| Danbooru Danbooru(段ボール) | |
|---|---|
![]() Danbooruのロゴ(出典:ウィキメディア・コモンズ) | |
| 略称 | ダンボール、Dan |
| 種類 | 非営利の画像掲示板(Booru型画像データベース) |
| 市場情報 | 非上場 |
| 業種 | 画像共有サイト |
| 設立日 | 2005年5月24日 |
| 年齢 | 21周年 |
| 設立者 | Albert |
| 代表者 | evazion(2019年12月〜) |
| 所有者 | evazion |
| 関係する人物 | Albert(創設者)、evazion(現管理者) |
| 別名 | ダンボール、Booruの元祖 |
| リンク | https://danbooru.donmai.us/ |
概要[編集]
Danbooru(ダンボール)とは、2005年に開設された、アニメ・漫画・ゲーム系のイラストを中心とするタグ検索型の画像掲示板である。画像に細かなタグを付けて分類・検索する「Booru(ブール)」型サイトの元祖であり、そのタグ付きデータが画像生成AIの学習に使われたことで、日本のイラストレーターとの間で大きな論争を呼んだ。
詳細[編集]
名前の由来[編集]
Danbooruという名前は、日本語の「段ボール(danbōru)」をそのままローマ字にしたものである。英語の「board(掲示板)」を日本語で「ボード」と言うことにかけた洒落で、「掲示板(ボード)」→「段ボール」というダジャレが名前の正体である。運営ドメインに含まれる「donmai」も、日本語の「ドンマイ(don't mind)」から取られたとされる。
この「booru」の部分がのちに一般名詞化し、同じ仕組みを持つサイト全般が「Booru」「Booru型画像掲示板」と呼ばれるようになった。日本語の単語が英語圏のネットスラングとして定着した珍しい例と言える。
サイトの性格[編集]
Danbooruは、ネット上で公開されているイラストを利用者が集めて投稿し、共同でタグ付けしていく、いわば「アニメ絵の巨大な検索可能アーカイブ」である。Googleの画像検索では作品名やキャラクター名で絵を探しにくいのに対し、Danbooruでは「誰が描いた・何の作品の・どのキャラが・どんな格好で」という条件を掛け合わせて探せる点が支持された。投稿される画像の主な出所はPixivとX (SNS)(旧Twitter)で、作者自身が投稿するケースはごく一部にとどまる。
運営は非営利で、アメリカ合衆国のDMCAに基づく削除手続きを設けている。サイトのソフトウェアはBSDライセンスのオープンソースとしてGitHubで公開されている。全年齢向けから成人向けまでの画像を扱うが、禁止するのではなく、レーティングとタグで分けてフィルタリングさせる方針をとっている。
規模[編集]
Danbooruの投稿数は増え続けており、2025年12月時点で1000万枚を超え、2026年8月16日には投稿番号1200万番に到達した。作品別では、2024年8月に初音ミクのタグが付いた投稿が10万件に達し、2026年1月には東方Projectが、「オリジナル」以外の版権タグとして初めて100万件を突破した。
こうした数字からもわかるように、Danbooruに集まる画像の大半は日本の作品の二次創作イラストであり、「日本のファンアート文化を海外から一覧するための窓口」として機能してきた。
歴史[編集]
開設と初期(2005〜2007年)[編集]
Danbooruは、Albertと名乗るプログラマーが友人向けの画像置き場として作ったのが始まりとされる。公式のサイト史によれば、サイトの開設は2005年5月17日で、最初の画像が投稿された5月24日がサイトの「誕生日」とされている。
2007年3月、Albertはサイトの改良のためにDanbooruを一時的に閉鎖し、その際に元のソースコードを公開した。このソースコードの公開が決定的な転機となり、Danbooruの仕組みをコピーした派生サイトが次々と誕生した。Booru型サイトが一つのジャンルとして確立したのはこの時期である。
タグ検索の制限と有料会員制[編集]
2007年12月ごろ、サーバー負荷への対策として、一般ユーザーが複数のタグを組み合わせて検索できる数に制限がかけられた。より多くのタグを同時に検索できる有料アップグレード(Gold/Platinum)が用意され、これが非営利サイトの運営資金源の一つとなってきた。
ただし、成人向けの画像を扱うことから決済事業者との関係は安定せず、2022年5月にはStripe、同年6月にはShopifyから利用を停止され、有料アップグレードは公式史の記録時点でも停止されたままとなっている。「成人向けコンテンツを扱うサイトは決済で首を絞められる」という、多くのアダルトサイトに共通する構図がここにも表れている。
管理者交代[編集]
2019年12月6日、創設者のAlbertが管理者を退任し、開発に携わっていたevazionを後継者に指名した。以降はevazion体制のもとで運営が続いている。サイトの公式年表では、この時期以降を「evazion時代」と呼んでいる。
タグシステム[編集]
厳密なタグ付け[編集]
Danbooruの最大の特徴は、利用者が共同で維持するタグ体系の厳密さである。タグは次のようなカテゴリに分けられ、サイト上では色分けされて表示される。
- アーティスト(作者):絵を描いた人の名前
- コピーライト(版権):原作となった作品名
- キャラクター:描かれているキャラクター名
- 一般:髪の色、服装、構図、表情など画像の中身
- メタ:解像度、翻訳の有無、元画像の有無などの情報
1枚の画像に数十個のタグが付くことも珍しくなく、タグの表記ルールや類義語の統合、上位・下位タグの関係づけまで、ウィキ形式のガイドラインで細かく定められている。この「異常なまでに几帳面なタグ付け」が、後に機械学習の分野で重宝される理由になった。
レーティング[編集]
画像には「General(全年齢)」「Sensitive(やや際どい)」「Questionable(要注意)」「Explicit(成人向け)」の4段階のレーティングが付けられる。利用者はブラックリスト機能で見たくないタグを非表示にでき、全年齢の画像だけを表示する姉妹サイト「Safebooru」も用意されている。Safebooruは2009年に開設され、のちに名称やドメインの変更を経ている。
投稿ルール[編集]
Danbooruの投稿ルールでは、完全にAIで生成された画像(プロンプト入力以外に人の手が入っていないもの)、有料支援サイトの特典など有償で頒布された画像、商業アニメ・漫画の公式素材、実在の人物を扱う不適切な写真などが禁止されている。Fantiaやpixiv FANBOXのような有料コンテンツの転載が禁止されているのは、有料支援サイトの特典を無断公開するKemonoのような転載サイトと一線を画す点として、日本の絵師にとって重要な点である。
また、作者本人から要請があった場合には「banned artist(掲載禁止作者)」として登録し、その作者の作品を今後投稿できなくする仕組みもある。
派生サイト[編集]
2007年のソースコード公開以降、Danbooruの仕組みを使った派生サイトが数多く生まれた。代表的なものは以下のとおりである。
- Gelbooru:2007年7月16日開設。Danbooruの代表的なクローンサイトで、かつてはDanbooruの投稿が自動的に取り込まれていた(2013年のDanbooru側の改修で自動連携は止まった)。タグ検索数の制限がなく、投稿の審査もDanbooruより緩いため、総投稿数ではDanbooruを上回る。
- e621:ケモノ(ファーリー)系に特化したDanbooruのフォークで、Booru型サイトの中でも特に大規模なものの一つ。
- Rule34系の同名サイト:Booru型の仕組みを使い、成人向けの二次創作に特化したサイト群。詳細はRule34を参照。
- 壁紙系Booru:高解像度のイラストや壁紙を中心とする派生サイトも複数存在し、DanbooruをRubyで書き直した派生ソフトウェアが使われている。
このように、Danbooruは「一つのサイト」であると同時に、ネット上の画像アーカイブ文化全体の「共通規格」を作った存在でもある。
生成AIとの関係[編集]
機械学習の教材としてのDanbooru[編集]
Danbooruの厳密なタグ付きデータは、早くから機械学習の研究者に注目されていた。2017年から2021年にかけては、Danbooruの画像とタグをまとめた研究用データセット「Danbooru20xx」シリーズが有志によって公開され、2021年版では2005〜2021年の490万枚以上の画像と1億6200万件以上のタグ注釈が含まれていた。
これらは、画像の自動タグ付け、アニメ顔の検出、画像分類などの研究に使われた。特に画像からDanbooru形式のタグを推定するツール「DeepDanbooru」は、のちに画像生成AIの周辺ツールとしても広く使われることになる。
Stable DiffusionとNovelAI[編集]
2022年8月にオープンソースの画像生成AI「Stable Diffusion」が公開されると、それを追加学習させてアニメ調の絵を生成できるようにしたモデルが相次いで登場した。2022年9月に公開された「Waifu Diffusion」はDanbooruの画像で追加学習したモデルとして知られている。
同年10月3日には、アメリカのAnlatan社が有料の画像生成サービス「NovelAI Diffusion」を開始した。NovelAIは開始前の9月25日の時点で「Danbooruで学習しているため、キャラクター名とその見た目も学習している」と公表しており、プロンプトにDanbooruのタグをそのまま書けば狙ったキャラクターや構図を出せることが、その高い性能の源泉だった。Danbooruのタグ体系が事実上「画像生成AIの言語」になった瞬間である。
さらにサービス開始直後の10月上旬にはNovelAIのモデルデータが流出し、これを基にした派生モデルがネット上に広まったことで、Danbooru由来の学習データの影響はNovelAIの有料サービスの外にまで拡散した。
絵師側の反発とDanbooruの声明[編集]
NovelAIの登場は、日本のイラストレーターを中心に強い反発を招いた。批判の焦点は、「そもそも無断転載サイトであるDanbooruの画像を学習している」「それを有料サービスで収益化している」「特定の絵師の名前をプロンプトに入れると画風をまねた絵が出せる」といった点にあった。VTuberやブルーアーカイブなどの人気キャラクターのイラストが大量に生成されてPixivに投稿されるようになったことも、絵師側の危機感を強めた。
これを受けてDanbooruは2022年10月5日までに声明を発表し、「NovelAIとは提携しておらず、彼らの行為を支持も容認もしない」と表明した。あわせて、作者が自分の絵の削除を求める場合は本人確認のうえで対応すると案内したが、「Danbooruから画像を削除しても、NovelAIがすでに学習した情報は消えない」「NovelAIはPixivやTwitterからも直接画像を集めている」とも説明し、AIの学習をやめてほしい作者にはNovelAIに直接連絡することや、AI学習のオプトアウトを申告できる外部ツールを利用することを勧めた。
Danbooru自身は、完全なAI生成画像の投稿を禁止する立場をとっている。「AIの教材を最も多く提供したサイト」が「AIの絵を受け付けないサイト」でもあるという、ねじれた構図になっている。
無断転載問題と日本のイラストレーター[編集]
無断転載サイトとしての側面[編集]
Danbooruは、作者の許可を得ずにファンアートを掲載していることを自ら認めている。投稿には元画像の出典URLを記載するルールがあり、英語圏では「出典があるなら転載ではなく共有」という感覚で受け止められてきたが、日本の絵師の多くにとっては紛れもない「無断転載」である。
この感覚の違いから、日本のイラストレーターの間では、SNSのプロフィールや作品のキャプションに英語で「Do not repost(無断転載禁止)」と書く習慣が広まった。Danbooruへの削除依頼の方法を解説する日本語の記事も多く書かれている。成人向けの同人誌を丸ごと掲載するE-HentaiやNhentaiのような転載サイトとは異なり、Danbooruが扱うのは主に一枚絵のイラストだが、「作者の知らないところで作品が流通している」という点では同じ問題を抱えている。削除依頼の手続きは、かつては非公式な依頼で処理されていたが、2022年ごろからDMCA(デジタルミレニアム著作権法)に基づく正式な手続きに移行した。
Pixivとの関係[編集]
Danbooruの画像の最大の供給源はPixivとX(旧Twitter)である。Pixivはもともと日本語のタグが中心で、英語圏の利用者には検索しにくかった。そこでDanbooruが、日本語のタグ文化を英語に「翻訳」して海外のファンに届ける中継点の役割を果たしてきたという見方もある。
一方でPixivは、利用規約で他人の作品の無断転載を禁止しており、Danbooruの存在はPixivの絵師にとって長年の悩みの種だった。2022年のNovelAI騒動を経て、Pixivは同年10月20日にAI生成作品の取り扱い方針を発表し、10月31日からAI生成作品を検索結果から除外できるフィルター機能を導入した。Danbooru由来のAIが引き金となって、日本最大のイラストSNSの仕組みが変わったことになる。
日本の法律との関係[編集]
Danbooruは海外で運営されており、日本の法律に基づいて直接削除を強制することは難しい。日本の著作権法では、2018年の改正で設けられた第30条の4により、情報解析を目的とする著作物の利用が原則として認められており、AIの学習そのものについては日本が「機械学習に寛容な国」とされる一因になっている。
ただし、学習元が無断転載された画像である場合や、特定作者の作風を狙って出力する場合の扱いについては議論が続いており、文化庁は2024年3月に「AIと著作権に関する考え方について」を取りまとめている。Danbooruは、日本の絵師にとって「海外の無断転載」と「AI学習」という二つの問題が交差する象徴的な存在になっている。
炎上とバズ[編集]
- NovelAI騒動(2022年10月):NovelAIがDanbooruで学習していたことが広く知られ、日本のイラストレーターを中心に大炎上した。Danbooruが「NovelAIとは関係ない」と声明を出す事態となり、ITmediaやGIGAZINEなど国内のIT系メディアでも大きく報じられた。
- Pixivの方針転換:同騒動の直後、PixivがAI生成作品の区分とフィルター機能を導入したことも話題となった。
- 決済停止:2022年に相次いで決済事業者から利用を停止され、有料アップグレードが止まったことは、成人向け画像を扱う非営利サイトの運営の難しさを示す出来事として受け止められた。
余談[編集]
- 名前の由来がダジャレであるため、派生サイトもそれにならって「○○booru」と名乗るのが半ば伝統になっている。「Gelbooru」「Safebooru」などの名前はすべてこの流れに連なる。
- 画像生成AIのプロンプトで「1girl」「solo」「long hair」のような独特の英単語の並びが使われるのは、Danbooruのタグの表記ルールがそのままAIの学習に使われたためである。AIユーザーの間で「Danbooruタグ」という言葉が定着したのもこのためである。
- 東方Projectの投稿が100万件を超えたのは、原作者が二次創作に寛容な方針をとっていることで知られる同作の、ファン創作の厚みを物語る数字でもある。
- 決済事業者から相次いで締め出された結果、世界最大級のアニメ画像アーカイブが「お金を払いたくても払えない」サイトになっているのは、成人向けコンテンツと決済業界の関係を象徴するエピソードである。
