概要[編集]

青年漫画とは、少年漫画より上の年齢層、おおむね高校生以上から社会人の男性を主な読者に想定した漫画の区分である。雑誌の編集方針による区分であって、読者の実年齢で線が引かれているわけではない。

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京都国際マンガミュージアムの館内(Wikimedia Commons・CC BY 3.0)

詳細[編集]

成り立ち[編集]

青年漫画という枠が生まれたのは1960年代後半である。戦後に漫画を読んで育った世代が成人しても読むのをやめなかったため、少年誌の読者がそのまま年齢を重ねるという、それまで存在しなかった状況が生じた。出版社は彼ら向けの雑誌を新設することで対応した。

最初の青年漫画誌とされるのは、1967年に双葉社が創刊した『週刊漫画アクション』である。同誌はモンキー・パンチの『ルパン三世』を創刊号から連載し、少年誌とは違う大人向けの娯楽漫画誌の形を示した。翌1968年には小学館が『ビッグコミック』を創刊し、さいとう・たかをの『ゴルゴ13』の連載が始まる。同じ1968年には、1964年創刊の『漫画娯楽読本』が『週刊漫画ゴラク』(日本文芸社)として週刊化されている。

1979年に『週刊ヤングジャンプ』(集英社)、1980年に『週刊ヤングマガジン』(講談社)と『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)が続き、大手各社が少年誌と青年誌を併設する体制が固まった。1980年代以降は『モーニング』(講談社)、『ヤングアニマル』(白泉社)なども加わり、読者の年齢や好みに合わせて誌面が細かく分かれていく。

劇画と貸本からの流れ[編集]

青年誌の作風には、1950年代の貸本漫画から生まれた劇画の影響が強い。劇画は、子ども向けの漫画とは違うリアルな絵柄と、犯罪やアクションなど大人向けの題材を特徴としており、貸本屋の衰退とともにその描き手や読者が雑誌へ流れ込んだ。青年誌の創刊ラッシュは、劇画の受け皿づくりでもあった。

少年漫画との違い[編集]

分かりやすい差として、主人公の年齢と職業が挙げられる。少年漫画は成長途上の主人公が力や仲間を得ていく筋立てを取りやすいが、青年漫画は社会人・専門職・犯罪者・中年といった、すでに立場が定まった人物を主人公に置ける。すでに背負っているものがある人物は「これから何にでもなれる」余地を使えない代わりに、現在の立場から降りられないという制約そのものを話の駆動力にできる。

もう一つの差は、主人公が勝たなくても物語が成立することである。将棋や麻雀の勝負ものが青年誌に多いのは偶然ではなく、負けが物語を終わらせない形式だからである。麻雀漫画やMリーグをめぐる作品群がこの位置に入る。

表現面では、暴力描写や性描写、政治・犯罪・医療・ビジネスといった題材の扱いで、少年誌より許容範囲が広い。ただし青年漫画は一般向けの区分であり、性表現を主眼にした成年向け作品(表紙に「成年コミック」マークが付くもの)とは別のカテゴリーである。

青年漫画に多いジャンル[編集]

青年誌では、少年誌では扱いにくい題材がそのまま一つのジャンルになっている。代表的なのは、劇画調のアクション・犯罪もの、会社員や専門職を主人公にした仕事もの、料理や食べ歩きを扱うグルメもの、麻雀・将棋・ギャンブルなどの勝負もの、歴史もの、そしてサスペンスやホラーである。『美味しんぼ』や『孤独のグルメ』のようなグルメ漫画、『キングダム』や『ヴィンランド・サガ』のような歴史漫画は、青年誌を主な舞台にして広がったジャンルといえる。

「青年」という区分の曖昧さ[編集]

区分は雑誌側の宣言であって、読者調査の結果ではない。実際には少年漫画誌の読者に成人が多く含まれることは以前から指摘されており、逆に青年誌を中学生が読むことも珍しくない。そのため「青年漫画とは何か」を内容で定義しようとすると必ず例外が出る。作品の性質ではなく掲載誌で決まる、というのが実務上の答えに近い。

電子書籍と漫画アプリの普及で、この区分はさらに見えにくくなった。書店では少年誌の棚と青年誌の棚が物理的に離れているが、アプリの中では同じ一覧に並ぶ。読者が雑誌名を意識せずに作品単位で読むようになると、区分は編集部の内部事情に近いものになっていく。

女性向けの「青年漫画」[編集]

大人の女性を読者に想定した漫画は、青年漫画とは別に「女性漫画」「レディースコミック」と呼ばれる。1970年代後半から1980年代にかけて、少女漫画を卒業した読者に向けた雑誌が相次いで創刊され、少女漫画と青年漫画の中間に独自の市場ができた。少年漫画→青年漫画と、少女漫画→女性漫画は、同じ「読者の成長」に出版社が対応した結果という点でよく似ている。

デジタル時代の青年漫画[編集]

2000年代後半から紙の漫画雑誌の部数は減り続け、2008年には『週刊ヤングサンデー』が休刊した。一方で、少年ジャンプ+やマガポケ、ピッコマ、LINEマンガといったアプリでは、青年誌の作品も少年誌の作品も同じ画面に並ぶ。縦スクロールで読むウェブトゥーンには少年・青年という区分そのものがほとんどなく、ジャンル(アクション・恋愛・復讐もの等)で分類される。恋愛漫画なども同様で、雑誌の区分よりジャンルの区分が前に出る傾向が強まっている。

主な青年漫画誌[編集]

誌名 出版社 創刊 備考
週刊漫画アクション 双葉社 1967年 最初の青年漫画誌とされる
ビッグコミック 小学館 1968年 『ゴルゴ13』を連載
週刊漫画ゴラク 日本文芸社 1968年(前身1964年) 『漫画娯楽読本』を週刊化
週刊ヤングジャンプ 集英社 1979年 『キングダム』『ゴールデンカムイ』『推しの子』
週刊ヤングマガジン 講談社 1980年 『頭文字D』『彼岸島』
ビッグコミックスピリッツ 小学館 1980年 『めぞん一刻』『美味しんぼ』『20世紀少年』
ヤングアニマル 白泉社 1992年 『ベルセルク』

代表的な作品[編集]

余談[編集]

  • 『ゴルゴ13』は1968年に『ビッグコミック』で連載が始まり、青年誌の創刊期からそのまま続いている作品として知られる。青年誌という枠が生まれた時期と、その枠を象徴する作品の開始時期がほぼ重なっている。
  • 「ヤング」を冠した誌名が1970年代末から1980年代にかけて集中しているのは、各社が同じ読者層に同時に気づいたためである。誌名の流行はそのまま市場の発見の記録になっている。
  • 青年誌ではグラビアアイドルの写真が巻頭を飾る形式が長く続いた。漫画雑誌でありながら写真集的な要素を併せ持つ構成は、青年誌に特有の商習慣である。
  • 『ルパン三世』の連載は、青年誌の創刊号から始まった作品がのちにアニメで国民的作品になった例である。青年誌の作品がアニメ化を通じて子どもにも知られていく流れは、その後の『寄生獣』『ゴールデンカムイ』『推しの子』などにも続いている。
  • 少年誌でデビューした作家が青年誌に移って代表作を描く例は多く、読者と一緒に作家も「青年誌に上がっていく」構造がある。

外部リンク[編集]

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