| 林田球 Q Hayashida | |
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![]() 代表作『ドロヘドロ』のロゴ(出典:ウィキメディア・コモンズ「Dorohedoro logo.png」) | |
| 本名 | 非公表 |
| 誕生日 | 1977年 |
| 出身地 | 東京都 |
| 国籍 | 日本 |
| 学歴 |
東京都立芸術高等学校美術科卒業 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業 |
| 職業 | 漫画家、イラストレーター |
| 活動期間 | 1997年 - |
| 代表的な実績 |
『ドロヘドロ』(2000年 - 2018年、全23巻) 『大ダーク』(2019年 - ) |
| 受賞 | アフタヌーン四季賞 準入選(1997年、『ソファーちゃん』) |
| 関連活動 | ゲーム『シャドウ・オブ・ザ・ダムド』のボスキャラクターデザイン、小説の表紙・挿絵 |
| その他 | 顔出し・SNSでの発信は行っていない。自画像は球体 |
| リンク | TVアニメ『ドロヘドロ』公式サイト |
概要[編集]
林田球(はやしだ きゅう)とは、日本の漫画家・イラストレーターである。東京都出身、1977年生まれ。足かけ18年にわたって連載されたダーク・ファンタジー『ドロヘドロ』の作者として知られ、現在はゲッサンで宇宙ブラック・コメディ『大ダーク』を連載している。血と臓物が飛び散る激しいバイオレンスと、気の抜けたユーモア、そして異常なまでの描き込みが同居する唯一無二の作風が持ち味だ。
詳細[編集]
デビューまで[編集]
1977年、東京都に生まれる。東京都立芸術高等学校の美術科を経て、東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻へ進んだ。つまり漫画の専門学校ではなく、ガチの油絵畑出身という珍しい経歴の持ち主である。藝大での経験は後の作風にも色濃く表れており、大学時代の教えに従ってアイデアや構図をノートに書き溜める習慣を、『ドロヘドロ』の連載中もずっと続けていたとされる。
1997年、講談社の『月刊アフタヌーン』が主催する新人賞「アフタヌーン四季賞」の1997年秋のコンテストで、読み切り『ソファーちゃん』が準入選し、これがデビュー作となった。ソファーの中に住みついた女の子の幽霊を描いた作品で、後に四季賞の受賞作を集めたアンソロジー『四季賞クロニクル』にも収録されている。
デビュー後の1999年からは、アトラスのアクションゲーム『魔剣X』を原作とするコミカライズ『魔剣X ANOTHER』を講談社の『マガジンZ』で2001年まで連載した。ゲーム原作とはいえ、ここですでに骨太なアクションと濃い画面づくりが見られ、同作は2008年に『魔剣X ANOTHER JACK』として再刊されている。
ドロヘドロ連載[編集]
2000年、小学館の『ビッグコミックスピリッツ』増刊として創刊された『イッキ』の創刊号(2000年12月30日号)で『ドロヘドロ』の連載がスタートする。魔法使いによって頭を爬虫類に変えられ、記憶も失った男カイマンが、相棒の女性ニカイドウとともに自分に魔法をかけた魔法使いを探す――という物語で、混沌とした街「ホール」と魔法使いの世界を舞台に、殺し合いと餃子と友情が入り乱れるカルト的人気作となった。
この作品、掲載誌の変遷がとにかく波乱万丈である。イッキは2003年に『月刊IKKI』として独立創刊し、2014年11月号で休刊。すると連載は2015年創刊の『ヒバナ』へ移り、ヒバナも2017年9月号で刊行終了。最終的に『ゲッサン』2017年12月号へ移籍し、2018年10月号で完結した。4誌目のゲッサンを除き、創刊号から最終号まで通しで載り続けたという、雑誌の生き死にを見届けた漫画でもある。
単行本は小学館「IKKIコミックス」から全23巻。第1巻は2002年1月発売、最終23巻は2018年11月12日に発売され、同時にガイドブックも刊行された。連載期間は約18年。本人は後に、「とにかくどうなってもいいから好きなものを好きなだけ描こうという感じでした」と連載当時の姿勢を振り返り、18年間描き続けられたことを幸運だったと語っている。
大ダーク[編集]
『ドロヘドロ』完結から約半年後、2019年3月12日発売の『ゲッサン』4月号で新連載『大ダーク』がスタートした。舞台は広い宇宙。骨を奪えばどんな願いも叶うという噂のせいで宇宙中から命(骨)を狙われる少年ザハ=サンコが、相棒の「闇のニーモツ」アバキアンとともに刺客を返り討ちにしつつ、噂を流した者を探して旅をするブラック・コメディだ。
ところがこの新連載、誕生の経緯がかなり行き当たりばったりだったことを本人が明かしている。連載予告の締め切りが迫っても構想は白紙で、ネタ帳のスクラップブックを見返して新連載になりそうだったのが「宇宙」だけ。「もう宇宙しかない」と腹をくくり、担当編集が出した予告文「宇宙、惑星、大冒険」をそのまま採用して方向性を決めたという。編集長には、タイトル以外何も形になっていない段階で連載開始を決められていたそうだ。
もともとSFは自分には描けないと諦めていたが、好きなテーマなので何とかなると考えて挑戦。長期連載のきつさを味わった反動もあり、次は気軽に読める本格的なコメディを描きたかったと語っている。一方で、2019年1月頃に第1話のネームを始めてからも主人公の外見と性格がなかなか決まらず、何カ月も経ってしまったという苦労話もある。
ちょうど同時期には『ドロヘドロ』のアニメ化が進行しており、最終巻、オールスター名鑑完全版、カレンダー、ムック本などの関連企画も同時に抱えていた。本人いわく完結後に休む余裕はなく「かなり無茶な状況」だったという。
単行本は「ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル」から刊行され、第9巻まで刊行されていることが確認できる。『このマンガがすごい!2022』オトコ編で22位、「次にくるマンガ大賞2022」コミックス部門で14位にランクインした。
作品リスト[編集]
漫画[編集]
- 『ソファーちゃん』(1997年、『月刊アフタヌーン』四季賞 準入選作。『四季賞クロニクル』収録)
- 『魔剣X ANOTHER』(1999年 - 2001年、『マガジンZ』/講談社。原作:アトラス『魔剣X』。2008年に『魔剣X ANOTHER JACK』として再刊)
- 『ドロヘドロ』(2000年 - 2018年、『イッキ』→『月刊IKKI』→『ヒバナ』→『ゲッサン』/小学館。全23巻)
- 『Huvahh』(2011年、読み切り。ゲーム『シャドウ・オブ・ザ・ダムド』の前日譚)
- 『Underground Underground』(2012年、読み切り。画集『138°E』収録)
- 阪神タイガース球団創設80周年記念の漫画アンソロジーに寄稿(2015年)
- 『大ダーク』(2019年 - 連載中、『ゲッサン』/小学館)
イラスト・デザイン[編集]
- 中島望『牙の領域』(講談社ノベルス)表紙
- 中島望『十四歳、ルシフェル』(講談社ノベルス)表紙・挿絵
- 中島望『地獄変』(講談社ノベルス)表紙・挿絵
- 植地毅『絶滅危惧ビデオ大全』(三才ブックス)表紙
- 『Bloodborne: THE DEATH OF SLEEP』日本語訳版 表紙
- ゲーム『シャドウ・オブ・ザ・ダムド』(2011年、EA)ボスキャラクター・敵デザイン
画集[編集]
- 『138°E』(ワニマガジン社)…キャラクター設定画や描き下ろし、読み切り『Underground Underground』、ロング対談などを収録したアートブック。続巻『138°E Vol.2』も刊行されている。
作風・画風[編集]
狂気の描き込み[編集]
林田球の絵を一目見れば、まず圧倒されるのが画面の密度だ。荒々しいタッチと細部への執拗な描き込みが同居し、人体デッサン、背景、キャラクターの衣装や小物に至るまでとことんこだわる。筋骨隆々とした男女が多く登場するのも特徴で、男女問わずとにかく肉体が分厚い。
本人は、光や空気を描くことにはほとんど関心がなく、質感を中心に絵を描いていると語っている。だからこそ『ドロヘドロ』のホールは、錆びた鉄、汚れた壁、ゴミの山といった「触れそうな汚さ」で埋め尽くされている。
カラー原稿も独特で、鉛筆の下書きをあえて消さずに残したり、はみ出しや混色を気にせず大胆に塗ったりする。カラーは時間との戦いだが「作業にしない」ことを心がけているそうで、そのせいか作品ごと・時期ごとに色味が変わるのも見どころである。
グロとユーモアのミックスジュース[編集]
作中では魔法や刃物による激しい戦闘で血肉や内臓が派手に飛び散る。マスク、骨、悪魔、ゾンビといったゴシック/パンク的なモチーフも頻出し、ホラー映画やB級映画の匂いが濃い。ところがその直後に、キャラクターたちがのんびり食事をしたり、どうでもいい会話をしたりする平穏な日常パートが挟まる。この温度差こそが林田作品の中毒性の源だ。
『大ダーク』でも骨や異形の宇宙人がこれでもかと出てくるが、本人は「ゲッサンで骨とか描いてるの、私だけなので」と笑い交じりに語ったとされる。少年誌に載っていても全くブレないのが林田球である。
食べ物がうまそう[編集]
林田作品といえば、食べ物描写も外せない。『ドロヘドロ』ではニカイドウが営む大衆食堂「空腹虫(ハングリーバグ)」の大葉ギョーザをはじめ、パイやパンなど、殺伐とした世界観の中で妙においしそうな料理が次々に登場する。殺し合いの合間に飯を食う、というリズムが作品の生活感を支えている。
ちなみに本人も料理が好きで、得意料理は餃子。皮は市販品を使っているとのことで、謙遜しつつ「たいしたものは作れません」と答えている。作中の餃子愛はガチだったわけだ。
好きなものだけを描く[編集]
本人は、好きなものだけを描き、流行を見て題材を選ぶことはできないと話している。初期の画風を保つよう意識しており、外部の影響を受けないようにしているため絵柄がほとんど変わらないという。一方で恋愛や青春ものは描けないとも語っており、自分の守備範囲をはっきり自覚しているタイプだ。
人物・エピソード[編集]
影響を受けたもの[編集]
雑誌『季刊エス』創刊号のインタビューでは、『週刊少年ジャンプ』などの少年漫画から大きな影響を受けたと語っている。何度も読み返す漫画として挙げたのは、『ドラゴンボール』『ジョジョの奇妙な冒険』『ぷりぷり県』『アタゴオル』『コジコジ』『動物のお医者さん』『うっちゃれ五所瓦』『団地ともお』『諸怪志異』、そして小林源文の『OMEGA』シリーズ。少年漫画、ギャグ、ほのぼの系、ミリタリーまで、驚くほど幅広い。
仕事机に置いて繰り返し読んでいる漫画家としては、楳図かずお、ヒラマツ・ミノル、花輪和一、士郎正宗の名を挙げている。ホラー、格闘、奇想、サイバーパンクと、林田作品の要素がそのまま並んでいるようなラインナップである。
子どもの頃は『サイレントメビウス』や『うる星やつら』のような「強い女の子」が活躍する漫画が好きだったとも語っており、ニカイドウや能井のような腕っぷしの強い女性キャラクターの源流が見て取れる。小学4〜5年の頃、映画『AKIRA』と『となりのトトロ』のどちらを観るか迷った、という微笑ましい逸話も紹介されている。
『大ダーク』については、映画『エイリアン』が好きだったこと、宇宙でクリーチャーと戦う洋ゲー『Dead Space』が大好きでクリア後も何年も何周も遊んだことを明かしており、これらがスクラップブックに集められて新連載の着想につながったという。
制作スタイル[編集]
驚くべきことに、アシスタントを使わず基本的に一人で描いているとされる。一度だけ母親に手伝ってもらったものの仕上がりに満足できず、それ以降は一人で描いているというエピソードがある。あの密度の画面を一人で、しかも長期連載で……と考えると頭が下がる。
扉絵を特に重視しており、扉絵が決まらないと次の工程に進めないという。また、18年の『ドロヘドロ』連載で使ったスケッチブックは19冊に及ぶと紹介されている。作品作りで一番大事にしていることを問われると、「毎回楽しく描くこと」と答えている。
キャラクターについて[編集]
アニメ放送時のインタビューでは、『ドロヘドロ』で一番好きなキャラクターはカイマン、性格が近いのは恵比寿かアスだと回答。使ってみたい魔法はアスの魔法で、カースに変身してみたいとも話している。物語の予想外の展開として、藤田が最後まで生き残ったことを挙げているのも面白い。作者自身にとっても予想外だったらしい。
「悪魔になったら?」という質問には、毎日楽しく生きていきたいと回答。漫画家になって良かったことは、自分がいいと思う漫画が描けたときと、他の人がそれを面白いと感じてくれたとき、と語っている。
阪神ファン[編集]
阪神タイガースのファンとして知られ、タイガースが失点したときには「ショッキング!」と叫ぶと答えている。2015年には球団創設80周年を記念した漫画アンソロジーにも参加した。
徹底したプライバシー[編集]
顔写真は公開されておらず、本名も非公表。SNSでの発信も行っていない。作品の単行本や企画で描かれる自画像は、名前の「球」にちなんだのか球状の物体である。メディアに出るのは基本的にテキストのインタビューのみで、作品そのものだけで勝負するスタイルを貫いている。
メディア展開[編集]
TVアニメ第1期(2020年)[編集]
『ドロヘドロ』は2020年1月13日から3月30日まで、TOKYO MXほかで全12話のTVアニメとして放送された。アニメーション制作は『呪術廻戦』『チェンソーマン』などで知られるMAPPA、監督は林祐一郎、シリーズ構成は瀬古浩司。3DCGと手描きを場面ごとに使い分け、原作の荒々しいタッチを再現した映像が話題になり、Netflixを通じて海外でも人気を集めた。
オープニングテーマは(K)NoW_NAMEの「Welcome トゥ 混沌」。エンディングは話数ごとに「Who am I ?」「Night SURFING」「D.D.D.D」「Strange Meat Pie」「SECONDs FLY」「404」と6曲が使い分けられた。主なキャストは、カイマン役に高木渉、ニカイドウ役に近藤玲奈、煙役に堀内賢雄、心役に細谷佳正、能井役に小林ゆう、恵比寿役に富田美憂。
林田本人は第1話の映像について「すっごいから見てね!!」と太鼓判を押し、粗を探すのが難しいほどだと絶賛。制作会議でMAPPAに対して「背景も作品世界の一部」「キャラクターは原作に似せてほしい」と強く伝えたという。背景美術・世界観設計に木村真二が参加したことについては、以前から作品をチェックしてきた憧れの人に荒廃したホールの街を描いてもらえた、と「夢が叶った」喜びを語っている。また、野球回は一度カットされかけたが、林田の希望で残されたというエピソードもある。さすが阪神ファン。
Season2(2026年)[編集]
2024年1月、続編が配信シリーズとして制作中であることが発表された。林田は「『ドロヘドロ』のアニメの続きを作ってもらえてこんなにうれしいことはありません!」とコメントし、「ぜひもう一度『ドロヘドロ』アニメの世界に入ってきて下さい」とファンに呼びかけた。
その後2025年10月に「2026年春、全世界ほぼ同時配信」が告知され、第1期から約6年ぶりとなる『ドロヘドロ Season2』は2026年4月1日に配信開始。初回は第1〜3話が一挙配信され、以降は毎週水曜23時に更新、全11話で5月27日に最終回を迎えた。海外ではNetflix、Crunchyrollなどで配信された。
スタッフは監督・林祐一郎、シリーズ構成・瀬古浩司、キャラクターデザイン・岸友洋、世界観設計・木村真二と第1期の主要メンバーが続投し、制作も引き続きMAPPA。オープニングテーマは(K)NoW_NAMEの「ゼッタイMUST断面」、エンディングテーマは「Return トゥ 頭(ヘッド)」。キャストも続投組に加え、十字目のメンバー役で内山昂輝、濱野大輝らが加わった。
Season3制作決定[編集]
Season2最終回が配信された2026年5月27日、Season3の制作決定が発表された。林祐一郎監督による、悪魔のハルが続編への期待を歌う記念イラストも公開されている。放送・配信時期は2026年10月時点で未発表である。
原画展[編集]
アニメ化を記念して「ドロヘドロ原画展 ~林田球の世界~」が開催され、東京を皮切りに大阪、宮城など各地を巡回した。2022年には東京ドームシティのGallery AaMoで「ドロヘドロ原画展FINAL ~林田球の世界~」が開かれ、『大ダーク』を含む約390点の原稿・原画を展示。新たに描き下ろされたキービジュアルとそのメイキング映像、キャラクター設定資料、林田の私物なども並び、『大ダーク』1話分を原稿で丸ごと読めるコーナーまで用意された。
余談[編集]
- 自画像は名前の通り「球」。人間の姿で描かれることはまずない。
- 藝大時代の恩師とされる画家の山口晃は、学生時代の林田について、短髪でスタイルが良く目つきの鋭い「この人は何を考えているんだろう?」という感じの女性だったと語ったという話がある。
- 『ドロヘドロ』の連載開始は2000年で、大学在学中だったとする紹介記事もある。
- 『ドロヘドロ』は4誌を渡り歩いたが、そのうちイッキ/月刊IKKI、ヒバナでは創刊号から最終号まで載り続けた。雑誌の誕生と最期を何度も見届けた、なかなか珍しい漫画である。
- 作中の大葉ギョーザは作品を象徴する料理のひとつで、Season2の告知ビジュアルにも食堂「空腹虫」が描かれた。作者自身の得意料理も餃子である。
- 最も予想外だった展開は「藤田が最後まで生き残ったこと」。作者が予想していなかったのだから、読者が予想できるわけがない。
- 好きな漫画として『コジコジ』『動物のお医者さん』『団地ともお』のようなほのぼの系を挙げている。あの血みどろの画風からは想像しにくいが、日常パートのゆるさの源流はこのあたりにあるのかもしれない。
- 2013年には『ドロヘドロ』18巻の発売を記念して、紀伊國屋書店新宿本店で複製原画展示や描き下ろし色紙の展示が行われた。
外部リンク[編集]
- TVアニメ『ドロヘドロ』公式サイト
- TVアニメ『ドロヘドロ』公式X(@dorohedoro_PR)
- 小学館(『ゲッサン』発行元)
※林田球本人の公式SNSアカウントは存在しない。
