國村隼
くにむら じゅん / Jun Kunimura / 쿠니무라 준

國村隼(2019年7月、Netflixシリーズ『全裸監督』ワールドプレミアにて。撮影:マイナビニュース、出典:ウィキメディア・コモンズ、CC BY 3.0)
誕生日 1955年11月16日
年齢 70歳
出身地 大阪府大阪市(熊本県八代市生まれ)
国籍 日本
学歴 大阪府立工業高等専門学校 中退
ジャンル 映画、テレビドラマ、声優、ナレーション
活動期間 1970年代 -
代表作 『ブラック・レイン』『キル・ビル』『アウトレイジ』『哭声/コクソン』『シン・ゴジラ』『全裸監督』


概要[編集]

國村隼(くにむら じゅん)とは、大阪府出身の日本の俳優である。ヤクザの親分から政府高官、正体不明の怪人まで演じ分ける名脇役で、韓国映画『哭声/コクソン』により青龍映画賞の男優助演賞と人気スター賞を外国人として初めて受賞した。

詳細[編集]

大阪育ちのクルマ好き少年、演劇の道へ[編集]

1955年11月16日、熊本県八代市生まれ。生後まもなく兵庫県尼崎市に移り、その後は大阪市で育った生粋の関西人である。子どもの頃からクルマが大好きで、エンジニアを目指して大阪府立工業高等専門学校(高専)に進学したが、途中で演劇の世界に心が傾き中退。大阪放送劇団の附属研究所に入って芝居の基礎を叩き込まれた。舞台『西向く侍』で初舞台を踏み、関西の放送ドラマなどで経験を積んでいった。工学系の進路を捨ててまで役者を選んだという経歴は、後の「職人肌」のイメージにもどこか通じている。

『ガキ帝国』で映画デビュー[編集]

映画俳優としての本格的なスタートは1981年、井筒和幸監督の『ガキ帝国』。大阪の不良少年たちを描いたこの青春映画で、國村は不良グループのリーダー格を演じた。関西弁がネイティブであることもあって、当時の大阪の空気をそのまままとったような存在感を見せている。ここから國村は、関西の映画・ドラマを足場にしつつ、徐々に全国区の作品へと活躍の場を広げていくことになる。下積み時代はNHKのドラマなどに本名名義で出演していたこともあるとされ、芸名の「國村隼」はその後に定着したものである。

ハリウッドと香港で磨かれた「顔」[編集]

大きな転機は1989年、リドリー・スコット監督のハリウッド映画『ブラック・レイン』への出演だった。マイケル・ダグラス、高倉健、そして松田優作が出演した大阪ロケの大作で、國村はヤクザ役を演じた。本人はこの現場で、スコット監督と松田優作から映画における演技表現について多くを学んだと振り返っており、松田優作は國村にとって大きな影響を受けた俳優の一人とされる。『ブラック・レイン』をきっかけに香港映画界からも声がかかり、ジョン・ウー監督の『ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌』(1992年)にも出演。茶楼での銃撃戦シーンに登場する殺し屋役で、香港ノワールの歴史的な名場面に名を刻んだ。

主な出演作と役どころ[編集]

日本映画:怪演の宝庫[編集]

1997年、河瀨直美監督の『萌の朱雀』で主演格の父親役を務め、同作は第50回カンヌ国際映画祭でカメラ・ドール(新人監督賞)を受賞した。その後は三池崇史監督の『オーディション』(2000年)、『殺し屋1』(2001年)など、海外でカルト的人気を誇る作品にも出演。2010年には北野武監督の『アウトレイジ』で池元組の組長・池元を演じ、腹の読めないヤクザの親分像で強烈な印象を残した。

2014〜2015年の実写版『寄生獣』二部作では刑事の平間、2015年の実写版『進撃の巨人』ではクバル役を担当。2016年の『シン・ゴジラ』(総監督:庵野秀明)では統合幕僚長・財前正夫を演じ、ゴジラ迎撃の最前線で冷静に指揮をとる自衛隊トップ役が話題になった。同じ2016年から始まった映画『ちはやふる』シリーズでは、主人公たちを見守るかるた会の原田先生役で、それまでの「怖い國村」とは別の温かい魅力を見せている。

海外作品:タランティーノからエメリッヒまで[編集]

國村のフィルモグラフィーの面白さは、国境をまったく気にしないところにある。2003年のクエンティン・タランティーノ監督『キル・ビル Vol.1』では、ルーシー・リュー演じるオーレン・イシイが仕切る東京ヤクザ組織の会合で、彼女の出自を侮辱して首をはねられるボス・タナカを演じた。出番は決して長くないが、日本語の啖呵とあの最期は世界中の映画ファンの脳裏に焼きついている。

2019年にはローランド・エメリッヒ監督の戦争映画『ミッドウェイ』で、日本海軍の南雲忠一中将役を務めた。ハリウッド、香港、韓国と、ここまで多様な国のメジャー作品に出演している日本人俳優は多くない。本人も海外の仕事について「違う人たちと映画を作るのは楽しい」「海外の作品が増えれば、それだけ機会が広がるということ」という趣旨の発言をしており、国籍よりも作品と人を見て仕事を選んでいる様子がうかがえる。

声の仕事:ジブリ作品への参加[編集]

声優としても活躍しており、宮崎駿監督の『風立ちぬ』(2013年)では主人公・堀越二郎が勤める三菱の上司・服部を担当した。さらに同監督の『君たちはどう生きるか』(2023年)では、インコたちの王「インコ大王」の声を演じている。低く響く声と独特の間合いは、アニメーションでもしっかりと存在感を放っている。ナレーションの仕事も多く、渋い声質を活かしたドキュメンタリーやCMでもおなじみである。

テレビドラマ:大河から配信まで[編集]

テレビでも出演作は膨大。大河ドラマでは『平清盛』(2012年)で藤原忠実、『鎌倉殿の13人』(2022年)で平家方の武将・大庭景親を演じ、NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』では陸軍の川上操六役を務めた。2018年のフジテレビ系『SUITS/スーツ』、2021年のTBS日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』では地震学者の世良徹教授、2023年の『トリリオンゲーム』では大企業を率いる黒龍一真など、近年は「大物」「権力者」ポジションで物語を締める役が多い。

配信ドラマでは、Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督』(2019年・2021年)に出演。2019年7月に都内で行われた同作のワールドプレミアにも登壇しており、このときの写真がこの記事の冒頭に使われている。

韓国映画との縁[編集]

『哭声/コクソン』の「山の中の男」[編集]

國村隼の名前を韓国で一躍有名にしたのが、2016年公開のナ・ホンジン監督作『哭声/コクソン』である。韓国の田舎町・谷城(コクソン)で起きる連続怪死事件の陰に、山奥でひとり暮らす謎の日本人がいる――という物語で、國村はその「よそ者」を演じた。監督はそれまでの國村の出演作を見て起用を決め、脚本と自作のDVDを日本に送ったうえで、自ら来日して出演を口説いたという。

撮影は2014年夏から2015年冬まで続く長丁場で、國村は裸で滝に打たれたり、生肉にかぶりついたりと、文字どおり体を張った。本人は監督を「才能が人間の形をしているような人」と評しつつ、テイクを重ね続ける現場について「ワガママ小僧」と冗談めかして語り、生肉を食べるシーンでは「もう、あかん! 体力的に無理」と自分からストップをかけたというエピソードも明かしている。ちなみに監督が韓国語でイライラをぶつけていても、韓国語がよく分からなかったので気にならずに済んだ、とも笑って振り返っている。

「カリスマ」で言葉の壁を越える[編集]

劇中の國村はほとんど言葉で説明しない。韓国語のセリフ量が少ないぶん、監督からは「カリスマ」であってほしいという注文があったという。共演のクァク・ドウォンが演じる警官ジョングとの対決シーンでも、國村はあえて反応を見せない芝居を選び、それがジョングの焦燥と恐怖をさらに際立たせた。ナ・ホンジン監督は國村の演技について、撮影日を待ち焦がれていたほどだと絶賛し、想定以上のものを毎回出してくれたと語っている。國村自身は役柄を、共同体がよそ者を排除する心理が生んだ怪物のような存在として捉えていたとされる。

青龍映画賞で外国人初のダブル受賞[編集]

同作は韓国で約687万人を動員する大ヒットとなり、2016年11月の第37回青龍映画賞で國村は男優助演賞と人気スター賞の二冠に輝いた。青龍映画賞の歴史上、外国人俳優の受賞は初めて。人気スター賞は通常、観客投票などで人気アイドルやスター俳優が選ばれることの多い賞で、日本人のベテラン俳優が選ばれたことは、彼が韓国の観客に与えたインパクトの大きさを物語っている。

受賞時のメッセージでは「韓国で初めて撮った映画でこんなふうに賞をもらえるとは思っていませんでした」と喜びを語り、韓国の現場について「監督を頂点として俳優やスタッフがプライドを持って映画を作っていました」と称えた。授賞式では、以前から敬愛しているソン・ガンホの名前を挙げ、『殺人の追憶』の彼を尊敬していると語ったことも韓国メディアで話題になった。日本で韓国公開の大ヒットを聞いていたものの、まさか賞までもらえるとは思っていなかったというのが本人の率直な感想である。

『犯罪都市 NO WAY OUT』で再び韓国へ[編集]

『哭声』から7年後、國村は再び韓国映画の大作に出演する。マ・ドンソク主演の人気アクションシリーズ第3作『犯罪都市 NO WAY OUT』(韓国2023年5月公開、日本2024年公開)で、日本の暴力団・一条組の会長を演じた。同作は韓国で前作に続き観客動員1000万人を突破する大ヒットとなり、シリーズで初めて外国人俳優が悪役側の重要ポジションに起用された作品でもある。日本人俳優では青木崇高も共演している。『哭声』の「よそ者」から『犯罪都市』のヤクザの親分まで、韓国の観客にとって國村は「日本から来るただならぬ男」の代名詞になりつつある。

演技スタイル[編集]

「依り代」としての俳優[編集]

國村はインタビューで、俳優を「依り代の被写体」のようなものだと語っている。何かを説明しようと芝居をするよりも、カメラのフレームの中に役として確かに存在することが大事だ、という考え方である。役作りについても、身体的なトレーニングよりも「覚悟を決めていくだけ」とし、ひたすら台本を読み込んで準備するタイプだという。また、たとえ観客の反応がその場で見えない映画の現場でも、常に「お客さん」の存在を意識していると話している。

悪役と善人のあいだ[編集]

ヤクザの組長、軍の司令官、謎の怪人と、強面の役が目立つ國村だが、『ちはやふる』の原田先生のように懐の深い大人も得意とする。顔の筋肉がわずかに動くだけで「怖い人」と「いい人」が一瞬で入れ替わる表情の振れ幅は、『哭声』のナ・ホンジン監督が「瞬間ごとに表情が変わる」と惚れ込んだ部分でもある。台詞の多い説明役よりも、黙って立っているだけで場の空気を変える役でこそ真価を発揮する俳優といえる。

近年の活動[編集]

2020年代に入ってからも勢いは衰えない。2023年には『君たちはどう生きるか』のインコ大王、2024年にはApple TV+のドラマ『サニー』に出演するなど海外配信作品にも参加。2026年3月13日公開の実写映画『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』(主演:山﨑賢人)では、鯉登音之進の父で薩摩出身の海軍少将・鯉登平二を演じる。2025年11月に映画公式X(@kamuy_movie)がキャストを解禁した際には、原作ファンにはおなじみのセリフ「もすッ」を添えたビジュアルが公開され、「再現度が高い」と話題になった。この「もすッ」は監督や原作者の野田サトルと相談しながら作り上げたものだという。國村本人は作品について「北の雪景色、熊の咆哮、戦争とお宝をめぐって競い合う人間たち、なんと美しくも恐ろしい世界」という趣旨のコメントを寄せ、ようやくその世界をのぞくことができたと喜んでいる。

さらに、Disney+で配信される『SHOGUN 将軍』シーズン2への出演も報じられており、70歳を迎えてもなお、国内外の大作から声がかかり続けている。

余談[編集]

  • 大のクルマ好きとして知られ、ポルシェなどのクラシックカーを愛車にしていたことが報じられている。そもそも高専に進んだのもクルマ好きが高じてのことだった。
  • 趣味は渓流でのフライフィッシング、アーチェリー、サッカー、バイクなど多彩。好物は大阪人らしく「粉もん」。
  • 『哭声』の韓国公開後、韓国のショッピングモールでファンに取り囲まれ、劇中の役柄から「悪魔」と呼ばれながら熱烈に歓迎されたというエピソードを本人が語っている。
  • ソン・ガンホの記事でも触れられているとおり、國村は以前から韓国映画のファンで、ソン・ガンホを尊敬していることを公言している。
  • 2018年の映画『パンク侍、斬られて候』にも出演しており、同作で國村と豊川悦司が着用した衣装の写真がウィキメディア・コモンズに収められている。
映画『パンク侍、斬られて候』(2018年)で國村隼と豊川悦司が着用した衣装(撮影:Tokumeigakarinoaoshima、出典:ウィキメディア・コモンズ、CC BY-SA 4.0)

外部リンク[編集]

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