概要[編集]
宮廷女官チャングムの誓い(きゅうていにょかんチャングムのちかい)とは、2003年9月から2004年3月まで韓国のMBCで放送された時代劇。原題は『大長今(テジャングム)』。主演はイ・ヨンエ。朝鮮王朝中宗の時代に実在したとされる医女「大長今」をモデルに、宮廷料理人から朝鮮初の王の主治医へと成り上がる女性の一代記を描く。
最高視聴率は57.8%という今では考えられない数字を記録し、韓国ドラマ史に残る国民ドラマとなった。さらに世界約90カ国に輸出され、第一次韓流ブームを世界規模に拡大させた立役者としても知られる。日本では2004年にNHKで放送され、『冬のソナタ』と並ぶ韓流初期の代表作になった。
あらすじ[編集]
幼くして両親を失ったチャングムは、母の遺言を胸に宮廷の水刺間(スラッカン=王の厨房)の女官となる。天性の味覚と努力で頭角を現すが、チェ一族の陰謀により濡れ衣を着せられ、済州島へ官婢として流されてしまう。どん底から医女として再起したチャングムは、やがて王の信頼を得て、女性として初めて王の主治医「大長今」の称号を賜る——。
詳細[編集]
制作の経緯[編集]
演出は『ホジュン 〜宮廷医官への道〜』『商道』など医術・商人を題材にした時代劇で知られるイ・ビョンフン、脚本はキム・ヨンヒョン。イ・ビョンフンはその後も『イ・サン』(2007年)、『トンイ』(2010年)と朝鮮王朝の宮廷劇を手がけ、本作はその流れの出発点にあたる。制作費は約1,500万米ドルとされ、当時の韓国ドラマとしては大型の作品だった。当初は全50話の予定だったが、放送開始から連日50%前後の視聴率を記録したため、前半の水剌間(スラッカン)編を中心に延長され、全54話で完結した。
主人公のモデルは、『朝鮮王朝実録』の「中宗実録」に「大長今」の名で記録される医女である。実録に残る記述は10か所ほどで、王の診察に関わったことを示す1544年(中宗39年)の短い一文などに限られる。朝鮮史学者の吉田光男は、ドラマの内容を「ほぼ100%フィクション」と評している。わずかな記録を手がかりに、料理人から医女へという一代記を一から組み立てた作品といえる。
物語の流れ[編集]
物語は大きく前半と後半に分かれる。
- 少女時代:武官ソ・チョンスと宮女パク・ミョンイの間に生まれたチャングムは、母を亡くし、母が残した「水剌間の最高尚宮になる」という願いを胸に宮中へ入る。
- 水剌間編(前半):宮中の厨房・水剌間で、師匠ハン尚宮のもと料理の修業を積む。代々最高尚宮の座を握ってきたチェ一族(チェ尚宮・クミョン)と、ハン尚宮・チャングムの師弟が料理の腕を競う「料理対決」が前半の山場になる。やがてハン尚宮は陰謀で罪を着せられて命を落とし、チャングムも済州島へ官婢として送られる。
- 医女編(後半):済州島で医術に出会ったチャングムは医女として宮廷に戻り、医術の知識と料理の経験を生かして頭角を現す。チェ一族との因縁に決着をつけたのち、中宗の信頼を得て、女性として前例のない王の主治医となり「大長今」の称号を与えられる。
- 物語の背景には、朝鮮王朝中期の勲旧派と士林派の権力争いがあり、ミン・ジョンホとの恋もこの政治の流れに大きく左右される。
視聴率と海外での反響[編集]
韓国での平均視聴率は約46%、最高視聴率は57.8%(調査会社によっては57.1%)で、2000年代の韓国ドラマを代表する数字となった。世界91か国に輸出され、世界全体での収益は1億340万ドルにのぼるとされる。香港ではTVBの放送で最高視聴率50%に達し、中国本土や台湾、中東や東欧、アフリカのジンバブエ・タンザニア・ガーナなどでも放送された。
日本では2004年10月7日から2005年10月27日までNHK BS2で放送され、NHKが初めて放送した韓国時代劇となった。続いて2005年10月8日から2006年11月18日までNHK総合でも放送され、2007年1月12日から2008年2月15日にはノーカットの字幕版「完全版」がNHK BS2で放送された。その後も2019年9月11日からAbemaTV、2024年11月28日からBS日テレ(日本テレビ系のBS局)で放送されるなど、20年以上たっても繰り返し放送されている。
受賞歴[編集]
| 年 | 賞 | 部門 | 受賞者 |
|---|---|---|---|
| 2003年 | MBC演技大賞 | 大賞 | イ・ヨンエ |
| 2003年 | MBC演技大賞 | 特別演技賞 | ヤン・ミギョン、イム・ヒョンシク |
| 2003年 | MBC演技大賞 | 脚本賞 | キム・ヨンヒョン |
| 2004年 | 百想芸術大賞 | TV部門 演出賞 | イ・ビョンフン |
| 2004年 | 百想芸術大賞 | TV部門 人気賞 | ヤン・ミギョン |
関連作品・その後[編集]
- 少女時代のチャングムを主人公にしたアニメ『少女チャングムの夢』(全26話)が、2006年4月8日からNHK総合の「NHKアニメ劇場」枠で放送された。
- 日本では舞台版も上演された。
- 撮影の中心となった屋外セットの跡地には、2004年12月に京畿道龍仁市で「大長今テーマパーク」が開かれ、観光地となった。
- 2012年9月にはMBCが続編『大長今2』の制作を発表し、2014年には脚本のキム・ヨンヒョンが放送予定を語り、イ・ヨンエも出演を前向きに検討していると報じられたが、2026年10月時点で放送には至っていない。
人気の秘密[編集]
前半は宮廷料理バトル、後半は医女ものという二部構成で、「飯テロ時代劇」の元祖とも言われる。実際の宮中飲食研究の専門家が料理を監修しており、画面に並ぶ宮中料理の再現度は放送から20年以上たった今も評価が高い。逆境→努力→成功を繰り返す王道展開は国境を越えて刺さり、イランでは視聴率80%を超えたと報じられたほどである。
主要キャスト[編集]
- ソ・チャングム(演:イ・ヨンエ):主人公。本作でアジア全域のスターになった。
- ミン・ジョンホ(演:チ・ジニ):チャングムを支える文武両道の官僚。
- ハン尚宮(演:ヤン・ミギョン):チャングムの師匠。「食べる人を思う心」を説く名場面は伝説級。
- チェ・グミョン(クミョン)(演:ホン・リナ):チェ一族の娘で、チャングムと同期の女官。ミン・ジョンホに思いを寄せ、チャングムの最大のライバルとなる。
- チェ尚宮(ソングム)(演:キョン・ミリ):クミョンの叔母。一族の地位を守るためハン尚宮と対立する。
- イ・ヨンセン(演:パク・ウネ):チャングムの親友の女官。のちに王の側室(淑媛)となる。
- 中宗(演:イム・ホ):朝鮮王朝第11代国王。チャングムを主治医に取り立てる。
- チャンドク(演:キム・ヨジン):済州島の医女で、チャングムに医術を教える師。
- シンビ(演:ハン・ジミン):医女の見習い仲間。
- チェ・パンスル(演:イ・ヒド):クミョンの叔父で、宮中の食材を扱う商人。チェ一族の財力を支える。
- ミン尚宮(演:キム・ソイ)、ノ・チャンイ(演:チェ・ジャヘ):水剌間の仲間で、物語に笑いを添える。
- ソ・チョンス(演:パク・チャンファン)/パク・ミョンイ(演:キム・ヘソン):チャングムの両親。
余談[編集]
- テーマ曲「オナラ」は古語の歌詞で、放送当時「意味は分からないのに耳から離れない」と話題になった。
- 実在の「大長今」は『朝鮮王朝実録』に数行の記録が残るのみで、物語の大半は創作。記録が少ないからこそ自由に描けたという話もある。
- 韓国では本作のテーマパーク(京畿道龍仁市・2004年開園)が作られ、観光名所になった。
- チャングムの親友ヨンセンを演じたパク・ウネ、医女シンビを演じたハン・ジミンは、本作をきっかけに広く知られるようになった。
- 香港ではTVBでの放送が最高視聴率50%に達し、香港でも社会現象になったとされる。
- 2024年には放送20周年を記念した特集が韓国で組まれるなど、今なお別格の存在として語られる。後年の宮廷ロマンス『雲が描いた月明かり』などと並べて語られることも多く、韓国時代劇の「入門編」として名前が挙がる作品である。
