| 黒木香 | |
|---|---|
| Kaoru Kuroki | |
![]() 在籍していた横浜国立大学の正門 | |
| 生年月日 | 1965年1月21日 |
| 出身地 | 神奈川県横浜市 |
| 活動期間 | 1986年 - 1990年代前半 |
| デビュー | 1986年『SMぽいの好き』(クリスタル映像) |
| 専属 | クリスタル映像 |
| 別名 | 黒木薫 |
概要[編集]
黒木香(くろき かおる、1965年1月21日 - )は、日本の元AV女優・タレント。神奈川県横浜市出身。横浜国立大学教育学部美術学科に在学中の1986年、クリスタル映像の『SMぽいの好き』でデビューし、知的なお嬢様口調で性を奔放に語るという前例のないキャラクターでAVの枠を超えたブームを巻き起こした。1980年代後半を象徴するカルチャーアイコンの一人である。
仕掛け人は当時クリスタル映像で監督をしていた村西とおる。主演作はわずか3本ながら、ゴールデンタイムのバラエティから討論番組、ドラマ、映画、著書、レコードまで活動の場を広げ、「AV女優が一般メディアの寵児になる」という現象の最初期の例としてしばしば語られる。2019年には村西を主人公にしたNetflixドラマ『全裸監督』で、黒木をモデルにした人物が描かれ、再び名前が広く知られることになった。
引退後は表舞台から離れており、2004年には引退後の消息記事や出演作の再販売をめぐって出版社などを相手取った民事訴訟を起こし、一部で勝訴が確定している。
詳細[編集]
生い立ちと大学時代[編集]
横浜市出身。東京の私立女子校である女子学院中学校・高等学校を卒業後、横浜国立大学に進学し、教育学部美術学科でイタリア美術を専攻した。本人の説明によれば、AV出演のきっかけはイタリア留学の費用を工面するためで、自ら出演を決めたとされる。
当時、女子大学生がAVに出演していること自体が世間ではほとんど知られておらず、まして大学名を明かした現役の国立大学生の出演は異例だった。この「国立大の才女」という属性が、のちのブームの重要な土台になる。
デビュー作『SMぽいの好き』[編集]
1986年10月、クリスタル映像から『SMぽいの好き』でデビューした。監督は村西とおる。当時のAVは男優が女優をリードする内容がほとんどだったが、この作品では黒木の側が監督兼男優の村西を挑発するという、主客を逆転させた演出がとられた。
作品は異例の大ヒットとなり、AVファンの外側にまで評判が広がった。続いて同年11月に『愛虐の宴』(クリスタル映像)、12月には「黒木薫」名義で『SM麗奴』(スタジオ418)に主演している。主演作はこの3本のみで、以後は助演や部分出演が中心となった。出演本数に対して文化的な影響があまりに大きいという点で、AV史の中でも特異な存在とされる。
「わたくし」口調のキャラクター[編集]
黒木の人気を決定づけたのは、そのしゃべり方だった。一人称は「わたくし」で、「わたくし思いますに……でございます」といった丁寧すぎるほどの言葉づかいを早口でまくしたて、その端々に性の話題を平然と織り交ぜる。良家の令嬢然とした語彙と内容のギャップが強烈で、腋毛を処理しないスタイルも含めて、それまでのセクシー系タレントのどの型にも当てはまらなかった。
セクシー路線の女性タレントは女性視聴者から反発を受けやすいとされていた時代に、黒木は男性ファンだけでなく女性からも支持を集めた。性について自分の言葉で語る女性像として、のちにジェンダー論やメディア論の文脈で取り上げられることもある。
テレビ・メディアでのブレイク[編集]
ブームはテレビに波及し、フジテレビの『オールナイトフジ』『新春かくし芸大会』、日本テレビの『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』、よみうりテレビの『鶴瓶上岡パペポTV』(1987年6月2日放送)、サンテレビの『おとなのえほん』などに出演した。テレビ朝日の討論番組『朝まで生テレビ!』にパネリストとして登場したこともあり、AV出身のタレントが討論番組に呼ばれること自体が話題になった。
ドラマでは、ABCテレビの「必殺スペシャル」2作(『新春 決定版!大奥、春日野局の秘密』のおえい役、『春一番 仕事人、京都へ行く』のお香役)、「土曜ワイド劇場」(1987年9月19日放送回)、TBSテレビの「ドラマ23」枠『ピンク色のメイドさん』(1989年)に出演。映画『TOKYO-POP』(1988年)にも出ている。1988年7月8日放送の『金曜ロードショー』版『エーゲ海に捧ぐ』では、チチョリーナ役の吹き替えを担当した。
著書・レコード[編集]
1987年から1988年にかけて著書を相次いで出版した。主なものは『フルーツ白書』(ワニブックス、1987年9月)、『自堕落にもほどがある』(ネスコ、1987年10月)、対談集『女と男の間には―黒木香対談集』(飛鳥新社、1987年12月)、『爆笑対談集 パブロフの犬のよだれ―欲望の条件反射』(ライトプレス出版社、1988年1月)。詩人の伊藤比呂美との共著『性の構造』(作品社、1987年)もある。
音楽面では、1987年12月16日にテイチクからミニアルバム『小娘日和』を発売。同年9月には二見書房から朗読カセットも出している。AV女優が書籍・レコード・テレビを横断して「タレント」として消費された最初期の例であり、のちの飯島愛らに続く流れの先駆けの一つにあたる。
村西とおるとの関係[編集]
村西とおるとは公私ともに近い関係にあり、恋愛関係にあったことが知られている。村西が実質的な経営者だったダイヤモンド映像の系列会社・ビックマンの取締役に名を連ね、村西が渋谷に出した高級焼肉店「香貴苑」(後に閉店)のママも務めた。
ダイヤモンド映像は松坂季実子・桜樹ルイらを擁して1980年代末のAVブームの中心となったメーカーで、黒木はその前史を象徴する存在といえる。村西と別れたのち、黒木は業界から退いた。
引退後と民事訴訟[編集]
1994年、宿泊していたホテルの2階ベランダから転落する事故があった。酒に酔っての事故とされるが、当時の週刊誌はこれを大きく取り上げた。
2004年4月、引退後の雑誌での消息記事や、出演したAV作品の再版がプライバシーおよび肖像権の侵害に当たるとして、講談社・光文社・小学館・徳間書店・双葉社の各出版社と、DVD販売会社を相手取って損害賠償などを求める民事訴訟を起こした。
報道によれば、『アサヒ芸能』の発行元である徳間書店(一審判決時点の社名は芝ホールディングス)に対しては2006年5月に一審で勝訴。『女性セブン』『週刊ポスト』の発行元である小学館に対しては、2007年4月の一審、同年11月の二審でいずれも勝訴し、損害賠償の増額を求めた黒木側の上告が2008年1月に棄却されて二審判決が確定した。引退した元AV女優が自らの過去の映像や近況報道に対して法的に争い、一定の結論を得た例として知られる。
『全裸監督』での再注目[編集]
2019年にNetflixで配信が始まったドラマ『全裸監督』は、村西とおるの半生を描いた作品で、山田孝之が村西を演じた。黒木をモデルにした人物は森田望智が演じ、デビュー作の撮影や独特の口調の再現が話題となった。配信によって、1980年代をリアルタイムで知らない世代にも黒木の名前が知られるようになった。
ドラマはあくまで実話を基にしたフィクションであり、登場人物の言動がすべて史実どおりというわけではない。
主な作品・出演[編集]
アダルトビデオ(主演)[編集]
| 発売日 | タイトル | メーカー | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1986年10月2日 | SMぽいの好き | クリスタル映像 | デビュー作 |
| 1986年11月13日 | 愛虐の宴 | クリスタル映像 | |
| 1986年12月15日 | SM麗奴 | スタジオ418 | 「黒木薫」名義 |
テレビ・映画[編集]
- オールナイトフジ(フジテレビ)
- 新春かくし芸大会(フジテレビ)
- ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!(日本テレビ)
- 鶴瓶上岡パペポTV(よみうりテレビ、1987年6月2日)
- おとなのえほん(サンテレビ)
- 朝まで生テレビ!(テレビ朝日) - パネリスト
- 必殺スペシャル・新春 決定版!大奥、春日野局の秘密(ABCテレビ) - おえい役
- 必殺スペシャル・春一番 仕事人、京都へ行く(ABCテレビ) - お香役
- 土曜ワイド劇場(ABCテレビ、1987年9月19日)
- ドラマ23「ピンク色のメイドさん」(TBSテレビ、1989年)
- 映画『TOKYO-POP』(1988年)
- 金曜ロードショー『エーゲ海に捧ぐ』(日本テレビ、1988年7月8日) - チチョリーナ役(吹き替え)
書籍・音楽[編集]
- 『フルーツ白書』(ワニブックス、1987年)
- 『自堕落にもほどがある』(ネスコ、1987年)
- 『女と男の間には―黒木香対談集』(飛鳥新社、1987年)
- 『爆笑対談集 パブロフの犬のよだれ―欲望の条件反射』(ライトプレス出版社、1988年)
- ミニアルバム『小娘日和』(テイチク、1987年12月16日)
よくある疑問[編集]
- 黒木香は何者?
- 1986年にデビューした元AV女優・タレント。横浜国立大学在学中にデビューし、「わたくし」口調で性を語るキャラクターで1980年代後半にテレビや雑誌を席巻した。
- デビュー作は?
- 1986年10月2日発売の『SMぽいの好き』(クリスタル映像)。監督は村西とおる。
- 出身大学は?
- 横浜国立大学教育学部美術学科でイタリア美術を専攻していたが、多忙で通学できなくなり除籍となった。出身高校は女子学院高等学校。
- 村西とおるとの関係は?
- デビュー作の監督で、のちに恋愛関係にあった。村西系の会社の取締役や、村西の焼肉店のママも務めたが、別れたのち業界を引退している。
- 『全裸監督』で黒木香を演じたのは?
- Netflixドラマ『全裸監督』(2019年〜)では、黒木をモデルにした人物を森田望智が演じた。
- 現在は?
- 引退後は表舞台に出ておらず、近況について公表された情報はない。2004年には引退後の消息記事などをめぐって出版社を提訴し、小学館との訴訟では2008年に勝訴が確定している。
- 主演作は何本?
- 主演は『SMぽいの好き』『愛虐の宴』『SM麗奴』の3本のみで、ほかは助演・部分出演である。
余談[編集]
- 主演3本という少なさに対して、テレビ出演・著書・レコードまで含めた露出量は当時のどのAV女優よりも大きかった。出演本数と知名度の比率で言えば、AV史上でも屈指の偏り方である。
- 『金曜ロードショー』でイタリアのポルノ女優出身の政治家チチョリーナの吹き替えを担当したことがある。チチョリーナもAV・ポルノ出身でメディアの寵児になった人物で、同じ時代に日伊で似た現象が起きていたことになる。
- 『朝まで生テレビ!』へのパネリスト出演は、AV出身者が「論客」として扱われた珍しい例として今も語られる。
- 2000年代に入ってからの訴訟は、AVの旧作が再編集・再販売され続ける業界構造に、出演者側から異議を申し立てた早い時期の例でもある。出演者が過去作の流通に異議を唱えられるかという問題は、2022年制定のAV出演被害防止・救済法で、出演者による契約解除や販売停止の請求という形で制度化された。
- デビュー作で女優が監督を挑発する構図は、受け身の女優像が定番だった当時のAVの文法を裏返したものだった。
