ(CEO)
時価総額 約40億ドル(2021年の資金調達時の評価額)
年間売上 約1億7900万ドル(2025年、推計)
従業員数 約370人(2026年7月の人員削減後)
主要部門 Patreon、Memberful
主要子会社 Memberful
別名 パトリオン
リンク https://www.patreon.com


概要[編集]

Patreon(パトレオン)とは、ファンがクリエイターに毎月定額を支払って活動を支援し、見返りに限定コンテンツなどを受け取る「メンバーシップ(サブスクリプション)型クリエイター支援サービス」を運営するアメリカの企業、およびそのサービスである。2013年にミュージシャンのジャック・コンテとエンジニアのサム・ヤムが創業し、累計で100億ドルを超える金額をクリエイターに支払ってきた、この分野の世界最大手である。

詳細[編集]

どんなサービスか[編集]

Patreonは、クリエイターが「ページ」を開設し、月額数ドル〜数十ドルの支援プラン(ティア)を用意する仕組みである。支援者(パトロン、メンバー)は好きなプランを選んで毎月支払い、クリエイターは限定の記事・動画・音声・画像、先行公開、Discordコミュニティへの参加権などを提供する。広告収入に頼らず、ファンから直接安定した月収を得られることが売りである。

名前は英語の「patron(パトロン、後援者)」に由来する。ルネサンス期の芸術家を貴族や富豪が支えたパトロン制度を、ネット上で「大勢の小口パトロン」によって再現しよう、というのが創業時からのコンセプトである。

誰が使っているか[編集]

利用者はYouTuber、ポッドキャスター、ミュージシャン、イラストレーター、漫画家、ゲーム開発者、コスプレイヤー、ASMR配信者、作家など非常に幅広い。2022年3月時点で25万人以上のクリエイターと800万人以上の有料支援者がいたとされ、2026年4月時点では総ユーザー数8000万人超とされる。

とりわけポッドキャストとの相性がよく、2025年にはポッドキャスターがPatreon経由で6億2900万ドルを得たと報じられた。英語圏の人気YouTuberが「Patreonの支援者のおかげで動画を作れています」と動画の最後で名前を読み上げる光景は、すっかり定番になっている。

日本語での呼び方[編集]

日本語では「パトレオン」と読むのが一般的だが、「パトリオン」「パトロン」と呼ばれることもある。日本では同種のサービスをまとめて「パトロンサイト」「支援サイト」と呼ぶことが多い。公式サイトには日本語表示も用意されている。

歴史[編集]

創業(2013年)[編集]

創業者のジャック・コンテは、デュオ「Pomplamoose(ポンプラムース)」としてYouTubeで活動していたミュージシャンである。YouTubeで数百万回再生されても広告収入はわずかしか入らないことに不満を持ち、大学時代のルームメイトだったエンジニアのサム・ヤムと2013年5月にPatreonを立ち上げた。

サービスは急成長し、2013年8月に210万ドル、2014年6月にIndex Ventures主導で1500万ドル(シリーズA)、2016年1月にThrive Capital主導で3000万ドル(シリーズB)を調達した。2015年3月には、CGP GreyやCrashCourseが使っていた支援サービスSubbableを吸収し、有名教育系YouTuberが一気に合流した。

買収と拡大[編集]

2018年には、自社サイトに会員制機能を組み込むためのサービスMemberfulを買収した。2021年4月には1億5500万ドルを調達し、企業評価額は約40億ドルと前年の約3倍に跳ね上がった。コロナ禍で「クリエイター経済」が注目された時期の象徴的な出来事である。

2023年10月にはチケット制ライブ配信サービスMomentを買収し、同月にはサイトとロゴの全面リニューアル、コミュニティチャット機能の追加を行った。2025年頃には、創業以来のクリエイターへの累計支払額が100億ドルを超え、年間20億ドル以上がクリエイターに流れていると発表している。

人員削減[編集]

一方で、成長鈍化に伴うリストラも繰り返している。2020年4月に30人(13%)、2021年4月に36人(13%)、2022年9月に80人(17%)を削減し、このときダブリンとベルリンのオフィスを閉鎖した。

2026年7月23日には、従業員の約20%にあたる93人の削減を発表した。同社史上最大の人員削減である。2025年の売上は前年比28%増の約1億7900万ドルと推計されており、業績が伸びる中での削減だった。コンテCEOは市場の変化に合わせたコスト構造の見直しと組織のフラット化を理由に挙げ、AIによる代替が目的ではないと説明している。

仕組み・料金[編集]

プラットフォーム手数料[編集]

Patreonの収益源は、クリエイターの売上から差し引く手数料である。2019年からは、機能に応じて「Lite(5%)」「Pro(8%)」「Premium(12%)」の3プランを選ぶ方式が採用され、それ以前からのクリエイターは5%の「Foundersプラン」が維持された。

2025年6月、Patreonは新規クリエイターの手数料を一律10%に統一すると発表した。2025年8月4日以降に新しくページを公開した(または非公開から再公開した)クリエイターが対象で、既存クリエイターは従来のプランのまま据え置かれている。

決済手数料と為替[編集]

プラットフォーム手数料とは別に、決済手数料がかかる。クレジットカードやApple Payは2.9%+0.30ドル、PayPalは米国外では3.9%+0.30ドルが目安である。支援者とクリエイターの通貨が異なる場合は2.5%の通貨換算手数料も加わる。

このため、少額プランほど実質的な手数料率が高くなる。日本のクリエイター向けの解説では、5ドルのプランで換算手数料や払い出し手数料まで含めると、合計で約21.3%+1ドル程度が差し引かれるという試算もある。

払い出しと税務[編集]

日本在住のクリエイターは、収益を米ドルで受け取り、銀行振込(1.55%+0.25ドル)、PayPal(1%)、Payoneer(1件1ドル)などで引き出す。米国企業のサービスであるため、税務関連の書類(W-8BENなど)の提出が必要になり、国内サービスより手続きが煩雑である。

請求方式[編集]

Patreonの請求方式には、毎月1日にまとめて請求する方式、作品を1本公開するごとに請求する「パー・クリエーション」方式、支援開始日を基準に毎月請求する「サブスクリプション請求(アニバーサリー請求)」の3種類がある。後述のApple課金問題では、このうち古い2方式(レガシー請求)の扱いが争点になった。

手数料改定騒動(2017年)[編集]

2017年12月7日、Patreonは支援者側に「支援1件ごとに2.9%+0.35ドル」のサービス料を上乗せする新料金体系を発表した。クリエイターの受取額を増やすのが目的とされたが、1ドル支援が約1.38ドルになるなど、少額支援ほど負担が重くなる設計だった。

1ドル〜数ドルの小口支援を多数集めていたクリエイターからは猛反発が起き、発表から数日で支援をやめる人が続出した。実際に収入が減ったクリエイターも出た。Patreonは同月13日、コンテCEOが「小口支援の価値を過小評価していた」と謝罪して撤回を表明した。この騒動はその後もPatreonの料金改定のたびに引き合いに出され、2019年のプラン制導入時にも「また炎上するのでは」と報じられた。

成人向けコンテンツ規約とアカウント凍結問題[編集]

2018年の一斉凍結[編集]

Patreonは成人向けコンテンツを完全には禁止しておらず、ページを「18歳以上向け」に設定すれば一定の範囲で扱える。ただし公開部分は全年齢向けでなければならず、ポルノ作品の制作資金集めに使うことは禁止されている。

2018年6月28日頃から、成人向け作品を扱うクリエイターのアカウントが相次いで停止された。広報は「決済パートナーからの要請に基づき、コンテンツの審査を強化している」と説明し、決済パートナーとしてStripeやPayPalの名前が挙がった。収入の6割をPatreonに頼っていたクリエイターが月末の支払い直前に停止されるなど、影響は深刻だった。

決済会社という「見えない審査員」[編集]

この件で明らかになったのは、プラットフォームの規約よりも上に、カード会社や決済代行会社の基準があるという構造である。同じ問題はのちに他のサービスにも波及し、2024年には販売サイトGumroadが成人向けアートの大半を禁止した。日本でも2025年にpixiv FANBOXがR-18クリエイターの手数料を引き上げるなど、決済網の審査対応コストが料金に跳ね返っている。

Patreonの年次透明性レポート(2026年版、2025年分)によれば、2025年に審査したクリエイターは10万3041人、アカウント停止は1989件、アカウント削除は3165件で、取り締まりは「10代の安全」と「性的満足を目的とした作品」の分野に集中しているとされる。架空のキャラクターであっても未成年に見える人物の性的表現は禁止されており、日本の二次創作文化と相性が悪い部分がある。

政治的な凍結騒動[編集]

2017年〜2018年には、右派系の論客や配信者のアカウント削除が相次ぎ、「検閲だ」とする批判と、ヘイトスピーチ対策として当然だとする意見が対立した。抗議のためにPatreonを離れた著名人もいた。

Apple課金問題[編集]

2024年のIAP強制[編集]

2024年8月、Appleは、iOSアプリ内で新規に支援を受け付ける場合はApple自身のアプリ内課金(IAP)を使うよう要求し、2025年11月までに全クリエイターをIAP対応のサブスクリプション請求へ移行しなければApp Storeから削除すると通告した。IAPを通すとAppleが最大30%の手数料を取る。

Patreonは2024年11月から移行を開始し、クリエイターはiOS経由の支援について手数料を自分で負担するか、iOS版だけ価格を上げるかを選べるようにした。ウェブ版からの支援には影響しないが、「アプリから支援した人だけ高くなる」という分かりにくい状況が生まれた。

猶予と再強制[編集]

2025年春、Epic対Appleの訴訟の判決を受けてAppleが米国のApp Store規約を緩和し、アプリからウェブ決済へのリンクが認められるようになった。Patreonはこれを利用してウェブ決済への誘導を可能にし、移行期限をいったん停止した。

ところが2026年1月28日、Appleはレガシー請求を使う残りのクリエイターに対し、2026年11月1日を新たな期限として再びIAPへの移行を求めた。対象は全クリエイターの約4%とされる。Patreonは「過去18か月でAppleの方針変更は3度目」と不満を表明しつつ、価格改定ツールや年額専用プランなどの移行支援を用意している。2026年9月時点で、この期限は目前に迫っている。

日本での利用[編集]

日本人クリエイターとPatreon[編集]

日本の絵師や漫画家、VTuber、YouTuberの中には、海外ファン向けの支援窓口としてPatreonを開設する人がいる。英語圏のファンにとっては、日本のサービスより使い慣れたPatreonのほうが登録しやすいためである。国内ファンはpixiv FANBOXやFantia、海外ファンはPatreonと、窓口を分ける使い方が多い。

一方で、日本のクリエイターにとっての壁も多い。決済が米ドル中心で為替変動と換算手数料がかかること、税務書類が必要なこと、サポートが基本的に英語であることの3点がよく挙げられる。

日本の法律との関係[編集]

Patreonは米国企業だが、日本在住のクリエイターが日本から性的な作品を公開する場合、日本の刑法175条(わいせつ物頒布等)の適用を受け得る。そのため日本人クリエイターは、国内サービスと同様に修正を入れた作品を掲載するのが一般的である。

無断転載問題[編集]

Patreonの限定コンテンツは、Kemonoなどの無断転載サイトにまとめて流出する被害が起きてきた。FANBOXやFantiaと同じく、有料プランの中身が外部で無料公開されることで、クリエイターの収入が直接損なわれる。Patreonの2025年の有効な著作権侵害通知は1161件だった。

他サービスとの比較[編集]

サービス 運営 形式 手数料(目安)
Patreon Patreon, Inc.(米国) 月額支援 新規10%+決済手数料
pixiv FANBOX ピクシブ 月額支援 10%(R-18は2025年9月から12.9%)
Fantia 虎の穴 月額支援+販売 12.5%(実写は17.5%)
Ci-en エイシス(DLsite運営) 月額支援+販売 10%
Skeb Skeb 有償リクエスト(依頼型) 依頼ごとに手数料
OnlyFans Fenix International(英国) 月額課金 20%

国内サービスは日本円決済、日本語サポート、国内の法規制に沿った運用という点で有利で、手数料率もPatreonの新規クリエイター向け料金と比べて大差はない。Patreonの強みは圧倒的な海外ユーザー数と知名度であり、「海外ファンを取りに行くならPatreon」という位置づけになっている。Skebは「絵を1枚依頼して描いてもらう」依頼型で、継続支援型のPatreonとは仕組みが異なる。

なお、成人向けクリエイターの課金サービスとしてはOnlyFansやFansly、日本のMyFansなどがあるが、これらは実写の成人向けコンテンツを主軸にしており、Patreonとは客層が大きく異なる。

2026年の最新動向[編集]

  • 1月28日:AppleがIAP移行の新期限(2026年11月1日)を設定。
  • 2月:米国の人気YouTuberのアカウントを、反ユダヤ的な内容をめぐる規約違反を理由に削除したと報じられた。
  • 7月:生成AIの学習用にコンテンツが無断でスクレイピングされるのを防ぐため、Cloudflareとの提携を発表。
  • 7月23日:全従業員の約20%にあたる93人の人員削減を発表。
  • 8月20日:短尺動画「Clips」、短文投稿「Quips」、テーマ別コミュニティ「Niches」、刷新された発見アルゴリズムなど、約30の新機能を発表。18歳以上向けコンテンツでもネイティブ動画とQuipsが使えるようになった。コンテCEOは「現在のウェブはクリエイターとファンダムにとって果たされなかった約束だ」と述べた。

2025年11月にはクリエイターとファンのプロフィールを統合する変更を行い、大きな反発を招いた。XなどSNSのアルゴリズムに頼らずPatreon内でファンを見つけられるようにする、という方向転換が2025〜2026年の一貫したテーマである。

炎上とバズ[編集]

  • 2015年10月:サイバー攻撃で230万件以上のメールアドレスや、ソースコードなどが流出した。
  • 2017年12月:支援者への手数料上乗せを発表し、1週間足らずで撤回。
  • 2018年6月:成人向けクリエイターの一斉アカウント停止。
  • 2023年6月:BBCの調査報道で、AI生成の違法画像を扱うアカウントの存在が指摘され、Patreonは該当アカウントを削除した。
  • 2024〜2026年:Appleのアプリ内課金強制をめぐる攻防が続いている。

余談[編集]

  • 創業のきっかけは、ジャック・コンテが凝ったミュージックビデオを作って数百万回再生されたのに、広告収入がごくわずかだったことだとされる。
  • Pomplamooseとしての音楽活動もPatreonで支援を受けて続けており、CEO自身がPatreonクリエイターという珍しい構図になっている。
  • 2026年8月の新機能「Quips」「Clips」「Niches」はいずれも短い英単語で、TikTokやYouTubeショート的な機能をPatreon流に取り込んだものである。
  • 3DCG動画サイトのIwaraなど、無料公開の場と有料支援の窓口を分ける日本のクリエイターにとって、PatreonはFantiaやFANBOXと並ぶ「有料版の置き場」の選択肢の1つになっている。

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