概要[編集]
総合商社とは、特定の商品に限らず、エネルギー・金属資源・機械・化学品・食料・生活消費財など極めて幅広い分野で、貿易の仲介と事業投資を世界規模で手がける日本特有の企業形態である。三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅の「五大商社」がその代表格で、英語でも「sogo shosha」とそのまま呼ばれる。
詳細[編集]
どんな会社なのか[編集]
一般に「商社」は、メーカーと買い手の間に立って商品を売り買いし、その差額や手数料で稼ぐ会社を指す。鉄鋼専門・繊維専門のように分野を絞った商社は「専門商社」と呼ばれ、分野を問わず何でも扱う大手が「総合商社」と呼ばれる。
扱う範囲の広さを表す言い回しとして、昔から「ラーメンからミサイルまで」という表現が使われてきた。実際には、液化天然ガス(LNG)や鉄鉱石・原料炭といった資源の権益から、発電所・プラント、自動車の販売網、食品原料、衣料ブランド、コンビニエンスストアまでが一つの会社のグループに収まっている。
一般的には五大商社に豊田通商と双日を加えた7社が「七大商社」として総合商社に数えられる。五大商社はいずれも東京証券取引所のプライム市場に上場している。
「仲介屋」から「投資会社」へ[編集]
総合商社の本来の仕事は、日本が輸入する原料と輸出する製品の取り次ぎだった。しかし、メーカーが自前で海外に拠点を持ち、情報が行き渡るようになると、単なる仲介の手数料は取りにくくなる。1980年代前後には「商社不要論」「商社冬の時代」と呼ばれる時期があった。
そこで総合商社は、取引の相手先そのものに出資し、事業の持ち主として配当や利益を受け取る方向へ軸足を移した。鉱山やガス田の権益を持ち、発電所を建て、小売チェーンを傘下に入れる。現在の利益の大半は、この事業投資から生まれている。「商社」という名前は残っているが、実態としては世界中の事業に投資して経営する投資会社に近い。
資源に強い会社と非資源に強い会社[編集]
五大商社の性格は、利益の重心がどこにあるかで大きく分かれる。三菱商事や三井物産は、LNG・原料炭・鉄鉱石などの資源権益から大きな利益を得てきた。資源の利益は取得後は国際価格で大きく動くため、資源価格の上昇局面では巨額の利益を出す一方、下落局面では業績が落ち込みやすい。
これに対して伊藤忠商事は、繊維や食料、ファミリーマートをはじめとする小売など、生活消費に近い「非資源」分野に強みを持つ。同じ総合商社でも、資源価格に連動する会社と消費の積み上げで稼ぐ会社とでは、景気の波への反応がまったく異なる。
財閥系と非財閥系[編集]
五大商社のうち、三菱商事・三井物産・住友商事は、それぞれ三菱・三井・住友という旧財閥の系列に属する。これに対して伊藤忠商事と丸紅は、近江商人の伊藤忠兵衛が始めた繊維の商いを源流とする、財閥を母体としない商社である。
財閥系の商社は、同じグループの銀行・メーカー・不動産会社という取引先を最初から持って出発できた。非財閥系の商社にはそれがなく、取引先を一から開拓する必要があった。伊藤忠が非資源分野や小売に強くなった背景には、この出発点の違いがあると説明されることが多い。
ウォーレン・バフェットの投資[編集]
2020年8月、米国の投資家ウォーレン・バフェットが率いる投資会社バークシャー・ハサウェイが、五大商社の株式をそれぞれ5%超取得したことを公表し、大きな話題になった。長期保有を前提にした投資で、その後も段階的に買い増しが続き、2026年5月までに五社すべてで保有比率が10%を超えたと報じられている。
米国を代表する投資家が日本の総合商社を買ったことは、それまで国内では「古い業態」と見られることもあった総合商社を、世界中の事業を束ねた分散投資の器として再評価するきっかけになった。株価も大きく上昇し、日本株への海外投資家の関心を高める材料の一つになった。
就職先としての総合商社[編集]
総合商社は、大学生の就職人気ランキングで長年上位に入り続けている。高い給与水準に加え、若いうちから海外駐在を経験できること、扱う事業の規模が大きいことが人気の理由とされる。三菱商事の平均年収は2,000万円を超えており、上場企業の中でも最上位の水準にある。
採用枠が少ないため入社は難関とされ、採用実績校には東京大学・慶應義塾大学・早稲田大学などが並ぶ。一方で、長時間労働や転勤・海外駐在の多さといった働き方の厳しさも、たびたび指摘されてきた。
世界の中での位置[編集]
海外にも資源商社や貿易会社は多数存在するが、資源から食品・小売まで何でも扱い、しかも世界中の事業に出資して経営まで担う巨大企業が複数並び立つ形は、日本以外ではほとんど見られない。英語の経済記事でも「sogo shosha」と日本語のまま書かれることが多いのはこのためである。
海外からは、多角化しすぎて何をしている会社か分かりにくい「コングロマリット」として割り引いて評価されることもあった。バフェットの投資以降は、その分かりにくさ自体が、景気の波を分散できる強みとして語られることが増えている。