概要
少女漫画とは、少女向けの漫画雑誌に掲載される漫画の総称である。少年漫画と同じく作品内容ではなく掲載誌の読者対象による分類で、りぼん・なかよし・ちゃお・花とゆめ・別冊マーガレットなどが代表的な掲載誌にあたる。
詳細
少女漫画を「恋愛を描く漫画」と説明すると実態から外れる。恋愛を扱う作品が多いのは事実だが、それは掲載誌の読者層に向けた結果であって定義ではない。ホラーもスポーツもファンタジーも少女誌から生まれており、区分を決めているのは載った雑誌である。
少女漫画が日本の漫画史で果たした役割として大きいのは、表現技法の開発である。1970年代前後に活躍した作家たちが、コマの枠線を消す、人物を枠の外にはみ出させる、背景に花や光を配置して心理状態を示す、モノローグを絵に重ねるといった手法を確立した。これらは現在では少年漫画を含むあらゆるジャンルで使われており、「少女漫画的な表現」として始まったものが漫画全体の共有財産になっている。
表現上の傾向
少年漫画と対比したときに指摘される特徴は次のとおりである。
- コマ割りが比較的自由で、コマの境界が曖昧になったり重なったりする。時間の流れを厳密に区切るより、情感の連続を優先する作りである。
- 擬音(オノマトペ)がほとんど使われない。音で動きを示す代わりに、表情と間で心情を示す。
- セリフが少なく、肝心な部分の解釈を読者に委ねる手法が多い。読者が行間を読むことを前提にしている。
この違いは「どちらが優れているか」ではなく、伝えたい情報の種類が違うことから来ている。動作の前後関係を正確に伝えたい作りと、感情の揺れを伝えたい作りでは、最適なコマ割りが逆になる。
三大少女漫画誌
小中学生向けの少女漫画誌としては、集英社のりぼん、講談社のなかよし、小学館のちゃおが「三大誌」と呼ばれる。3誌はいずれも御三家と呼ばれる大手出版社が出しており、長年ほぼ同じ読者層を奪い合ってきた。
部数の首位は時代によって入れ替わっている。1990年代前半はりぼんが圧倒的で、1994年には255万部に達した。2000年代前半からはちゃおが首位に立ち、2023年前後まで少女漫画誌で最大の部数を保った。なかよしは現在刊行中の漫画雑誌としては日本で最も古く、1954年12月の創刊である。
読者層の移動
少女漫画誌の部数は1990年代半ば以降に大きく減った。原因は雑誌単体の問題というより、読者の可処分時間がゲーム・携帯電話・YouTubeへ移ったこと、そして漫画を読む場所が雑誌から単行本と電子書籍アプリへ移ったことにある。
同時に、少女向けの物語そのものが減ったわけではない。むしろピッコマやLINEマンガといった縦読みの配信プラットフォームでは、恋愛や転生を軸にした女性読者向け作品が大きな比率を占めている。掲載の場が雑誌からアプリへ移り、「少女漫画」という雑誌区分の言葉だけが実態から取り残された、と整理するのが実情に近い。
よくある質問
- 少女漫画は女性しか読まない?
- 掲載誌の対象読者はそうだが、読者に男性も含まれる。逆に少年漫画に女性読者が多い作品もあり、区分と実際の読者層は一致していない。
- 少女漫画と女性漫画(レディースコミック)の違いは?
- 掲載誌の対象年齢の違い。少女誌は小中高生、女性誌は成人女性を対象とする。
- 三大少女漫画誌とは?
- りぼん(集英社)、なかよし(講談社)、ちゃお(小学館)の3誌を指す。
- 少女漫画の部数はなぜ減った?
- 読む時間の奪い合いと、読む場所が雑誌からアプリ・単行本へ移ったことの両方による。作品の需要が消えたわけではない。
余談
- 目に星を描く表現は少女漫画の記号として知られるが、これは瞳に光を入れることで視線の向きと感情を同時に示す技法で、印刷の網点が粗かった時代に表情を伝えるための工夫として発達したという説明がある。
- 付録が少女漫画誌の競争軸になったのは、作家のイラストがそのまま文房具になるためで、読者にとっての価値が「読む」から「持つ」「使う」「見せ合う」に広がった。紙でなければ成立しない要素を抱えているため、電子化が単純な置き換えにならない分野でもある。
- 美少女戦士セーラームーンのように、少女漫画誌発の作品がアニメを通じて世界的に広まり、海外では「魔法少女もの」という別のジャンル名で受容された例がある。日本の雑誌区分は輸出先ではほとんど機能していない。