古畑任三郎
Furuhata Ninzaburo
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古畑任三郎を演じた田村正和(1966年撮影)(出典:ウィキメディア・コモンズ、パブリックドメイン)
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脚本を手がけた三谷幸喜(2013年)(出典:ウィキメディア・コモンズ、CC BY 2.0)
略称 古畑
ジャンル 刑事ドラマ、倒叙ミステリー、コメディ
放送シーズン 第1シーズン(警部補・古畑任三郎)、第2シーズン、第3シーズン、スペシャル6作、ファイナル(3夜連続)
放送期間 1994年4月13日 - 2006年1月5日
放送時間 第1・第2シーズン:水曜21:00 - 21:54/第3シーズン:火曜21:00 - 21:54
話数 全42作(連続ドラマ33話+スペシャル・総集編・ファイナル)
放送国家 日本
言語 日本語
放送局 フジテレビ系
配信 FOD、Netflix(第1 - 第3シーズン、2026年6月 - )
平均視聴率 第1シーズン14.2%、第2シーズン25.3%(関東地区)
制作
プロデューサー 関口静夫(第1シーズン)ほか
演出 星護、河野圭太、松田秀知、鈴木雅之、佐藤祐市、平野眞
制作 フジテレビジョン、共同テレビジョン
脚本 三谷幸喜
音楽 本間勇輔
出演者 田村正和、西村雅彦(現・西村まさ彦)、石井正則、小林隆 ほか
その他
原作 三谷幸喜(オリジナル脚本)
関連番組 巡査・今泉慎太郎(1996年)、古畑中学生(2008年)
オープニング曲 本間勇輔「古畑任三郎」メインテーマ
エンディング曲 本間勇輔

概要[編集]

古畑任三郎(ふるはた にんざぶろう)とは、フジテレビ系で1994年から2006年まで放送された刑事ドラマシリーズである。三谷幸喜のオリジナル脚本、田村正和主演。最初に犯人と犯行を見せ、黒ずくめの警部補・古畑が会話だけで犯人を追い詰める「倒叙ミステリー」を、日本のお茶の間に定着させた金字塔だ。

詳細[編集]

「犯人は最初から分かっている」刑事ドラマ[編集]

毎回、ドラマはまず犯人の側から始まる。犯人が誰で、どうやって殺したのか、視聴者は冒頭の十数分ですべて知ってしまう。そこへ自転車に乗った古畑がふらりと現れ、ささいな矛盾をつつきながら、少しずつ犯人の逃げ道をふさいでいく。見どころは「誰がやったか」ではなく「どうやってバレるか」。これが倒叙(とうじょ)形式と呼ばれるスタイルである。

三谷は米国ドラマ『刑事コロンボ』の大ファンで、本作はあの型を日本の連続ドラマでやってみようという発想から生まれたとされる。ただ、当時の日本の視聴者は2時間サスペンスに代表される「犯人当て」に慣れきっていた。最初から犯人が見えている刑事ドラマは新鮮すぎて、受け入れられるまでに少し時間がかかった。

視聴者に語りかける古畑[編集]

本作を一目で古畑だと分からせる名物演出が二つある。一つは冒頭。暗闇の中でピンスポットを浴びた古畑がカメラ目線で、その回のテーマにつながる小話や例え話を語り始める。もう一つは解決編の直前。画面が暗転し、古畑が視聴者に向かって「もうお分かりですね」とばかりにヒントを出して挑戦してくる。後者はアメリカのミステリードラマ『エラリー・クイーン』からの引用とされる。

この二つの語りかけによって、ドラマはほとんど田村正和のワンマンショーの趣を帯びた。社会学者の太田省一は、刑事ドラマでありながら取調室もアクションもなく、言葉による心理戦だけで成立している点を本作最大の特徴に挙げている。舞台劇のように場面転換が少ないのも、劇団出身の三谷らしい作りだ。

スロースタートからの大逆転[編集]

意外なことに、1994年の第1シーズン『警部補・古畑任三郎』は大ヒットではなかった。関東地区の平均視聴率は14.2%。当時のゴールデンタイムは20%超えでようやくヒットと呼ばれる時代で、数字だけ見れば「まずまず」止まりだった。

流れを変えたのは再放送と口コミである。「あれは面白い」という評判がじわじわ広がり、1996年1月に始まった第2シーズンは初回25.4%を記録。その後も一度も20%を割らず、平均25.3%という堂々たる数字を残した。同年3月のスペシャル「しばしのお別れ」はシリーズ最高の34.4%に到達している。

12年・全42作の長寿シリーズ[編集]

連続ドラマは3シーズン。その間にスペシャルや総集編をはさみ、2006年正月の3夜連続『古畑任三郎ファイナル』で幕を閉じた。通算は全42作とされ、足かけ12年に及ぶ。

レギュラーの連ドラ枠を離れてからは、正月の特番として「お年玉」のように届けられる存在になった。1999年の「古畑任三郎 vs SMAP」、2004年の「すべて閣下の仕業」、そして2006年のファイナルはいずれも1月3日前後の放送で、年始の風物詩として記憶している人も多い。

放送データ[編集]

第1シーズン(1994年)[編集]

1994年4月13日から6月29日まで、水曜21時台(水曜劇場)で全12回放送された。タイトルは『警部補・古畑任三郎』。初回「死者からの伝言」の犯人は中森明菜で、人気少女漫画家・小石川ちなみを演じた。恋人である担当編集者の浮気を知り、彼を金庫に閉じ込めて死なせてしまうという話だ。

以降、堺正章、古手川祐子、笑福亭鶴瓶(「殺しのファックス」)、坂東八十助(のちの十代目坂東三津五郎、「汚れた王将」)、木の実ナナ、小林稔侍、鹿賀丈史(「殺人特急」)、石黒賢(「殺人公開放送」)、小堺一機(「矛盾だらけの死体」)、桃井かおり(「さよなら、DJ」)、菅原文太(「最後のあいさつ」)と、毎週が「豪華ゲストの品評会」状態だった。

スペシャル(1995 - 1999年)[編集]

  • 1995年4月12日:「笑うカンガルー」(犯人:陣内孝則)。114分の拡大版。
  • 1996年3月27日:「しばしのお別れ」(犯人:山口智子)。シリーズ最高視聴率34.4%。
  • 1996年4月9日:総集編「消えた古畑任三郎」(22.6%)。
  • 1999年1月3日:「古畑任三郎 vs SMAP」。157分の超大作で、SMAPの5人が全員本人役で犯人を演じた。
  • 1999年4月6日:「黒岩博士の恐怖」(犯人:緒形拳)。

第2シーズン(1996年)[編集]

1996年1月10日から3月13日まで、同じ水曜21時台で全10回。初回「しゃべりすぎた男」は明石家さんまが敏腕弁護士・小清水潔を演じ、シリーズの人気を決定づけた。続く「笑わない女」が沢口靖子、「ゲームの達人」が草刈正雄、そして「赤か、青か」では当時人気絶頂の木村拓哉が犯人役に起用された。

ほかに唐沢寿明(「VSクイズ王」)、山城新伍(「魔術師の選択」)、鈴木保奈美(「ニューヨークでの出来事」)、加藤治子、澤村藤十郎、風間杜夫らが登場している。

第3シーズン(1999年)[編集]

1999年4月13日から6月22日まで、今度は火曜21時台に移って全11回。初回「若旦那の犯罪」の市川染五郎(現・十代目松本幸四郎)を皮切りに、真田広之、松村達雄、大地真央(「古畑、歯医者へ行く」)、津川雅彦(「再会」)、市村正親(「絶対音感殺人事件」)、田中美佐子(「哀しき完全犯罪」)、福山雅治(「完全すぎた殺人」)、玉置浩二(「雲の中の死」)と続いた。

最終2話は前後編「最後の事件」で、犯人役は江口洋介。このシーズンから西園寺守がレギュラーに加わり、捜査チームの顔ぶれが固まった。

2004年スペシャルとファイナル(2006年)[編集]

2004年1月3日のスペシャル「すべて閣下の仕業」では、パスポートをなくした古畑が中南米のある国の日本大使館を訪れ、九代目松本幸四郎(現・松本白鸚)演じる黛大使と対決する。舞台が海外の大使館という異色作だ。

そして2006年1月3日から5日、3夜連続の『古畑任三郎ファイナル』が放送された。第1夜「今、甦る死」は石坂浩二と藤原竜也が出演し、藤原が犯人役。第2夜「フェアな殺人者」はメジャーリーガーのイチローが本人役で犯人を演じ、前後編の平均視聴率は27%に達した。最終夜「ラスト・ダンス」は松嶋菜々子が双子の脚本家・大野かえで/もみじの二役を演じ、12年のシリーズを締めくくった。

主な登場人物[編集]

古畑任三郎(演:田村正和)[編集]

警視庁捜査一課の警部補。黒のスーツにノーネクタイ、サスペンダーという黒ずくめのいでたちで、自転車に乗って現場に現れる。物腰は丁寧だが、相手の神経を逆なでするような粘着質な質問を延々と繰り返す。額に人差し指を当てて「えー」と考え込む仕草は、田村の代名詞にまでなった。

拳銃は持ち歩かない主義で、第1シーズン最終話「最後のあいさつ」では「人を裁く権利は我々にはありません」と語り、法を超えた復讐を否定した。設定上の誕生日は1月6日、好物は酢豚、長兄は九州の大学病院の医師とされる。私生活の描写はごくわずかで、その「生活感のなさ」こそが田村の持ち味と見事に重なった。

今泉慎太郎(演:西村雅彦)[編集]

古畑の部下の巡査で、シリーズ随一のいじられ役。おっちょこちょいで要領が悪く、古畑に額をぺしっと叩かれるのがお約束だ。40代にして祖母と二人暮らしという設定もじわじわ効いてくる。

演じた西村雅彦(現・西村まさ彦)は三谷が主宰した劇団「東京サンシャインボーイズ」の劇団員で、まさに当て書きのキャラクターである。人気を受けて1996年にはスピンオフ『巡査・今泉慎太郎』まで作られた。

西園寺守(演:石井正則)[編集]

第3シーズンからレギュラー入りした刑事。真面目で、データ収集や下調べに長けた優等生タイプで、古畑から一目置かれる存在だ。今泉とは対照的な「できる部下」で、彼の加入によって捜査チームのバランスが変わった。演じた石井正則は、お笑いコンビ「アリtoキリギリス」の元メンバーである。

向島巡査(演:小林隆)[編集]

古畑の中学時代からの友人で、古畑を「最高の刑事」と慕う警察官。結婚や再婚を繰り返すたびに名字が変わるため、古畑に名前を覚えてもらえないという気の毒な男でもある。古畑から贈られたコナン・ドイルの『バスカヴィル家の犬』を大切に持っている。

ファイナルの「フェアな殺人者」では、なんとイチローの腹違いの兄弟であることが判明し、視聴者をひっくり返らせた。演じた小林隆も東京サンシャインボーイズ出身で、三谷作品の常連である。

名物ゲスト犯人[編集]

中森明菜[編集]

記念すべき第1回の犯人。三谷は当時から中森明菜の大ファンで、彼女のコメディエンヌとしての才能を見込んで役を書いたとされる。演じた小石川ちなみは、のちのエピソードでもその後の消息が語られ、ファンの間では「特別扱いされた犯人」として知られている。

明石家さんま[編集]

第2シーズン初回「しゃべりすぎた男」で、明石家さんまが弁護士・小清水潔を演じた。シナリオの初稿はロックシンガーがマネージャーを殺す話だったが、さんま側の提案で法廷での対決に変更されたという。古畑が慣れない関西弁を使ってさんまにツッコまれる場面など、二人の掛け合いは今も語り草だ。

しかもこの回では、小清水がかつて小石川ちなみの弁護人を務めていたことが明かされる。第1シーズンを見ていたファンへのご褒美のような仕掛けである。

SMAP[編集]

1999年正月の「古畑任三郎 vs SMAP」では、SMAPの5人が実名で登場し、全員が犯人という前代未聞の構成になった。中居正広、木村拓哉、稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾が、とある事件をめぐって古畑と知恵比べを繰り広げる。木村は第2シーズン「赤か、青か」に続く2度目の犯人役だった。

イチロー[編集]

ファイナル第2夜「フェアな殺人者」は、シリーズの集大成ともいえる「事件」だった。イチローが本作のファンだと聞いた三谷が、ダメ元でオファーしたところ快諾されたという。当初の役名は「ハチロー」だったが、本人の希望で本名の「イチロー」になったとされる。

本読みでは台本を一度も開かなかったという逸話も伝わっており、三谷は「セリフがきちんと言える人」と評価した。前後編の平均視聴率は27%を記録している。

松嶋菜々子[編集]

シリーズ最終作「ラスト・ダンス」の犯人。双子の姉妹が「加賀美京子」という一つのペンネームで脚本を書いているという設定で、松嶋菜々子が姉・もみじと妹・かえでの二役を演じた。古畑がドラマの監修を通じてかえでと親しくなっていく展開は、シリーズの最後にふさわしい、どこか切ない余韻を残した。

三谷幸喜の脚本と音楽[編集]

三谷幸喜という脚本家[編集]

三谷幸喜にとって、本作は出世作の一つである。舞台出身の三谷は、俳優に合わせて役を書く「当て書き」と、理詰めの構成を武器にした。古畑の回りくどい話法や、犯人と刑事の「言葉の格闘技」のようなやりとりは、まさに三谷の真骨頂だ。のちに三谷は大河ドラマ『鎌倉殿の13人』などを手がける大作家になるが、その出発点にあたる時期の代表作が古畑だった。

三谷はペリー荻野との対談集『もうひとつ、いいですか?』で、当初は古畑役に田村正和ではなく玉置浩二をイメージしていたことを明かしている。その玉置が第3シーズンで犯人として登場するのだから、縁とは不思議なものである。

田村正和の起用[編集]

田村はそれまで刑事役を演じたことがなく、刑事ものには乗り気ではなかったといわれる。しかし三谷の脚本を読んで出演を決め、のちに「三谷さんの脚本でなければ刑事ドラマはやらなかった」という趣旨の振り返りをしている。1943年生まれの田村は放送開始時50歳。時代劇の二枚目から『パパはニュースキャスター』のコメディまで演じてきた経験が、クールでどこか可笑しい古畑像に結実した。

本間勇輔のテーマ曲[編集]

音楽は作曲家の本間勇輔。冒頭の古畑の語りが終わると、軽快で少し怪しげなストリングスのメインテーマが流れ出す。このイントロを聞いただけで田村の「えー」が頭の中で再生される、という人も多いはずだ。モノマネ番組では古畑の物真似とこの曲がセットで使われるほど、作品のアイコンになっている。

評価と影響[編集]

倒叙ミステリーを日本に根付かせた[編集]

本作の最大の功績は、倒叙形式の面白さを日本の視聴者に広く浸透させたことにある。犯人を当てる楽しみではなく、犯人がじわじわ追い詰められていく過程を楽しむ。この見方を覚えた視聴者は、以後のミステリードラマの見方そのものが変わった。豪華ゲストを毎回犯人に据えるスタイルも、本作がフォーマットとして確立したといってよい。

影響はドラマの外にも及んだ。漫画『名探偵コナン』に登場する警視庁の白鳥任三郎警部は、その名前が古畑任三郎に由来するとされる。田村の古畑の物真似も大流行し、「えー」「んふふ」という独特の口調は今もバラエティ番組の定番ネタだ。

田村正和の死去と再評価[編集]

2021年4月3日、田村正和は心不全のため77歳で死去した。訃報が報じられたのは5月18日で、ファンに大きな衝撃を与えた。フジテレビは5月20日・21日にファイナルの「フェアな殺人者」と「ラスト・ダンス」を追悼放送し、6月にも5エピソードを放送した。SNSでは他の回の再放送を望む声が殺到し、7月5日から8月5日には関東ローカルで「古畑任三郎 傑作選」として計10エピソードが放送された。

今泉役の西村は、古畑での共演を自身の飛躍の大きなきっかけだったと振り返った。三谷は、田村なしに古畑が画面に戻ることはないという趣旨のコメントを出している。ネット上では二代目古畑に阿部寛や反町隆史の名前を挙げる声も出たが、田村以外の古畑は想像しにくい、という意見が根強い。

30周年とNetflixでの再ブーム[編集]

2024年は放送開始から30周年。フジテレビは5月24日から関東ローカルで一挙再放送を行い、TVerでも第1シーズン序盤や「しゃべりすぎた男」などが期間限定で配信された。

さらに2026年6月1日、Netflixで第1〜第3シーズンの配信が始まると、たちまち話題に。リアルタイムで見ていないZ世代が「Netflixで初めて観た」と投稿し、当時のファンと若い世代が同時に盛り上がる「世代横断型ヒット」になった。30年以上前のドラマが、今の目で見ても古びないことを証明した格好である。

炎上とバズ[編集]

2024年6月の30周年再放送で、第3シーズン最終話「最後の事件・後編」の冒頭、歴代犯人の写真がタイル状に並ぶ背景のうち5枚、つまりSMAPメンバーの写真が黒く塗りつぶされていたことがSNSで話題になった。一部では特定メンバーへの配慮という見方も出たが、業界関係者は再放送には出演者側の許諾が必要という単純な理由だと説明したと報じられた。

一方、2026年のNetflix配信開始はXで大きなバズとなり、「推し回」や豆知識の投稿が連日飛び交った。

余談[編集]

  • 田村正和が撮影で乗っていた自転車は今も大切に保管されているとされる。
  • さんまはロケ先への移動で田村を1時間半も待たせてしまったが、田村は責めるどころか礼を述べたという。
  • 第1シーズンのタイトルは『警部補・古畑任三郎』で、「警部補」が取れたのは第2シーズンから。万年警部補という設定は最後まで変わらなかった。
  • 劇中で古畑が持ち出す「赤い洗面器の男」の小話は、肝心のオチが最後まで明かされない。ファンの間では永遠の謎として語り継がれている。
  • 2021年の訃報の際、俳優の黒沢年雄は、新幹線で3時間同じ姿勢を崩さなかった田村の姿に驚いたという思い出をブログでつづった。
  • 古畑と『刑事コロンボ』をつなぐ話として、田村はかつてニューヨークで撮影中、コロンボ役のピーター・フォークと同じ場所に居合わせたことを面白がっていたとされる。

外部リンク[編集]

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