マークスグループ
MARKS GROUP
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マークスグループ公式YouTubeチャンネル「MARKS GROUP(マークスグループ)」で2013年6月に公開された、傘下ファイブプロモーションの座談会動画のサムネイル(出典:YouTube)
略称 マークス
国家 日本
種類 株式会社(株式会社マークスジャパン)
市場情報 非上場
業種 サービス業(芸能プロダクション)
本社所在地 東京都渋谷区
設立日 2007年10月
廃業日 2017年8月4日
代表者 高山祐次(代表取締役)
資本金 300万円
上場 非上場
従業員数 10人
主要部門 芸能プロダクション、番組企画制作、キャスティング、マネージメント、プロデュース、飲食業
主要子会社 マークスジャパン、ファイブプロモーション、バルドエージェンシー
別名 マークスジャパン


概要[編集]

マークスグループ(MARKS GROUP)とは、かつて東京都渋谷区に拠点を置いていた日本のAV女優・モデル専門の芸能事務所グループ(いわゆるAVプロダクション)である。中核法人は株式会社マークスジャパン。500名以上の女優・モデルを抱える業界大手だったが、2016年6月に幹部が労働者派遣法違反容疑で逮捕され、AV出演強要問題が社会問題化する大きな契機となった。2017年8月に法人は解散している。

詳細[編集]

企画系から業界大手へ[編集]

マークスグループは、もともとは企画系の事務所として出発したとされる。その後、著名な単体女優やグラビアアイドルも抱えるようになり、所属する女優・モデルは500名以上という、AVプロダクションとしては屈指の大所帯へと成長した。

中核法人である株式会社マークスジャパンは2007年10月の設立で、資本金300万円、従業員数10人という規模だったとされる。事業内容としては芸能プロダクション業のほか、番組企画制作、キャスティング、マネージメント、プロデュース、さらに飲食業まで掲げていた。所属タレントの数に比べて社員の数が非常に少ないのは、この業界のプロダクションにはよく見られる形である。

三部門体制[編集]

グループの内部は、女優のタイプごとに大きく三つの部門(ブランド)に分かれていた。単体女優を中心に扱う「マークスジャパン」、企画単体女優を中心に扱う「ファイブプロモーション」、熟女系の女優を中心に扱う「バルドエージェンシー」である。

部門を分けていたのは、売り出し方と営業先がタイプごとに大きく違うためと考えられる。メーカー専属の単体女優は専属契約の交渉が中心になり、企画単体は多数のメーカーへの売り込みとスケジュール管理が中心になる。実際、ファイブプロモーションで人気が出た女優がマークスジャパンへ「昇格」する移籍も見られ、グループ内でキャリアを積み上げていける仕組みになっていた。

「評判のいい大手」だった[編集]

2016年の摘発時、マークスは業界内で「大手で評判もよい事務所」と見られていたとされる。そのため、ここが摘発されたことは業界関係者にとって大きな衝撃だった。所属していた女優の中には、事件直後にSNSで「強要はなかったはずだ」という趣旨の発信をする人も少なくなかった。

一方で、事件で問われた「女優をAVの撮影現場に送り出す」という仕組み自体は、当時の業界ではごく一般的なものだった。つまり「たまたま悪質な一社が捕まった」という話ではなく、業界全体のビジネスモデルが法的に問われたという点に、この事件の重みがある。

情報発信に積極的だった事務所[編集]

マークスグループは、公式サイトのほか、公式ブログ、広報ブログ、YouTubeチャンネル「MARKS GROUP(マークスグループ)」、ツイキャスのアカウントなどを運営していた。2013年6月には、YouTubeでファイブプロモーション所属女優4名による座談会動画を公開しており、新人募集の窓口としてネットを活用していたことがうかがえる。

また、関連ブランドとして「マークスプラス」の名前も確認でき、2010年ごろには同ブランドの公式サイトに所属女優のプロフィールが掲載されていた。

沿革[編集]

設立と成長(2000年代〜2015年)[編集]

  • 2004年5月 - 企画単体部門となるファイブプロモーションが設立される。
  • 2007年10月 - 株式会社マークスジャパンが設立される。
  • 2010年前後 - 「マークスプラス」名義でも所属女優のプロフィールを公開。
  • 2010年 - 有村千佳がファイブプロモーション所属でデビュー。のちにグループを代表する人気女優の一人となる。
  • 2011年11月 - シネマユニット・ガスの専属を離れた杏美月が、ファイブプロモーション所属となったことを発表。
  • 2013年6月 - 公式YouTubeで、ファイブプロモーション所属女優による座談会動画を公開。
  • 2015年6月 - 湊莉久がファイブプロモーションからマークスジャパンへ移籍。同年9月には恵比寿マスカッツへの加入が発表された。

2016年:摘発[編集]

  • 2016年3月 - 国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」が、AV出演の強要被害に関する調査報告書を公表。社会の関心が一気に高まる。
  • 2016年6月11日 - 警視庁が、マークスジャパンの社長ら幹部3名を労働者派遣法違反(有害業務就労目的派遣)の容疑で逮捕。グループ企業のファイブプロモーション、AVメーカーのCAとピエロにも家宅捜索が入る。
  • 2016年7月1日 - 東京区検が3名と法人を労働者派遣法違反の罪で略式起訴。東京簡易裁判所が同日、それぞれに罰金の略式命令を出す。
  • 2016年 - グループは解散・再編へ向かい、ファイブプロモーション所属女優の多くは新設プロダクション「LINX」へ移籍。

解散(2017年)[編集]

  • 2017年8月4日 - 清算結了の手続きを経て、法人として解散。

2016年の摘発と裁判[編集]

逮捕の内容[編集]

2016年6月11日、警視庁はマークスジャパンの50代の社長、40代の元社長、30代の男性社員の計3名を逮捕した(報道によっては「元社長ら4人」とするものもある)。容疑は労働者派遣法違反で、2013年9月ごろ、同社に所属していた20代の女性を、「公衆道徳上有害な業務」に就かせる目的でAV制作会社の撮影に派遣したというものである。

報道によると、女性は2009年ごろに「グラビアモデルの仕事」と説明されて契約したが、その後AV出演の契約書に署名させられたという。出演を拒むと違約金がかかる、親に請求書を送るといった趣旨のことを言われ、2014年に契約が解除されるまでの約5年間に100本を超える作品に出演したと報じられた。女性が警察に「AV出演を強いられた」と相談したことが、事件化のきっかけとされる。

なぜ「労働者派遣法」だったのか[編集]

この事件の最大のポイントは、罪名が強要罪などではなく「労働者派遣法違反」だったことである。労働者派遣法と職業安定法は、「公衆衛生または公衆道徳上有害な業務」に就かせる目的での派遣や職業紹介を禁じており、違反には1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金という重い刑が定められている。

AV出演がこの「有害業務」にあたることは、1994年の東京地裁判決ですでに示されており、本人の希望や承諾があっても犯罪の成否には影響しないとされていた。ただ、この規定は「雇用関係」があることが前提になる。業界ではプロダクションと女優の関係を「モデル契約」や「マネジメント契約」「業務委託」とする例が多く、雇用関係はないという建前だった。

これについて労働問題に詳しい弁護士は、形式上は雇用契約でなくても、実質的に指揮命令関係があり指示を拒めない状態なら雇用関係と判断され得る、とコメントしている。警視庁は契約の実態から雇用関係を認定したとみられ、「業務委託だから大丈夫」という業界の建前が通らないことを示した形になった。

裁判の結果[編集]

2016年7月1日、東京区検は逮捕された3名と法人としてのマークスジャパンを労働者派遣法違反の罪で略式起訴し、東京簡易裁判所は同日、それぞれに罰金の略式命令を出した。正式な公判は開かれず、罰金刑で決着している。

略式手続きで終わったことから、強要の有無そのものが法廷で争われることはなかった。そのため事件の評価は立場によって分かれ、強要問題の象徴的事件と見る人もいれば、業界内には「見せしめではないか」と受け止める声もあった。

メーカー最大手への家宅捜索[編集]

捜査はプロダクションだけにとどまらなかった。警視庁は、グループ企業のファイブプロモーションに加え、AVメーカーのCAとピエロにも家宅捜索に入った。とくに業界最大手の一角であるCAへの捜索は、メーカー側にも大きな動揺を与えたとされる。

それまで「女優を送り出すのはプロダクションの問題」と考えられがちだったが、受け入れる側のメーカーにも捜査が及んだことで、業界全体が当事者として対応を迫られることになった。

所属していた女優[編集]

マークスグループには、時期によって数百名規模の女優・モデルが所属していた。以下は、報道や本人の発信、各種プロフィールなどで所属経験が確認できる主な女優の一部である。所属部門や時期は判明している範囲で記す。

名前 主な所属部門・経緯
あやみ旬果 マークスグループ所属
篠田ゆう マークスグループ所属
湊莉久 2013年にファイブプロモーション所属でデビュー、2015年6月にマークスジャパンへ移籍
羽月希 ファイブプロモーション所属。2013年の座談会動画に出演
乙アリス 2013年に「聖菜アリサ」名義でファイブプロモーションからデビュー
有村千佳 2010年にファイブプロモーション所属でデビュー、2015年5月に引退
杏美月 2011年11月にファイブプロモーション所属となる
美咲かんな マークスグループ所属
椎名まりな マークスグループ所属
涼川絢音 マークスグループ所属
かなで自由 マークスグループ所属
西田那津 マークスグループ所属
二階堂ゆり マークスグループ所属
安西ケイト 2010年ごろ、関連ブランド「マークスプラス」の公式サイトにプロフィールが掲載
初美沙希 マークスグループ所属
真木今日子 マークスグループ所属
竹内真琴 マークスグループ所属
吉川いと 2014年10月、マインズからファイブプロモーションへ移籍
七海りこ 2014年、バンビプロモーションからファイブプロモーションへ移籍し改名
葉山美空 ファイブプロモーション所属。2016年の再編でLINXへ
城崎桐子 ファイブプロモーション所属。再編でLINXへ
彩奈リナ 2016年にファイブプロモーションへ移籍し、七原あかりから改名。再編でLINXへ
月本愛 2016年にファイブプロモーション所属でデビュー。再編でLINXへ、2018年5月に引退
黒木いくみ 2016年に「あさひ奈々」名義でデビュー。同年にオールプロモーション所属で活動再開

このほかにも、藤嶋唯、橘ひなた、二階堂ソフィア、香澄のあ、夏希みなみ、原波瑠、小松ほなみ、高梨あゆみ、八咲唯、本庄瞳など、多数の女優が所属経験者として名前を挙げられている。

湊莉久[編集]

2013年4月にファイブプロモーション所属でデビューし、2015年6月にマークスジャパンへ移籍した。同年9月に恵比寿マスカッツへの加入が発表され、2018年12月の卒業ライブまでグループで活動した。グループ内の「ファイブからマークスジャパンへ」という昇格ルートを体現した一人であり、2016年7月にはティーパワーズへの移籍が発表されている。

有村千佳[編集]

2010年にファイブプロモーション所属でデビュー。2014年には、龍が如くシリーズへのキャラクター出演をかけたセクシー女優人気投票で1位を獲得し、ゲーム出演を勝ち取った。2015年にはスカパー!アダルト放送大賞2015で作品賞と東京スポーツ賞を受賞している。マークスグループ出身者の中でも、業界の外まで名前が届いた代表格である。

乙アリス[編集]

2013年に「聖菜アリサ」名義でファイブプロモーションからデビューした。デビュー前はコスプレモデルとして撮影会に参加していたという経歴を持つ。マークスグループ解体後の2016年7月に事務所を移って「水嶋アリス」に改名し、2020年9月には「乙アリス」へと改名した。アイドルグループでのリーダー経験など、歌やライブ活動にも力を入れている。

再編後の行き先[編集]

2016年の摘発後、グループは解散・再編へと向かい、所属女優はそれぞれ新しい事務所へ移った。ファイブプロモーション所属だった女優の多くは新設プロダクション「LINX」へ移籍しており、各女優のプロフィールに「事務所の解散(再編)によりLINXへ移籍」という同じ経緯が並んでいる。ほかにティーパワーズやオールプロモーションなど、別の事務所へ移った例もある。

業界への影響[編集]

「強要問題」が社会問題に[編集]

2016年3月にヒューマンライツ・ナウが調査報告書を公表したことで、内閣府の男女共同参画会議でも法規制の検討が始まるなど、AV出演強要は政策課題として扱われ始めていた。そこへ大手プロダクションの摘発が重なったことで、問題は一気に社会の注目を集めることになった。

同じ2016年には、香西咲をはじめとする元女優らが自らの被害を実名で告白するなど、当事者の声も相次いで報じられた。マークスジャパン事件は、のちに続く一連の「AV出演強要問題」の最初の刑事事件として位置づけられることが多い。

業界団体の再編[編集]

事件を受けて、業界は自主規制の枠組みづくりを急いだ。2017年4月には、AV事務所の有志による一般社団法人日本プロダクション協会(JPG)が21社で設立された。同協会は、プロダクションと女優の関係を「雇用」ではなく対等な「業務委託」とすることを掲げ、面接や契約の録画を原則とするなどの防止策を打ち出している。

同じ2017年4月には、メーカー団体の知的財産振興協会(IPPA)、日本プロダクション協会、女優側の団体である表現者ネットワーク(AVAN)が、第三者機関「AV業界改革推進有識者委員会」を設立した。AVANは元女優の川奈まり子が代表を務めた団体で、のちに2019年6月にAV人権倫理機構の外局として位置づけられている。

AV人権倫理機構と「適正AV」[編集]

AV業界改革推進有識者委員会は、2017年10月にメンバーを変えずに「AV人権倫理機構」として再発足した。機構は業界統一の契約書を作成し、出演意思の丁寧な確認や、撮影直前の出演辞退に対して損害賠償を請求しないことなどを求めた。また、プロダクションに対して、メーカーから受け取った報酬の総額を女優に伝えたうえで取り分を決めるよう義務づけた。

2018年2月からは、販売開始から5年以上がたち、現在の生活に支障をきたしている作品について、出演者本人の申請を受けて配信停止を勧告する取り組みも始まった。こうした業界ルールに沿って制作された作品は「適正AV」と呼ばれるようになった。

AV新法へ[編集]

業界の自主規制が進む一方、法律による救済を求める声も続いた。2022年4月の成年年齢引き下げをきっかけに議論が加速し、同年6月に「AV出演被害防止・救済法」(いわゆるAV新法)が成立、6月23日に施行された。

同法は、契約から撮影までに1か月、撮影終了から公表までに4か月の期間を置くことを義務づけ、公表後1年間(施行後2年間は2年間)は出演者が無条件で契約を解除できるとした。2016年のマークスジャパン事件から6年をかけて、業界の「送り出し」の仕組みは大きく作り変えられたことになる。

炎上とバズ[編集]

所属女優らのSNSでの反応[編集]

2016年6月の逮捕報道の直後、マークスの元同僚や業界の女優たちがSNSで次々に反応した。霜月るなは「業界に無理やりな出演はない」という趣旨の投稿をし、初美沙希や蒼井そららも強要を疑問視する発言をしたと報じられた。ほかにも、被害を訴えた女性を「仕事を楽しんでいるように見えた」と振り返る投稿などがあった。

こうした発言は「業界の実感」として一定の支持を集めた一方、被害を訴える側への二次加害になるという批判も受け、一部の投稿はのちに削除された。逮捕報道は、AV業界の内側と外側で認識が大きく食い違っていることを可視化する出来事にもなった。

「見せしめ」論争[編集]

業界内やネット上では、大手で評判もよかったマークスがなぜ狙われたのかをめぐり、「見せしめではないか」という声も上がった。一方で、メディアの中にはそうした業界側の主張を無条件には受け入れず、強要が本当にないのかを問い直すべきだとする論調もあった。強要の有無が法廷で争われずに略式命令で終わったこともあり、事件の評価はいまも立場によって分かれている。

余談[編集]

  • 「業界全体が同じ仕組みで動いていたのに、なぜ大手のマークスが最初だったのか」は今も語られる話題で、事件当時は「見せしめ」説も業界内でささやかれたとされる。
  • AV出演が「公衆道徳上有害な業務」にあたるという判断自体は1994年の東京地裁判決ですでに示されており、法律の専門家の間では「最初から念頭にあった罪名」とみる見方もあった。
  • 事件後に設立された日本プロダクション協会の加盟社には、LINX、ティーパワーズ、オールプロモーション、バンビプロモーションなど、マークス出身の女優の移籍先となった事務所の名前も並んでいる。
  • 公式YouTubeチャンネル「MARKS GROUP(マークスグループ)」は解散後も残っており、新人募集のために作られた座談会動画が、のちに人気女優となった人たちの初期の姿を伝える記録にもなっている。
  • 事件当時、報道では逮捕者を「社長ら3人」とするものと「元社長ら4人」とするものがあり、初報の段階では情報がやや錯綜していた。

外部リンク[編集]

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