概要[編集]

無修正(むしゅうせい)とは、日本のアダルトビデオや成人向け出版物において、性器部分にモザイクやぼかし等の「修正(修整)」が施されていない状態、またはそうした作品を指す言葉である。日本では刑法175条(わいせつ物頒布等罪)との関係で「修正あり」が正規流通の前提となっており、「無修正」という言葉自体が、合法と違法の境界線を象徴する用語として機能している。

詳細[編集]

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モザイク(ピクセル化)処理の例。日本の成人向け映像では性器部分に同種の修正がかけられる(出典:ウィキメディア・コモンズ)

言葉の意味[編集]

「修正」とは本来「誤りを正す」という意味の言葉だが、アダルト業界では「わいせつと判断されないよう、映像や画像の一部を加工して見えなくすること」を指す業界用語として定着している。厳密には写真や映像を手直しする意味の「修整」が正しい表記だという指摘もあり、報道機関や辞書系のサイトでも「修正」と「修整」の使い分けが話題になることがある。ただし一般には「無修正」「モザイクなし」「モザ無し」といった表記が圧倒的に多く、検索語としてもこちらが主流である。

対義語は「修正あり」「モザイクあり」で、日本のFANZA(DMM.com)などの国内正規配信サービスで販売されている作品は、原則としてすべて修正済みである。一方、海外のアダルト作品は撮影国の法律に基づいて制作されるため、そもそも「修正」という概念自体がない場合がほとんどである。つまり「無修正」は、日本の法制度があって初めて成立する、極めて日本的な概念だといえる。

なぜ「修正」が必要なのか[編集]

日本の刑法175条は、わいせつな文書・図画・電磁的記録などを「頒布」「公然陳列」したり、有償で頒布する目的で「所持」「保管」したりすることを処罰している。ところが条文には「何がわいせつか」の具体的な定義がなく、その判断は判例に委ねられている。

判例は、わいせつを「いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」と定義しており(いわゆる「わいせつ三要件」)、チャタレー事件以来この枠組みが維持されている。そして実務上は、性器が直接見える表現がわいせつ性判断の大きな分かれ目とされてきた。このため業界は、法律に明文の基準がない中で「性器部分を隠せば摘発されにくい」という経験則に基づいてモザイク処理を行ってきた。これが「修正」の正体である。

「修正」は法律で決まっているわけではない[編集]

意外と知られていないが、「モザイクを何ピクセル以上かけること」といった基準は法律のどこにも書かれていない。モザイクの大きさや範囲は、日本ビデオ倫理協会(ビデ倫)や映像倫理機構などの業界の自主審査団体が独自に定めてきた基準であり、言わば「捕まらないための業界ルール」である。

そのため、時代によって「どこまで薄くしても大丈夫か」の相場が変わり、警察の摘発や裁判によって事後的に「それはアウト」と線が引かれる、というイタチごっこが繰り返されてきた。後述する「ビデ倫事件」は、まさに自主審査団体の審査員そのものが刑事責任を問われたという点で、業界に大きな衝撃を与えた。

「無修正=即違法」ではない[編集]

よく誤解されるが、刑法175条が処罰しているのは「頒布」「公然陳列」「有償頒布目的の所持・保管」であり、無修正の映像を個人的に見ること・持っていること自体を処罰する規定はない。また、わいせつ性は「作品全体」を見て判断されるため、モザイクがないことが直ちにわいせつ認定につながるわけでもない、とする見解もある。実際、写真家ロバート・メイプルソープの写真集をめぐる2008年の最高裁判決では、性器が写った写真を含む写真集が「わいせつ物に当たらない」と判断された。

ただし、成人向けの性行為を映した映像で性器が修正されていない場合、実務上はほぼ確実にわいせつ物と認定されている。そのため「芸術写真などの例外はあるが、アダルト作品の無修正は流通させればアウト」というのが一般的な理解である。

刑法175条とわいせつ規制[編集]

条文と法定刑[編集]

刑法175条1項は、わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者、および電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録等を頒布した者を処罰する。2項は、有償で頒布する目的でこれらを所持し、又は電磁的記録を保管した者を同様に処罰する。法定刑は「2年以下の拘禁刑若しくは250万円以下の罰金若しくは科料、又はその併科」である。なお、2025年6月1日施行の刑法改正で懲役刑と禁錮刑が「拘禁刑」に一本化されたため、それ以前の事件の判決では「懲役」と表記されている。

インターネットの普及に対応するため、2011年(平成23年)の改正で「電磁的記録」が明文で処罰対象に加えられた。これにより、DVDなどの物理メディアを伴わないダウンロード販売や動画配信も、正面から175条の対象となった。

主な判例[編集]

年 事件 ポイント
1957年 チャタレー事件(最高裁大法廷) 翻訳小説『チャタレイ夫人の恋人』。わいせつ三要件を確立し、わいせつ性の判断は裁判官に委ねられるとした
1969年 悪徳の栄え事件(最高裁大法廷) 芸術性・思想性のある文書でも、わいせつ性が否定されるわけではないとした
1980年 四畳半襖の下張事件(最高裁) わいせつ性は文書全体との関連で判断し、その時代の社会通念に照らすべきとした
2007年 松文館事件(最高裁) 成人向け漫画の出版社社長らの有罪が確定。漫画もわいせつ図画に当たり得ることを示した
2008年 メイプルソープ事件(最高裁) 性器が写った写真を含む写真集について、全体としてわいせつ物に当たらないと判断
2014年 ビデ倫事件(最高裁) モザイクの薄いDVDを審査で通した元審査員2人の有罪(罰金50万円)が確定
2014年 海外サーバー事件(最高裁第三小法廷決定・11月25日) 米国のサーバーを使った配信でも、日本国内の顧客へのダウンロードは国内犯の「頒布」に当たるとした
2026年 FC2創業者事件(最高裁) FC2創業者の上告が棄却され、懲役3年・執行猶予5年等の有罪が確定したと報じられた

批判と見直し論[編集]

刑法175条に対しては、「何がわいせつか」の基準が曖昧で予測可能性に欠ける、被害者のいない行為を処罰している、インターネット時代の実態にそぐわない、といった批判が根強い。刑法学者の園田寿は旧来のわいせつ概念の再検討を主張しており、憲法学者の志田陽子は規制の効果に疑問を呈している。

政界でも、参議院議員の山田太郎が175条の見直しに言及したり、参議院議員の浜田聡が175条廃止の請願を国会に提出したりした例がある。一方で、性的表現の無制限な流通に慎重な立場や、出演者保護・青少年保護の観点から規制の維持を支持する意見もあり、2026年10月時点で175条の改廃に向けた具体的な立法の動きは確認されていない。

ビデ倫と映像審査の歴史[編集]

ビデ倫の誕生[編集]

日本のアダルト映像の審査は、1972年2月に発足した「成人ビデオ倫理自主規制懇談会」に始まる。これは映画の映倫の基準を準用して自主審査を行う団体で、1977年1月に「日本ビデオ倫理協会」(ビデ倫)へと改称した。1981年頃に「アダルトビデオ」というジャンルが本格的に誕生すると、レンタルビデオ店向けの作品はビデ倫の審査シールが事実上の流通条件となり、ビデ倫は長らく業界の「関所」として機能した。

初期のビデ倫基準は非常に厳しく、性器はもちろん陰毛の描写も認めず、モザイクも大きく粗いものだった。

インディーズの台頭と審査団体の乱立[編集]

1990年代に入ると、レンタルではなく販売を主とする「セルビデオ」市場が拡大する。セルビデオ系のメーカーはビデ倫を通さず、別の自主審査を受けることで「モザイクが薄い」「陰毛が見える」といった差別化を図った。1996年にはソフト・オン・デマンドなどが中心となって「メディア倫理協会」(メディ倫、後のコンテンツ・ソフト協同組合)が設立され、ビデ倫以外の審査団体が並立する時代に入った。

競争に押されたビデ倫も徐々に基準を緩め、2004年10月には局部の形に沿った細かいデジタルモザイクを、2006年8月審査分からは陰毛等の露出を認めるようになった。

ビデ倫事件(2007〜2014年)[編集]

2007年8月23日、警視庁保安課はビデ倫に家宅捜索に入り、2008年3月1日にはビデ倫の審査部統括部長とビデオ制作会社の社長を逮捕した。容疑は、モザイク処理の薄いDVDを審査で合格させ、その販売を手助けしたというわいせつ図画販売幇助である。ビデ倫側は抗議したが、2011年に東京地裁で有罪判決が出され、2014年10月7日に最高裁が上告を棄却。元審査員2人の罰金50万円の有罪が確定した。

裁判所は問題のDVDについて「直接的な映像修整はないに等しい」と判断した。弁護側は、わいせつ概念の曖昧さや欧米との格差を挙げて判決を批判したが、「自主審査を通っていても安全とは限らない」という厳しい現実が確定した形になった。

映像倫理機構へ[編集]

事件のさなかの2008年6月、ビデ倫は審査業務を終了し、加盟メーカーは新たに「日本映像倫理審査機構」(日映審)を設立した。さらに2010年12月、日映審はコンテンツ・ソフト協同組合のメディア倫理委員会と合流し、現在の映像倫理機構(映像倫)となった。こうして長年続いた審査団体の分裂状態はひとまず解消された。

2010年代後半にはAV出演強要問題が社会問題化し、2017年に第三者機関「AV人権倫理機構」が発足、業界ルールに則って制作された作品を「適正AV」と呼ぶ枠組みが整えられた。2022年6月にはAV出演被害防止・救済法(AV新法)が成立・施行されているが、同法は出演者保護を目的とするもので、修正の要否を定めたものではない。

モザイクの変遷[編集]

年表[編集]

時期 出来事
1972年 ビデ倫の前身団体が発足
1981年頃 アダルトビデオというジャンルが本格的に誕生
1982年頃 裏ビデオ『洗濯屋ケンちゃん』が爆発的に流通
1987年頃 モザイクのごく薄い「シースルービデオ」が登場
1989年 裏ビデオ業界が大規模摘発を受け壊滅的打撃
1990年代 セルビデオ・インディーズ系が「薄めのモザイク」で台頭
1996年 メディア倫理協会設立
2000年代前半 「激薄」「薄消し」作品が出回り、警察の摘発が強化される
2004年10月 ビデ倫が局部に沿ったデジタルモザイクを解禁
2008年 ビデ倫幹部逮捕、ビデ倫が審査業務終了
2010年12月 映像倫理機構が発足
2011年 刑法175条改正、電磁的記録が処罰対象に明記
2017年 カリビアンコム関係者摘発
2021年 AIでモザイクを「除去」した動画の販売者が初めて逮捕
2024年 FC2創業者が帰国時に逮捕
2025年 生成AIによるわいせつ画像販売で全国初摘発

裏ビデオの時代[編集]

審査を受けず、修正なしで闇ルートに流通した作品は「裏ビデオ」と呼ばれた。家庭用VHSデッキの普及とともに1980年代に広がり、1982年頃の『洗濯屋ケンちゃん』は裏ビデオの代名詞的存在になった。流通経路は繁華街のアダルトショップや通販で、何度もダビングされて画質が劣化したものも多かったという。

1989年の摘発で自主制作の裏ビデオ業界は壊滅的打撃を受け、それ以降は正規作品の修正前マスターテープや審査前のプレビューテープが流出したもの、いわゆる「流出物」が主流になったとされる。

シースルーから薄消しへ[編集]

1987年頃には、モザイクのきわめて薄い「シースルービデオ」が登場した。2000年代に入ると、モザイクの一辺が1mm以下という「激薄」作品まで現れ、「薄消し」はひとつのジャンルとして定着した。しかし警察も黙っておらず、2002年頃からは薄消し作品の摘発が強化される。これを受けて一部の販売業者は販路を海外に移し、日本のメーカーが海外向けに販売した作品が日本に逆輸入されて出回る、という奇妙な循環も生まれた。

物理メディアから配信へ[編集]

2000年代以降、インターネットの普及で状況は一変する。米国などに法人とサーバーを置き、日本人出演者の作品を修正なしで配信する海外サイトが次々に登場した。「サーバーが海外にあれば日本の法律は及ばない」という理屈で運営されていたこれらのサイトは、裏ビデオに代わる無修正作品の主要な供給源となった。一方、国内の正規市場はFANZAなどの配信プラットフォームに移行し、デジタルモザイクによる修正が標準となって現在に至っている。

海外サーバー配信と日本法[編集]

「海外なら合法」は本当か[編集]

刑法は原則として日本国内で行われた犯罪に適用される(属地主義)。そのため、米国など無修正作品の流通が合法な国にサーバーを置き、外国法人が運営すれば日本の刑法は及ばない、という考え方が長く業界で語られてきた。

しかし判例は、犯罪行為の一部でも日本国内で行われていれば国内犯として日本の刑法を適用する、という立場をとる。撮影が日本で行われ、日本人スタッフが関与し、日本語のサイトで日本の顧客に向けて販売していれば、「全部が海外で完結している」とは言いにくいわけである。

最高裁平成26年11月25日決定[編集]

転機となったのが、2014年11月25日の最高裁第三小法廷決定である。この事件では、日本在住の被告人が、日本国内で制作したわいせつな動画データを米国在住の共犯者に送り、米国のサーバーにアップロードして日本語サイトで有料配信していた。

最高裁は「頒布」の意味を「不特定又は多数の者の記録媒体上に電磁的記録その他の記録を存在するに至らしめること」と定義し、日本の顧客がダウンロード操作をして自分のパソコンにデータが保存された場合も、配信側による「頒布」に当たると判断した。顧客のクリックは単なるきっかけにすぎず、配信システムを構築した側が送信したと評価できる、という理屈である。これにより「海外サーバーだからセーフ」という神話は大きく揺らいだ。

カリビアンコム関係者の摘発(2017年)[編集]

2017年3月、警視庁は無修正動画配信サイト「カリビアンコム」の関係者を相次いで摘発した。報道によれば、動画の制作に関わったAV女優・男優・プロダクション社長ら5人が逮捕されたほか、運営グループの米国籍の社員が沖縄旅行中に、わいせつ電磁的記録等送信頒布の疑いで逮捕された。この社員は日本国内で撮影された動画データの圧縮作業などに携わっていたとされる。

カリビアンコムは1996年設立とされ、2000年頃から日本人出演者の撮り下ろし作品を配信していた老舗サイトで、米国法人が運営していた。報道では同じ運営グループに「一本道」「天然むすめ」「HEYZO」などのサイトがあると紹介されている。米国在住の運営者本人には日本の捜査権が及びにくいが、共謀共同正犯として国内の関与者と結びついていれば日本の刑法が適用され、日本に入国したタイミングで逮捕が可能になる、と専門家は解説している。業界では「海外配信でも無修正はダメなのか」と衝撃が広がった。

FC2事件[編集]

FC2は1999年に設立された米国ネバダ州ラスベガスに本社を置く企業で、ブログやFC2動画、ライブ配信などを展開するが、実質的な運営は大阪市の関連会社が担っていたとされる。2014年時点で会員数は約1400万人、その95%が日本語ユーザーだったと報じられている。

2013年7月には、知的財産振興協会(IPPA)加盟のAVメーカー7社が、作品の違法アップロードをめぐってFC2に配信中止と損害賠償を求める訴訟を起こした。2014年には京都府警がFC2の運営関係者を摘発し、FC2のライブ配信機能を使ったわいせつ配信については公然わいせつ幇助の容疑も取り沙汰された。この時、創業者の弟と関連会社の実質的経営者は有罪となり、執行猶予付き判決が確定している。

創業者の高橋理洋は「なにわのビル・ゲイツ」の異名を持つ人物で、2015年に逮捕状が出て国際手配されていたが、2024年11月7日、韓国から関西空港に帰国したところを京都府警に逮捕された。容疑は、2013年に関連会社の元社長らと共謀し、会員が投稿したわいせつ動画を閲覧可能な状態にしたというわいせつ電磁的記録陳列である。2025年8月21日、京都地裁は懲役3年・執行猶予5年・罰金250万円の有罪判決を言い渡し、裁判長は「サイトの存在が犯行の前提となっている」と指摘した。弁護側は「日米で性常識は違う」と主張して控訴したが、2026年7月に最高裁で上告が棄却されたと報じられ、有罪が確定した。本人はSNSで「あえなく前科者になりました」とコメントしている。

個人販売者・配信者の摘発[編集]

2020年代に入ると、摘発の対象は大手サイトの運営者だけでなく、個人の投稿者・販売者にも広がっている。

  • 2021年には、FC2のコンテンツマーケットなどを通じて無修正動画を販売した男性が逮捕され、1審で有罪判決を受けた。この男性は「モザイクがないだけで『わいせつ物』とされるのはおかしい」として、175条の違憲性も含めて控訴審で争う姿勢を示し、話題になった。
  • 2024年5月には、自ら出演した無修正動画をサブスク型SNSや海外の有料サイトで公開していた男女2人が逮捕された。報道によれば約2年半で1億円近くを売り上げていたとされ、X (SNS)で多数のフォロワーを抱えていたことから大きな反響を呼んだ。
  • 海外のライブ配信サイト「Stripchat」を使った配信でも摘発が続いている。2025年9月には、180人超の女性配信者を抱えて約1億8000万円を売り上げていたとされる会社社長らが公然わいせつ容疑で逮捕され、2026年6月にも、都内のホテルから配信を行い最大約8000人が視聴していたとされる男女3人が逮捕された。

ライブ配信の場合、行為そのものが日本国内で行われているため、プラットフォームが海外であっても日本の刑法(公然わいせつ罪など)が適用されやすい、と解説されている。

流出・違法アップロード問題[編集]

「流出」とは[編集]

アダルト業界で言う「流出」とは、本来は修正されて販売されるはずの作品について、修正前の映像が何らかの経路で外部に出回ることを指す。かつては修正前マスターテープや審査用のテープが闇ルートに流れたものが中心だったが、ネット時代には、正規作品をAIなどで加工した「疑似無修正」や、海外の動画共有サイトへの無断転載が問題の中心になっている。

海賊版との戦い[編集]

正規メーカーにとって、作品の違法アップロードは無修正かどうか以前に深刻な著作権侵害である。業界団体の知的財産振興協会(IPPA)は2010年に設立され、警察と協力して海賊版の販売者や違法配信者の摘発に取り組んできた。IPPAの関連部門は、2024年8月の1か月だけで海賊版動画9,897件、違法ダウンロード86,034件の削除を実施したと公表しており、違法流通の規模の大きさがうかがえる。

PornhubやXVIDEOSなどの海外動画共有サイトには、日本の正規作品が無断で転載されることが多く、MissAVのような海賊版サイトの存在も業界にとって長年の悩みの種となっている。こうしたサイトは国内からのアクセスが多いにもかかわらず運営実態が海外にあり、削除要請や摘発が容易ではない。

AIによるモザイク除去[編集]

「モザイク破壊」の登場[編集]

2010年代後半から、動画の解像度を高める超解像技術や画像生成AIの進歩によって、モザイク部分を「それらしく」描き直す加工が可能になった。ネット上ではこれが「モザイク破壊」「AI無修正」などと呼ばれ、話題を集めた。ただし、これは隠された元の映像を復元しているわけではなく、AIが周囲の情報から推測して描き足しているにすぎない。

全国初の摘発(2021年)[編集]

2021年10月18日、京都府警サイバー犯罪対策課などは、AI技術を使ってアダルトビデオのモザイクを除去したように見せかけた動画を販売していた兵庫県の男性を逮捕した。容疑は著作権法違反とわいせつ電磁的記録媒体陳列である。報道によれば、男性は「TecoGAN」と呼ばれる超解像AIを使った市販ソフトを悪用し、2020年12月から2021年8月までに約1万2000点を販売、約1100万円を売り上げていたとされる。

この事件のポイントは、他人の作品を勝手に加工・販売した著作権侵害と、加工によってわいせつ物を作り出し公開した175条違反の二重の違法性が問われたことである。著作権法上は、無断複製・頒布に加え、作品を勝手に改変する同一性保持権の侵害も指摘されている。

生成AIわいせつ画像の摘発(2025年)[編集]

2025年4月15日には、警視庁保安課が、生成AIで作った無修正のわいせつ画像をポスターとして印刷し、ネットオークションで販売していた男女4人をわいせつ図画頒布容疑で逮捕した。生成AI画像による175条違反の摘発は全国初とされる。4人は自宅のパソコンに入れた無料の画像生成ソフトを使い、約1年で9000点以上を出品、約1000万円を売り上げていたと報じられている。SNSで「原価が安く稼げる」という投稿を見たのがきっかけだったという。

ネット上では「AIかどうかは関係なく、普通に捕まる案件」という反応も多かった。実在の人物でなくても、わいせつ物を頒布すれば175条の対象になることがあらためて確認された形である。

海外との比較[編集]

成人向け作品で性器部分に修正を施すのは日本独自の慣行で、多くの国ではそもそも「修正」という発想がない。ただし「無修正OK=規制なし」ではなく、各国は年齢確認や出演者の年齢記録など別の形で規制をかけている。

国・地域 成人向け無修正作品の扱い 主な規制・特徴
日本 頒布・公然陳列・有償頒布目的の所持は違法 刑法175条。単純な閲覧・所持の処罰規定はない。業界は自主審査でモザイク修正
アメリカ合衆国 成人向けは原則合法に流通 「わいせつ」に当たるものは規制(1973年のミラー判決の基準)。制作者に出演者の年齢記録保管義務。近年は州法で年齢確認を義務づける動きが拡大し、2025年に連邦最高裁がテキサス州の年齢確認法を合憲と判断
イギリス 合法だが流通形態に制限 最もハードな区分は認可店でのみ販売。2025年7月からオンライン安全法に基づき、アダルトサイトに厳格な年齢確認が義務化
ドイツ 成人向けは合法 未成年者がアクセスできない措置を講じない頒布は処罰対象
フランス 成人向けは合法 法律でアダルトサイトに年齢確認を義務化。2025年にはPornhubの運営会社が規制に反発してフランスでのアクセスを一時停止した
韓国 わいせつ物の頒布・販売は違法 国内でのポルノ制作・流通は事実上できない。2019年には海外のアダルトサイト等をSNI遮断で大規模ブロックし、反対請願に26万人が署名
中国 制作・販売・伝播は違法 「淫穢物品」の取り扱いを刑法で処罰。ネット上も厳しく検閲

こうして並べると、日本は「完全禁止の国」と「年齢確認つきで合法の国」の中間にある、かなり特殊なポジションだとわかる。修正さえすれば大量の成人向け作品が合法に流通している点では欧米に近く、一方で「性器が見える」かどうかに強くこだわる点は世界的にも珍しい。

炎上とバズ[編集]

  • FC2創業者の「前科者」コメント:2026年7月に上告棄却で有罪が確定した際、高橋理洋は「これまで警察とは無縁の人生でしたので、これからも大人しく生活し、毎日アプリを作りながら執行猶予5年を無事に過ごす予定です」とSNSに投稿し、その淡々とした文面がネットで話題になった。
  • 無修正動画カップル逮捕:2024年の男女逮捕のニュースでは、SNS上で「悪いことしてなくね?」「そろそろ日本でも無修正解禁しろ」といった反応が多数寄せられ、175条の是非をめぐる議論が再燃した。逮捕された女性が後にメディアの取材に応じ、「無修正のなにが悪いのかわからない」と語ったことも賛否を呼んだ。
  • 生成AI画像の初摘発:2025年の生成AIわいせつ画像事件では、「AI物販で稼げる」とうたう情報商材やSNS投稿が問題視され、「AI物販界隈終了」といった言葉も飛び交った。

余談[編集]

  • 「修正」と「修整」のどちらが正しいかは昔からの論争ネタで、写真などに手を加える意味では「修整」が本来の表記とされる。しかし検索ボリュームは圧倒的に「無修正」が多く、半ば業界の慣用表記として定着している。
  • 海外のアダルトファンの間では、日本の作品特有のモザイクが「Japanese censorship」として広く知られており、日本のアダルト文化を語る際の定番ネタになっている。
  • 2000年代の「激薄」ブームでは、モザイクの一辺が1mm以下という作品まで登場したとされ、「それはもう修正と言えるのか」という疑問はやがて警察の摘発という形で答えが出た。
  • AIの「モザイク除去」は元の映像を復元するわけではないため、生成される映像は実在しない「推測図」である。それでも販売すれば著作権侵害とわいせつ物頒布の両方に問われ得るという、なかなか割に合わない行為である。
  • 裏ビデオ全盛期には、家庭用ビデオデッキの販売促進の景品として裏ビデオが付けられたケースもあったという話があり、ビデオデッキの普及を陰で後押ししたとも言われる。

外部リンク[編集]

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