| マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜 | |
|---|---|
| ジャンル | ヒューマン、スライス・オブ・ライフ、職場ドラマ |
| 放送期間 | 2018年3月21日〜2018年5月17日 |
| 放送国家 | 大韓民国 |
| 制作 | |
| 脚本 | パク・ヘヨン |
| 出演者 | イ・ソンギュン、IU(アイユー) |
| その他 | |
| 外部リンク | Netflix公式 |
概要[編集]
『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜』(原題:나의 아저씨、英題:My Mister)は、2018年3月21日から5月17日までtvNで放送された韓国のヒューマンドラマ。全16話。主演はイ・ソンギュン(이선균)とIU(アイユー)(アイユー、본명:이지은)。脚本はパク・ヘヨン(박해영)、演出はキム・ウォンソク(김원석)が担当した。
40代の中間管理職の男と、若くして人生の底辺にいる孤独な女性が、お互いの人生の荷を少しずつ下ろしていく静かな物語を描いた作品で、放送当初は「年の差の男女が近づく設定」に不安の声も上がったが、実際に放送が始まると「これは純愛でもロマンスでもなく、魂の救済の話だ」という絶賛の声に変わった。韓国ドラマ史上屈指の「大人のヒューマンドラマ」として、今も批評家・ファン双方から最高の評価を受け続けている。
本作は第59回百想芸術大賞でテレビ部門の脚本賞を受賞(2023年)するなど、長期にわたって評価され続けた。Netflixで全世界に配信されており、韓国のみならず日本を含む世界のドラマファンから「人生の一本」と称される作品である。
なお、主演のイ・ソンギュンは2023年12月に마약(薬物)関連の捜査を受け、同月末に死亡が確認された。本作の脚本・演出を担ったパク・ヘヨン&キム・ウォンソクコンビは後に同様のキャリア追跡型ヒューマンドラマを手がけており、本作はその原点として語られている。
ストーリー[編集]
ソウルの建設会社で中間管理職として働くパク・ドンフン(イ・ソンギュン)は、一見安定した生活に見えながら実は様々な重荷を背負っている。仕事での理不尽、妻との冷めた関係、兄弟それぞれの悩み。それでも黙々と日常を生きる、典型的な「頑張るおじさん」だ。
一方、同じ会社で派遣社員として働く20代の女性イ・ジアン(IU(アイユー))は、幼い頃から自分の力だけで生き延びてきた。祖母の介護費用のために非合法な貸金業者の取り立てを担わされ、心に傷を持ちながらも誰にも弱さを見せない。
ジアンはある日、会社の不正をめぐる内部告発のために、スマートフォンでドンフンを盗聴することを命じられる。しかし盗聴を続けるうちに、ドンフンの人柄——誰にも見せない優しさ、兄弟たちへの愛情、無言の誠実さ——を知るようになり、ジアン自身の心が少しずつ溶けていく。
ふたりの関係はロマンスには発展しない。しかしお互いの最も傷ついた部分をそっと見守り合う「魂の救済」とも言うべき関係を築いていく。ドンフンの兄弟たちが営む裏路地の居酒屋「トレスムン」、下町の雑然とした商店街、くたびれた会社の廊下——そういった普通の風景の中で静かに物語が進んでいく。
キャスト[編集]
メインキャスト[編集]
- パク・ドンフン - イ・ソンギュン:40代前半の建設会社の部長代理。有能だが正直すぎるゆえに出世できない。会社の不正に巻き込まれながらも、人として誠実に生きようとする。おもしろみのない日常の中に静かな品格を持つ人物で、イ・ソンギュンの繊細な演技がファンの心をつかんだ。
- イ・ジアン - IU(アイユー):20代前半の派遣社員。幼少期から苦労し、表情を読まれないよう常に仮面をかぶって生きてきた。コードネームによる盗聴という不純な出発から始まりながら、ドンフンを純粋に思いやるようになる。IUがこれまでのアイドル・女優イメージを大きく覆す静かで重い演技を披露し、演技力の高さを再認識させた。
サブキャスト[編集]
- パク・サンフン(兄) - パク・ホサン:ドンフンの長兄。かつてボクサーだったが今は無職。下町で毎日酒を飲んでいる兄貴たちのリーダー的存在。
- パク・ギフン(末弟) - ソン・セビョク:ドンフンの末弟。映画監督志望で売れないまま日々を過ごす。
- ユ・ヘウォン』 - キム・ヨンミン:ドンフンの妻。外見は洗練されているが、関係は冷えきっている。
- クァン・ドクチュル(闇金業者) - チン・ソンギュ:ジアンを支配する悪役。
- ヨム・ドヨン(上司) - キム・ヨングァン:ドンフンを不当に追い詰める人物。
制作[編集]
脚本のパク・ヘヨンは後に私の解放日誌(2022年)でも同じ骨格のドラマを書き、「サラリーマン・普通の人の静かな物語」を描く名手として評価されている。演出のキム・ウォンソクも太陽の末裔の脚本助手として名を上げた人物で、本作で演出家として確固たる地位を築いた。IUの起用は当初ファンの間で賛否が分かれたが、IU本人が本作のテーマに強く惹かれたとして積極的にオファーを受け入れたことが後に語られている。
受賞・評価[編集]
- 第55回百想芸術大賞 テレビ部門演技賞(イ・ソンギュン、IU(アイユー)、2018年)
- 第59回百想芸術大賞 テレビ部門脚本賞(パク・ヘヨン、2023年)
- 2018年 tvN演技大賞 최우수연기상
- 多くの「韓国ドラマ歴代ベスト10」「2010年代最高のドラマ」ランキングに名を連ねる
- Netflixでの長期的な視聴者レビュー評価は現在も最高水準
炎上とバズ[編集]
- 「おじさん×若い女性」設定への最初の懸念:放送発表当初、40代男性と20代女性という設定にネット上で「コードを間違えているのでは」という声が上がった。しかし実際の内容は純粋な魂の救済の話であることが浸透し、懸念の声は見る影もなくなった。
- IUの演技革命:それまで「清純なアイドル」「コミカルな主演」というイメージだったIUが、感情を押し殺した重厚な演技を見せたことで「IUは本当に演じる女優だった」とSNSで大きな話題に。IUのキャリアの転換点として語られる。
- 「トレスムン(居酒屋)に行きたい」ブーム:ドンフンの兄弟たちが集う居酒屋のシーンがあまりに温かく描かれているため「こういう場所に行きたい」「こういう仲間が欲しい」という感想がSNSで大量発生した。
- 「盗聴シーン」の倫理論争:ジアンがドンフンを盗聴することは倫理的に問題のある行為だが、それでもファンが同情するのはなぜかという議論が批評家の間で盛んになった。「人は動機ではなく関係性で判断する」という問いとして注目された。
- イ・ソンギュン急逝の衝撃(2023年):2023年12月、主演のイ・ソンギュンが薬物捜査中に死亡した。この報せは韓国エンタメ界を震撼させるとともに、本作の視聴者の間に深い悲しみをもたらした。「今後ドンフンを演じられる人はいない」という声がSNSを埋め尽くした。
- 「パク・ヘヨン脚本作品は全部名作」論』:本作と後の私の解放日誌がいずれも高評価を得たことから「パク・ヘヨンの書く普通の人の物語はすべて傑作」というファンの間での共通認識が生まれた。
余談[編集]
- 本作でIUが使ったヘッドホンやコート、バッグなどのアイテムが「ジアンコーデ」として韓国ファッション界でプチトレンドになった。ダークトーン+シンプルコーデが若い世代にも影響を与えたとされる。
- 劇中で何度も登場する居酒屋「トレスムン」のモデルとなったとされる場所が特定され、聖地巡礼スポットになったとか。
- パク・ヘヨン脚本の「静かな物語」スタイルは、韓国ドラマ界での「大きなイベントに頼らないストーリーテリング」の先駆けとしても評価されている。派手な展開が少ないため最初の2話で離脱するケースも多いが、「3話まで見れば必ずハマる」という評判が定着している。
- 放送当時は視聴率が目立って高くはなかったが(平均7〜9%)、Netflixでの配信後に再評価が進み、現在では「韓国ドラマ名作100選」に必ず名を連ねる地位を確立している。
- IUの「ジアン」役は、アイドルとしての明るく元気なイメージとまったく逆の役柄。IU自身が本作を「転換点になった作品」として挙げており、以降の演技活動においても重要な位置づけがなされている。
- イ・ソンギュンは本作出演後もいくつかの名作ドラマや映画(パラサイトへの出演など)で活躍した。2023年の急逝後、本作は「イ・ソンギュンの代表作」として改めて注目されている。
- 「마이 디어 미스터」というタイトルは英語の「My Dear Mister」からの直訳に近い韓国語読みで、日本語の「私のおじさん」という意訳タイトルとの温度差が議論になったことも。
- 本作のすべてのシーンはソウルの下町・庶民的な場所でロケされており、「貧しいが温かいソウル」の描写として高い評価を受けた。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- tvN公式サイト
補足情報[編集]
- 本作でIUが演じたジアン役の衣装・スタイリングは放送後に「ジアンコーデ」として話題になり、ダークトーンのシンプルなファッションが20代の視聴者を中心にトレンドになった。ブランドを問わないシンプルさと機能性を重視したスタイルは「意識的におしゃれをしない女性」の美学として評価された。
- ドンフン一家が集まる居酒屋「トレスムン」のモデルとされる場所は放送後に聖地巡礼スポットとなり、ソウルの下町風景の中でファンが訪れる場所として定着した。
- 本作で描かれる「会社の不正と内部告発」というテーマは韓国の企業文化や労働問題とも絡む現代的なテーマとして、ビジネスパーソンや社会学者からも注目された。「ドンフンのような誠実だが報われない働き方」への共感は世代を超えて広がった。
- 本作はtvNの中でも「大人向けのプレミアムドラマ」を目指す路線の代表作として位置づけられており、視聴率よりも批評的評価と口コミに支えられた作品として「低視聴率の名作」の先例として後続のドラマ制作に影響を与えた。
- イ・ソンギュンが2023年末に急逝したことにより、本作は「イ・ソンギュンを永遠に記憶するための作品」として特別な意味を帯びることになった。彼の静かで重みのある演技の真髄が詰まった本作をもう一度見ようというファンが増えており、今後も長く語り継がれるだろう。
- 本作は放送から数年経った2020年代もNetflixで定期的に新規視聴者を獲得し続けており「ある日突然ハマった」という報告がSNSで後を絶たない。特に「IUの代表的演技作を見たい」という動機から本作に辿り着く新規ファンが多く、IUがアーティストとして成長するたびに本作の評価も再評価されるというサイクルが生まれている。