なりすましの鼠
들쥐(英題:Mousetrap)
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チェ・ムンジェと“鼠”の一人二役を演じたリュ・ジュンヨル(2025年撮影、出典:ウィキメディア・コモンズ、CC BY-SA 4.0)
ジャンル ミステリー、サスペンス、犯罪、ピカレスク
放送時間 2026年8月28日 全話一挙配信
話数 全10話
放送国家 韓国
言語 韓国語
配信 Netflix(全世界独占)
制作
演出 キム・ホンソン
脚本 イ・ジェゴン
出演者 リュ・ジュンヨル、ソル・ギョング、イ・ギュヒョン、パク・ユノ、ム・ジンソン
その他
原作 ルドヴィコ『들쥐』(カカオウェブトゥーン、2017年 - 2020年連載)


なりすましの鼠(なりすましのねずみ、原題:들쥐、英題:Mousetrap)とは、2026年8月28日からNetflixで全世界独占配信されている韓国のミステリー犯罪スリラードラマである。全10話。ある日突然、名前・顔・財産・人生のすべてを謎の存在“鼠(ねずみ)”に奪われた覆面作家チェ・ムンジェが、3年間取り立てを続けてきた冷酷な高利貸しノジャと手を組み、“鼠”の正体を追い詰めていく姿を描く。主演のリュ・ジュンヨルは本人と“鼠”の一人二役に初挑戦し、ソル・ギョングとの初共演も話題になった。配信2週目には日本のNetflix週間ランキング(番組)で3位に初登場し、グローバルランキング(非英語番組部門)で1位を獲得した。

概要[編集]

ひとことで言えば、「自分の人生をまるごと乗っ取られた男の逆襲」を描いた本格ミステリーである。原作は、ルドヴィコ(Ludovico)が2017年2月から2020年4月までカカオのウェブトゥーンプラットフォームで連載した同名作品『들쥐(野ネズミ)』。制作段階の仮題は「The Rat」で、Netflixでの英題は「Mousetrap(ネズミ捕り)」となった。

演出を手がけるのは、『ボイス〜112の奇跡〜』や『客 -ザ・ゲスト-』などサスペンス・スリラー畑で実績を重ねてきたキム・ホンソン監督。脚本はイ・ジェゴンが担当した。全10話が配信初日に一挙公開される“イッキ見”前提の作品で、心理サスペンスの前半から、格闘・カーチェイス・銃撃戦が続く後半のアクションまで、ジャンルの振れ幅が大きいのも特徴である。

タイトルの“鼠”は、韓国に古くから伝わる民話「爪を食べた野ネズミ」がモチーフになっている。人が捨てた爪を食べたネズミがその人になりすまし、家を乗っ取ってしまうという寓話で、本作はこの「爪」を、指紋認証・パスワード・住民登録番号といった現代のデジタルな身分証明に置き換えた。「データが消えた瞬間、自分が自分であることを証明できなくなる」という現代的な恐怖が、物語の出発点になっている。

詳細[編集]

あらすじ[編集]

高校時代に両親を心中事件で亡くしたトラウマから重いパニック障害を抱える覆面作家チェ・ムンジェ(リュ・ジュンヨル)は、作家として経済的な成功を収めながら、ソウルの高級マンションの一室に3年間引きこもって暮らしていた。生活のすべては、高校の同級生スヒョン(ム・ジンソン)が代わりに契約や財産管理を引き受けることで成り立っていた。

ある日、スマートフォンの指紋認証が突然通らなくなり、電子決済もできなくなる。スヒョンとも連絡が取れなくなり、銀行口座は凍結され、気づけば自分の住むマンションまで見知らぬ他人に売却されていた。3年ぶりに外へ出たムンジェはタクシー代を払えずトラブルを起こし、警察に連行されるが、そこで指紋データも住民登録番号も、自分がチェ・ムンジェであると証明するものが何一つ残っていないことが判明する。自分の名前・顔・財産を奪った“鼠”は、本物以上に堂々と「チェ・ムンジェ」として社会生活を送り、ベストセラー作家としてカメラの前にまで立っていた。

途方に暮れるムンジェの前に現れたのが、興信所を営む高利貸しのノジャ(ソル・ギョング)である。ノジャは3年前に金を借りたまま姿を消したムンジェを追い続けてきた債権者で、車内で『般若心経』を流しながら容赦なく取り立てを行う男だった。「人生を取り戻したい」ムンジェと「金を取り戻したい」ノジャの利害が一致し、二人は不本意ながら“鼠”を追う奇妙なバディを組むことになる。

一方、東部警察署のはみ出し者の刑事パク・スニョン(イ・ギュヒョン)は、漢江で見つかった身元不明の変死体の件で、名指しの匿名のタレコミを受け取る。手紙にはノジャの関与が記されていた。スニョンは事件を追ううちに、他人の身分をまるごと入れ替える「身分洗浄」ビジネスの巨大な闇に行き着く。

主な登場人物[編集]

チェ・ムンジェ/“鼠”(演:リュ・ジュンヨル)

世間から隠れて暮らしていた天才覆面作家。ある日を境にすべてを奪われ、「なりすまし」の被害者として真相を追う。リュ・ジュンヨルは『応答せよ1988』などで知られる俳優で、本作では本物のムンジェと、彼になりすました“鼠”の一人二役を演じた。

ノジャ(演:ソル・ギョング)

興信所を営む冷酷な高利貸し。依頼を受けて情報を探る私立探偵のような仕事もしている。貸した金を取り戻すためムンジェと手を組むが、次第に疑似的な父子のような関係になっていく。何度致命傷を負っても執念で蘇る不死身ぶりが、作品の名物になっている。

パク・スニョン(演:イ・ギュヒョン)

東部警察署の刑事。上司にも舌打ちして口答えするはみ出し者だが、誰よりも鼻が利く。捜査の過程で自身と叔父にまつわる過去の真実と向き合い、離婚調停中の妻との関係も見つめ直していく。

ソ・ユミン(演:パク・ユノ)

第4話から登場する、ムンジェの大学時代の同級生で文学サークルの仲間。物語の「本物と偽物」の構図を大きく揺さぶる存在となる。

スヒョン(演:ム・ジンソン)

ムンジェの高校の同級生。引きこもるムンジェに代わって住居や通信の契約、財産管理を引き受けていたが、突然姿を消す。

ソン・ダウン(演:イ・チェユ)

“鼠”の側で動く人物の一人。

制作と演出[編集]

キム・ホンソン監督は、二人のムンジェを映像でも描き分けた。本物のムンジェを映す際には広角レンズを多用して閉塞感と歪みを強調し、“鼠”を映す際には望遠レンズで冷徹で客観的な視点を際立たせたと韓国メディアのインタビューで説明している。髪型や服装の違いに加え、“鼠”を演じる際の瞳の斑点(コンタクトレンズ)や声帯手術の痕、耳の形の微細な特殊メイクといった物理的な仕掛けも施された。

リュ・ジュンヨルは、長年の引きこもりと薬への依存で背中を丸め、視線が泳ぐ本物のムンジェと、背筋を伸ばし自信に満ちた視線で他人を射抜く“鼠”を、姿勢・声・目線だけで演じ分けた。刑事スニョン役のイ・ギュヒョンは役作りのために急激な減量を行い、獲物を追う猟犬のような鋭さをキャラクターに取り込んだ。劇中にはテクノミュージックが多用され、2000年代の犯罪スリラー映画を思わせるネオノワール調の色彩と照明も特徴になっている。

結末(ネタバレ注意)[編集]

物語の後半、「何が本物で何が偽物か」という問いは幾重にも反転していく。スヒョンの失踪や身分洗浄組織の存在、ソ・ユミンの過去が明らかになるにつれ、序盤で被害者として描かれていたムンジェ自身が抱えてきた「嘘」も浮かび上がる。第9話はほぼ一話を通じて、山中の廃墟にムンジェ・ノジャ・身分洗浄組織・警察・地元の勢力が次々と集結する大規模なアクション回になっている。

最終第10話で、ムンジェは島へ向かうフェリーの中で“鼠”と対決し、相手を海へ落として勝利する。しかし彼が選んだのは、身分を証明する手段のない「本物のチェ・ムンジェ」に戻ることではなく、“鼠”が築き上げた成功者としての「チェ・ムンジェ」の人生を引き継ぐ道だった。“鼠”は死後もムンジェに影響を及ぼし続け、ムンジェは“鼠”が遺した新作原稿を書き直さなければならなくなる。そのまま出版されれば、彼のしてきたことがすべて世間に知れ渡るよう仕組まれていたためである。ラストシーンでは、ドアの覗き穴越しに、ノジャが事前に警告していた光景をムンジェが目にするところで幕を閉じ、明確な結末は描かれない。ノジャがムンジェに投げかけた「クソみたいな人生でも本物として生きろ」という言葉が、物語全体のテーマとして重く残る終わり方になっている。

評価と反響[編集]

配信成績[編集]

配信開始直後の集計週(2026年8月31日〜9月6日)に、日本のNetflix週間視聴ランキング(番組部門)で3位に初登場した。同じ週のグローバルランキング(非英語番組部門)では1位を獲得している。

批評[編集]

海外のレビューでは、リュ・ジュンヨルの一人二役と、ソル・ギョングの存在感が高く評価された。特にノジャについては「出番はリュ・ジュンヨルより少ないのに、画面をさらっていく」と評するレビューが複数ある。一方で、前半、とくに序盤のエピソードのテンポの遅さを弱点に挙げる声も多く、「6話で十分だった」という感想も見られた。物語の論理より肉体的なアクションを優先した第9話は、突っ込みどころの多さと映像的な迫力の両面から、最も賛否が分かれる回になっている。

日本の映画レビューサイトでは、デジタル社会の脆弱性を「バグ」という言葉で表した序盤の演出や、ノジャとムンジェの関係を老練な年長者と未熟な若者の「疑似父子関係」として読み解く評が見られる。ソル・ギョングはこれまでも『名もなき野良犬の輪舞』のイム・シワンなど若手俳優との共演で強いケミストリーを生んできたことから、今作でもその系譜が指摘されている。

視聴ガイド[編集]

どこで見れる?[編集]

Netflixの全世界独占配信作品で、日本でもNetflixで視聴できる。

全何話?[編集]

全10話。2026年8月28日に全話が一挙に配信された。

原作はある?[編集]

ある。ルドヴィコのウェブトゥーン『들쥐』(2017年2月〜2020年4月、カカオで連載)が原作で、韓国の民話「爪を食べた野ネズミ」をモチーフにしている。

“鼠”の正体は?(ネタバレ注意)[編集]

“鼠”はムンジェと同じ顔を持つ人物で、リュ・ジュンヨルが一人二役で演じている。物語が進むにつれ、ムンジェ・“鼠”・ソ・ユミンの三者の間で「名前」「顔」「物語」が誰のものだったのかが入れ替わっていく構成になっている。

シーズン2はある?[編集]

2026年9月時点で、続編は発表されていない。物語は全10話でひと区切りついているが、ラストシーンは余韻を残す形で終わっている。

似た作品は?[編集]

作家の狂気を描いたスリラーとしては同じNetflixの『最後列からの声』、復讐劇としては『鉄槌教師』や殺し屋ものの『殺し屋たちの店2』などがある。同じ時期のNetflix韓国作品としては、青春音楽群像劇『フォーハンズ 〜2人のソナタ〜』、ラブコメの『恋は飴模様』、恋愛群像劇『君じゃない別の恋愛』、軍隊ブラックコメディ『新兵4:サボタージュ』、9月17日配信開始の『ダウンタイム』などが並んだ。

余談[編集]

  • ノジャが車内で『般若心経』を流しながら取り立てを行う場面や、「電子記録は改ざんできる。むしろ紙の時代の方がよかった」という台詞は、デジタル社会の脆さを象徴するシーンとして感想でよく引用されている。
  • 最終話の“二人のムンジェ”の格闘シーンでは、服装から見て途中で立場が入れ替わっているのではないか、と指摘する視聴者のコメントも見られた。
  • ソル・ギョングはこの作品がリュ・ジュンヨルとの初共演。両者の世代差がそのまま「取り立て屋」と「被害者」の奇妙な同盟に重なっている。
  • 原作ウェブトゥーンの題名『들쥐』は直訳すると「野ネズミ」。日本語題はこれを「なりすまし」という作品の核に言い換えたものである。

外部リンク[編集]

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