| 17LIVE株式会社(日本法人)/17LIVE Group Limited(持株会社) 17LIVE Inc. | |
|---|---|
![]() 17LIVEのロゴ(出典:ウィキメディア・コモンズ) | |
| 略称 | イチナナ、ワンセブン |
| 国家 | 日本(日本法人)/シンガポール(上場持株会社) |
| 種類 | 株式会社 |
| 市場情報 | シンガポール証券取引所(17LIVE Group Limited) |
| 業種 | 情報・通信業(ライブ配信プラットフォーム) |
| 本社所在地 | 東京都渋谷区 |
| 設立日 | 2017年6月 |
| 設立者 | 黄立成(サービス創業者) |
| 代表者 | ジャン・ホンフイ |
| 上場 | 2023年12月(17LIVE Group、SPAC合併によりシンガポール証券取引所) |
| 年間売上 | 1億9,080万米ドル(2024年度、グループ) |
| 所有者 | 17LIVE Group Limited |
| 主要部門 | 17LIVE、HandsUP(ライブコマース)、V-Liver事業 |
| 主要子会社 | 株式会社mikai(Re:AcT) |
| 関係する人物 | 黄立成、ジョセフ・パー、小野裕史 |
| 代表作品 | 17LIVE(ライブ配信アプリ) |
| 別名 | 17 Live、17直播、イチナナライブ、ワンセブンライブ |
| リンク | https://jp.17.live/ |
概要[編集]
17LIVE(ワンセブンライブ、通称:イチナナ)とは、台湾発祥のライブ配信アプリ、およびその運営企業グループである。2015年に台湾で「17」として誕生し、2017年の日本上陸後わずか1年ほどで国内の課金型ライブ配信市場の首位に立った。配信者を「ライバー」と呼び、視聴者からのギフトとイベントでの順位争いを軸にした「稼ぐ配信」の文化を日本に定着させたサービスのひとつである。
詳細[編集]
台湾での誕生と「下架」騒動[編集]
17の前身となるアプリは、2015年6月に台湾で公開された。創業者は、台湾のヒップホップグループ「L.A. Boyz」の元メンバーで、「麻吉大哥(マッチ兄貴)」の愛称で知られる芸能人・実業家の黄立成(ジェフリー・ホァン)である。当初は写真共有・短尺動画・ライブ配信を一体にしたSNSで、「InstagramとPeriscopeを合体させたようなアプリ」と評された。
公開からおよそ3か月で爆発的に広まり、台湾だけでなくマレーシアやアメリカ合衆国のApp Storeでもダウンロードランキング1位を獲得したと報じられた。しかし急成長の裏で、露出の多い配信で注目を集めるユーザーが相次ぎ、通報や監視の仕組みも追いついていなかった。
その結果、2015年9月末にApp StoreとGoogle Playの双方からアプリが削除される事態となった。台湾メディアは「ダウンロード1位から下架までわずか7日」と報じ、「色情で成功し、色情で失敗した」という見出しも付けられた。黄立成は当局の聴取に応じ、ユーザー審査を厳しくすると表明している。この「成人向けイメージ」は、後の経営陣が長年払拭に苦労する課題となった。
M17 Entertainmentと日本上陸[編集]
2017年、17は、シンガポール発のマッチングアプリ「Paktor」と経営統合し、持株会社M17 Entertainmentが発足した。Paktorの共同創業者ジョセフ・パー(Joseph Phua)がCEOに就き、3,300万米ドル規模のシリーズBラウンドで日本・香港への本格進出の資金を確保した。
日本法人「17 Media Japan」(現・17LIVE株式会社)は2017年6月に設立され、2017年秋ごろから日本での本格展開を始めた。日本事業を率いたのは、シーエー・モバイルの元専務で、ベンチャーキャピタル「インフィニティ・ベンチャーズ」の共同創業者として知られる小野裕史である。小野はfreeeやジモティーなどへの投資実績を持つ投資家で、2012年ごろから17の創業チームに関わっていたとされる。
日本版は「イチナナ」の愛称で呼ばれ、東京都内の芸能事務所やライバー事務所と組んでプロ配信者を大量に確保する戦略が当たった。台湾メディアは「わずか10か月で日本のライブ配信業界のシェア首位を奪った」と報じており、日本はまたたく間にグループ最大の収益源となった。
上場計画の頓挫とリブランディング[編集]
M17は2018年にニューヨーク証券取引所への上場を目指したが、資金調達目標に届かず計画を撤回した。同年12月には約70人の従業員を削減したと報じられ、一部の社員が通知から1時間以内に退去を求められたとも伝えられた。同社は「年末の定例的な人事調整」と説明している。
この後、2018年にシリーズCで2,500万米ドル、2020年にシリーズDで2,650万米ドルを調達して経営を立て直した。2019年には東南アジアの配信サービス「MEME Live」と、ライブコマース事業「HandsUP」を取得している。
2020年は大きな転換の年となった。8月、日本事業を成功させた小野裕史がグローバルCEOに昇格。11月には創業者の黄立成が全役職から退き、グループが彼の保有株をすべて買い取った。台湾メディアは、その背景として経営陣が「成人向け」のイメージから決別したがっていたことを挙げている。同年12月には親会社名がM17 Entertainmentから「17LIVE」に変更され、Paktorのマッチング事業も切り離された。
2021年9月には、本社機能を台湾から日本へ移すと発表した。同時に、日本の「イチナナライブ」、台湾の「イーチーライブ」、米国の「LIVIT」と地域ごとにバラバラだった呼称を「ワンセブンライブ」に統一し、ロゴも赤を基調にしたデザインに刷新した。ただし日本のユーザーの間では、現在も「イチナナ」の呼び名が定着している。
シンガポールでのSPAC上場[編集]
一度は米国上場に失敗した17LIVEだが、2023年にシンガポールで上場を果たした。同年10月、シンガポール初のSPAC(特別買収目的会社)であるVertex Technology Acquisition Corporation(VTAC)との合併が発表され、同年12月8日、合併後の「17LIVE Group Limited」がシンガポール証券取引所に上場した。これはシンガポールにおける初のSPAC合併案件でもあった。
プロフォーマの株式価値は約11億6,000万シンガポールドルとされた。上場初日は4.00シンガポールドルで寄り付き、終値は3.80シンガポールドルと小幅安で終えた。上場時の報道によれば、2022年の売上高は3億6,370万米ドル、損失は約5,100万米ドルで、売上の約7割を日本が占めていた。月間アクティブユーザーのうち課金するのは約16%で、課金ユーザー1人当たりの月間平均支出は約302米ドルとされる。
上場後は売上が縮小傾向にあり、2024年度の営業収益は1億9,080万米ドルまで減少した一方、コスト削減によって営業利益900万米ドルを確保した。2025年上半期の営業収益は8,110万米ドルで、2025年第2四半期には上場後初めて前四半期比の増収に転じた。同期には初の配当(1株1.5シンガポールセント)も発表されている。
ライバー報酬の仕組み[編集]
ギフトとベビーコイン[編集]
17LIVEの収益の中心は視聴者が送る「ギフト」である。視聴者はアプリ内通貨を購入してギフトを送り、ライバー側にはそれに応じた「ベビーコイン」がたまる。ベビーコインは一定の料率で現金化される。上場時の報道でも経営陣が「広告ではなく、ギフトで収益を上げている」と説明しており、ギフト依存度の高いビジネスモデルである。
公式ライバーと成果報酬料率[編集]
一般ユーザーとして配信する場合と、17LIVEと契約した「公式ライバー」とでは還元率が大きく異なる。2025年2月までは、他の配信サービスとの掛け持ちを禁じる専属契約の成果報酬料率が35%、掛け持ち可能な非専属契約が25%とされていた。
2025年3月1日からは専属・非専属の区別が廃止され、「成果報酬料率35%・ボーナステーブルまたは時給グレード制度あり・他プラットフォームでの活動も可」という単一の契約形態に統一された。公式は「ライバーの不利益になる変更ではない」と説明している。
時給制度とボーナス[編集]
かつて17LIVEは一定の条件を満たしたライバーに「時給」を保証する制度で知られ、「配信するだけで時給がもらえる」ことが日本上陸初期の急成長を支えたとされる。その後、無条件の時給保証は縮小され、現在は配信時間や獲得ポイントなどの基準を満たしたライバーに対する「時給グレード制度」やボーナステーブルとして残っている。
支払いと事務所[編集]
公式ライバー以外の一般配信者は、還元率が低めに設定され、1万円以上から換金可能で、サイバーエージェントグループのポイント交換サービス「ドットマネー by Ameba」を経由して受け取る方式が案内されている。公式ライバーは月ごとに自動で振り込まれる。
多くのライバーは「ライバー事務所(エージェンシー)」に所属しており、事務所が配信指導やイベント戦略を担う代わりに報酬の一部を受け取る。17LIVEは事務所との提携を重視しており、この事務所ネットワークが日本でのプロライバー大量獲得を支えた。2019年時点でプロライバー数は17,000人を超えたと発表されている。
アーミー制度[編集]
「アーミー」は、特定のライバーを月額課金で支援するファンクラブ的な制度である。複数のランクがあり、上位ランクほど高額になる。ライバーにとっては毎月ある程度見込める安定収入となり、YouTubeのメンバーシップに近い役割を果たしている。
イベント文化[編集]
17LIVEを特徴づけるのが「イベント」である。月に20〜30本ほどのイベントが並行して開催され、ライバーは期間中に視聴者から集めたギフトの量(ポイント)で順位を競う。ライバー本人はギフトを送れないため、順位は完全に視聴者の支援で決まる。
上位入賞の特典は、アプリ内バッジやおすすめ枠への掲載といったプラットフォーム内の露出から、企業広告への出演、雑誌やWebメディアへの掲載、オフラインの授賞式まで幅広い。新人ライバー向けのイベント、季節限定イベント、企業タイアップのPRモデル選出イベント、オーディションや音楽系イベントなど種類も多い。
2019年の発表では企業タイアップ数が約100社に達しており、広告出演やモデル起用をかけたイベントは、芸能志望のライバーが知名度を得る入口として機能してきた。グラビアアイドルやモデル、タレントの卵がイベントを足がかりにする例も多いとされる。
一方で、イベントの順位はギフトの総額で決まるため、上位争いが白熱すると一部の視聴者が高額の課金を行う構図になりやすい。イベント最終日の終盤に大量のギフトが集中して順位が入れ替わる「追い上げ」は、17LIVEのイベントの見どころのひとつとされる。
事業の多角化[編集]
V-Liver(VTuber)事業[編集]
17LIVEは2019年ごろからアバターで配信する「V-Liver」カテゴリーを設け、VTuber系配信者の受け皿を強化してきた。V-Liver部門の売上は2023年度の500万米ドルから2024年度には1,100万米ドルへと倍増し、2025年上半期も前年同期比16.7%増の560万米ドルと伸びている。2024年12月には、無料でアバターを作れるツール「V-Create」も公開された。
mikaiの買収[編集]
2024年11月26日、17LIVE GroupはVTuber事務所「Re:AcT(リアクト)」を運営する株式会社mikaiのグループ化を発表した。mikaiは2016年8月設立の日本のスタートアップで、17LIVEは「プラットフォーム+IP」戦略の一環と位置づけた。ホロライブやにじさんじのような大手VTuber事務所とは異なる規模感だが、配信プラットフォーム自身がVTuber事務所を傘下に持つ形となった。
なお、報道・IR資料で確認できる主な買収はMEME Live(2019年)、HandsUP(2019年)、mikai(2024年)であり、これら以外の買収案件については公開情報で確認できるものは限られている。
ライブコマース[編集]
2019年に取得したHandsUPを基盤に、配信で商品を売るライブコマースにも取り組んでいる。2025年7月には、日本で企業向けの「LiveCommerce Total Solutions」を開始した。ライブ配信のギフト収入への依存を下げることが狙いとされる。
他サービスとの比較[編集]
日本の課金型ライブ配信アプリは、17LIVE、DeNAの「Pococha」、SHOWROOM株式会社の「SHOWROOM」が三つ巴で語られることが多い。
| 項目 | 17LIVE | Pococha | SHOWROOM |
|---|---|---|---|
| 運営 | 17LIVE(台湾発・日本本社) | DeNA | SHOWROOM株式会社(DeNA系) |
| 日本開始 | 2017年 | 2017年 | 2013年 |
| 特徴 | イベントでの順位争い、ライバー事務所との提携 | ランク制度と「時間ダイヤ」による報酬 | アイドル・芸能系、アバター視聴者 |
| 報酬の軸 | ギフト+成果報酬料率・時給グレード | ランク×配信時間+応援ダイヤ | ギフト、有料配信 |
| 強いジャンル | 雑談、歌、V-Liver、芸能志望 | 一般人の雑談配信 | アイドル、声優、タレント |
17LIVEはイベントや企業タイアップで「芸能人への登竜門」色が強く、Pocochaは一般人ライバーでも時間をかければ報酬が積み上がるランク制度に特徴がある。SHOWROOMはAKB48グループなどのアイドルの配信で知名度を上げた経緯がある。いずれもYouTubeやTikTokのライブ機能、ツイキャスのような雑談寄りのサービスとは「ライバーの職業化」という点で性格が異なる。
2019年の17LIVEの発表では、日本のライブ配信市場で63.9%のシェアを占め、前年比約300%の成長を記録したとされる(同社発表の数値)。その後、Pocochaなどの追い上げで競争は激化し、上場後の17LIVEは売上の縮小と収益性の改善を同時に進める局面に入っている。
炎上とバズ[編集]
台湾での下架(2015年)[編集]
前述のとおり、サービス開始からわずか3か月で露出の多い配信が問題視され、App StoreとGoogle Playの双方から削除された。この出来事は台湾で大きく報じられ、創業者の黄立成も当局の聴取を受けた。
創業者の「裸退」(2020年)[編集]
2020年11月、創業者であり最大株主だった黄立成が、全役職を退き保有株をすべて手放したことが報じられた。台湾メディアは「悄悄裸退(ひっそりと完全撤退)」と表現し、グループが旧来のイメージから切り離すための措置と分析した。台湾法人も「麻吉一七」から「藝啟」へと社名を変更している。
米国上場の失敗とリストラ(2018年)[編集]
2018年のニューヨーク証券取引所上場計画の撤回と、その直後の約70人規模の人員削減は、台湾のスタートアップ業界で大きく報じられた。退去までの猶予が1時間しかなかったという報道が波紋を呼んだ。
高額課金をめぐる議論[編集]
イベントの順位がギフト総額で決まる仕組み上、上位のライバーには月に数百万円単位のギフトが集まることもあり、ネット上では高額課金の是非がたびたび話題になる。17LIVEは24時間体制の監視チームや、迷惑行為ユーザーへの対応窓口、安全ルールブックを公開している。
余談[編集]
- 創業者の黄立成は、1990年代に台湾で人気を博したヒップホップグループ「L.A. Boyz」の元メンバーで、台湾では「麻吉大哥」の名で知られる。
- サービス開始当初の17は、配信だけでなく写真や短尺動画も投稿できるSNSで、「InstagramとPeriscopeの合体」と評された。
- 2021年までは、日本では「イチナナライブ」、台湾では「イーチーライブ」、米国では「LIVIT」と、同じサービスが国ごとに違う名前で呼ばれていた。
- 2019年の発表によれば、最も長く配信したプロライバーの累計配信時間は約3,800時間に達し、ユーザー1人当たりの平均視聴時間は1日58分だったとされる。
- 日本事業を率いた小野裕史は、東京大学で生物学を専攻した後、IBM系企業を経てネット業界に転じた経歴を持つ。
- 17LIVEの上場は、シンガポールで初めてのSPAC合併による上場という記録にもなった。
