| 名探偵コナン ゼロの執行人 Detective Conan: Zero the Enforcer | |
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![]() 作品の舞台となった東京湾岸・お台場から見たレインボーブリッジの夜景(出典:ウィキメディア・コモンズ) | |
![]() 警察庁が入る中央合同庁舎第2号館(出典:ウィキメディア・コモンズ、CC BY-SA 3.0) | |
| 監督 | 立川譲 |
| 製作 | 「名探偵コナン」製作委員会(小学館・読売テレビ・日本テレビ・小学館集英社プロダクション・東宝・トムス・エンタテインメント) |
| 脚本 | 櫻井武晴 |
| 原作 | 青山剛昌『名探偵コナン』 |
| 撮影 | 西山仁(撮影監督) |
| 音楽 | 大野克夫 |
| 制作会社 | トムス・エンタテインメント(V1 Studio) |
| 配給 | 東宝 |
| 上映時間 | 110分 |
| 興行収入 | 91.8億円(日本国内) |
| 言語 | 日本語 |
| 前作 | 名探偵コナン から紅の恋歌(2017年) |
| 次作 | 名探偵コナン 紺青の拳(2019年) |
| リンク | 劇場版『名探偵コナン』公式サイト |
概要[編集]
名探偵コナン ゼロの執行人(めいたんていコナン ゼロのしっこうにん)とは、2018年4月13日に公開された劇場版『名探偵コナン』シリーズ第22作である。公安警察の顔を持つ安室透をメインに据えた「公安ミステリー」で、興行収入91.8億円という当時のシリーズ最高記録を打ち立て、「安室の女」「100億の男」といった言葉を生む社会現象を巻き起こした。通称は「ゼロシコ」。
詳細[編集]
企画経緯[編集]
タイトルと公開日は、2017年11月29日発売の『週刊少年サンデー』2018年1号で発表された。安室透が劇場版でメインを張るのは、黒の組織との対決を描いた前々作『名探偵コナン 純黒の悪夢』(2016年)以来2年ぶりとなる。ただし『純黒の悪夢』が組織側の「バーボン」としての顔を前面に出していたのに対し、本作は警察庁の公安警察官「降谷零」としての顔を徹底的に掘り下げる構成になっている。
監督は、『沈黙の15分』から前作『から紅の恋歌』まで7作連続で監督を務めた静野孔文からバトンを受け、『モブサイコ100』などで知られる立川譲が初起用された。脚本は『名探偵コナン 絶海の探偵』を手がけ、実写ドラマ『相棒』シリーズの脚本家としても知られる櫻井武晴が再登板。音楽はテレビシリーズ開始以来の大野克夫が担当している。
もう一つ業界的に大きかったのが公開曜日の変更で、それまで劇場版コナンは4月の土曜日公開が通例だったが、本作から金曜日公開に切り替わった。以後のシリーズもこの「4月第2金曜前後」の公開パターンを踏襲している。
公安警察という題材[編集]
本作の核にあるのは「公安」という、一般の観客にはなじみの薄い組織である。劇中では警察庁警備局(通称「ゼロ」)、警視庁公安部、そして東京地方検察庁公安部が入り乱れ、刑事部とは異なる論理で動く捜査機関の姿が描かれる。協力者(いわゆるエス)の運用、違法すれすれの「作業」、事件の筋書きを国家の都合で描き直す「公安的な正義」など、子ども向けアニメとしてはかなり踏み込んだ題材が並ぶ。
監督の立川は、コナンの決め台詞「真実はいつもひとつ」に対し「正義はひとつではない」という対比をテーマに据えたと語っており、コナンを「光」、安室を「闇」として映像的にも対比させたという。脚本の櫻井は、真実を暴く者と正義を貫く者という対立軸を物語の背骨に置いた。結果として、コナンと安室が協力しながらも互いの手の内を読み合う、ヒリついたバディものに仕上がっている。
「安室の女」現象[編集]
本作最大のトピックが、公開後に爆発した安室透人気である。安室は2012年からアニメに登場していたキャラクターだが、本作で「トリプルフェイス」(喫茶店ポアロの店員・毛利小五郎の弟子の私立探偵・公安警察官、さらに黒の組織の「バーボン」)の魅力が劇場の大画面で全開になり、女性ファンが劇場に押し寄せた。彼にハマった女性ファンは自らを「安室の女」と称し、劇場で鑑賞することを「執行される」と表現した。
ファンの間では「安室透を100億の男に」がスローガンとなり、リピート鑑賞が一種の応援行為として定着。プロデューサーが「4回、5回観るのが普通になっている」と語るほどの熱量で、安室の本名の姓「降谷」の判子(全国に約30人しかいない珍しい姓とされる)まで売れる事態になった。アニメ雑誌『アニメディア』2018年6月号が創刊以来2度目の重版、『週刊少年サンデー』2018年24号が品切れになるなど、出版にも波及している。
あらすじ[編集]
5月1日に東京サミットの開催が予定されている東京湾の巨大統合型リゾート施設「エッジ・オブ・オーシャン」。サミット会場となる国際会議場で、開催を目前に控えた日に大規模な爆発事件が発生する。現場を警備していた警察官に死傷者が出るなか、爆発の直前の監視映像には、なぜか安室透の姿が映り込んでいた。
さらに、現場のガス栓から採取された指紋が毛利小五郎のものと一致したことで、小五郎は警視庁公安部に逮捕されてしまう。家宅捜索、取り調べ、そして起訴へと、公安の手続きは異様な速度で進んでいく。毛利蘭と江戸川コナンは、小五郎の無実を信じて真相を追い始める。
小五郎の弁護を引き受けたのは、公安絡みの事件を多く扱いながら「全敗」の過去を持つ弁護士・橘境子。対する検察側は、東京地検公安部の検事・日下部誠。一方、コナンは事件の背後に安室=降谷零の思惑があると確信し、彼が何のために小五郎を巻き込んだのかを探る。
やがて捜査線上に浮かび上がるのは、1年前に起きた「NAZU不正アクセス事件」と、都内の家電を次々に暴走させるIoTテロ。そして、火星から地球へ帰還しようとしている無人探査機「はくちょう」。サミット当日の5月1日、すべてのピースがつながったとき、東京の空に未曾有の危機が迫る。犯人の正体と、安室がコナンにだけ見せた「本当の目的」は、劇場で確かめてほしい。
登場人物と声優[編集]
レギュラー陣[編集]
- 江戸川コナン(声:高山みなみ)
- 本作の主人公。小五郎の無実を証明するため、公安と真っ向から渡り合う。阿笠博士の発明品を総動員したアクションも健在。
- 安室透/降谷零(声:古谷徹)
- 本作の実質的な主役。警察庁警備局警備企画課に所属する公安警察官で、表向きは喫茶ポアロの店員兼私立探偵。目的のためなら協力者すら使い捨てにしかねない冷徹さと、国を守る覚悟の両面が描かれる。
- 毛利蘭(声:山崎和佳奈)
- ヒロイン。父の逮捕に動揺しながらも、母・妃英理とともに父を支える。
- 毛利小五郎(声:小山力也)
- 爆破事件の容疑者として逮捕される。本作では「眠りの小五郎」どころか、ほぼ全編拘束状態という珍しいポジション。
- 風見裕也(声:飛田展男)
- 警視庁公安部の刑事で、降谷の部下。上司の指示で汚れ役を引き受ける苦労人。
- 灰原哀(声:林原めぐみ)、鈴木園子(声:松井菜桜子)、阿笠博士(声:緒方賢一)
- いつものメンバーとしてコナンをサポートする。
- 少年探偵団(声:岩居由希子、高木渉、大谷育江)
- 吉田歩美・小嶋元太・円谷光彦の3人。阿笠博士とともにコナンの周囲でおなじみの騒がしさを担う。
- 警視庁刑事部の面々。公安主導で進む捜査を、刑事部の立場から見つめる。
- 工藤新一(声:山口勝平)
- コナンの本来の姿としてクレジットされている。
ゲスト・オリジナルキャラクター[編集]
- 橘境子(声:上戸彩)
- 29歳のフリーランス弁護士。公安事件を多く担当し、法曹界では「ケー弁」と呼ばれる。過去の裁判では全敗とされる。上戸彩はテレビシリーズへのゲスト出演以来、12年ぶりのコナン作品参加となった。
- 羽場二三一(声:博多大吉)
- かつて境子の事務所で事務員をしていた男性。1年前のNAZU不正アクセス事件の関係者で、物語の根幹に関わる。
- 日下部誠(声:川島得愛)
- 東京地検公安部の検事。40歳。裁判で負けたことがないとされる敏腕で、小五郎の起訴を担う。
- 岩井紗世子(声:冨永みーな)
- 東京地検公安部の総括検事。日下部の同期。
- 諸國沙代子(声:諸國沙代子)、安村直樹(声:安村直樹)
- 劇中のニュースキャスター。それぞれ読売テレビ・日本テレビの実在アナウンサー本人が演じた。
なお、赤井秀一や怪盗キッド、服部平次といった人気キャラクターは本作には本筋で絡まず、安室と公安のドラマに焦点が絞られている。
制作[編集]
スタッフ[編集]
監督・絵コンテ・演出は立川譲。長期にわたった静野体制からの交代で、シリーズにとっては新しい血の導入となった。立川はのちに『名探偵コナン 黒鉄の魚影』(2023年)でも監督を務め、同作はシリーズ初の興収100億円超えを達成している。
脚本の櫻井武晴は、警察ドラマで鍛えた組織論と法廷劇の手つきを持ち込み、検察・弁護士・公安の三つどもえを2時間弱に圧縮した。法律用語や警察組織の専門用語が飛び交う密度の濃さは、シリーズでも屈指とされる。
主題歌「零 -ZERO-」[編集]
主題歌は福山雅治の書き下ろし「零 -ZERO-」。福山がコナンとタイアップするのはこれが初めてで、ビーイング系以外のアーティストが主題歌を担当するのは『業火の向日葵』(2015年)以来3年ぶりだった。タイトルからして安室の「ゼロ」=降谷零と直結しており、作品世界と強く結びついた一曲になっている。2018年4月21日には、広島グリーンアリーナでの福山のライブ会場でも作品と連動したイベントが行われた。
宣伝展開[編集]
宣伝は「極秘任務-SECRET MISSION-」と銘打たれ、なかでも安室の電話番号が「流出」したという設定の「シークレット安室コール」が話題になった。電話をかけると作品にまつわる重要なメッセージが聞ける仕掛けで、一部の参加者には折り返しの電話がかかってくる演出まであった。
また、安室透と『機動戦士ガンダム』のアムロ・レイがどちらも古谷徹の当たり役であることから、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』とのコラボポスターが2018年5月11日に公開され、コナン・安室とアムロ・シャアが並ぶという夢の構図が実現した。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンではリアル脱出ゲーム『名探偵コナン・ザ・エスケープ〜ゼロの序曲〜』が開催されたほか、公開後には安室から公安へのスカウトを受ける体験型の脱出ゲームも登場している。
テレビアニメ側では、2018年4月7日放送の第898話「ケーキが溶けた!」が前日譚的なプレストーリーとして位置づけられ、小五郎が容疑者となるエピソード「容疑者・毛利小五郎」も再放送された。公開直前の4月8日には、コナンの着ぐるみが渋谷警察署の一日署長を務めている。
興行成績[編集]
初動と推移[編集]
全国384スクリーンで公開され、公開初週末2日間で観客動員101万2000人、興行収入12億9600万円を記録して初登場1位を獲得した。前作比は100.7%とほぼ互角のスタートだったが、ここからの伸びが異常だった。公開3日間の累計は約16.7億円。
2週目、3週目と首位をキープし、3週目には『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』が2位に初登場するなか1位を守った。最終的に7週連続の首位を獲得。公開38日目の5月20日には累計72億円を突破し、前作『から紅の恋歌』の68.9億円を抜いてシリーズ歴代最高を更新した。これでシリーズは6作連続で最高興収を塗り替えたことになる。
最終興行収入[編集]
その後もロングランが続き、6月27日時点で観客動員641万人、興収83.8億円。夏を越えて秋に入っても上映が続き、10月からは4D版の限定上映も行われた。11月には91億円台に到達し、最終興行収入は91.8億円で確定した。2018年の邦画興行ランキングで年間2位、当時の邦画アニメ歴代ランキングでも上位に食い込む数字である。
ファンの悲願だった「100億の男」には届かなかったが、劇場版コナンが「90億円台」の世界に突入したのはこれが初めて。翌年の『紺青の拳』(93.7億円)がこの記録を更新し、さらにのちの『黒鉄の魚影』で100億円の大台を突破することになるが、その流れを作った起点が本作だと言ってよい。
海外展開[編集]
海外でも中国、韓国、台湾などで公開された。英語版の題は「Detective Conan: Zero the Enforcer」(北米では「Case Closed: Zero the Enforcer」)で、全世界興収は1億ドルを超えたとされる。英語吹き替え・字幕付きのブルーレイも後年に北米で発売されている。
評価・社会現象[編集]
観客層の変化[編集]
本作の観客層は、従来の「子ども連れのファミリー映画」というイメージを大きく覆した。報道によれば、観客の4割超が20代、約3割が10代とされ、上映回によっては女性客が8割に達したという。プロデューサーが「コナンは子ども向けに作っていない」と明言したことも話題になった。平成生まれでコナンと共に育った世代が、大人になって毎年の劇場版を同窓会のように楽しむ構図も指摘されている。
満足度面でも、ぴあの初日満足度ランキングで94.0点の第1位を獲得。第43回報知映画賞ではアニメ作品賞、第42回日本アカデミー賞では優秀アニメーション作品賞を受賞した。
応援執行上映[編集]
人気を受けて、声援やペンライトがOKの応援上映も「応援執行上映」の名で実施された。5月31日に開催された後、6月7日にも追加開催され、全国12都市・20劇場規模に拡大している。公式サイトが掲載した「参加の心得」がノリノリすぎるとSNSで話題になった。観客が安室の登場シーンや決め台詞に合わせて声を上げる光景は、まさに「安室の女」の集会そのものだったという。
カーチェイスとアクション[編集]
本作のもう一つの見どころが、安室の愛車である白いRX-7によるカーチェイスである。シリーズでも屈指の激しさと評され、前作までと比べてもスケールアップしたその爆走ぶりは、観客を驚かせるには十分だったと評されている。素手で車のフロントガラスを割るなどの超人的な描写も含め、「安室透は何でもできる」という伝説を決定づけた。
流行語として[編集]
ガジェット通信が主催した「アニメ流行語大賞2018」では、金賞が「安室透」、銀賞が「安室の女」と、本作関連の言葉がワンツーフィニッシュを飾った。「○○億の男」という言い回しも本作をきっかけに広まり、のちに他作品のキャラクターにも転用される定番表現となった。
放送・配信・ソフト化[編集]
地上波放送[編集]
地上波初放送は2019年4月26日、日本テレビ系「金曜ロードSHOW!」で、放送枠を拡大して放送された。前週の4月19日には『天空の難破船』が放送され、同月公開の新作『紺青の拳』に合わせた2週連続企画の一環だった。この日の放送は「平成最後の金曜ロードSHOW!」でもあり、平成の締めくくりを安室透が飾ったことになる。
ソフト化[編集]
ブルーレイとDVDは2018年10月3日に発売され、初週でブルーレイ約5万2000枚、DVD約3万5000枚を売り上げてともにランキング首位を獲得した。同年10月19日から11月8日までは4Dアトラクション版も限定上映され(4D化は『純黒の悪夢』以来2度目)、限定10万人に青山剛昌描き下ろしの「安室透からの執行認定証」が配布された。
配信(2026年時点)[編集]
劇場版コナンの過去作は、新作公開の時期に合わせて各配信サービスで期間限定の見放題配信が行われるのが恒例になっている。2026年4月の新作『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』公開時期には、本作もU-NEXT、DMM TV、Amazon Prime Video、Hulu、ディズニープラス、Lemino、ABEMAプレミアム、TELASA、Netflixなど多数のサービスで配信されたと報じられている。ただし配信期間はサービスごとに異なり、時期によっては見放題が終了していることもあるため、視聴前に各サービスでの確認が必要である。
余談[編集]
- 安室透の姓「降谷」は、全国に約30人しかいないとされる珍しい名字。にもかかわらず、本作の公開後には「降谷」の判子が売れたという。
- 安室透役の古谷徹は、『機動戦士ガンダム』のアムロ・レイ役でもおなじみ。「安室」「透」という名前自体がアムロ・レイや古谷徹にちなんだネーミングとされ、本作ではついに公式コラボポスターまで実現した。
- 劇中のニュースキャスターは、読売テレビの諸國沙代子アナウンサーと日本テレビの安村直樹アナウンサーが本人役で出演。役名もそのまま本人の名前である。
- 劇中には総理大臣や環境大臣も登場するが、環境大臣は劇中では女性として描かれており、公開当時の実際の環境大臣(男性)とは異なる。
- 本作の地上波初放送は「平成最後の金曜ロードSHOW!」。令和の始まりを目前に、日本中の「安室の女」がテレビの前で再び執行された。
- 安室が過去に失った警察学校時代の同期たちは、のちにスピンオフ『警察学校編』や劇場版『ハロウィンの花嫁』(2022年)で掘り下げられ、松田陣平や萩原研二らの人気も高まった。本作はそうした「安室の過去」人気の土台を作った作品ともいえる。

