| 名探偵コナン 純黒の悪夢 Detective Conan: The Darkest Nightmare | |
|---|---|
![]() 作中の観覧車のモデルとされるロンドン・アイ(出典:ウィキメディア・コモンズ、CC BY 2.5) | |
| 監督 | 静野孔文 |
| 製作 | 諏訪道彦、近藤秀峰、石山桂一 |
| 脚本 | 櫻井武晴 |
| 原作 | 青山剛昌『名探偵コナン』 |
| 撮影 | 西山仁 |
| 音楽 | 大野克夫 |
| 制作会社 | TMS/V1 Studio(制作協力:スタジオコメット) |
| 配給 | 東宝 |
| 上映時間 | 112分 |
| 興行収入 | 63.3億円 |
| 言語 | 日本語 |
| 前作 | 名探偵コナン 業火の向日葵 |
| 次作 | 名探偵コナン から紅の恋歌 |
概要[編集]
名探偵コナン 純黒の悪夢(めいたんていコナン じゅんこくのナイトメア)とは、2016年4月16日に公開された劇場版『名探偵コナン』シリーズ第20作である。劇場版20周年記念作として黒の組織を真正面から描き、公安・FBI・CIA・組織が入り乱れる諜報アクションに仕上げた。最終興行収入は当時のシリーズ最高となる63.3億円を記録した。
詳細[編集]
20周年記念作という位置づけ[編集]
1997年の第1作『時計じかけの摩天楼』から数えて、ちょうど20本目・20年目にあたる節目の作品である。2015年11月4日にYouTubeで製作が告知され、同年12月2日に正式タイトルが発表された。タイトルの「純黒」は文字どおり真っ黒な話であることを示しており、原作者の青山剛昌も「今度の映画は真っ黒な話ですが、観終ったあと何色の気持ちになれるかはあなた次第です」とコメントしている。
宣伝では「BLACK IMPACT PROJECT」と題したキャンペーンが展開され、黒の組織が現実の広告媒体やモノを「ジャック」するという仕掛けで話題を集めた。テレビアニメ側でも、組織との対決を描いた過去回「ブラックインパクト!組織の手が届く瞬間」がデジタルリマスター版として公開直前の2016年3月に4週にわたって再放送され、映画への機運を高めた。
黒の組織、本格参戦[編集]
劇場版で黒の組織が登場するのは本作が初めてではないが、ここまで組織そのものを物語の中心に据えた作品は珍しい。ジン、ウォッカ、ベルモット、キャンティ、コルンといったおなじみの面々に加え、組織のナンバー2とされる「ラム」が声のみで登場する。ラムの声は機械で加工されたもので、エンドクレジットでも演者が伏せられるという徹底ぶりだった。
さらに本作は、黒の組織・FBI・CIA・日本の公安警察という四つの勢力が同時に登場した初の劇場版でもある。FBIの赤井秀一、公安の降谷零こと安室透、CIAの諜報員である水無怜奈(キール)がそろってスクリーンに立ち、それぞれの思惑で一人の女を追う。組織とFBIが劇場版で直接ぶつかり合うのも本作が初めてとされる。
劇場版初登場キャラクター[編集]
本作で劇場版デビューを飾ったキャラクターは多い。安室透(バーボン)、水無怜奈(キール)、そして本作オリジナルの組織メンバー・キュラソーである。安室の劇場版初登場は、のちに彼が主役級で活躍する『名探偵コナン ゼロの執行人』へとつながる種となった。
オープニング映像も大きく刷新された。第11作以来となる大幅なリニューアルで、立体視効果を意識した映像のなかに、工藤新一が幼児化する経緯や灰原哀の紹介などを数秒の断片としてまとめる新しい形式が採用された。おなじみの長い説明パートを短くまとめ、本編へテンポよく入る構成になっている。
あらすじ[編集]
ある夜、警察庁に何者かが侵入し、各国の諜報機関の極秘データが盗み出される事件が起きる。侵入者は銀髪の女。公安の安室透と、FBIの赤井秀一が彼女を追い、夜の高速道路を舞台にした激しいカーチェイスが繰り広げられる。追い詰められた女の車は橋から転落し、行方がわからなくなる。
翌日、江戸川コナンと少年探偵団は、リニューアルオープンしたばかりの東都水族館を訪れていた。そこで彼らは、ケガを負い、記憶をなくしたまま一人たたずむ女性と出会う。左右の瞳の色が異なるオッドアイの持ち主で、自分の名前すら思い出せない彼女に、子どもたちはすぐに打ち解け、一緒に遊び始める。
一方、盗まれたデータには、組織に潜入している各国の諜報員、いわゆる「ノック」のリストが含まれていた。この情報をめぐって組織は動き出し、潜入中の安室や水無怜奈にも危険が迫る。記憶を失った女の正体は誰なのか。彼女が記憶を取り戻したとき、何が起きるのか。東都水族館の名物である二輪の大観覧車を舞台に、組織・公安・FBIの思惑が交錯していく。
物語の核心は、女の記憶と、少年探偵団と過ごした短い時間が彼女に何をもたらすかにある。結末はぜひ本編で確かめてほしい。
登場人物と声優[編集]
主要キャラクター[編集]
- 江戸川コナン - 高山みなみ:毒薬で子どもの姿にされた高校生探偵。本作では組織・公安・FBIの間を縫うように動き、記憶喪失の女の謎に迫る。
- 毛利蘭 - 山崎和佳奈:ラストで印象的な言葉を口にし、作品のテーマを静かにまとめる役回りを担う。
- 毛利小五郎 - 小山力也
- 灰原哀 - 林原めぐみ:組織の影が濃い本作で、コナンとともに緊張感を担う存在。
- 工藤新一 - 山口勝平
- 阿笠博士、鈴木園子、少年探偵団(吉田歩美・小嶋元太・円谷光彦)もおなじみの面々として登場する。
公安・FBI・CIA[編集]
- 安室透(降谷零/バーボン) - 古谷徹:喫茶店ポアロの店員、黒の組織の探り屋、そして警察庁警備局警備企画課「ゼロ」の公安警察官という三つの顔を持つ男。本作では潜入捜査官としての危機に直面する。
- 赤井秀一 - 池田秀一:FBI捜査官。普段は沖矢昴として身を隠しているが、本作では赤井本人として長距離狙撃や肉弾戦で見せ場を作る。
- 水無怜奈(キール) - 三石琴乃:CIAから組織へ潜入している諜報員。ノックリストの流出で窮地に立たされる。
- ジェイムズ・ブラック - 土師孝也:FBIの捜査官。前任の家弓家正が2014年に死去したため、本作から土師孝也が役を引き継いだ。
- ジョディ・スターリング - 一条みゆ希
- アンドレ・キャメル - 谷田清
黒の組織[編集]
- ジン - 堀之紀:組織の幹部。冷酷な判断で作戦を指揮する。
- ウォッカ - 立木文彦:ジンの相棒。
- ベルモット - 小山茉美:変装の名人。独自の思惑で動く。
- キャンティ - 井上喜久子:狙撃手。
- コルン - 木下浩之:狙撃手。
- ラム:組織のナンバー2とされる人物。本作では加工された声と影のみで登場し、演者は公開時には明かされなかった。英語版ウィキペディアなどでは、のちに千葉繁が担当していたことが明かされたとされる。
キュラソー[編集]
- キュラソー - 天海祐希:本作オリジナルの組織メンバー。銀髪とオッドアイが特徴で、ラムの側近とされる。見たものを瞬時に記憶する能力を持ち、記憶を失った状態で少年探偵団と出会う。コードネームはオレンジの果皮で香りづけしたリキュールの名前に由来し、ブルーやレッドなど色違いが存在することも物語の小道具として効いている。
天海祐希は元宝塚歌劇団の男役トップスターで、本作がアニメ声優としての大きな挑戦となった。インタビューでは、セリフそのものよりも、息を吐きながら出す音や吐息の表現が難しかったと振り返っている。また、宝塚退団から20年という自身の節目が、劇場版20周年と重なったことにも触れている。収録は約4時間半に及んだとされる。
制作[編集]
スタッフ[編集]
監督は『絶海の探偵』『異次元の狙撃手』『業火の向日葵』に続いて静野孔文が務めた。脚本は『絶海の探偵』も手がけた櫻井武晴で、実写刑事ドラマの脚本家として知られる人物である。音楽はテレビシリーズから一貫して担当する大野克夫、キャラクターデザインと総作画監督は須藤昌朋。アニメーション制作はトムス・エンタテインメントの制作スタジオ「TMS/V1 Studio」で、配給は東宝が担当した。
静野監督は自ら手を動かすタイプで、観覧車のネオンが破壊されるシーンなど、自分で「弱い」と感じた場面の作画を自ら担当したとされる。赤井と安室が不安定な足場で格闘するシーンでは、截拳道の使い手とボクサーが疑似的に組み手をする映像を参考にしたという。
観覧車と東都水族館[編集]
クライマックスの舞台となる東都水族館は架空の施設で、二つの輪が並ぶ巨大な二輪観覧車が目玉という設定である。観覧車のデザインはロンドンの大観覧車ロンドン・アイがモデルとされている。夜の水族館と光り輝く観覧車のビジュアルは、ポスターや予告編でも本作の顔として大きく打ち出された。
声の収録[編集]
レギュラー陣の収録は約40人の声優が参加し、合計13時間17分に及んだとされる。公開前には完成披露試写会が行われ、天海祐希、高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、池田秀一、古谷徹らが登壇した。
主題歌[編集]
主題歌はB'zの「世界はあなたの色になる」。作詞は稲葉浩志、作曲は松本孝弘で、二人がシナリオを読んだうえで書き下ろした楽曲である。B'zが劇場版の主題歌を担当するのは5年ぶり5度目で、青山剛昌の「何色の気持ちになれるかはあなた次第」というコメントへのアンサーソングとも位置づけられた。
さらに本作では、松本孝弘がおなじみの「名探偵コナン メインテーマ」をオーケストラ編成でアレンジしており、主題歌アーティストがメインテーマの演奏を手がけた初めての例となった。「世界はあなたの色になる」はテレビアニメのオープニングテーマとしても使われ、のちに2017年6月14日発売のシングル『声明/Still Alive』に収録された。
興行成績[編集]
公開初週の週末2日間で動員93万3781人、興行収入12億915万8900円を記録し、初登場1位を獲得。その後も3週連続で首位を守った。公開23日間で興収50億円を突破し、シリーズ初の50億円台に到達している。前作『業火の向日葵』の44.8億円を大きく上回り、6月5日までに興収60億2050万円、動員471万7855人に達した。
最終興行収入は63.3億円で、当時のシリーズ最高記録となった。2016年の日本の映画興行では全体6位、邦画では3位という好成績である。この年は『君の名は。』や『シン・ゴジラ』が社会現象を起こした年でもあり、そのなかで堂々の上位に食い込んだ。
海外では中国で2016年11月25日に公開され、約3112万元を記録。韓国でも約52万人を動員した。
2018年2月10日からは、翌年公開の『名探偵コナン ゼロの執行人』に合わせた企画として、4DX・MX4D版が全国73スクリーンで期間限定上映された。16日間で動員8万3489人、興収2億314万円を記録している。
なお、シリーズ最高記録は翌年の『から紅の恋歌』によって更新され、その後も『ゼロの執行人』『名探偵コナン 黒鉄の魚影』『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』と、記録は塗り替えられ続けていく。本作は、コナン映画が「毎年右肩上がり」の巨大フランチャイズへと変貌していく流れを決定づけた一本と位置づけられることが多い。
評価・反響[編集]
観客満足度[編集]
ぴあの初日満足度調査では92.3点、東宝による初日アンケートでは95.9パーセントが満足と回答するなど、公開直後から高い評価を得た。
観覧車の大決戦[編集]
最大の見どころとして語られるのが、クライマックスの観覧車をめぐる攻防である。組織が軍用機を持ち出して襲いかかる規模感は、もはや推理アニメの枠を超えたスペクタクルとして話題になった。中でも、赤井と安室が観覧車の上で拳を交えるシーンは、ファンの間で語り草となっている。アムロ・レイとシャア・アズナブルを演じた古谷徹と池田秀一の共演という、アニメファンにとって胸熱な要素もあった。
キュラソーと少年探偵団[編集]
一方で、本作を単なるアクション映画で終わらせなかったのが、キュラソーと少年探偵団の交流である。記憶を失った彼女が子どもたちと過ごす時間は、物語の中で温かな色を放ち、作品全体のテーマとも重なっていく。エピローグで蘭が口にする言葉は、多くの観客の涙を誘った。キュラソーは劇場版オリジナルキャラクターでありながら、今なお根強い人気を持つ存在である。
安室透ブームの起点[編集]
本作は安室透の劇場版初登場作品でもあり、これを機に彼の人気が爆発的に広がったと語られることが多い。2年後の『ゼロの執行人』で安室がメインキャラクターに抜擢される流れの起点として、本作の存在は大きい。
応援上映の始まり[編集]
20週を超えるロングランを記念し、2016年10月24日には東京・池袋のHUMAXシネマズで「“大”応援上映会」が開催された。観客が声を出したりペンライトを振ったりして楽しむこの形式は好評を博し、その後のコナン映画でも恒例行事となっていく。
劇場来場者特典[編集]
本作では、来場者特典として青山剛昌からの「感謝状」カードが配布された。カードにはシリアルコードが付いており、過去の劇場版を無料で視聴できるという太っ腹な企画で、全国400万人を対象とした。
放送・配信・ソフト化[編集]
テレビ放送[編集]
地上波初放送は2017年4月14日、日本テレビ系「金曜ロードショー」にて。翌週の新作公開に合わせた「2週連続コナン祭り」の一環として放送された。テレビ放送では放送枠に合わせて本編が一部カットされ、エンドロール後のエピローグも省略されたため、完全版はソフトや配信で確かめるのがおすすめである。
ソフト化[編集]
Blu-ray・DVDは2016年10月5日に発売された。初回限定版のほか、販売店ごとに異なる特典が付いたバージョンも展開された。
配信[編集]
国内ではU-NEXTやNetflixなど複数の動画配信サービスで配信されてきた実績があるが、配信状況は時期によって変わるため、視聴前に各サービスで確認したい。英語吹替版は2020年12月22日にデジタル配信され、北米では2021年9月28日にディスコテック・メディアからBlu-rayが発売された。
余談[編集]
- 観覧車が脱輪して転がるクライマックスは、スティーヴン・スピルバーグ監督の映画『1941』で観覧車が転がり出すシーンへのオマージュとされる。
- コナンのラストのモノローグは、名作映画『マルタの鷹』の締めくくりのセリフを意識したものという説がある。
- ノックとして名前が挙がるスタウト、アクアビット、リースリングは、いずれもビールや蒸留酒、ワインの名前。組織のコードネームが酒の名前で統一されているのはシリーズのお約束である。
- エンドロール後に事件の後日談が描かれるのは、2009年の『漆黒の追跡者』以来とされる。エンドクレジットには、2016年1月に亡くなった元チーフプロデューサー・吉岡昌仁への追悼も入っている。
- エンドロール後には、服部平次の声で次回作の予告が流れる。これが百人一首をテーマにした『から紅の恋歌』へとつながった。
- 東都水族館の観覧車は公式にはロンドン・アイがモデルとされている。東京湾岸の水族館と大観覧車という組み合わせから、葛西臨海公園(葛西臨海水族園とダイヤと花の大観覧車)を連想するファンもいるが、公式に確認されたモデルではない。
- キュラソーというリキュールには透明・オレンジ・ブルー・グリーン・レッドなどの色違いがある。「色」が作品全体のキーワードになっている点は、主題歌「世界はあなたの色になる」とも響き合っている。
