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|---|---|
| 正式名称 | AVグランプリ(AV GrandPrix) |
| 種類 | アダルトビデオ作品コンテスト(セル作品対象) |
| 国 | 日本 |
| 主催 | AVグランプリ事務局(北都〈アウトビジョン〉・DMM.comらが中心) |
| 開催 | 2008年・2009年(全2回) |
| 参加数 | 2008年:77メーカー/2009年:97作品 |
| 賞金総額 | 約3,000万円(各回) |
| 最高賞 | AVグランプリ最優秀作品賞(賞金500万円) |
| 審査方法 | 売上(店頭セル・配信)とユーザー投票の組み合わせ |
| メインサポーター | 萩原流行・穂花(2009年) |
| 前身・対抗 | AV OPEN(2006年・2007年) |
| 後継とされるもの | DMMアダルトアワード(現・FANZAアダルトアワード) |
| 最多受賞メーカー | エスワン ナンバーワンスタイル |
概要[編集]
AVグランプリ(エーブイグランプリ、AV GrandPrix)とは、2008年と2009年の2回だけ開催された、日本のセルアダルトビデオ作品コンテストである。東京スポーツとソフト・オン・デマンド(SOD)の「AV OPEN」が2007年の不正騒動で崩壊した直後、SODのライバルだった北都・DMM.com陣営が中心となって立ち上げた。
詳細[編集]
誕生の背景[編集]
2000年代半ばのAV業界は、ざっくり言えば「SOD陣営」と「北都陣営」の二大勢力が覇権を争う構図だった。SODは高橋がなりが1995年に創業した企画モノの雄で、一方の北都はアウトビジョンの名で流通・販売を担い、エスワン ナンバーワンスタイル(S1)やムーディーズなどの人気メーカーを傘下・取引先に抱える巨大グループだった。北都は2000年代前半にSODを売上で追い抜き、アロマ企画、ドグマ、はじめ企画といったかつてのSOD系メーカーまで取り込んでいった。
そんな中、2006年に東京スポーツとSODが共同で始めたのが「AV OPEN〜あなたが決める!セルアダルトビデオ日本一決定戦〜」である。協力店舗での実売本数で日本一を決めるという分かりやすいルールで、1位賞金は1,000万円。アメリカのAVN Awardsのように業界のイメージを上げる狙いもあったとされ、特別審査員としてリリー・フランキーや松井秀喜の名前が東スポ紙上に並ぶなど、話題性は抜群だった。
AV OPENの崩壊[編集]
ところが2007年の第2回で事件が起きる。主催側でもあるSODのエントリー作品が圧倒的大差で1位となったが、後にSODが自社作品を大量に買い上げていたことが発覚した。英語版Wikipediaなどによれば、販売された約3万本のうち約1万6千本をSOD側が購入し、費やした額は6,000万円近くにのぼったとされる。SOD作品は失格となり、順位は繰り上げでS1の作品が1位になったが、コンテストとしての信用は地に落ち、公式サイトも閉鎖。AV OPENは事実上の終了を迎えた。
この「主催者が自分で優勝を買う」という前代未聞の不祥事によって、業界には「売上で日本一を決める大型コンテスト」の空白が生まれた。そこに名乗りを上げたのが、SODの最大のライバルである北都陣営だったというわけである。
AVグランプリ事務局の発足[編集]
2008年、北都(アウトビジョン)とDMM.comらを中心とする「AVグランプリ事務局」が発足し、AVグランプリがスタートした。英語圏の資料では「DMMがAV OPENの後継として始めた」「北都がスポンサーした」と書き分けられることもあるが、いずれにせよ北都・DMM系の陣営による大会という点は共通している。
AV OPENの騒動を受けて、純粋な店頭実売一本勝負ではなく、DMMの通販・配信サイトでのデータやユーザー投票も審査に組み込んだのが大きな違いである。主催者が一メーカーではなく流通・配信側だったこともあり、北都系だけでなく幅広いメーカーが参加した。賞金総額は各回およそ3,000万円とされる。
ルールと部門[編集]
基本ルール[編集]
各メーカーが大会用の作品をエントリーし、一定期間の売上やユーザー投票によって順位・受賞作を決める方式だった。エントリー作品には大会専用の品番が振られており、資料から確認できる範囲では、メインの「グランプリステージ」には「AVGP-」、マニア向けの「マニアステージ」には「AVGL-」で始まる品番が使われていた(例:マキシングの2008年エントリーはAVGP-032、ドグマの2009年エントリーはAVGL-130)。
賞金は部門ごとに異なり、特記のない部門賞では最優秀賞100万円、優秀賞50万円が基本だったとされる。
主な賞と賞金[編集]
| 賞 | 対象年 | 賞金 | 選考の軸 |
|---|---|---|---|
| AVグランプリ最優秀作品賞 | 2008・2009 | 500万円 | 大会の最高賞(2008年はユーザー投票によるとされる) |
| グランプリステージ最優秀作品賞 | 2008のみ | 300万円 | グランプリステージの売上 |
| マニアステージ最優秀作品賞 | 2008のみ | 300万円 | マニアステージの売上 |
| 配信売上賞 | 2008・2009 | 2009年は200万円 | ダウンロード配信の売上 |
| セル売上賞 | 2009のみ | 200万円 | DVDセルの売上 |
| パッケージデザイン賞 | 2008・2009 | — | パッケージの出来 |
| 各ジャンル部門賞 | 2008・2009 | 最優秀100万円・優秀50万円 | ジャンル別 |
| プレス賞・セル店賞 | 2008・2009 | — | マスコミ・販売店の評価 |
| メインサポーター賞 | 2009のみ | — | メインサポーターが選出 |
ステージ制とジャンル部門[編集]
2008年は参加77社が、正統派の作品が集まる「グランプリステージ」(39社)と、マニア・フェチ系作品の「マニアステージ」(38社)に分かれて争った。ジャンル部門はSM・凌辱、女優、熟女、ナンパ・素人、バラエティ、フェチ、萌えっ子の7部門に、2008年だけの特別部門としてオムニバス部門とレズ部門が置かれた。
2009年は部門名が「女優作品部門」「熟女作品部門」「素人作品部門」「萌え作品部門」などのように「〜作品部門」へ改称され、ステージ別の最優秀作品賞の代わりに「セル売上賞」が新設された。売上と投票、さらにプレス(マスコミ)やセル店(販売店)の評価まで、いろいろな角度から作品を表彰しようとした大会だったと言える。
2008年大会[編集]
概要[編集]
第1回のAVグランプリ2008には77メーカーが参加した。AV OPEN 2007の参加が19社程度だったことを考えると、一気に4倍近くまで規模が膨らんだことになる。北都系の有力メーカーに加え、ホットエンターテイメント、マキシング、CROSS、BabyEntertainmentなど、系列を問わず多くのメーカーが作品を送り込んだ。
主な受賞結果[編集]
- AVグランプリ最優秀作品賞:『kawaii* special ギザカワユス!』(kawaii*、香坂百合・大橋未久ほか出演)
- グランプリステージ最優秀作品賞:『了解×了解×ギリギリモザイク Wギリギリモザイク』(エスワン ナンバーワンスタイル、初音みのり・水城奈緒出演)
- マニアステージ最優秀作品賞・配信売上賞:BabyEntertainmentの人気シリーズ第11弾(長澤リカほか出演)
- パッケージデザイン賞・セル店賞:『了解×了解×ギリギリモザイク Wギリギリモザイク』(S1)
- プレス賞:『まり子 ファイナル』
タイトルの「ギザカワユス」は当時中川翔子のブログ発で大流行していたネットスラングで、2008年という時代をよく表している。最高賞はユーザー投票、ステージ賞は売上と、軸の違う賞でkawaii*とS1が分け合った格好だが、S1はパッケージ賞・セル店賞も獲得し、実質的には「S1の年」とも言える結果となった。
ジャンル部門の主な結果[編集]
| 部門 | 最優秀賞 | 主な優秀賞 |
|---|---|---|
| SM・凌辱部門 | 『人間酷包 友田真希』(ミル) | ドグマのTOHJIRO作品(Mドラッグのベスト版) |
| 女優部門 | 現役レースクイーンのデビュー作(プレミアム、冬月かえで) | kawaii*作品、S1作品、『癒らし。持田茜』 |
| 熟女部門 | 『義母奴隷 白石さゆり』 | シネマ・コーポレーション作品、『温浴マッサージのお宿《翔田亭》』(アロマ企画) |
| ナンパ・素人部門 | 『まり子 ファイナル』 | 『マジックミラー号 逆ナンパin湘南』 |
| バラエティ部門 | トレーニング指南系の企画作品 | ピーターズのL.A.ロケ作品ほか |
| フェチ部門 | 『非日常的パンスト遊戯 第一章』(AVS) | — |
| 萌えっ子部門 | (作品名は省略) | — |
| オムニバス部門 | しみけんのプライベート作品(アイデアポケット) | — |
| レズ部門 | レズ調教系作品 | — |
なお、S1側の資料にはS1作品が2008年のプレス賞も受賞したとする記述があり、資料によって細部が食い違う点には注意が必要である。
2009年大会[編集]
概要[編集]
第2回のAVグランプリ2009は参加97作品と、さらに規模を拡大した。この年の目玉は、俳優の萩原流行と、2008年12月にAVを引退したばかりの穂花を「メインサポーター」に起用したことである。一般の芸能界でも知られる個性派俳優が大会の顔になったことで、AV業界の外からも注目を集めた。結果発表は2009年3月初旬に行われたとされる。
ドグマの「宣戦布告」[編集]
2009年大会で盛り上がったのが、ドグマ代表でもある鬼才監督TOHJIROによる「前回王者S1への全面戦争」宣言である。マニア系作品で知られるドグマが、王道美少女路線のS1に真っ向からケンカを売るという構図は、ファンの間でもちょっとしたプロレス的見どころになった。結果としてドグマ作品は配信売上賞(賞金200万円)を獲得し、一矢を報いている。
主な受賞結果[編集]
- AVグランプリ最優秀作品賞:『Wギリモザ Rioとゆま』(S1、Rio〈柚木ティナ〉・麻美ゆま出演)
- セル売上賞・パッケージデザイン賞・セル店賞・女優作品部門最優秀賞:同上
- 配信売上賞:TOHJIRO監督作品(ドグマ)
- プレス賞:HMJMの『The Sex Cannon Ball Ride 2009』(英語圏資料による)
- メインサポーター賞:グローリークエストのドラマ作品
『Wギリモザ Rioとゆま』は2008年11月発売のS1作品で、当時の看板女優2人を組ませた豪華企画。最高賞を含む計5冠という圧勝で、S1は2008年に続いて2年連続の「実質王者」となった。AV OPEN時代も2006年・2007年ともにS1が1位(2007年は繰り上げ)だったため、2006〜2009年の4年間、大型コンテストの頂点はずっとS1が握っていたことになる。
ジャンル部門の主な結果[編集]
| 部門 | 主な受賞 |
|---|---|
| 凌辱作品部門 | 優秀賞:大塚咲出演の緊縛系作品 |
| 女優作品部門 | 最優秀賞:『Wギリモザ Rioとゆま』(S1) |
| 熟女作品部門 | 優秀賞:『義母奴隷 浅倉彩音』(溜池ゴロー) |
| バラエティー作品部門 | 優秀賞:『GAL CIR 3』 |
| フェチ作品部門 | 最優秀賞:アロマ企画の作品/優秀賞:HOT CHOCOLATEの大会限定作品 |
| 萌え作品部門 | 最優秀賞:みるきぃぷりん♪の作品(大沢佑香出演) |
終了[編集]
2回で消滅[編集]
AVグランプリは2009年大会を最後に、2010年以降は開催されなかった。公式に「終了」を宣言したというより、次の大会が告知されないまま自然消滅した形で、事実上2回限りのイベントとなっている。
終了の背景(推測されている事情)[編集]
主催側から明確な終了理由は発表されていないが、背景としてよく挙げられるのが北都グループの業績の急落である。北都の売上は2008年度に約324億円でピークを迎えたものの、2010年度には半分以下にまで落ち込み、SODが再び業界最大のグループに返り咲いた。帝国データバンクはその要因を、インターネット上の無料動画サイトとの競合と見ていたとされる。
DVDのセル市場そのものが縮小し、ネット配信へ急速にシフトしていく時期でもあり、「パッケージの売上で日本一を決める」形式の賞が成り立ちにくくなっていたとも考えられる。賞金総額3,000万円規模の大会を毎年続ける体力が陣営側になくなった、という見方もあるが、いずれも推測の域を出ない。
AV OPEN・FANZAアダルトアワードとの比較[編集]
比較表[編集]
| 項目 | AV OPEN(第1期) | AVグランプリ | FANZAアダルトアワード |
|---|---|---|---|
| 開催 | 2006年・2007年(2014〜2018年に復活) | 2008年・2009年 | 2014年〜(旧称DMMアダルトアワード) |
| 主催 | 東京スポーツ・SOD(復活後は知的財産振興協会) | AVグランプリ事務局(北都・DMMら) | DMM.com(のちFANZA) |
| 主な審査軸 | 協力店舗での実売本数 | 売上(セル・配信)+ユーザー投票 | 売上・検索データによるノミネート+Web投票 |
| 表彰の主役 | 作品・メーカー | 作品・メーカー | 女優(「真のNo.1セクシー女優は誰か」) |
| 最高賞金 | 1位1,000万円 | 最優秀作品賞500万円 | — |
| 参加規模 | 16〜19社程度 | 77社〜97作品 | 配信全体からノミネート |
何が違ったのか[編集]
AV OPENが「店で何本売れたか」というガチンコの数字勝負だったのに対し、AVグランプリは売上に加えてユーザー投票・プレス・販売店の評価まで組み合わせた「総合評価型」だった。主催者が自社買いをした前例があったため、一つの数字に依存しない仕組みにしたのは自然な流れと言える。また、ジャンル別部門を細かく設けたことで、熟女・フェチ・マニア系といった小規模メーカーにも受賞のチャンスを広げた。
一方、後継とされるFANZAアダルトアワード(2014年に「DMMアダルトアワード」として開始)は、表彰の主役を「作品」から「女優」へと移した点が大きく異なる。DMMはAVグランプリの運営に関わっていたため、同アワードは「約5年ぶりの復活」と位置づけられることもある。奇しくも2014年は、知的財産振興協会(IPPA)の主催でAV OPENも復活した年であり、かつてのライバル同士の大会が同じ年に再出発する形になった。
業界への影響[編集]
「メーカーの賞」から「女優の賞」へ[編集]
AVグランプリは、作品とメーカーを主役にした大型コンテストとしては、ある意味で最後の「パッケージ時代」の大会だった。賞金の大半が作品・メーカーに出る仕組みで、メーカー同士の対抗戦という色が濃かった。その後に定着したFANZAアダルトアワードが女優個人を前面に出す形になったのは、配信時代に「誰が出ているか」で作品が選ばれるようになった市場の変化とも重なっている。
配信売上という物差し[編集]
AVグランプリは、2008年の時点で「配信売上賞」を正式な賞として設けていた。店頭セルの売上と並べてダウンロード販売の数字を表彰したのは、DMMが運営に関わっていた大会ならではと言える。2014年に復活したAV OPENでも「DMM.R18配信売上賞」が設けられており、配信を重視する流れはその後の業界賞にも受け継がれた。
業界ニュースとしての存在感[編集]
2008〜2009年当時、AV業界の賞としてはスカパー!アダルト放送大賞なども存在したが、セル作品の大型コンテストとしてはAVグランプリが最大級の規模を持っていた。英語版Wikipediaの日本のAV賞一覧でも、当時の「二大アワード」の一つとして扱われている。2回で終わったこともあって知名度は今ひとつだが、AV OPENとFANZAアダルトアワードをつなぐ「ミッシングリンク」的な大会として、業界史を語るうえでは外せない存在である。
余談[編集]
- 2009年のメインサポーターを務めた萩原流行は、ドラマや映画で活躍した個性派俳優。AV業界の大会に一般俳優が「顔」として登場するのは当時としても珍しく、話題になった。萩原は2015年に亡くなっている。
- 同じく2009年のメインサポーターの穂花は、2008年12月にAVを引退した直後の起用で、2009年には著書の出版やドラマ出演など、タレント・作家として活動していた時期にあたる。
- AV OPEN 2007には、SOD創業者の高橋がなりが自身の農業法人系レーベルから作品をエントリーし、5位に入っている。主催側の会社を辞めた創業者が一参加者として出場していた、という妙な縁がある。
- 2008年最優秀作品賞のタイトルにある「ギザカワユス」は、中川翔子が広めた流行語。2008年の時代の空気がそのままパッケージになっている。
- 大会用エントリー作品の品番「AVGP」「AVGL」は、コレクターの間で大会作品を見分ける目印になっている。