| 名探偵コナン 隻眼の残像 Detective Conan: One-eyed Flashback | |
|---|---|
![]() 作中の舞台のひとつとなった国立天文台野辺山宇宙電波観測所の45m電波望遠鏡(長野県南佐久郡南牧村)(出典:ウィキメディア・コモンズ、CC BY-SA 3.0) | |
| 監督 | 重原克也 |
| 製作 | 名探偵コナン製作委員会 |
| 脚本 | 櫻井武晴 |
| 原作 | 青山剛昌『名探偵コナン』 |
| 音楽 | 菅野祐悟 |
| 制作会社 | トムス・エンタテインメント |
| 配給 | 東宝 |
| 上映時間 | 110分 |
| 興行収入 | 147.4億円 |
| 言語 | 日本語 |
| 前作 | 名探偵コナン 100万ドルの五稜星(2024年) |
| 次作 | 名探偵コナン ハイウェイの堕天使(2026年) |
| リンク | https://www.conan-movie.jp/2025/ |
概要[編集]
名探偵コナン 隻眼の残像(めいたんていコナン せきがんのフラッシュバック)とは、2025年4月18日に公開された劇場版『名探偵コナン』シリーズの第28作である。長野県の雪山と国立天文台野辺山を舞台に、長野県警の隻眼の刑事・大和敢助の過去と、刑事時代の毛利小五郎の因縁が交差するハードボイルドなミステリーで、最終興行収入147.4億円を記録した。
詳細[編集]
作品の位置づけ[編集]
本作は青山剛昌原作の『名探偵コナン』劇場版の第28作目で、監督は重原克也、脚本は「相棒」「科捜研の女」シリーズなどで知られる櫻井武晴、音楽は菅野祐悟が担当した。アニメーション制作はトムス・エンタテインメント、配給は東宝。読み方は「せきがんのフラッシュバック」で、劇場版恒例の「漢字タイトルにカタカナのルビ」スタイルを踏襲している。
物語の中心にいるのは、大和敢助・上原由衣・諸伏高明の、いわゆる「長野県警組」である。敢助と由衣が劇場版に登場するのは第13作『名探偵コナン 漆黒の追跡者』以来15作ぶりで、高明はこれが劇場版初登場となった。さらに小五郎が物語のキーパーソンに据えられるのは、第9作『名探偵コナン 水平線上の陰謀』以来19作ぶりとされる。
キャッチコピー[編集]
キャッチコピーは「眠っていた記憶(じけん)が、目を覚ます―」。予告編などでは小五郎の「思い出しちまったぜ…」というセリフも前面に押し出され、さらに「果たせなかった約束と、隻眼に宿った残像。氷雪吹き荒れる山岳で、白き闇の因縁(ホワイトアウトミステリー)の幕が切って落とされる―」というコピーも用いられた。
タイトルの「隻眼」は、片方の目を失った敢助を指している。敢助の左眼の傷がどのようにして生まれたのかは原作でも詳しく語られていなかった要素で、本作は原作に先駆けてキーパーソンに関する真実が明かされる作品として宣伝された。
上映規模[編集]
公開館数は全国522館で、シリーズ史上最大規模となった。通常上映に加えてIMAX、MX4D、4DX、ドルビーシネマでも同時上映された。雪山でのアクションや電波望遠鏡のシーンが大画面向きであることから、ファンの間ではIMAXでの鑑賞を推す声も多かった。
あらすじ[編集]
未宝岳の雪崩事故[編集]
長野県の八ヶ岳連峰・未宝岳。長野県警の大和敢助は、雪山で容疑者を追跡していた最中、何者かが放ったライフル弾に左眼をかすめられ、その直後に発生した雪崩に巻き込まれてしまう。敢助はこの事故で一時行方不明となり、生還したものの左眼の視力を失い、隻眼となった。
10ヶ月後の襲撃事件[編集]
それから10ヶ月後、国立天文台野辺山で研究員が襲撃される事件が発生する。生還した敢助は上原由衣とともに現場へ駆けつけるが、巨大なパラボラアンテナが稼働した瞬間、負傷した左眼がなぜか突如激しく疼きだす。
小五郎への電話[編集]
同じ夜、東京の毛利小五郎のもとに、警視庁時代の同僚で「ワニ」と呼ぶ刑事・鮫谷浩二から電話が入る。敢助の雪崩事故に関する捜査ファイルに、なぜか小五郎の名前が記されていたというのだ。小五郎は江戸川コナン、毛利蘭とともに待ち合わせ場所へ向かうが、その途中で銃声が響き渡る。
事件はやがて、警視庁公安部や安室透(降谷零)の動きも絡みながら、司法取引制度に関わる国家規模の陰謀へと広がっていく。眠っていた記憶と、果たされなかった約束が物語の鍵を握る。犯人や結末については、ここでは触れない。
登場人物と声優[編集]
長野県警組[編集]
| キャラクター | 声優 | 本作での立ち位置 |
|---|---|---|
| 大和敢助 | 高田裕司 | 長野県警の警部。隻眼の刑事で、本作のキーパーソン |
| 上原由衣 | 小清水亜美 | 長野県警の刑事。敢助の幼なじみで、本作のヒロイン格 |
| 諸伏高明 | 速水奨 | 長野県警の警部。劇場版初登場 |
大和敢助は、左眼に傷を負い、杖をついて捜査に臨む強面の刑事。上原由衣は敢助の幼なじみで、敢助に想いを寄せながらも、彼の失踪中に別の男性と結婚した過去を持つ複雑な立場の人物である。諸伏高明は敢助の幼なじみ兼ライバルで、故事成語を交えて話す切れ者。名前の読みから「コウメイ」と呼ばれる。高明は、警察学校組の一人・諸伏景光の兄でもある。
この3人の原点とされるのが、原作の「風林火山 迷宮の鎧武者」編である。由衣はこの事件で「虎田由衣」として登場しており、本作を観る前に押さえておきたい重要エピソードとしてたびたび紹介されている。
おなじみのメンバー[編集]
主人公の江戸川コナンは高山みなみ、毛利蘭は山崎和佳奈、毛利小五郎は小山力也が演じる。ほかに灰原哀役の林原めぐみ、阿笠博士役の緒方賢一、少年探偵団(岩居由希子、高木渉、大谷育江)、目暮十三役の茶風林、佐藤美和子役の湯屋敦子らレギュラー陣も出演している。
公安関係では、黒田兵衛役の岸野幸正、風見裕也役の飛田展男が出演。小五郎の元同僚・鮫谷浩二は平田広明が演じた。
安室透役の交代[編集]
安室透(降谷零)は本作で草尾毅が演じている。安室役は長年古谷徹が担当していたが、2024年に交代しており、本作は新キャストになってから初めて安室が劇場版に登場する作品となった。
ゲスト声優[編集]
ゲスト声優として、俳優の山田孝之と、元乃木坂46で俳優の山下美月が出演した。山田は長野県の山中で炭焼き小屋を営む主人・大友隆を、山下は国立天文台野辺山の研究員・円井まどかを演じた。山下にとっては本作が声優初挑戦となった。
制作[編集]
発表までの経緯[編集]
2024年10月7日以降、原作者の青山剛昌が『あつまれ どうぶつの森』を使ってタイトルのヒントや登場キャラクターを小出しに公開するという、ちょっと変わった方法で情報が解禁されていった。そして2024年12月4日発売の『週刊少年サンデー』2025年1号で、正式タイトルと公開日が発表された。
2025年2月26日にはメインビジュアルと60秒予告映像が公開。3月4日にゲスト声優、3月10日にIMAXなどラージフォーマットでの同時上映、3月15日に主題歌がそれぞれ発表された。
試写会なしの公開[編集]
本作は一般向けの試写会を行わず、公開前のイベントはファンミーティングのみが実施された。ネタバレを避け、公開初日に観客が一斉に真相を目撃できるようにする狙いがあったとみられる。
長野での取材[編集]
制作にあたっては長野県警や警察学校、機動捜査隊などへの視察・取材が行われたとされ、長野県警が入る長野県庁1階のロビーは作中でもそのまま再現されている。国立天文台野辺山宇宙電波観測所の口径45m電波望遠鏡も正確に描かれた。
2025年4月8日には、山田孝之と山下美月が長野県を訪れる「長野巡礼イベント」が行われた。2人は県警ロビーや110番コールセンターを見学し、山下は「映画の舞台とまったく同じロケーション」と驚いた。野辺山では山下が実際に電波観測を体験し、巨大なアンテナを動かして「想像以上に(動きが)早い!」と声を上げている。山田も「本当に忠実に再現されているので映画見た後に行くと楽しめる」とコメントした。
主題歌[編集]
主題歌はKing Gnuの「TWILIGHT!!!」。作詞・作曲は常田大希で、映画公開日の2025年4月18日0時から配信リリースされた。King Gnuが劇場版コナンの主題歌を担当するのはこれが初めてである。
プロデューサー陣は「完成したシナリオを読み終えた瞬間、『主題歌はKing Gnuにお願いしたい』とすでにイメージが固まっていました」とコメント。常田は「制作チームから『自由に作ってください』というお言葉もあり、今までのKing Gnuの楽曲には無い新しいアプローチの楽曲が仕上がったと思います」と語っている。曲の長さは3分38秒と、King Gnuの楽曲としては短めである。
タイアップ・関連企画[編集]
公開に合わせ、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンとのコラボ(リアル脱出ゲームやライドなど)、「名探偵コナンカフェ」(全国6都市8会場で2025年4月4日から期間限定オープン)、江崎グリコとのコラボキャンペーン、JR東日本の首都圏・信州スタンプラリーなど多数の企画が展開された。Huluでは過去の劇場版5作品が3月22日から先行配信された。
金曜ロードショーでは公開直前の3週にわたり劇場版が放送され、4月4日に『名探偵コナン 14番目の標的』、4月11日に『水平線上の陰謀』、公開当日の4月18日に前作『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』がオンエアされた。ノベライズは水稀しまによるものが小学館ジュニア文庫から刊行されている。
興行成績[編集]
初動[編集]
公開初日の4月18日は動員69万7355人、興収10億5842万2300円で、前作比109%を記録した。公開3日間(4月18日〜20日)では動員231万4690人、興収34億3862万6700円となり、前作比102%で初登場1位。シリーズ過去最高のオープニング記録を更新した。ただし土日2日間に限ると、前作をごくわずかに下回っていた。
100億円突破と1000万人[編集]
公開19日間(5月6日まで)で動員726万人、興収104億円を突破し、シリーズ史上最速での100億円到達となった。2023年の『名探偵コナン 黒鉄の魚影』から3作連続での100億円超えである。
さらに公開90日間(7月16日まで)で観客動員1000万人、興収144億円を突破。前作に続く「2年連続の観客動員1000万人突破」は、邦画初の快挙とされた。
最終成績[編集]
日本映画製作者連盟(映連)の発表によると、最終興行収入は147.4億円。2025年の邦画興行収入ランキングでは、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』(391.4億円)、『国宝』(195.5億円)に次ぐ第3位となった。シリーズ内では前作『100万ドルの五稜星』に次ぐ歴代2位の成績である。
| 時期 | 動員 | 興行収入 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 公開3日間 | 約231万人 | 約34.4億円 | シリーズ最高のオープニング(当時) |
| 公開19日間 | 726万人超 | 104億円超 | シリーズ最速で100億円突破 |
| 公開90日間 | 1000万人超 | 144億円超 | 2年連続1000万人突破 |
| 最終 | − | 147.4億円 | 2025年邦画3位、シリーズ歴代2位 |
評価[編集]
小五郎の「覚醒」[編集]
本作でとくに話題になったのが、毛利小五郎の描かれ方である。普段は眠らされて推理を代行される「迷探偵」の小五郎が、本作では警視庁時代の射撃の名手としての顔を見せ、「いつもはコミカルなキャラクターの小五郎が覚醒」するハードボイルドアクションとして紹介された。公開前から「小五郎が眠らされずに活躍するのでは」と予想されており、その期待に応える形となった。
小五郎の射撃の腕前は、第1作『14番目の標的』でも描かれていた設定で、警視庁でも拳銃の腕はトップクラスとされる。ノベライズでも小五郎の心情が丁寧に掘り下げられており、「小五郎のかっこよさが倍増」と評するレビューもあった。
長野県警組の人気[編集]
長野県警組はもともと原作ファンの人気が高いトリオで、15作ぶりの劇場版登場、高明の劇場版初登場という要素が大きな注目を集めた。高明の弟・景光が警察学校組の一人であることから、『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』以降に増えた警察学校組ファンの関心も呼び込んだ。
雪山の描写については、ゲストの山田孝之が「雪山がすごく美しく描かれています」と語っており、白一色の雪原でのガンアクションや電波望遠鏡を使った仕掛けなど、映像面の見どころも多い作品となっている。
放送・配信・ソフト化[編集]
地上波放送[編集]
公開中の2025年6月6日、日本テレビ系「金曜ロードショー」の番組後半で、本作の冒頭約12分が放送された。これは小五郎が映画の大ヒットを記念して金曜ロードショーのプロデューサーに「自分が活躍している現在公開中の映画の本編を流してほしい」と直談判した、という設定で告知された企画である。
地上波での本編初放送は、2026年4月10日の金曜ロードショー(21時〜23時14分、20分拡大)で、本編ノーカットでの放送となった。次作『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』の公開を記念した、金曜ロードショー初の「4週連続コナン」企画の第3週としての放送で、前後には『探偵たちの鎮魂歌』(3月27日)、『緋色の弾丸』(4月3日)、『ハロウィンの花嫁』(4月17日)が放送された。
Blu-ray・DVD[編集]
Blu-ray・DVDは2025年11月26日に発売された。豪華盤(Blu-ray 2枚組・DVD 2枚組)と通常盤があり、本編は110分。豪華盤の特典ディスクには劇場版PV各種、TVスピンオフ「秘密の残像」、オーディオコメンタリーが収録されている。
動画配信[編集]
2026年時点では、HuluやAmazonプライム・ビデオで見放題配信されている。TSUTAYA DISCASではDVDの宅配レンタルも利用できる。配信サービスや配信形態は時期によって変わることがある。
余談[編集]
- King Gnuの常田大希と井口理は、ともに長野県伊那市出身とされる。舞台が長野県の作品の主題歌を、長野出身のメンバーを擁するバンドが担当したことになる。
- 舞台となった国立天文台野辺山の最寄り駅であるJR野辺山駅は、標高1345.67mでJRの最高標高駅として知られる。公開期間中には駅から観測所への無料シャトルバスも運行された。
- 長野県警が入る長野県庁1階ロビーには、映画のポスターや出演声優のサイン色紙が展示された。県庁の閉庁日は見学できないため、聖地巡礼の際は平日に行く必要がある。
- 公開中に冒頭12分が地上波で流れた「金曜ロードショー」の企画は、作中キャラクターの小五郎が直談判したという体裁で発表され、ファンの間で話題となった。この「冒頭12分放送」は次作『ハイウェイの堕天使』でも行われている。
- 劇場版コナンの興行収入100億円超えは『黒鉄の魚影』『100万ドルの五稜星』そして本作と3作連続となり、本作はそのなかで最速の公開19日間で大台に乗せた。
