| 龍幸伸 たつ ゆきのぶ/Yukinobu Tatsu | |
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![]() 代表作『ダンダダン』のタイトルロゴ(出典:Wikimedia Commons、作成:Nouzen、CC BY-SA 4.0) | |
![]() 台湾・高雄の駁二芸術特区に設けられた『ダンダダン』の期間限定ショップ(2025年4月、出典:Wikimedia Commons、撮影:Allervous、CC BY-SA 4.0) | |
| ID | @TatuYukinobu(X) |
| 出身地 | 埼玉県 |
| 国籍 | 日本 |
| 職業 | 漫画家 |
| フォロワー数 | X 約30万人(2026年10月時点) |
| 活動期間 | 2010年 - |
| 代表的な実績 | 『ダンダダン』『正義の禄号』『FIRE BALL!』 |
| 受賞 |
第71回小学館漫画賞(2026年・『ダンダダン』) 令和7年度芸術選奨文部科学大臣新人賞 メディア芸術部門(2026年) |
| 関連活動 | 藤本タツキ・賀来ゆうじのアシスタント |
| リンク | X(@TatuYukinobu) |
概要[編集]
龍幸伸(たつ ゆきのぶ)とは、埼玉県出身の日本の漫画家で、『少年ジャンプ+』連載のオカルトバトルラブコメ『ダンダダン』の作者である。
詳細[編集]
コンビニのレシート裏から始まった漫画家人生[編集]
子どものころから絵が得意で、小学生時代には上山徹郎の『LAMPO -THE HYPERSONIC BOY-』を模写していたという。お小遣いで初めて買った漫画は鳥山明の『ドラゴンボール』で、本人はこれを「絵を描き始めた原点」として挙げている。中学生になると三浦建太郎の『ベルセルク』、皆川亮二の『ARMS』『スプリガン』、大友克洋の『AKIRA』といったアクション・バトル系にどっぷりハマった。
ただ、最初から漫画家を目指していたわけではない。就職氷河期で仕事が見つからず、コンビニでアルバイトをしていたころ、レシートの裏に描いていた絵を店長に見られ「マンガ家になったら?」と勧められた。これが21歳ごろの話で、ここから本格的に漫画を描き始めた。人生を変えたのはコンビニの店長の一言という、なかなかドラマチックな出発点である。
講談社での連載デビューと二度の終了[編集]
最初に描いたのは、ガンダムを題材にした100ページの漫画。これを『ガンダムエース』編集部に持ち込んだところ、ストーリーよりも絵が評価され、漫画家・曽野由大のアシスタントに誘われた。朝10時から翌朝5時まで作業するハードな現場で、ペンの使い方やベタ入れといった基礎をたたき込まれたという。
約3年間アシスタントを続けながら持ち込みも並行し、講談社『月刊少年マガジン』の新人賞で佳作を受賞。2010年9月、25歳のときに同誌で『正義の禄号』の連載を始め、プロデビューを果たした。しかし同作は2011年4月に終了し、2013年2月に始めた高校野球漫画『FIRE BALL!』も2014年8月に完結(単行本全5巻)。デビューから数年で2本の連載を経験したものの、ヒットには結びつかなかった。
林士平との出会いと「最強のアシスタント」時代[編集]
転機は2015年1月。『ジャンプSQ.』編集部に電話で持ち込みをしたところ、担当になったのが、のちに『チェンソーマン』『SPY×FAMILY』などを手がけることになる編集者・林士平だった。同誌で読切を掲載したあと、『週刊少年ジャンプ』での連載を目指したが、企画はなかなか通らなかった。
その間、龍は藤本タツキの『ファイアパンチ』『チェンソーマン』や、賀来ゆうじの『地獄楽』の現場でアシスタントを務めた。報道では両作のメインアシスタントだったと紹介されている。林によれば、「自分が面白いと思うものを楽しんで描く」という二人の姿勢が龍に刺激を与え、才能がさらに磨かれたという。藤本は龍を「最強のアシスタント」と呼んだとも伝えられている。
『ダンダダン』誕生のきっかけ[編集]
ジャンプ系での連載を目指していた時期、龍は企画会議をなかなか通過できなかった。2019年夏には「キョンシーもの」の企画を出したがボツに。ここで一時は漫画が描けなくなるほど追い込まれたという。
そこで林がかけたのが「何でも好きなように描いてほしい」という言葉だった。龍が自分のネタ帳を見返すと、そこには「映画『貞子vs伽椰子』が面白い」というメモが残っていた。同作の「バケモノにはバケモノをぶつけるんだよ!」という台詞を思い出し、「良い意味で馬鹿っぽくてすごく楽しめた」感覚がよみがえった。幽霊に宇宙人やUMAをぶつけたらどうなるか――この発想が、のちの『ダンダダン』の骨格になった。
ちなみに『貞子vs伽椰子』は、『リング』の貞子と『呪怨』の伽椰子という二大ホラーアイコンを対決させた作品。ホラー映画の「夢の対決」から、オカルトとSFが正面衝突する漫画が生まれたわけである。
2021年4月6日、『ダンダダン』は集英社のウェブ漫画サービス『少年ジャンプ+』で連載を開始した。第1話は公開から2日で100万PVを突破し、さらに3話連続で公開1週間以内に100万PVという同サイト初の記録を打ち立てた。藤本タツキ・賀来ゆうじの両作品の終わりが見えてきたタイミングでの連載開始だったとされる。龍にとっては3本目の連載作品で、デビューから約11年を経てのブレイクとなった。
作風と画力[編集]
龍の代名詞は、なんといっても異常な画力である。かつての師匠である藤本タツキは「いま、少年漫画でトップクラスの画力」、賀来ゆうじは「総合的な画力が最も高い人」と評している。担当編集の林も、龍は絵を描くこと自体を楽しんでいるため上手さが「常軌を逸して」おり、「作家さんの間でも話題になる」と語っている。
本人が特に大事にしているのは見開き。『ダンダダン』はスマートフォンで読まれることが多いウェブ連載だが、それでも見開きでの演出には工夫を凝らしている。ペンについては、「力強さと繊細さで線の強弱が必要」な場面ではゼブラのGペンが欠かせないという。
ジャンル面では「ホラーとギャグって隣り合わせだ」という考えを持ち、『ダンダダン』では「ホラーの中にある笑いの要素を前面に押し出していこう」と意識して描いている。怪異が本気で怖いのに、次のコマでは全力でふざけている、という独特の緩急はこの考え方から来ている。
キャラクターの台詞や行動については、「このキャラクターならこういうことをしゃべるだろう」「こいつはこういう行動はしないだろう」とキャラの側から考えて組み立てていくタイプ。表現について編集長から指摘を受けることもあるが、「そこに気を使って作品が中途半端な感じになるのは嫌」とし、自分の中のリアリティを優先している。
『ダンダダン』の制作は、アシスタント5人体制で行われていると伝えられている。
影響を受けた作品[編集]
龍のルーツには、少年漫画と特撮の両方がある。
- 上山徹郎『LAMPO』 - 小学生時代に模写していた作品。好きな作家として上山の名前を挙げている。
- 三浦建太郎『ベルセルク』 - 「こんなに何度も読んでしまうマンガはほかにない」と語るほどの愛読書。世界観の構築と表現力に強い影響を受けた。
- 皆川亮二『ARMS』『スプリガン』、大友克洋『AKIRA』 - 中学時代にハマったアクション・バトル作品。
- 鳥山明『ドラゴンボール』 - お小遣いで初めて買った漫画。
- 成田亨の『ウルトラマン』デザイン - 怪獣・宇宙人のデザイン画集の「生々しさ」に惹かれており、特にバルタン星人がお気に入り。『ダンダダン』序盤に登場するセルポ星人は、成田の影響を受けたデザインだとされる。
- 映画『貞子vs伽椰子』 - 『ダンダダン』の発想の直接のきっかけ。
『ダンダダン』に昭和の特撮やオカルト雑誌を思わせる空気が漂うのは、こうした原体験が色濃く反映されているからだといえる。
主な作品[編集]
| 期間 | タイトル | 掲載媒体 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2010年9月 - 2011年4月 | 正義の禄号 | 月刊少年マガジン(講談社) | 連載デビュー作。引きこもりの高校生・正太が謎のロボット「禄郎」と合体してヒーローになる物語。全2巻 |
| 2013年2月 - 2014年8月 | FIRE BALL! | 月刊少年マガジン(講談社) | 剛速球「ファイアボール」を武器にする高校球児・片桐球児が主人公の野球漫画。全5巻 |
| 2015年 - 2019年 | 読切作品 | ジャンプSQ.など | 林士平の担当のもとで複数の読切を発表 |
| 2021年4月 - | ダンダダン | 少年ジャンプ+(集英社) | 代表作。2024年からテレビアニメ化 |
講談社時代の2作品は、『ダンダダン』のヒットを受けて集英社から改めて単行本化された。2024年には龍の単行本が7月から5か月連続で刊行され、その中に『正義の禄号』も含まれた。『FIRE BALL!』の新装版は2025年3月から刊行されている。かつて打ち切られた作品が、別の出版社から再び世に出るという、ヒット作家ならではの展開である。
ブレイク後の歩み[編集]
『ダンダダン』は連載初期から評価が高く、「次にくるマンガ大賞2021」Webマンガ部門で2位、「全国書店員が選んだおすすめコミック2022」で1位、「マンガ大賞2022」で7位に入った。
2024年10月にはサイエンスSARU制作のテレビアニメ第1期が毎日放送・TBSテレビ系で放送され、Netflixなどで世界配信された。主人公オカルン役の花江夏樹らの熱演と、Creepy Nutsによるオープニング曲「オトノケ」の大ヒットも追い風となり、作品の知名度は国内外で一気に跳ね上がった。2025年7月から第2期が放送され、同年12月のジャンプフェスタ2026では第3期の2027年放送が発表されている。
2026年1月14日には、『ダンダダン』が第71回小学館漫画賞の受賞作に選ばれた。同時受賞は『運命の巻戻士』『COSMOS』『出禁のモグラ』『ひらやすみ』の4作品。続く2026年3月には、令和7年度(第76回)芸術選奨文部科学大臣新人賞(メディア芸術部門)を受賞。文化庁の贈賞理由では、「オカルトとSF、青春と恋愛、恐怖と笑いを自在に融合させる破格の表現」が評価され、掲載誌を変えて始まった同作で作者の才能が解き放たれたことが漫画界にとっての成果だと位置づけられた。同じ回のメディア芸術部門新人賞は、アニメでオカルンを演じる花江夏樹も受けており、原作者と主演声優がそろって国の賞を受けるという珍しい形になった。
2026年2月には『ダンダダン』のジャンプ+での累計閲覧数が10億回を突破し、同サイトの作品として初の到達となった。担当の林はXでこれを報告し、作者の「圧倒的な執筆への情熱」と読者のおかげだとコメントしている。
SNSでの発信[編集]
龍は顔出しをしていない漫画家である。YouTubeでのインタビュー映像でもシルエット姿で登場した。
X(旧Twitter)のアカウントは@TatuYukinobu。登録は『ダンダダン』連載開始直前の2021年3月で、プロフィールは「ジャンプ+で『ダンダダン』を描いている」という一文だけのシンプルなもの。2026年10月時点でフォロワーは約30万人、フォロー数は35と少なめである。
投稿の中心は、毎週火曜日の最新話更新の告知。「本日火曜日、ジャンプ+で連載中のダンダダン第○話が更新されました、読んでいただけると嬉しいです」という趣旨の丁寧な告知を固定ポストにしており、2026年10月初めには第247話の更新を告知している。ほかにもネームやイラストが投稿されることがあり、ファンの楽しみになっている。
本人は自身を「すぐに不安になってしまう性格」と語っており、読者の反応を知るためにエゴサーチをよくするという。作品が「面白い」と言われているのを見ると嬉しくなるそうで、超人的な画力の持ち主にしては意外なほど繊細な一面がうかがえる。
炎上とバズ[編集]
- 第1話の100万PV - 『ダンダダン』第1話は公開2日で100万PVを突破。無名に近い作家のウェブ連載としては異例のスタートで、SNSで「画力がおかしい」と話題になった。
- 「最強のアシスタント」発言 - 藤本タツキが龍を最強のアシスタントと評したことはたびたび引用され、『チェンソーマン』ファンが龍を知るきっかけにもなった。
- アニメ化で世界的バズ - アニメ第1期のオープニング「オトノケ」がショート動画で爆発的に広まり、原作の部数も大きく伸びた。第2期では劇中歌がX JAPANの楽曲に似ていると話題になり、YOSHIKIが反応したこともニュースになった(アニメ制作側の話題で、龍本人の発言ではない)。
- 「大器晩成」の物語 - 二度の連載終了とボツ続きの時期を経てブレイクした経歴は、「諦めなければ報われる」実例として漫画家志望者のあいだで語られることが多い。
余談[編集]
- 名字の「龍」は「りゅう」ではなく「たつ」。初見で読み間違えられやすい。
- 漫画を始めるきっかけを作ったのは編集者でも先輩漫画家でもなく、アルバイト先のコンビニの店長。
- 漫画家としての最初の持ち込み先は『ガンダムエース』で、題材はガンダムだった。
- 『ダンダダン』の前に出してボツになった企画は「キョンシーもの」。もし通っていたら、まったく違う作品が世に出ていたことになる。
- 『FIRE BALL!』の主人公の名前は片桐球児。野球漫画らしい直球ネーミングである。
- 好きなウルトラ怪獣(宇宙人)はバルタン星人。成田亨のデザインの影響は『ダンダダン』の宇宙人にも表れている。
- 台湾・高雄では『ダンダダン』の期間限定ショップが開かれるなど、作品はアジア圏でも人気を集めている。

