壊れスキルで始める現代ダンジョン攻略(こわれスキルではじめるげんだいダンジョンこうりゃく)とは、すたーきーによる日本のウェブ小説、およびそれを原作とする君川優樹作画の漫画作品である。突如として世界中に「ダンジョン」が出現した現代日本を舞台に、地方へ左遷された社畜サラリーマンが、謎めいた壊れ性能のスキル「スキルブック」を手に入れて成り上がっていく――いわゆる「現代ダンジョン」ものの王道を、社会人のリアルな悲哀と痛快な逆転劇で描いた作品である。
概要[編集]
本作は「小説家になろう」に投稿されたウェブ小説を原作とし、コミカライズ版がオーバーラップの漫画レーベル「ガルドコミックス」から刊行されている。作画は君川優樹が担当し、Webコミック配信サイト「コミックガルド」やニコニコ漫画などで連載された。単行本コミックスは複数巻が刊行され、書店・電子書籍ストア(各電子書籍ストア)で展開されている。
ジャンルとしては、現実世界に突然ダンジョンが現れ、普通の人々が探索者(ハンター)として活躍するようになる「現代ダンジョン」もの、あるいは「ダンジョン侵略」ものに分類される。この系統は俺だけレベルアップな件の世界的ヒットを一つの契機として爆発的に増えたジャンルであり、日本のウェブ小説界隈でも一大メインジャンルを形成している。本作はその中でも、主人公を「異世界人」や「才能ある若者」ではなく、どこにでもいる中年寄りの社畜会社員に据えた点に特徴がある。左遷、上司の理不尽、先の見えない安月給といった生々しい社会人の閉塞感を出発点に据えることで、そこから「壊れスキル」一つで人生が引っくり返っていくカタルシスを増幅させている。
同じく現代日本にダンジョンが出現する設定を持つダンジョン・バスターズ ~中年男ですが庭にダンジョンが出現したので世界を救います~や元探索者のおじいちゃん~孫にせがまれてダンジョン配信を始めたんじゃが、なぜかバズりおったわい~、異世界帰りの勇者は、ダンジョンが出現した現実世界で、インフルエンサーになって金を稼ぎます!などと同じ「非追放・現代ダンジョン」クラスタに属する作品といえる。
あらすじ[編集]
突如、世界各地に「ダンジョン」が現れてから4年。人々はダンジョン内に眠る資源や富を巡って競い合う時代を迎えていた。
冴えない証券会社の営業マン・水樹は、ど田舎の支店へと左遷され、うだつの上がらない日々を送っていた。ある日、彼が目にしたのは――今まさに「ダンジョン」と化してしまった、自らの職場の成れの果てだった。生存者がいないかとダンジョン化した社内を探るなか、水樹は妖精・ケシーがゴブリンたちに丸焼きにされそうになっている場面に出くわす。
間一髪、水樹はちょうどそのとき手に入れたばかりの謎のスキル「スキルブック」を使ってケシーを救出し、命からがらダンジョンから脱出する。こうして、壊れ性能の謎スキルを得た社畜サラリーマンと、おしゃべりな妖精の風変わりな二人三脚が幕を開ける。やがて水樹は、ダンジョンを巡る国内外の思惑や国際的な事件へと否応なく巻き込まれていくことになる。
登場人物[編集]
- 水樹
- 本作の主人公。証券会社の営業マンだったが、ど田舎の支店へ左遷された社畜サラリーマン。左遷先がダンジョン化するという不運のなか、謎のスキル「スキルブック」を手に入れたことで運命が大きく動き出す。冴えない中年寄りの会社員でありながら、壊れ性能のスキルを武器に現代ダンジョン攻略の最前線へと踏み出していく。
- ケシー
- 水樹が最初のダンジョンで救出する妖精。ゴブリンに焼かれそうになっていたところを助けられ、以後は水樹の相棒として行動を共にする。よくしゃべる性格で、物語の賑やかな語り部役も担う。
- なお、資料によっては「ケシー」「ケシィ」など表記に揦れが見られる。
- 多智花(たちばな)
- 物語に関わる薄幸の公務員として登場する人物。ダンジョンを巡る現代日本の公的な立場から水樹たちと関わる。
- キャロル
- 物語に登場する人物の一人。
「スキルブック」と作品世界[編集]
本作の代名詞ともいえるのが、タイトルにも冠された壊れスキル「スキルブック」である。水樹が偶然手に入れたこの謎スキルは、彼のような一介の社畜を一躍ダンジョン攻略の主役へと押し上げる、まさに「壊れ性能」の代物として描かれる。こうした「地味な主人公が唯一無二の壊れスキルを引き当てて成り上がる」という構図は、レア度★1の英雄として生き残る方法やスキルポイントが俺をレベルアップさせた、最強アーティファクトでダンジョン無双!といった、スキル・能力を軸に据えたなろう系ダンジョン作品と共通する快感原則に立脚している。
作品世界は、現実の日本にダンジョンが出現してから4年が経過した「近未来ではない、あくまで地続きの現代」を舞台とする。ダンジョン内の資源が経済的な価値を持ち、人々がその富を奪い合うという設定は、俺だけレベルMAXなビギナーやダンジョンリセット、生活魔術師達、ダンジョンに挑むなど、ダンジョンを社会インフラや経済圏として捉える近年の潮流とも響き合う。舞台が異世界ではなく現代社会であることで、「もし自分の職場がダンジョンになったら」という読者の想像を刺激する身近さが、本作の掴みとなっている。
書誌・メディア展開[編集]
原作は「小説家になろう」に投稿されたウェブ小説で、作者はすたーきー。コミカライズは君川優樹が作画を担当し、オーバーラップの「ガルドコミックス」レーベルより単行本が刊行されている。コミカライズはWebコミック配信サイト「コミックガルド」を中心に、ニコニコ漫画などの各種プラットフォームでも配信された。
コミックスは複数巻が刊行され、第1話「左遷先はダンジョン?」というつかみのタイトルが示すように、社畜の悲哀と一発逆転のギャップを前面に押し出した構成となっている。電子書籍ストアでは各巻の無料試し読みも提供されており、小説家になろう発コミカライズの多くと同様、まず無料話で読者を掴む展開が取られている。
なお、同じオーバーラップ系のなろう作品には多様なダンジョン・冒険ものが揃っており、本作もそうしたレーブル全体のラインナップの一角を占めている。
評価と作品の位置づけ[編集]
本作は、飽和状態にあるといわれる現代ダンジョンジャンルのなかで、「主人公=社畜」という設定の親しみやすさによって独自の立ち位置を確保している。異世界転生ものが「別世界でゼロからやり直す」爽快感を売りにするのに対し、本作は「今の自分の延長線上で、腐りかけた日常が壊れスキルによって塗り替えられる」という、より地に足のついた願望充足を提供する。
一方で、「壊れスキルで成り上がる」「妖精の相棒と旅をする」といった要素自体はジャンルの定番でもあり、転生したらバーバリアンになったやテムパル~アイテムの力~、回帰した最強プレイヤーは2周目で無双するなど、能力・アイテム・回帰といった「壊れ要素」を軸にした作品群と並べて語られることが多い。こうした王道要素を、社会人読者の共感を得やすい現代設定に落とし込んだ点が本作の持ち味といえる。
現代ダンジョンや生産・スローライフ系となろう作品を横断して読む層にとっては、ダンジョンのお掃除屋さんや冒険家になろう!〜スキルボードでダンジョン攻略〜、異世界メイドの三ツ星グルメ、辺境の魔法薬師 ~自由気ままな異世界ものづくり日記~、はじまりの町の育て屋さん、その門番、最強につきといった作品と佴せて楽しめる一作である。
余談[編集]
- 主人公を「証券会社の営業マン」という具体的な職業に設定している点は、なろう系ダンジョンものとしてはやや珍しい。金融の最前線で数字に追われる激務からの左遷という設定が、社畜的な閉塞感をより濃く演出している。
- 第1話のサブタイトル「左遷先はダンジョン?」は、通勤先がそのまま迷宮になるという理不尽を端的に言い表しており、社会人読者の「行きたくない職場」への感情をダークユーモアとして掬い上げている。
- タイトルの「壊れスキル」という表現は、ゲーム用語で「バランスを壊すほど強すぎる能力」を指すスラングであり、なろう系読者にとっては一目で作品の方向性が伝わるキャッチーな言葉選びとなっている。