概要[編集]
単体女優(たんたいじょゆう)とは、アダルトビデオ業界で、出演者個人の知名度を前面に出して作品が売られるAV女優を指す業界用語である。企画内容を売りにする「企画物」と対になる区分で、報酬や宣伝の規模、メーカーの制作体制まで異なる。
詳細[編集]
業界では作品を大きく「単体女優物」と「企画物」に分ける。単体女優物は出演者の容姿や個性を前面に置き、一定期間そのメーカーで継続的に作品を出す形を取る。企画物は内容や設定を売りにするもので、出演者は複数であることも多い。
両者の中間にあたる区分として「企画単体」(キカタン)があり、単体・企画単体・企画という三層で語られるのが一般的である。単体から企画単体へ移ることを業界内では「企画落ち」と呼ぶ。2000年以降、アイドル的な売り方をする出演者が増え、若い単体女優や企画単体女優が「AVアイドル」と呼ばれることもある。
この区分が何を意味しているか[編集]
単体か企画かという分け方は、作品の内容を分類しているのではなく、「作品を何で識別させるかを分類している」。
単体女優物では、買う側が最初に見るのは出演者の名前である。つまり識別子が人に置かれている。企画物では識別子が設定やシリーズ名に置かれる。マキシングが専属を置かない方向へ振り切り、センタービレッジがジャンルとシリーズ名を識別子にしたのと同じ問題——看板を人に置くか、様式に置くか——が、女優の側の区分としても現れている。
人に置けば、その人が活動している間は強く働くが、引退すれば空白が生じる。様式に置けば継続するが、個々の作品への関心は生まれにくい。三層構造が存在するのは、この配分をメーカー側が段階的に設定できるようにした結果とも読める。
「企画落ち」という語の構造[編集]
単体から企画へ移ることを「落ちる」と表現するのは、この業界の外から見ると分かりにくい。企画物の制作が単体物より技術的に劣るわけではなく、AV監督の項で整理したとおり、企画物には企画物の設計がある。
それでもこの語が使われるのは、報酬と宣伝の規模が単体のほうが大きいという事実が背景にあるからである。一人に集中して費用をかける売り方は、その人が集客できる前提が必要になる。前提が崩れれば投じる費用の根拠が消える。つまり「落ちる」という表現が指しているのは技能の評価ではなく、「費用の配分が変わったという事実」である。
近年はFANZAやMissAVのような一覧型の配信が主流になり、店頭の棚に現物が並ぶ時代とは探され方が変わった。文字列で検索する環境では出演者名も企画名も同じ「検索語」として並ぶため、この三層の区分がかつてほど意味を持たなくなっているという指摘もある。一方で、名前で指名して探す行動自体は残っているとも言われ、区分の有効性については見方が分かれている。
契約という側面[編集]
単体女優は特定のメーカーと専属的な契約を結ぶ形を取ることが多い。エスワンやMOODYZのような専属看板方式のメーカーがこれにあたる。
専属契約は、出演者側から見れば露出先が限られる代わりに一定の出演機会が保証される取り決めであり、メーカー側から見れば宣伝の投資が他社の売上に流れないための仕組みである。雑誌の専属モデル制と発想が近く、定期的に商品を出し続ける形式でなければ意味を持たない取り決めである点も共通している。
2022年に施行されたAV出演被害防止・救済法(AV新法)により、契約や撮影・公表の手続きが法律上明文化され、契約のあり方そのものが変わった。手続きが明確になったと評価する見方と、法の対象外が残るという指摘の双方があり、影響の評価はまだ定まっていない。
よくある質問[編集]
- 単体と企画の違いは何ですか
- 出演者個人を前面に出して売るのが単体、内容や設定を売りにするのが企画である。
- 企画単体とは何ですか
- 単体と企画の中間にあたる区分で、「キカタン」と略される。
- 企画落ちとは何ですか
- 単体から企画単体や企画へ区分が移ることを指す業界内の言い方である。
- 専属契約は必ずありますか
- 単体女優は専属的な契約を結ぶ例が多いが、形態はメーカーや時期によって異なる。
余談[編集]
- 「単体」という語は本来「一人だけ」という意味の一般語だが、この業界では区分名として定着しており、文脈なしでは意味が通じない。業界用語が短い一般語を専用の意味で使う例である。
- 三層の区分は公的な制度ではなく、メーカーや事務所の慣行として成立しているものである。したがって境界が明文化されているわけではなく、どこからが企画単体かという線引きは一定ではない。
- AV監督という職能に資格も養成機関も存在しないのと同じく、この区分も業界の内部で自然に固まったものである。規模に対して歴史が浅い業種では、こうした「誰も決めていないが全員が使っている区分」が多く残る。