| 名探偵コナン 黒鉄の魚影(くろがねのサブマリン) Detective Conan: Black Iron Submarine | |
|---|---|
![]() 物語の舞台となった八丈島の市街地(出典:ウィキメディア・コモンズ、パブリックドメイン) | |
| 監督 | 立川譲 |
| 脚本 | 櫻井武晴 |
| 原作 | 青山剛昌『名探偵コナン』 |
| 出演 | 高山みなみ、林原めぐみ、山崎和佳奈、小山力也、池田秀一、古谷徹、堀之紀、小山茉美、三石琴乃、千葉繁、沢村一樹(ゲスト)ほか |
| 音楽 | 菅野祐悟 |
| ジャンル | アニメ映画、ミステリー、アクション |
| 制作会社 | トムス・エンタテインメント |
| 配給 | 東宝 |
| 劇場公開 | 2023年4月14日(日本) |
| 上映時間 | 109分 |
| 興行収入 | 138.8億円(日本) |
| 言語 | 日本語 |
| レイティング | G |
| 前作 | 名探偵コナン ハロウィンの花嫁(2022年) |
| 次作 | 名探偵コナン 100万ドルの五稜星(2024年) |
概要[編集]
名探偵コナン 黒鉄の魚影(めいたんていコナン くろがねのサブマリン)とは、2023年4月14日に公開された名探偵コナン劇場版シリーズの第26作である。灰原哀と黒ずくめの組織の因縁を真正面から描き、興行収入138.8億円でシリーズ初の100億円超えを達成した、劇場版コナン史上最大のヒット作である。
詳細[編集]
作品の位置づけ[編集]
本作は青山剛昌原作の『名探偵コナン』(小学館『週刊少年サンデー』連載)を原作とする劇場版の第26弾。制作はトムス・エンタテインメント、配給は東宝という、いつもの布陣である。
黒ずくめの組織が本格的に物語に絡むのは、2016年の『純黒の悪夢』以来となる。そのため宣伝段階から「黒」が強く打ち出され、キャラクターたちが黒を基調としたファッションで描かれた「黒鉄ビジュアル」も公開された。本ポスターは劇場版シリーズ初の試みとして2枚1組のスペシャル仕様になった。
スタッフ[編集]
監督は『ゼロの執行人』(2018年)でも劇場版コナンを手がけた立川譲。脚本は『絶海の探偵』『純黒の悪夢』『ゼロの執行人』『緋色の弾丸』などを書いてきた櫻井武晴で、「組織回」と「公安・FBIもの」に強いコンビが再集結した形である。音楽は菅野祐悟が担当した。
主題歌はスピッツの書き下ろし曲「美しい鰭」。数々のCM・ドラマ・映画タイアップを手がけてきたスピッツだが、劇場版『名探偵コナン』とタッグを組むのはこれが初めて。2023年4月10日に先行配信され、スピッツにとっては久々のCDシングルとしてもリリースされた。
タイトルの意味[編集]
「黒鉄の魚影」と書いて「くろがねのサブマリン」と読む。劇場版コナンおなじみの当て字タイトルで、「黒鉄」は組織の黒、「魚影」は作中で組織が使う潜水艦を指している。
舞台は東京都・八丈島近海。海と潜水艦が絡む作品であることから、主題歌のタイトルも「鰭(ひれ)」になっている。IMAXや4DXなどのラージフォーマット上映も行われた。
主人公は実質「灰原哀」[編集]
本作のキーパーソンは、元組織の科学者「シェリー」こと灰原哀である。宣伝のコピーや予告でも灰原に危機が迫ることが強調され、ジンの「会いたかったぜ、シェリー…」というセリフが予告に使われた。
灰原役の林原めぐみは完成披露舞台挨拶で感極まった様子を見せ、キャラクターへの愛を語ったことが報じられている。ファンの間では本作を「灰原映画」と呼ぶ声も多い。
あらすじ[編集]
導入(ネタバレなし)[編集]
江戸川コナンと少年探偵団、毛利蘭、毛利小五郎らは、鈴木園子の招待で東京・八丈島を訪れる。島の近海には、世界中の警察が持つ防犯カメラをつなぐためのインターポールの海洋施設「パシフィック・ブイ」が建設されており、本格稼働に向けた準備が進められていた。
施設では、世界各国から集められたエンジニアたちが、ある新技術のテストを行っていた。そんな中、ひとりの女性エンジニアが黒ずくめの組織に誘拐される事件が発生する。組織のナンバー2・ラムの側近とされる謎の構成員「ピンガ」も暗躍を始め、やがて灰原哀の身にも危険が迫っていく。
物語の展開(以下ネタバレ)[編集]
物語はドイツ・フランクフルトでユーロポールの職員がジンとキールに追い詰められ、殺害される場面から幕を開ける。事件の背後にはピンガの存在があった。
パシフィック・ブイには、どんな年齢の写真からでも同一人物を特定できるという「老若認証」システムが搭載されていた。開発者は19歳の天才エンジニア直美・アルジェント。組織に潜入したバーボン(安室透)とベルモットが関わる中で直美は拉致され、組織の潜水艦に監禁される。
直美が持っていたデータを老若認証にかけた結果、組織は灰原哀が宮野志保=シェリーであることを突き止めてしまう。灰原はキャンティ、ウォッカ、ピンガによって連れ去られ、車ごと海中へ沈められて潜水艦へ運び込まれる。
施設内の殺人[編集]
コナンは防犯カメラ映像を確認するが、映像は改ざんされており潜水艦は写っていなかった。さらにエンジニアのレオンハルトが毒殺され、システムのバックドアは自分が仕込んだという告白文まで残される。
組織は直美にプログラムの書き換えを迫り、拒否すると、監視システムを提唱したEU側の要人である直美の父が銃撃される。直美は灰原と同じ監禁場所で過ごすうちに、灰原がかつてアメリカで自分を助けてくれた少女・志保であると気づく。
正体とトリック[編集]
コナンが暴いたピンガの正体は、パシフィック・ブイのフランス人エンジニア・グレースだった。グレースは女性になりすました男性で、レオンハルトを毒殺したうえ、映像加工で自殺に見せかけていた。コーヒーを飲んだ後に口元を拭うしぐさなどが、正体を見抜く手がかりになった。
一方、ベルモットはジンに対し、老若認証は「よく似た別人」まで同一人物と判定してしまう欠陥システムだと報告する。これを聞いたジンは激昂し、ラムの指示も受けて組織は老若認証への関心を失い、潜水艦でパシフィック・ブイを破壊する作戦に切り替える。
クライマックスと結末[編集]
キールの手引きもあり、灰原と直美は潜水艦からの脱出に成功する。コナンは海中で潜水艦の位置を示し、赤井秀一がその位置めがけて攻撃を加え、潜水艦に大打撃を与えた。組織は撤退し、ピンガは潜水艦の爆発に巻き込まれて命を落とす。
海中で意識を失ったコナンを救ったのは灰原だった。灰原は水中で人工呼吸を行い、コナンを水面へ引き上げる。長年積み重ねられてきたコナンと灰原の相棒関係が、ここで最大の名場面を迎える。
ラストでは、救助された灰原が気を失ったふりをして蘭に人工呼吸をしてもらい、心の中で「返したわよ」とつぶやく。コナン(新一)の唇を借りた分を蘭に返した、という意味で、灰原らしい粋な幕引きとして語り草になっている。また、ジンに欠陥システムだと思わせた裏には、大人のシェリーの目撃情報を各地で偽装したベルモットの工作があったことが示唆される。
登場人物とゲスト声優[編集]
おなじみのメンバー[編集]
- 江戸川コナン(声:高山みなみ)- 主人公。正体は高校生探偵・工藤新一。
- 灰原哀(声:林原めぐみ)- 本作のヒロイン。元組織の科学者で、コナンを幼児化させた薬APTX4869の開発者。
- 毛利蘭(声:山崎和佳奈)- 新一の幼なじみで恋人。空手の達人。
- 毛利小五郎(声:小山力也)- 「眠りの小五郎」として知られる私立探偵。
- 阿笠博士(声:緒方賢一)- 発明家。コナンと灰原の正体を知る数少ない人物。
- 少年探偵団 - 吉田歩美(声:岩居由希子)、円谷光彦(声:大谷育江)、小嶋元太(声:高木渉)。
黒ずくめの組織[編集]
- ジン(声:堀之紀)- 組織の幹部。新一に毒薬を飲ませた張本人。
- ウォッカ(声:立木文彦)- ジンの相棒。
- ベルモット(声:小山茉美)- 変装の達人。コナンと灰原の正体に気づいている。
- バーボン/安室透/降谷零(声:古谷徹)- 公安警察の潜入捜査官。
- キール/水無怜奈(声:三石琴乃)- CIAから組織に潜入している諜報員。
- キャンティ(声:井上喜久子)、コルン(声:木下浩之)- 組織のスナイパー。
- ラム/脇田兼則(声:千葉繁)- 組織のナンバー2。
- ピンガ - ラムの側近とされる構成員。本作の実行犯。
FBI[編集]
- 赤井秀一/沖矢昴(声:池田秀一/置鮎龍太郎)
- ジョディ・スターリング(声:一城みゆ希)、ジェイムズ・ブラック(声:土師孝也)、アンドレ・キャメル(声:乃村健次)
パシフィック・ブイのゲストキャラクター[編集]
- 牧野洋輔(声:沢村一樹)- パシフィック・ブイの局長。世界中から集まった精鋭エンジニアを束ねる物語のキーパーソン。
- 直美・アルジェント(声:種﨑敦美)- 19歳のエンジニアで、老若認証システムの開発者。
- レオンハルト(声:諏訪部順一)- ドイツ出身のエンジニア。
- エド(声:神谷浩史)- インド出身のエンジニア。
- グレース(声:村瀬歩)- フランス出身のエンジニア。
ゲスト声優として最も話題になったのは沢村一樹である。声の仕事は2010年発売のゲーム『龍が如く4 伝説を継ぐもの』以来13年ぶり。テレビアニメ版『名探偵コナン』が始まった1996年に俳優デビューしたことから、「コナンくんとは同期」とコメントしている。
パシフィック・ブイと老若認証[編集]
施設の概要[編集]
パシフィック・ブイは、八丈島近海に建設されたインターポールの海洋施設という設定である。世界中の警察が管理する防犯カメラをネットワークでつなぎ、一括して監視することを目的としている。
施設は海中に設けられており、各国から集まったエンジニアが常駐する。海の中の閉ざされた施設という舞台設定が、潜水艦と組み合わさって本作のサスペンスを支えている。
老若認証とは[編集]
施設の目玉が「老若認証」システムである。顔認証とAIを組み合わせ、子どものころの写真と大人になった現在の映像のように、年齢の違う顔からでも同一人物を特定できるとされる技術だ。
これは、薬で子どもの姿になったコナンと灰原にとって最悪の技術である。「大人のシェリー」と「小学生の灰原哀」が同一人物だと機械に見抜かれてしまえば、組織に正体が露見する。本作の緊張感は、この一点に集約されている。
現実の技術とのリンク[編集]
海外の批評でも、AIやディープフェイクといった現代的なテーマを扱っている点が指摘された。作中でもピンガが映像を加工して殺人を偽装しており、「映像は嘘をつく」というテーマが物語全体を貫いている。
灰原哀の扱い[編集]
劇場版での大抜擢[編集]
灰原は劇場版にたびたび登場してきたが、本作ほど物語の中心に据えられたことはなかった。組織に正体が露見し、ジンの手に落ちるという、原作でも描かれていない最悪の事態が描かれている。
予告映像には灰原の過去や「私は変われた」というセリフも使われた。組織から逃げてきた少女が、少年探偵団や蘭たちと過ごす中で変わっていったという、キャラクターの成長がテーマのひとつになっている。
直美との関係[編集]
ゲストキャラクターの直美・アルジェントは、かつてアメリカで志保に助けられた過去を持つ。直美にとって志保は恩人であり、本作は灰原が周囲の人間に与えてきた影響を描く物語でもある。
「100億の女」[編集]
本作がシリーズ初の興収100億円を突破したことで、灰原哀には「100億の女」という呼び名がついた。それまで劇場版の興収記録は、安室透が活躍した『ゼロの執行人』や怪盗キッドが登場した作品などが話題を集めていたが、灰原が初の大台をもたらした形である。
興行収入[編集]
歴代最高のスタート[編集]
公開初日の興収は約8.5億円、動員約58万人。公開3日間では興収31.4億円、動員217万人を記録し、シリーズ歴代1位のオープニングとなった。
シリーズ初の100億円突破[編集]
2023年5月7日、公開24日目にして国内興収100億円を突破した。この時点の動員は約728万人。原作者の青山剛昌は、コナンを描いた描き下ろしのお祝いイラストを寄せた。
それまでのシリーズ近作は『ゼロの執行人』(2018年)が91.8億円、『紺青の拳』(2019年)が93.7億円、『ハロウィンの花嫁』(2022年)が97.8億円と、あと一歩で100億円に届かない状態が続いていた。本作はついにその壁を破ったことになる。
最終興行収入[編集]
日本映画製作者連盟が2024年1月に発表した2023年の興行成績によると、本作の最終興収は138.8億円。2023年の邦画では『THE FIRST SLAM DUNK』に次ぐ2位で、洋画を含めた全体でも上位3作に入った。累計動員は約978万人とされる。
なお、東宝が2023年12月に発表した年間配給実績の段階では138.3億円とされていたが、最終的な公表値は138.8億円である。劇場版コナンとしては次作『100万ドルの五稜星』(2024年)が記録を塗り替えるまで、シリーズ最高記録だった。
海外展開[編集]
アジア[編集]
本作は海外でも広く公開された。台湾では2023年7月、韓国では同年7月20日にCJ ENMの配給で公開された。韓国では初日に約11万8,000人を動員し、『名探偵コナン から紅の恋歌』が持っていた韓国でのシリーズ最高オープニング記録を6年ぶりに更新。同日の『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』を抑えてボックスオフィス1位に立った。
その後はハリウッド大作に押されて順位を下げたが、公開数日で累計20万人を超えている。中国本土では2023年12月16日に公開された。
その他の地域[編集]
ほかにもタイ、ベトナム、香港、マレーシア、ミャンマーなどのアジア各国、フランスやドイツなどのヨーロッパ、さらにインドでも公開された。 英語版Wikipediaなどでは世界興収が約1億600万ドルとされ、名実ともにシリーズ最大のヒット作となった。
地上波放送・配信[編集]
地上波初放送[編集]
地上波では、2024年4月19日に日本テレビ系「金曜ロードショー」で本編ノーカットで初放送された。これは翌作『100万ドルの五稜星』の公開を記念した企画で、前週の4月12日には怪盗キッドが登場する『紺青の拳』が放送され、2週連続の劇場版コナン放送となった。
ソフト化[編集]
Blu-ray・DVDは2023年11月29日に発売された。いずれも豪華版と通常版の2形態がある。
配信(どこで見れる?)[編集]
配信状況は時期によって変わる。2026年3月時点の一部の配信まとめでは見放題配信がないと紹介されていたが、2026年10月に更新された別の配信まとめでは、DMM TV、U-NEXT、Amazonプライム・ビデオ、Hulu、Netflix、Disney+、Leminoなどで見放題配信されていると紹介されている。劇場版コナンは新作公開に合わせて過去作の配信がまとめて解禁されることが多いので、視聴前に各サービスで最新の配信状況をチェックしておきたい。DVDレンタルではTSUTAYA DISCASでも取り扱いがある。
評価[編集]
国内での評価[編集]
シリーズの集大成ともいえる組織との対決、灰原の名場面、赤井と安室の共演など、ファンが見たかった要素を一本に詰め込んだ作品として支持された。灰原の人工呼吸シーンやラストの「返したわよ」は公開当時から大きな話題を呼び、繰り返し劇場に通うリピーターも多かった。
第47回日本アカデミー賞では優秀アニメーション作品賞を受賞している。
海外の評価[編集]
海外の批評は「おおむね好意的だが手放しではない」というものが多い。Toho Kingdomのニコラス・ドリスコルは5点満点中3.5点をつけ、「画期的ではないかもしれないが、冒険好きな老若男女が楽しめる」と評した。
インドのタイムズ・オブ・インディアも3.5点をつけ、登場人物の多さで混乱しやすい点を指摘しつつ、AIやディープフェイクといったテーマを評価した。シリーズ未見の観客には人物関係が難しいという指摘は、組織回の宿命ともいえる。
炎上とバズ[編集]
- 100億円突破後、灰原哀が「100億の女」と呼ばれるようになり、SNSでは灰原の人気を改めて示すものとして盛り上がった。
- 灰原がコナンに人工呼吸する場面は、コナンと灰原の関係(いわゆる「コ哀」)を推すファンの間で特に話題になり、多くの考察や感想が投稿されたとされる。
余談[編集]
- 沢村一樹は宣伝企画で「海中アフレコ」に挑戦し、「緊張感しかなかった」と語ったことが報じられた。
- 沢村一樹はコナンのテレビアニメが始まった1996年に俳優デビューしており、本人いわく「コナンくんとは同期」。
- 本ポスターは劇場版シリーズ初の2枚1組仕様で、黒を基調とした「黒鉄ビジュアル」とあわせて組織回らしさを前面に押し出した。
- 主題歌「美しい鰭」の発表時には、映画本編の映像をふんだんに使ったスピッツとのコラボムービーも公開された。
- 翌年の『100万ドルの五稜星』(2024年)は本作の記録を塗り替えており、本作の100億円突破は「劇場版コナン100億円時代」の幕開けともいえる。
