Discord Inc.
Discord Inc.
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Discordのロゴ(出典:ウィキメディア・コモンズ)
略称 ディスコ、ディスコード、DC
国家 アメリカ合衆国
種類 非公開会社
市場情報 非上場(2026年1月にIPOの非公開申請が報道)
業種 情報・通信業(チャット・ボイスチャットサービス)
本社所在地 アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ
設立日 2012年
設立者 ジェイソン・シトロン、スタニスラフ・ヴィシュネフスキー
代表者 フマーム・サクニーニ(CEO、2025年4月〜)
上場 非上場
主要株主 ベンチマーク・キャピタル、テンセントなど(報道ベース)
主要部門 Discord、Discord Nitro
関係する人物 ジェイソン・シトロン、スタニスラフ・ヴィシュネフスキー、フマーム・サクニーニ
代表作品 Discord
別名 旧社名 Hammer & Chisel
リンク https://discord.com/


概要[編集]

Discord(ディスコード)とは、アメリカ合衆国のDiscord Inc.が運営する、テキストチャット・ボイスチャット・ビデオ通話・画面共有を一体化したコミュニケーションサービスである。もともとはオンラインゲームのプレイヤー向けボイスチャットとして2015年に登場し、現在ではゲームに限らず、趣味・ファン・学習など「コミュニティの溜まり場」として月間2億人規模に使われている。

詳細[編集]

誕生の経緯[編集]

Discordを構想したのは、ジェイソン・シトロン(Jason Citron)とスタニスラフ・ヴィシュネフスキー(Stanislav Vishnevskiy)の2人である。シトロンは以前、モバイルゲーム向けのソーシャルネットワーク「OpenFeint」を創業し、2011年に日本のグリーへ1億400万ドルで売却した経歴を持つ。その後2012年にゲーム開発スタジオHammer & Chiselを設立し、2014年にモバイル向けMOBA『Fates Forever』をリリースしたが、商業的には成功しなかった。

シトロンによれば、『ファイナルファンタジーXIV』や『リーグ・オブ・レジェンド』を遊ぶ中で、既存のVoIPソフトは設定が面倒で動作も重く、仲間と作戦を相談しにくいと感じていたという。そこで「ゲームの動作を邪魔しない、簡単に使えるチャットサービス」を作ろうと方針転換し、2015年5月13日にDiscordを公開した。当初のドメインはdiscordapp.comだった。社名はのちにサービス名に合わせてDiscord Inc.へ変更されている。

名前の「Discord」は英語で「不和・不一致」を意味する単語である。シトロンは「響きがかっこよく、話すことに関係していて」「ゲームコミュニティの不和(discord)を解消する」という意味を込めたと説明している。

急成長と資金調達[編集]

Discordは当初、ベンチマーク・キャピタルや中国のテンセントなどから出資を受けた。利用者数は2016年1月に300万人、同年7月に1,100万人、同年12月に2,500万人と急増し、2017年末には約9,000万人に達したとされる。2018年12月には評価額20億ドルで1億5,000万ドルを調達した。

2020年のコロナ禍では、ゲーム以外の学校の授業、勉強会、友人同士の雑談などでの利用が急増した。同年6月には月間アクティブユーザー(MAU)が1億人を超え、Discordは「ゲーマー向け」から「誰でも使えるコミュニケーションの場」へとブランドの打ち出し方を変えた。2020年の売上は1億3,000万ドルと前年の約3倍に伸び、2021年8月には評価額150億ドルに到達した。

Microsoftによる買収交渉[編集]

2021年3月、ブルームバーグはMicrosoftがDiscordを100億ドル以上で買収する交渉をしていると報じた。報道では他にも複数の企業が買収に関心を示していたとされる。しかし同年4月20日、Discordは交渉を打ち切り、独立を維持する道を選んだ。一部報道では提示額は120億ドルに達していたともいわれる。

TechCrunchは、Discordが大企業の既存製品に組み込まれるよりも独自の文化を守ることを優先した可能性や、巨大IT企業の買収に対する独占禁止法上の懸念を指摘した。この時点で「次はIPO(新規株式公開)ではないか」という観測が生まれ、以後数年にわたってDiscordのIPOは業界の定番の話題となった。

CEO交代とIPO申請報道[編集]

2025年4月、創業者のジェイソン・シトロンがCEOを退任して取締役会に残り、後任として元Activision Blizzard幹部のフマーム・サクニーニ(Humam Sakhnini)がCEOに就任した。シトロンは交代について、株式公開に向けた準備の一環であるという趣旨を語っている。

2026年1月6日、ブルームバーグはDiscordが米証券取引委員会(SEC)に新規株式公開の書類を非公開で提出したと報じた。主幹事はゴールドマン・サックスとJPモルガンとされ、Discordは2025年12月時点で月間2億人以上のユーザーがいるとした。TechCrunchなどは上場が早ければ2026年3月にもありうると伝えたが、2026年9月末時点では上場は実現していない。セカンダリー市場での評価額は2021年のピークより下がっているとの報道もある。

サービスの仕組み[編集]

サーバーとチャンネル[編集]

Discordの基本単位はサーバー(内部的には「ギルド」と呼ばれる)である。サーバーは誰でも無料で作成でき、その中に話題ごとのチャンネルを作る。チャンネルにはテキストで会話する「テキストチャンネル」と、入るだけで常時つながる「ボイスチャンネル」がある。ボイスチャンネルは「部屋に入れば誰かがいて、出入り自由」という感覚で使えるのが特徴で、電話のように相手を呼び出す必要がない。

サーバー内のメンバーにはロール(役職)を付与でき、ロールごとに閲覧・発言できるチャンネルや管理権限を細かく設定できる。この仕組みにより、数人の友人グループから数十万人規模の公式コミュニティまで同じ仕組みで運営できる。サーバーとは別に、個人間のダイレクトメッセージ(DM)やグループDMもある。

機能の拡張[編集]

サービス開始後、Discordは次々と機能を追加してきた。

  • 画面共有・配信機能「Go Live」(ゲーム画面や作業画面をボイスチャンネル内で配信)
  • スレッド(2021年8月)
  • フォーラムチャンネル(2022年9月)
  • メディアチャンネル(2023年6月)
  • 認証済みサーバー(ゲーム会社・アーティスト等の公式サーバー向け)
  • Bot(ボット)とアプリ:外部開発者がAPIを使って自動応答、音楽再生、ロール付与、翻訳などを行うボットを作れる。サーバー運営の自動化に欠かせない存在
  • ノイズ抑制(2020年7月にKrisp社の技術を導入)

2025年5月には音声・ビデオ通話のエンドツーエンド暗号化が導入された(テキストメッセージは対象外)。

ユーザー名の変更[編集]

Discordではかつて「名前#1234」のように、名前の後ろに4桁の識別番号(ディスクリミネーター)を付ける方式でユーザーを区別していた。2023年5月からこれを廃止し、一意のハンドル名方式へ移行した。移行は登録の古いユーザーやNitro会員、認証済みサーバーの所有者などから順に進められたが、「なりすましが起きやすくなる」などの批判もあった。

技術面[編集]

クライアントはElectron(デスクトップ)とReact Native(モバイル)、サーバー側はElixir・Python・Rust・C++などで構築されている。メッセージの保存先はMongoDBからApache Cassandra、さらにScyllaDBへと移行しており、この過程を解説したエンジニアリングブログは技術者の間でもよく読まれている。インフラにはGoogle Cloudが使われているとされる。

Nitroと収益モデル[編集]

Discordは広告を主な収益源にしておらず、Discord Nitroと呼ばれる有料サブスクリプションと、サーバーを強化する課金が中心である。

プラン 開始 米国価格(月額) 主な特典
Nitro Classic 2017年1月 4.99ドル アニメーションアバター、カスタム絵文字など(現在は新規受付終了)
Nitro 2018年10月(現行形態) 9.99ドル 大容量アップロード、高画質配信、サーバーブースト2つなど
Nitro Basic 2022年10月 2.99ドル カスタム絵文字、アップロード上限拡大など一部特典
サーバーブースト 2019年6月 1ブースト4.99ドル サーバー全体の音質、絵文字枠、配信画質などを強化

日本では円建て価格が設定されており、Nitro Basic開始時の価格は月額350円、同時期のNitroは月額1,050円と報じられた。その後、為替などを背景に円建て価格は改定されている。

Nitro以外には、アバターの装飾やプロフィールのテーマを単品で買える「ショップ」(2023年10月開始)がある。スタンプ(ステッカー)は一時期販売されていたが、2023年5月に購入制を廃止して無料化し、購入者には返金が行われた。2026年5月には、Nitro会員向けにXbox Game Pass Starter Editionの特典が追加されたことが報じられている。

有料会員の割合は月間アクティブユーザーの一部にとどまるとみられ、IPOに向けては「1ユーザーあたりの収益」と黒字化の道筋が焦点になると指摘されている。

日本での普及[編集]

ゲーマーから学生へ[編集]

日本でもDiscordは当初、PCゲーマーの間で「ボイスチャットツール」として広まった。Steamで遊ぶPCゲームや、FPS・バトルロイヤルゲーム、MMORPGのギルド、eスポーツチームの連絡手段として定着し、それまで使われていたSkypeなどを置き換えていった。

その後、利用は若年層全体へと広がった。東京工科大学が2022年に全学部の学生1,358人を対象に行った調査では、Discordを利用している男子学生は53.5%と前年度から8.0ポイント増え、男子学生の半数以上が使っているという結果が出た。友人とゲームをしながら通話する、オンラインで勉強会をするといった使い方が一般化している。

PlayStationとの連携[編集]

2021年にはソニー・インタラクティブエンタテインメントがDiscordとの提携と出資を発表した。2023年3月には全てのPS5ユーザーがDiscordのボイスチャットを利用できるようになり、2024年6月にはPS5本体から直接Discordのボイスチャットに参加できる機能が追加された。これにより、PCとPS5のプレイヤーが同じボイスチャンネルで話すことが容易になった。

VTuber・配信者界隈[編集]

VTuberやゲーム実況者、配信者の間でも、Discordは欠かせないツールになっている。配信者同士がコラボ配信やゲーム大会の打ち合わせにボイスチャンネルを使うほか、ファン向けの「ファンサーバー」「ファンDiscord」を開設して、配信告知やファン同士の交流の場にする例も多い。ホロライブやにじさんじなどの企業勢から個人勢まで、複数人が参加するゲーム企画では、配信画面にDiscordの通話画面や参加者アイコンが映り込むことも珍しくない。

同人・創作界隈[編集]

同人誌やアニメファンアート、ゲームMOD、音楽制作などの創作コミュニティでもDiscordはよく使われる。合同誌の編集連絡、コミックマーケットなどの即売会に向けた打ち合わせ、作業通話(作業中に通話をつなぎっぱなしにする習慣)の場として利用されるほか、PatreonやFantiaなど支援サイトと連携して、支援者限定のDiscordサーバーを用意するクリエイターもいる。

事件・規制・トラブル[編集]

過激主義・犯罪への利用[編集]

Discordはサーバーが招待制で外部から見えにくいことから、過激な集団や犯罪に利用されたとして何度も報道されてきた。

  • 2017年8月、米バージニア州シャーロッツビルの白人至上主義者集会の準備にDiscordのサーバーが使われていたことが判明し、Discordは関連サーバーとアカウントを削除した。
  • 2021年1月の米連邦議会議事堂襲撃事件後、Discordは暴力を煽るフォーラムと関係の深い親トランプ系サーバーを削除した。
  • 2023年、米国の機密文書が『Minecraft』関連のDiscordサーバーに投稿され、近年最大級の情報漏えい事件の一つとして報じられた。
  • 2024年3月、複数の報道機関の共同調査で、若年層を狙う犯罪集団がDiscordを含むプラットフォームで活動していたことが報じられ、Discordは関連する3万4,000以上のアカウントを削除したとされる。
  • 2025年9月の米国の保守派活動家銃撃事件では、容疑者がDiscordのコミュニティ内で犯行を告白したと報じられ、CEOのサクニーニが米下院監視・政府改革委員会に証言を求められた。

各国でのブロック[編集]

2024年10月8日、ロシアの通信規制当局ロスコムナゾールはDiscordへのアクセスを遮断した。違法とされる投稿の削除要求に応じなかったことなどが理由とされる。同日、トルコも国内での事件を受けてDiscordへのアクセスを遮断した。中国ではグレート・ファイアウォールによって以前から利用できない。

2025年の情報漏えい[編集]

2025年10月3日、Discordは第三者のカスタマーサポート委託先が不正アクセスを受け、ユーザー情報が流出したことを公表した。流出した可能性があるのは、サポートに問い合わせたユーザーの氏名、メールアドレス、Discordのユーザー名、IPアドレス、問い合わせ内容などで、Discordは年齢確認のために提出された政府発行の身分証明書の画像が約7万人分含まれていた可能性があると説明した。

攻撃を名乗るハッカー集団はDiscordに身代金を要求し、さらに大規模なデータを盗んだと主張したが、Discordは自社の内部システムへの侵入はなかったとしている。委託先として名前が挙がったオランダの5CA社は「当社のシステムは関与しておらず、このクライアントの身分証を扱ったこともない」と関与を否定した。この事件は、後述する年齢確認の義務化に対する反発を強める一因になった。

なお、2022年11月にはフランスのデータ保護当局CNILから、パスワード要件の不備などGDPR違反を理由に80万ユーロの制裁金を科されている。

年齢確認の強化[編集]

英国のオンライン安全法やオーストラリアの法改正を受けて、Discordは2025年4月から英国・オーストラリアで顔スキャンや身分証による年齢確認を導入し、英国では同年7月までに全ユーザーが対象となった。

2026年2月、Discordは全世界で全アカウントを「10代向け設定」をデフォルトにし、成人向けサーバーなどのフル機能を使うには年齢確認を求める方針を発表し、3月初旬からの導入を予告した。しかし前年の情報漏えいもあってユーザーから強い反発を受け、2月24日に導入を2026年後半へ延期すると発表した。CTOのスタニスラフ・ヴィシュネフスキーは「9割以上のユーザーには変化がない」と説明し、アカウントの利用期間や支払い履歴などの既存データから年齢を推定する仕組み、クレジットカードによる確認手段の追加、委託先の開示などを約束した。

延期された年齢確認は2026年9月23日から全世界で順次導入された。機械学習でアカウントを「成人」「10代」「未確定」に分類し、未確認のユーザーは年齢制限付きのサーバー・チャンネルに入れず、フレンド以外からのメッセージは別の受信箱に振り分けられる。Discordはメッセージの内容から年齢を推定することはないとしている。導入直後の9月24日には、年齢確認を済ませた成人ユーザーが年齢制限付きサーバーに入れない、端末ごとに確認状態が食い違うといった不具合が報告され、Discordは同日中に修正したと発表した。

他サービスとの比較[編集]

サービス 主な用途 形式 収益モデル 特徴
Discord ゲーム・趣味・ファンコミュニティ サーバー+チャンネル、常設ボイスチャンネル Nitro、サーバーブースト 無料で大規模サーバーを運営可能、ボット文化
LINE 家族・友人・知人との連絡 1対1・グループトーク 広告、スタンプ、公式アカウント 日本で圧倒的な普及率、電話番号ベース
Slack 企業・チームの業務連絡 ワークスペース+チャンネル 法人向け有料プラン 業務ツール連携が豊富、無料版は履歴に制限
Twitch ゲーム実況などのライブ配信 配信+チャット サブスク、Bits、広告 配信の視聴が主目的。Discordと併用されることが多い
YouTube 動画・ライブ配信 動画+コメント 広告、メンバーシップ、スーパーチャット 不特定多数への発信向き
X (SNS) 公開の短文投稿 タイムライン 広告、サブスク 公開の場。Discordは閉じた場という対比

Slackと画面構成が似ていることから「ゲーマー版Slack」と呼ばれることもあるが、Slackが仕事用・有料中心なのに対し、Discordは無料で人数制限がほぼなく、常設ボイスチャンネルがある点が大きく違う。LINEが「知り合いとの連絡」なのに対し、Discordは「同じ趣味の人が集まる場」として使われる傾向がある。

炎上とバズ[編集]

  • 2021年5月、ブランド刷新でロゴのマスコット(Clyde)のデザインを変更し、スローガンを「Imagine a place」に変えたところ、ユーザーから不評の声が上がった。
  • 2021年1月、ゲームストップ株騒動の最中に、個人投資家コミュニティ「WallStreetBets」のサーバーを差別的な内容を理由に削除し、ユーザーの反発を受けた。翌日には運営支援を条件に新サーバーが認められた。
  • 2023年のユーザー名変更、2026年の年齢確認方針発表はいずれも大きな反発を招き、特に年齢確認では代替サービスとしてオープンソースのチャットアプリ「Stoat」などに注目が集まった。
  • 2024年のエイプリルフール企画では、YouTubeに投稿した動画が一時的に24時間再生数の記録を塗り替えたように表示され話題になったが、のちにYouTube側がカウントを修正した。

余談[編集]

  • 創業者ジェイソン・シトロンが以前に売却したOpenFeintの買い手は日本のグリーであり、Discordの資金の源流の一部は日本企業とのディールにあったといえる。
  • Discordのボイスチャンネルに入りっぱなしで作業する「作業通話」「もくもく会」は、日本の学生やクリエイターの間で定着した使い方とされる。
  • 2020年以降、社員数は約5倍に増えたが、2023年8月に約4%、2024年1月に約17%の人員削減を行っている。
  • メッセージ保存のデータベースは、1兆件規模のメッセージを扱うためにScyllaDBへ移行したとされ、この移行の技術記事はエンジニアの間で有名。
  • 2025年にはネパールやモロッコのZ世代による抗議運動でDiscordが組織化の場として使われ、ネパールではDiscord上の投票が暫定首相選びに影響したと報じられた。

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