坂元裕二
出身地 大阪府大阪市
国籍 日本
職業 脚本家、劇作家、作詞家
活動期間 1987年 -
別名 大野大福(『男湯』シリーズでの名義)


概要[編集]

坂元裕二(さかもと ゆうじ)とは、日本の脚本家・劇作家である。19歳でデビューし、23歳で書いた『東京ラブストーリー』で社会現象を起こした。その後『Mother』『カルテット』などで会話劇の名手として評価を固め、映画『怪物』でカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞。2026年にはTBS金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』で連ドラに帰ってきた。

詳細[編集]

坂元作品の代名詞は、なんでもない会話がそのまま名台詞になる台詞回し。唐揚げにレモンをかけるかどうか、といった日常の小競り合いの中に、登場人物の価値観や傷が透けて見える書き方をする。本人は「登場人物たちがお客さんの生活の中に紛れ込んで、毎週観る。それがテレビドラマの一番気に入っているところ」と語っており、連続ドラマという形式への愛着が強い。

キャリアは大きく三期に分けられる。フジテレビの月9で恋愛ドラマの旗手となった1990年代前半、いったんテレビを離れてゲーム会社で働いた空白期、そして2002年の復帰以降。特に2010年の『Mother』以降は、児童虐待、少年犯罪の被害者と加害者の家族、貧困といった重いテーマを正面から扱い、「坂元裕二」という名前自体がドラマの宣伝文句になるほどの作家性を確立した。

もう一つの特徴が海外リメイクの多さ。『Mother』は韓国、トルコ、フランス、中国、ウクライナ、タイ、スペインなどでリメイクされ、2019年時点で世界35か国以上に展開。『Woman』『最高の離婚』『問題のあるレストラン』などもリメイクされている。2023年にはNetflixと5年契約を結び、2025年には脚本映画『ファーストキス 1ST KISS』『片思い世界』が相次いで公開された。

経歴[編集]

デビューまで[編集]

1967年、大阪府大阪市生まれ。学生時代は映画なら相米慎二、小説なら中上健次を軸に物語づくりを学んだ。深夜ラジオ『とんねるずのオールナイトニッポン』のヘビーリスナーで、「入賞すればフジテレビでとんねるずに会えるかもしれない」という動機で脚本コンクールに応募する。

月9の寵児(1987年〜1996年)[編集]

1987年、19歳で第1回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞し、同年『GIRL-LONG-SKIRT』で脚本家デビュー。1989年の『同・級・生』で連続ドラマデビューを果たす。

1991年、23歳で柴門ふみの漫画を原作とする『東京ラブストーリー』を執筆。織田裕二と鈴木保奈美が主演し、最高視聴率32%を記録、「月曜の夜9時は街から女性が消えた」と言われる社会現象になった。その後も『二十歳の約束』『海が見たいと君が言って』などを手がけるが、1996年の『翼をください!』を最後に連続ドラマから離れる。のちに本人は、テレビ業界が嫌になって「逃亡した」と振り返っている。

ゲーム会社時代(1996年〜2002年)[編集]

休業中は、飯野賢治率いるゲーム会社ワープに所属。『エネミー・ゼロ』の台詞や、音だけで遊ぶアドベンチャー『リアルサウンド 〜風のリグレット〜』のシナリオを書いた。1998年に同社を退社。小説も書き進めたが、完成には至らなかった。同年、女優の森口瑤子と結婚している。

復帰と転機(2002年〜2009年)[編集]

2002年、『恋愛偏差値』第3章「彼女の嫌いな彼女」で脚本業に復帰。『あなたの隣に誰かいる』『愛し君へ』『ラストクリスマス』、香取慎吾主演の『西遊記』、いじめ問題を描いた『わたしたちの教科書』などを書く。映画では行定勲監督の『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)で共同脚本を担当した。『男湯』シリーズでは「大野大福」という別名義も使っている。

作家性の確立(2010年〜2018年)[編集]

2010年、日本テレビの『Mother』で松雪泰子と芦田愛菜が擬似母子となる物語を描き、大きな評価を得る。以降、『それでも、生きてゆく』(2011年)、瑛太・尾野真千子らの会話劇『最高の離婚』(2013年)、満島ひかり主演の『Woman』(2013年)、『問題のあるレストラン』(2015年)、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(2016年)と話題作を連発した。

2017年、TBSの『カルテット』で松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平による弦楽四重奏団のサスペンス混じりの会話劇を描き、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。2018年の『anone』放送終了後、Instagramで「数年の間は連続・単発ドラマの執筆を休み、舞台や映画、大学院の授業に絞る」と発表した。本人によれば、4年前から決めていたスケジュール上の区切りだったという。

2016年からは東京藝術大学大学院映像研究科の教授も務める。

映画での飛躍(2020年〜2024年)[編集]

2020年、NHKの『Living』で2年ぶりにドラマ脚本を再開。2021年には松たか子主演の『大豆田とわ子と三人の元夫』(関西テレビ)、菅田将暉・有村架純主演の映画『花束みたいな恋をした』が同年に公開・放送され、どちらも大きな反響を呼んだ。2022年には日本テレビで『初恋の悪魔』を執筆。

2023年、是枝裕和監督の映画『怪物』の脚本で第76回カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞。同年、紫綬褒章を受章している。6月にはNetflixと5年契約を締結し、第1弾として吉沢亮・宮﨑あおい主演の映画『クレイジークルーズ』が同年11月に配信された。

2025〜2026年の動向[編集]

2025年2月7日、塚原あゆ子監督、松たか子・松村北斗主演の映画『ファーストキス 1ST KISS』が公開。夫を事故で亡くした妻がタイムトラベルで出会いの直前に戻る物語で、初登場1位を獲得し、興行収入10億円を早期に突破するロングヒットとなった。第49回日本アカデミー賞では話題賞(作品部門)を受賞している。

同年4月4日には、『花束みたいな恋をした』の土井裕泰監督と再タッグを組んだオリジナル映画『片思い世界』が公開。広瀬すず、杉咲花、清原果耶のトリプル主演に横浜流星が加わった。当初は2024年公開予定だったが、撮影中の交通事故の影響で延期されていた。

2026年は舞台が続く。2月には2018年初演の四人芝居『またここか』が座・高円寺1で8年ぶりに再演され、7月からは安田顕と林遣都による二人芝居『死の笛』が東京・札幌・大阪の3都市で再演。坂元は再演にあたって細部まで改稿した。

そして2026年7月10日、TBS金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』がスタート。蒼井優主演、松山ケンイチ、夏帆、中島歩、高橋文哉らが出演し、バス事故をきっかけに二組の夫婦の秘密が暴かれていく物語を全10話で描いた(9月11日最終回)。演出には土井裕泰らが名を連ね、主題歌はスピッツの「見知らぬ糸」。

主な作品[編集]

テレビドラマ[編集]

  • 1989年『同・級・生』(フジテレビ) - 連続ドラマデビュー作
  • 1991年『東京ラブストーリー』(フジテレビ)
  • 1992年『二十歳の約束』(フジテレビ)
  • 1994年『海が見たいと君が言って』(フジテレビ)
  • 1996年『翼をください!』(フジテレビ)
  • 2004年『愛し君へ』『ラストクリスマス』(フジテレビ)
  • 2006年『西遊記』『トップキャスター』(フジテレビ)
  • 2007年『わたしたちの教科書』(フジテレビ)
  • 2008年『猟奇的な彼女』(TBS)、『太陽と海の教室』(フジテレビ)
  • 2010年『Mother』(日本テレビ)
  • 2011年『それでも、生きてゆく』(フジテレビ)
  • 2012年『負けて、勝つ 〜戦後を創った男・吉田茂〜』(NHK)
  • 2013年『最高の離婚』(フジテレビ)、『Woman』(日本テレビ)
  • 2015年『問題のあるレストラン』(フジテレビ)
  • 2016年『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ)
  • 2017年『カルテット』(TBS)
  • 2018年『anone』(日本テレビ)
  • 2020年『Living』(NHK)、『スイッチ』(テレビ朝日)
  • 2021年『大豆田とわ子と三人の元夫』(関西テレビ)
  • 2022年『初恋の悪魔』(日本テレビ)
  • 2026年『Tシャツが乾くまで』(TBS)

映画[編集]

  • 1996年『ユーリ』 - 原案・脚本・監督(初監督作)
  • 2004年『世界の中心で、愛をさけぶ』 - 共同脚本
  • 2021年『花束みたいな恋をした』 - 脚本
  • 2023年『怪物』 - 脚本
  • 2023年『クレイジークルーズ』(Netflix) - 脚本
  • 2025年『ファーストキス 1ST KISS』 - 脚本
  • 2025年『片思い世界』 - 脚本

舞台・朗読劇[編集]

  • 2012年〜 朗読劇シリーズ(『不帰の初恋、海老名SA』ほか)
  • 2018年・2026年『またここか』
  • 2024年・2026年『死の笛』

ゲーム[編集]

  • 1996年『エネミー・ゼロ』 - 台詞
  • 1997年『リアルサウンド 〜風のリグレット〜』 - シナリオ
  • 2003年『ニュールーマニア ポロリ青春』 - シナリオ

書籍[編集]

  • 2014年『ウーギークックのこどもたち』 - 『Woman』劇中の架空絵本を書籍化
  • 2017年『往復書簡 初恋と不倫』 - 朗読劇の戯曲集

人物・エピソード[編集]

  • 脚本は、主要キャストの大枠が決まった状態から当て書きすることが多い。俳優を起用するきっかけは、バラエティ番組やインタビューで素の話し方を見て興味を持つことが多いという。
  • 2014年、『問題のあるレストラン』の取材を兼ねて中目黒に飲食店を立ち上げ、5年間経営に関わった。
  • 19歳のころに一度だけ会った石橋貴明とは、2020年の番組『石橋、薪を焚べる』で33年ぶりに再会。2024年にはTBSラジオ『石橋貴明 あの人と、どらいぶ。』で、坂元の運転する車の助手席に石橋が乗る形で対談した。
  • 作詞家としての顔もあり、織田裕二、松たか子、小室哲哉、大瀧詠一、深津絵里らの楽曲に詞を提供している。
  • 作品づくりの姿勢について「お客さんの中で登場人物たちが、終わっても生きていてくれること、それだけを願って書いてきた」と語っている。
  • 妻は女優の森口瑤子。

受賞歴[編集]

  • 1987年 - 第1回フジテレビヤングシナリオ大賞
  • 2010年 - ザテレビジョンドラマアカデミー賞 脚本賞、東京ドラマアウォード 脚本賞(『Mother』)
  • 2011年 - 第19回橋田賞
  • 2011年 - 芸術選奨新人賞 放送部門(『それでも、生きてゆく』『さよならぼくたちのようちえん』)
  • 2013年 - ザテレビジョンドラマアカデミー賞 脚本賞(『最高の離婚』)
  • 2017年 - 芸術選奨文部科学大臣賞 放送部門、ザテレビジョンドラマアカデミー賞 脚本賞ほか(『カルテット』)
  • 2021年 - ザテレビジョンドラマアカデミー賞 脚本賞、東京ドラマアウォード 脚本賞(『大豆田とわ子と三人の元夫』)
  • 2023年 - 紫綬褒章
  • 2023年 - 第76回カンヌ国際映画祭 脚本賞(『怪物』)
  • 2023年 - 第75回読売文学賞 戯曲・シナリオ賞(『怪物』)

余談[編集]

  • 脚本家を目指した動機のひとつは「とんねるずに会えるかもしれない」だった。
  • 『東京ラブストーリー』を書いたのは23歳。月9史に残るヒットを20代前半で生んでいる。
  • 『リアルサウンド 〜風のリグレット〜』は映像がほぼなく、音声だけで進むゲーム。脚本家の仕事としてもかなり異色。
  • 朗読劇の戯曲をまとめた『往復書簡 初恋と不倫』は、中国の書評サイト「豆瓣読書」の2020年度外国語文学ランキングで3位に入った。
  • 『Woman』の劇中に出てきた架空の絵本『ウーギークックのこどもたち』は、視聴者の要望を受けて実際に書籍化された。
  • 『花束みたいな恋をした』『片思い世界』の土井裕泰とは、2026年の『Tシャツが乾くまで』でも組んでいる。
  • 『カルテット』『大豆田とわ子と三人の元夫』『ファーストキス 1ST KISS』と、松たか子の主演作を何度も書いている。

外部リンク[編集]

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