nhentai
エヌヘンタイ
国家 不明(運営会社は米デラウェア州のLLCとされる)
種類 同人誌・成人向け漫画の海賊版サイト
設立日 2014年6月26日
年齢 12周年
代表者 非公開
所有者 X Separator LLC(2025年の訴訟手続で判明)
リンク 掲載なし(違法サイトのため)


概要[編集]

nhentai(エヌヘンタイ)とは、日本の同人誌や成人向け漫画を無料で閲覧できる、2014年開設の英語圏向け海賊版サイトである。作品ごとに振られる6桁前後の数字IDがネットミームになるほど知られ、2024年には米国の出版社PCR Distributingから著作権侵害で提訴されている。

詳細[編集]

沿革[編集]

nhentaiは2014年6月26日に開設された。英語版ウィキペディアによれば、成人向け漫画を無料で一覧・閲覧できるカタログ型のサイトとして始まり、開設から約10年間は運営者がまったく分からない匿名運営が続いた。日本の同人誌・成人向け漫画を、原語版のほか英語・中国語・韓国語の翻訳版を含めて大量に掲載している点が特徴である。

英語圏のミーム百科事典Know Your Memeは、北米の成人向け漫画配信サービスFAKKUが2015年ごろからコンテンツの有料化を進めたことが、無料で多言語の作品を読めるnhentaiの人気を押し上げた一因になったとしている。英語版ウィキペディアは、nhentaiが利用者からの直接投稿を受け付けるのではなく、ExHentai(E-Hentaiの姉妹サイト)やHitomi.laといった既存の集積サイトから作品を取り込む形で目録を作っていると説明している。

2024年8月、米カリフォルニア州の成人向けコンテンツ企業PCR Distributingが著作権侵害でnhentaiを提訴し、同年9月上旬にはサイトが一時アクセス不能になって英語圏のSNSで大きな騒ぎとなった(後述)。サイトは短期間で復旧し、2025年には訴訟の過程で運営会社が米デラウェア州の「X Separator LLC」であることが明らかになった。2026年時点でもサイトは稼働しており、訴訟は継続中とされる。

nhentaiの主な沿革
年月 出来事
2014年6月 サイト開設
2018年 作品IDの「6桁の数字」がRedditなどでミーム化し始める
2020年5月 日本のNijiGEN(ニジゲン)が、同人誌の違法アップロードが続く海外の主要サイトとして名指し
2020年〜2022年 PCR Distributingの担当者がnhentaiと広告・提携をめぐるメールをやり取り(nhentai側の主張)
2024年夏 PCR側がCloudflareに対し、運営者特定のためのDMCA召喚状を請求
2024年8月30日 PCR Distributingがカリフォルニア州中部地区連邦地裁に提訴
2024年9月上旬 サイトが一時アクセス不能になり騒動に。短期間で復旧
2024年12月 ウクライナが遮断対象のドメインに指定
2025年1月 nhentai側が訴えの却下を申し立て
2025年4月 却下申立てと匿名性維持のための保護命令申立てがいずれも退けられる
2025年11月 運営会社X Separator LLCが答弁書と反訴を提出

作品番号と検索の仕組み[編集]

nhentaiでは、登録された作品(ギャラリー)ごとに連番の数字IDが振られる。登録数が増えるにつれてIDは6桁に達し、この数字だけで特定の作品を指せることが後述のミームの土台になった。掲載総数について公式な数字は公表されていないが、日本語の解説記事では16万作品以上を掲載するとされたこともある。

作品の分類は、作品に付けられるタグを種類ごとに分ける方式をとる。サードパーティ製のAPIライブラリの仕様によれば、タグは一般的な内容タグ(tags)のほか、元ネタの作品を示す「parodies」、登場キャラクターを示す「characters」、作者を示す「artists」、サークルや翻訳グループを示す「groups」、言語を示す「languages」、同人誌・漫画などの区分を示す「categories」に分かれている。作品ごとにページ数やお気に入り登録数、投稿日時が記録され、タイトルも英語表記・日本語表記・簡略表記の3種類が持たれる。

この仕組みはE-Hentaiの名前空間方式のタグと似ており、作者名・サークル名・元ネタから作品を横断的にたどる索引として機能している。任意のアカウント登録をすると、ブックマーク(お気に入り)やコメント、閲覧傾向に応じた作品の表示などが使えるようになる。サイトのインターフェースは英語である。

翻訳文化[編集]

nhentaiの掲載作品の多くは日本語の原作だが、英語圏での知名度を支えてきたのは有志による翻訳版である。日本の同人誌や成人向け漫画を、ファンが無許可で英語・中国語・韓国語などに翻訳して配布する「スキャンレーション」はE-Hentaiなどで古くから行われており、nhentaiはそうした翻訳版を言語タグで整理して一か所で読める場所として利用されてきた。

翻訳を手がけるグループの名前は「groups」タグとして作品に付けられることがあり、翻訳者側にとっても名前を知られる場になってきた側面がある。ただし、翻訳版も原作者の許諾を得ていない点では原語版の無断転載と変わらず、翻訳したこと自体が翻案権の侵害になり得る。正規の英訳版を販売する事業者にとっては、無料の非公式翻訳と競合する構図になる。後述の訴訟の原告PCR Distributingも、日本の成人向け作品の英語版を扱う事業者である。

「6桁の数字」ミーム[編集]

nhentaiの作品IDは、英語圏で「six digits(6桁)」「the numbers」と呼ばれるインターネットミームになっている。作品の出典を尋ねる英語圏のネットスラング「sauce(source=ソースのもじり)」に対して6桁の数字だけで答える、あるいは脈絡なく数字だけを書き込み、意味を知っている者だけが反応するといった使われ方をする。特に有名になった番号は「神の数字(god numbers)」などと呼ばれる。

Know Your Memeによれば、記録に残る最も古い例は2018年2月のRedditへの投稿で、同年8月に別の利用者が実在のIDをもじった冗談を投稿したことで広まり始めた。2019年3月には「数字がびっしり書かれたノート」を題材にした投稿が話題になり、同年6月にはFacebookのページでも数字の共有が行われ、7月には数字の共有専用のサブレディットまで作られた。人気のピークは2020年ごろとされる。笑いの中心は、事情を知らない人にはただの数字の羅列にしか見えない点にあり、アニメ系のミームコミュニティで内輪ネタとして定着した。

訴訟(PCR Distributing対nhentai)[編集]

原告のPCR Distributingは、米カリフォルニア州サンディエゴに拠点を置く、成人向けビジュアルノベルの卸売・販売会社で、「JAST USA」「J18」などのブランドで日本の成人向け作品の英語版を扱っている。同社は2024年夏、運営者を特定するため、nhentaiが利用していたCloudflareに対してDMCA(米国デジタルミレニアム著作権法)に基づく召喚状を請求した。nhentai側はこの召喚状に異議を申し立てている。

PCRは2024年8月30日、米連邦地方裁判所カリフォルニア州中部地区(Central District of California)に、運営者を「John Does 1-10」とする著作権侵害訴訟を起こした(事件番号2:24-cv-07453)。訴えは直接侵害のほか、代位責任・寄与侵害・侵害の誘引を含み、「送った削除通知のURLは100%残ったままだ」として、nhentaiは侵害ファイルを自らホストしており、利用者投稿型サイト向けのDMCAセーフハーバーの対象にならないと主張した。損害賠償に加え、ドメインの移転や、それが認められない場合は米国内の検索エンジン・ISPなどを通じた遮断を求めている。TorrentFreakによれば、nhentai側は2023年10月に非公開の和解を打診したが、PCRに拒否されていた。

nhentai側は、2020年ごろからPCRの担当者と広告出稿や提携をめぐるメールをやり取りしており、作品の掲載について書面で許可を得ていたと反論した。米ギズモードが報じた裁判資料によれば、2020年のメールには「これは削除要請でもDMCAでもない」という趣旨の文言があり、その後PCR側がバナー広告の出稿や掲載位置について打診したとされる。PCR側はこのメールについて、正式なライセンスの同意には当たらないと主張している。

2025年1月、nhentai側はPCRの著作権の帰属や著作権登録の範囲、出訴期限、事前の許可などを理由に訴えの却下を申し立てたが、同年4月に却下申立ては退けられ、運営者の身元を伏せたまま手続を進めるための保護命令申立ても認められなかった。これにより運営会社が米デラウェア州のX Separator LLCであることが公になった。同年11月、X Separatorは答弁書で侵害の主張を全面的に否認したうえで、PCRが掲載を認めておきながら、その後に著作権登録を進めて訴訟に備えたとして、詐欺・故意の不実表示・過失による不実表示を理由に反訴を起こし、50万ドルを超える損害賠償と懲罰的賠償、陪審裁判を求めた。2026年時点で、判決や和解は報じられていない。

2024年9月の一時停止騒動[編集]

提訴が報じられた直後の2024年9月上旬(3〜5日ごろ)、nhentaiにアクセスできなくなり、英語圏のSNSでは「閉鎖された」「訴訟で潰された」といった投稿が相次いだ。同時期には他の海賊版アニメサイトの閉鎖も続いていたため、それらと重ねて語るミーム画像も多く作られた。実際にはサイトは短期間で復旧しており、Know Your Memeは、管理者側の説明としてDNS設定の変更が停止の原因だったとする情報を紹介している。停止と訴訟との直接の因果関係は公式には説明されていない。

アクセス規模[編集]

NijiGENが2020年5月に公表した半年間の平均値では、nhentaiの月間アクセスは約1億812万回で、名指しされた3サイト(E-Hentai約3,540万回、Hitomi.la約3,048万回)の中で最も多かった。TorrentFreakは2024年の提訴時に月間約7,900万回、2025年の却下申立て時には月間約8,000万回の訪問があると報じている。英語版ウィキペディアによれば、2024年11月時点の世界順位は145位、同年12月の月間訪問数は約8,400万回で、国別では日本が最も多く、米国が約17.6%で2位とされる。英語圏向けのサイトでありながら、最大の利用国は日本となっている。

よくある疑問[編集]

Q. 運営者は誰か。

A. 長年匿名で運営されていたが、2025年4月に米連邦地裁が運営者の匿名性を維持する申立てを退けたことで、運営会社が米デラウェア州の「X Separator LLC」であることが明らかになった。代表者などの個人名は公表されていない。

Q. 2024年に閉鎖されたのではないか。

A. 2024年9月上旬に一時的にアクセスできなくなったが、短期間で復旧している。訴訟は続いているものの、2026年時点でサイトは稼働している。

Q. 訴訟はどうなったのか。

A. 2024年8月にPCR Distributingがカリフォルニア州中部地区の連邦地裁に提訴し、nhentai側の却下申立ては2025年4月に退けられた。同年11月にはnhentai側が「掲載の許可を得ていた」として50万ドル超を求める反訴を起こしており、判決や和解は報じられていない。

Q. 「6桁の数字」とは何か。

A. nhentaiの作品IDを指す英語圏のネットスラングである。作品の出典(sauce)を数字だけで示す内輪ネタとして、2018年ごろからRedditなどで広まった。

Q. E-HentaiやHitomi.laと同じ運営なのか。

A. 同じ運営であることを示す公表情報はない。英語版ウィキペディアは、nhentaiがExHentaiやHitomi.laなどから作品を取り込んでいると説明しているが、運営主体はそれぞれ別とみられている。

Q. 見るだけなら日本で違法になるのか。

A. 2021年1月施行の改正著作権法で違法とされたのは、海賊版と知りながら「ダウンロード」する行為であり、単に閲覧するだけの行為は対象外と解説されている。ただし画像を保存すればダウンロードにあたり得る。

日本の法制度との関係[編集]

日本の著作権法では、2021年1月1日施行の改正により、違法にアップロードされたと知りながらダウンロードする行為の違法化の対象が、音楽・映像から漫画・書籍など著作物全般に拡大された。nhentaiの主な掲載物である同人誌・成人向け漫画もこの対象に含まれる。正規版が有償で提供されている作品を反復・継続してダウンロードした場合は刑事罰の対象となり、法定刑は2年以下の拘禁刑(2025年6月の刑法改正前は懲役)もしくは200万円以下の罰金、またはその併科である。告訴がなければ起訴されない親告罪とされる。

同人誌は既存作品の二次創作であることが多いが、二次創作物にも創作性があれば独自の著作物として保護されるため、「二次創作だから無断転載しても問題にならない」とは限らない。有志による翻訳版についても、翻訳は翻案にあたるため、原作者の許諾なく翻訳・公開することは翻案権や公衆送信権の侵害になり得る。

なお、nhentaiに対する訴訟は米国の出版社が米国の裁判所で起こしたもので、日本の権利者がnhentaiを相手に国内外で訴訟を起こしたという報道は確認されていない。

利用リスク[編集]

Hitomi.laと同様、違法アップロードと知りながら作品をダウンロードすると、日本の著作権法違反となり得る。翻訳版も例外ではない。日本語の解説記事では、広告経由のマルウェア感染やフィッシング、偽の警告表示などの被害が起こり得ることも指摘されている。

運営会社は判明したものの、訴訟の結果によってはドメインの移転や遮断が命じられる可能性があり、サイトが突然使えなくなることは2024年9月の騒動でも現実に起きている。ウクライナでは2024年12月に遮断対象に指定されたほか、英語版ウィキペディアによれば韓国・インドネシア・インドなど複数の国で遮断の対象となっている。

海賊版サイトでの閲覧は、作者や同人作家の売上には結びつかない。正規に作品を楽しむ手段としては、FANZA同人やDLsiteなどの正規販売サイト、作家が直接頒布するコミックマーケットなどの即売会、Fantiaやpixiv系の支援サービスなどがある。

日本の権利者・業界の動き[編集]

同人誌の電子販売などを手がけるNijiGEN(ニジゲン)株式会社は、2020年5月21日に公表した文章で、同人誌の違法アップロードが続く海外の主要サイトとしてnhentai・E-Hentai・Hitomi.laの3サイトを名指しした。3サイトの月間アクセス合計は約1億7,400万回で、漫画村の被害額算定(1アクセスあたり500円)を参考に、同人誌は単価が高いとして1アクセスあたり1,000円と仮定し、被害額を月間1,740億円、年間約2兆880億円と試算している。

同社は、違法アップロードが続く背景として、海外からの需要が世界的に拡大する一方で正規版の供給が追いついていないこと、電子版にセキュリティ対策が乏しいこと、売り切れると入手が難しくなることを挙げた。そのうえで、海外の読者向けに英語に対応した同人誌の正規頒布サービス「NijiGEN Portal」を2020年6月1日に始めると発表している。

個人の同人作家が海外の匿名サイトを相手に法的措置をとることは、費用や手続の面で現実的に難しいとされてきた。2024年以降の米国での訴訟は、日本の作品の英語版の権利を持つ海外事業者が原告となった点で、従来とは異なる動きとして注目された。

余談[編集]

  • 作品IDの「6桁の数字」は、英語圏では作品の出典を尋ねる「sauce?」への返答として定着しており、事情を知らない人には意味の分からない数字の羅列に見えることがミームの面白さとされる。
  • 2024年の訴訟で提出された資料によれば、原告側の担当者が過去にnhentaiへ広告出稿を打診していたとされ、海賊版サイトと正規事業者が「宣伝先」として接点を持っていた構図が裁判で争点になった。
  • Know Your Memeは、nhentaiの運営者がSNS上でユーモアを交えた投稿を行い、一般のウェブサービスのように利用者と交流していると記している。
  • 英語圏向けのサイトでありながら国別のアクセスでは日本が最多で、日本の作品が海外経由で日本の利用者に読まれるという逆輸入の構図になっている。
  • NijiGENの2020年の試算では、3サイトの中でnhentaiのアクセスが突出しており、E-HentaiとHitomi.laの合計を上回っていた。

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