香月美夜
Miya Kazuki
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代表作『本好きの下剋上』で主人公が作ろうとする活版印刷機(グーテンベルク式印刷機。出典:ウィキメディア・コモンズ、International Printing Museum、CC0)
国籍 日本
学歴 国立大学卒業
職業 小説家、エッセイスト
肩書 『本好きの下剋上』原作者
活動期間 2013年 -(Web投稿開始)、2015年 -(書籍デビュー)
代表的な実績 『本好きの下剋上 〜司書になるためには手段を選んでいられません〜』(シリーズ累計1300万部突破)
受賞 第56回星雲賞 日本長編部門(2025年)、「このライトノベルがすごい!」単行本・ノベルズ部門 2年連続第1位(2018年版・2019年版)→殿堂入り
関連活動 小説家になろう、TOブックス
その他 X:@miyakazuki01


概要[編集]

香月美夜(かづき みや)とは、日本の小説家・エッセイストで、ライトノベル『本好きの下剋上』の作者である。

詳細[編集]

専業主婦からWeb小説へ[編集]

香月美夜は、中学2年生のころから小説を書き始めた「書く人」である。推薦入試で国立大学に進学したのち社会人になると、仕事の忙しさから執筆はいったんストップ。その後結婚し、子どもが幼稚園に入って自分の時間が持てるようになったことをきっかけに、再びペンを取った。商業デビュー前は専業主婦としてネットに小説を投稿していた、という経歴は各種プロフィールでも紹介されている。

再開の舞台に選んだのが小説投稿サイト「小説家になろう」だった。2013年9月に短編「異世界デートはお断りします」を投稿し、同じ月に長編『本好きの下剋上 〜司書になるためには手段を選んでいられません〜』の連載をスタートさせている。

『本好きの下剋上』の誕生と完結[編集]

本人によると、構想を練り始めたのは連載開始の半年ほど前。その年の5月上旬はほとんど図書館にこもって資料を調べていたという。本が大好きな女子大生・本須麗乃が、本のない異世界で病弱な少女マインに生まれ変わり、紙づくりから始めて「本を作る」ために奔走する物語は、なろう系の主流だった「チート無双」とは真逆の、知識と努力を一歩ずつ積み上げる異世界ものとして口コミで人気を集めた。

Web版は全5部・677話という大長編となり、2017年3月に完結。一方、書籍版はTOブックスから2015年1月25日に第一部「兵士の娘I」が発売されて商業デビューを果たし、イラストは椎名優が担当した。書籍版は第五部「女神の化身」まで2023年に完結し、本編だけで33冊に及ぶ。書籍版ではWeb版からの加筆や書き下ろし短編が重ねられているとされ、Web版既読のファンが書籍版も追いかける理由になっている。

「このラノ」殿堂入りと星雲賞[編集]

書籍化後は評価が一気に可視化された。宝島社の「このライトノベルがすごい!」では2018年版・2019年版の単行本・ノベルズ部門で2年連続第1位を獲得し、同部門の殿堂入りを果たしている。キャラクター部門でもローゼマインやフェルディナンドが常連として上位に入った。

さらに2025年には、日本のSFファンが選ぶ第56回星雲賞の日本長編部門を『本好きの下剋上』で受賞。発表は2025年7月24日、授賞式は同年8月31日に東京・蒲田で開かれた日本SF大会の会場で行われた。ライトノベル、しかもWeb小説発の異世界ファンタジーが星雲賞の長編部門を取ったことは、ジャンルの垣根を越えた評価といえる。シリーズ累計発行部数は2026年2月時点で電子書籍を含め1300万部を突破している。

経歴[編集]

  • 中学2年生ごろ:小説を書き始める。
  • 大学:推薦入試で国立大学へ進学。英語は学校教育の範囲で、第二外国語はフランス語を選択したと本人が語っている。
  • 社会人時代:仕事が忙しく執筆を中断。
  • 結婚・子育て:子どもの幼稚園入園を機に執筆を再開。
  • 2013年9月:「小説家になろう」で『本好きの下剋上』の連載を開始。
  • 2015年1月:TOブックスから書籍版第一部が発売され、商業デビュー。同年10月には鈴華によるコミカライズ第一部の連載も始まる。
  • 2015〜2017年:図書館問題研究会の雑誌『みんなの図書館』でエッセイを連載。
  • 2017年3月:Web版本編が完結。同年4月から番外編『ハンネローレの貴族院五年生』の発表を開始。
  • 2019年:子ども向けのTOジュニア文庫版が刊行開始。同年10月、亜細亜堂制作でテレビアニメ第1期が放送。『魔術士オーフェン』のアンソロジーにも短編を寄稿。
  • 2020年・2022年:テレビアニメ第2期・第3期が放送。
  • 2023年:書籍版本編が第五部で完結。
  • 2024年:『ハンネローレの貴族院五年生』の書籍版が刊行開始。ミュージカル版が初演される。
  • 2025年:第56回星雲賞 日本長編部門を受賞。
  • 2026年:新作テレビアニメ『本好きの下剋上 領主の養女』が4月〜10月に放送。最終回当日の10月3日、続編『貴族院の自称図書委員』のアニメ制作決定が発表される。

作風と創作の裏側[編集]

「転生」を選んだ理由[編集]

香月作品の土台にあるのは、とにかく設定の筋が通っていることへのこだわりである。本人は海外メディアのインタビューで、主人公を「転移」ではなく「転生」にした理由を説明している。現代人がそのまま異世界に飛ばされた場合、体内の魔力が暴れる「身食い」という病を物語に組み込めない。また、魔力を持たない人間は貴族社会に入れないため、平民から貴族へ駆け上がる物語そのものが成立しなくなる、という理屈だ。主人公の「下剋上」は、最初から世界のルールと一体で設計されていたわけである。

取材と「ものづくり」のリアリティ[編集]

作中で描かれる紙・インク・印刷・染色などの「ものづくり」には、本人の実体験が多く生かされている。修学旅行で訪れた和紙工房、子どものころの工作、手芸好きの友人、専門誌や専門書などを参照しながら、作品世界の技術水準で再現できるかを検討し、無理なところは代替手段を考え出したという。印刷については、プロ作家になる前に印刷博物館を見学した経験がベースになっている。デビュー後は職人の作業を見学し、話を聞くことも増えたそうだ。

登場人物の名前にドイツ語風のものが多いのは、以前にドイツの田舎を思わせる舞台の物語を書いたことがあり、その気候・風習・命名法を流用したため。一方でフェルディナンドだけイタリア語由来の名前なのは、出自に関わる「異国感」を出すための意図的な選択だと明かしている。

「本」と「図書館」へのまなざし[編集]

作品タイトルどおり、作者自身も大の本好き。大学の先輩で図書館に勤めていた人物から頼まれ、図書館関係の雑誌に本と図書館をテーマにしたエッセイを書いたこともある。読むのも仕事をするのも紙の本派で、電子版は自分の過去の文章を検索するときに便利、と語っている。2021年3月には東京都立成瀬高校の図書委員らとZoomでつながる「作家訪問」にも応じており、学校図書館の現場との縁も深い。

主人公マインは、もともと引っ込み思案な性格として構想されていたが、それでは物語が動かないと考えて、本のためなら手段を選ばない現在の性格に変更したと作者は説明している。お気に入りのキャラクターを一人に絞るのは難しいとしつつ、いちばん書きやすいのはマインだという。

アニメ・メディアミックスへの関わり[編集]

原作者としてのチェック体制[編集]

アニメ版では、脚本や絵コンテに設定・世界観の矛盾がないかを確認し、絵画や魔法陣などの美術資料を提供している。ただし本人いわく「お願い」はごく少なく、スタッフからの質問への回答と確認作業が中心で、映像化そのものは制作陣に任せているスタンス。

キャスティングではオーディション会場には行かず、主要キャラクターごとに最終候補5〜6人の音声を受け取り、自分のイメージに合うかを判断したという。アフレコにも参加し、新キャラクター登場回では声のトーンや強調してほしいセリフを伝え、尺の都合でセリフが変わる際には「このキャラはこう言わない」と指摘することもあった。主人公マイン(ローゼマイン)役の井口裕香、フェルディナンド役の速水奨は2019年の第1期から同じ役を演じ続けており、原作者・制作陣・声優陣の長い付き合いもシリーズの強みになっている。

『領主の養女』から『貴族院の自称図書委員』へ[編集]

2026年4月4日からは、制作をWIT STUDIOに移した新作『本好きの下剋上 領主の養女』(原作第三部)が読売テレビ・日本テレビ系の土曜夕方枠で全24話放送された。主題歌はLittle Glee Monster、エンディングは生田絵梨花、上白石萌歌が歌うadieuが担当。キャストには高山みなみ、森川智之らが名を連ね、9月11日からはNetflixでも配信が始まった。

香月はこの期間、活動報告で毎話のように見どころを解説。ヴェローニカ役の小山茉美らの演技について「最高に演技が上手い」と絶賛し、アフレコでは「めちゃくちゃ興奮しました」とまで書いている。Blu-ray BOX2のブックレットでは校正とコメント執筆も担当した。

そして最終回が放送された2026年10月3日、続編『本好きの下剋上 貴族院の自称図書委員』(原作第四部)のテレビアニメ制作決定が発表され、制作は引き続きWIT STUDIOが担う。香月は翌日の活動報告で「制作決定!!」と喜びを伝え、半年間の視聴とアニメに関わった全員への感謝を述べたうえで「この先もよろしくお願いします。」と結んだ。

漫画・ミュージカル・コラボ[編集]

コミカライズは第一部・第二部を鈴華、第三部を波野涼、第四部を勝木光、第五部を鈴華が担当しており、香月は設定確認やプロット・ネーム・完成原稿のチェック、表紙案の選定、単行本用の短編やあとがきの執筆まで関わっている。2024年にはミュージカル版が初演され、2026年8〜9月には東京・大阪で再演された。

2026年6月には、とんがり帽子のアトリエのアニメとのコラボが発表され、原作者・白浜鴎との対談も公開された。二人はお互いのファンを公言しており、白浜がSNSで作品愛を投稿したことに香月が反応したのが交流の始まり。香月は白浜の漫画を初めて読んだとき「とんでもない作家さん」だと思ったと語り、対談では言葉選びの巧みさにも感心したという。Blu-rayのコラボ企画は10月18日までアニメイト池袋本店で実施された。

本人の発信(活動報告・X)[編集]

香月の発信の中心は、「小説家になろう」のマイページにある活動報告である。2026年10月時点で投稿数は990件にのぼり、近年は「◯/◯までの情報まとめ」と題して、新刊・グッズ・イベント・海外版などの情報を週1ペースで丁寧にまとめるのが恒例になっている。アニメ放送期間中は各話の感想や制作裏話も添えられ、ファンにとっては公式サイトと並ぶ情報源となっている。

例えば2026年9月6日の報告では、衣装がアーレンスバッハの風習を取り入れたものになった経緯を解説したほか、スペイン語版小説の電子書籍が配信されたことを報告し、スペイン語圏の読者に向けて「よろしくお願いします。」と呼びかけた。TSUTAYAのポップアップショップやセガのくじなど、グッズ情報まで網羅しているのも特徴である。

X(旧Twitter)では「香月美夜@本好きの下剋上」名義のアカウント(@miyakazuki01)を運用している。活動報告とあわせて、ファンが最新情報を追う窓口のひとつになっている。

最新動向(2026年)[編集]

  • 2026年2月:シリーズ累計発行部数が電子書籍込みで1300万部を突破。
  • 2026年3月:楽天ブックスの「推し楽」でインタビューが公開され、魔術の表現や騎獣の動きへの注目ポイント、ローゼマインの発明品を支える設定、原作の次の構想などについて語った。
  • 2026年4月10日:『ハンネローレの貴族院五年生3』を刊行。同日にドラマCD3も発売された。
  • 2026年4月〜10月:『本好きの下剋上 領主の養女』放送。
  • 2026年10月1日:TOジュニア文庫版の第三部が最終巻「領主の養女10」で完結。
  • 2026年10月3日:続編『貴族院の自称図書委員』のアニメ制作決定。
  • 2026年10月15日:コミックス『ハンネローレの貴族院五年生2』発売。香月はあとがきを執筆。
  • 2026年12月10日発売予定:『本好きの下剋上ふぁんぶっく11』。先行上映会の朗読用に書き下ろした短編「洗礼式までに」を、脚本版と小説版の両方で収録する。

10月4日の活動報告では「来週中には『ハンネローレ』の更新ができそう」とも書いており、Web版『ハンネローレの貴族院五年生』の更新も続いている。

余談[編集]

  • アニメ第1期第12話で話題になった、片手と片足を天に掲げる独特の祈りのポーズ。もとは夫との会話から生まれたもので、神様に近づこうと手足を空へ伸ばす姿が大阪・道頓堀の「グリコの看板」に似ていると二人で笑ってそのまま採用したという。本人いわく、このとき二人は飲んでいたらしい。ファンからは大阪市の看板前で同じポーズを決めた写真が届くそうだ。
  • 「小説家になろう」には、コミカライズ担当の漫画家とのお出かけを描いた短編「鈴華さんとの蟹デート」が残されている。原作者と漫画家の仲の良さがうかがえる一編。
  • 子ども向けのTOジュニア文庫版は編集者の提案で生まれたもので、ちょうど作者の甥や姪がふりがな付きの本を読む年ごろだったことも後押しになった。以降、小学生からのファンレターが増え、海外の読者からも「ふりがながあると読みやすい」と好評だという。
  • 英語は読み書きならある程度できるが会話は苦手とのこと。海外ファンからのメッセージは自力で読み、日本語に訳して受け取っているという。
  • 2026年3月の楽天ブックスのインタビュー記事には「香月先生の癒やしはふわふわの毛玉?」という見出しの章がある。大ヒット作の作者の癒やしが「ふわふわの毛玉」かもしれない、というギャップはなかなかに微笑ましい。
  • 2021年の高校への「作家訪問」は、コロナ禍で一度延期された末にZoomで実現したもの。図書委員ら生徒13名が参加した。

外部リンク[編集]

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