概要[編集]
AV監督とは、アダルトビデオの制作において演出を担当する職能である。業界内では「ディレクター」と呼ばれることが一般的で、撮影現場の進行と映像編集に責任を持つ。
詳細[編集]
一般の映像制作では、企画・脚本・演出・撮影・編集・営業はそれぞれ別の担当者が受け持つ。アダルトビデオの制作現場では、これらの工程を監督が広く兼ねることが多い。制作規模が小さく、一本あたりにかけられる人数が限られているためである。
雇用の形は大きく二つに分かれる。メーカーに所属して継続的に撮影を担当する社員監督と、作品ごとに契約するフリー監督である。
兼務が生む「作家性」の所在[編集]
工程を一人で抱えるという条件は、負担の大きさであると同時に、作品の性格がその一人の判断でほぼ決まることを意味する。企画を立てた人物がそのまま撮り、編集し、題名まで付けるなら、途中で誰かの判断が入って平均化される機会がない。
この業界で監督個人の名前が識別子として機能してきたのは、この構造の結果である。ドグマのように、監督の作風がそのままメーカーの性格として語られる例もある。他の映像分野では監督の名前が前に出るのは一部に限られるが、分業が薄い現場ほど個人の判断が表に出やすいという関係は業種を問わず同じである。
一方で、兼務は求められる能力が分散するということでもある。企画を立てる能力と撮る能力と編集する能力は別であり、すべてを高い水準で満たす人物は多くない。
メーカー所属とフリーの違い[編集]
社員監督は、撮影の本数と収入が所属先の制作計画に連動する。企画が通れば継続して撮れるが、何を撮るかの判断は自分だけのものではない。
フリー監督は作品ごとに契約するので、複数のメーカーと仕事ができる。マキシングやセンタービレッジのような企画中心のメーカーが成立しているのは、固定の制作陣を抱えなくても作品を出せる形が業界にあるためでもある。ここでの構図はYouTuberにおける「収入が一つの経路だけに依存しているかどうかで、仕事を選べるかが決まる」という論点と同型である。
制度の変化が現場に及ぼしたもの[編集]
2022年のAV出演被害防止・救済法(AV新法)により、出演契約や撮影の手続きに法律上の定めが置かれた。監督は撮影現場の進行を担う立場にあるため、手続きの確認が業務の一部として組み込まれることになった。
それ以前は、日本ビデオ倫理協会やAV人権倫理機構といった業界団体の自主基準が同じ領域を扱っていた。線を引く主体が業界団体から法律へ移ったことで、確認の手順が現場側でも明文化された形である。この移行の評価については、手続きが明確になったとする見方と、法の対象外の範囲が残るという指摘の双方があり、決着していない。