「スマートフォン」の版間の差分

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かつて別々の機械だったもの(カメラ、音楽プレーヤー、目覚まし時計、地図、電卓、懐中電灯、ゲーム機)が一台に吸収された結果、それぞれの単体市場は縮小した。一方で、一台に集約されたことで「その機械でしかできないこと」を作れる分野は生き残っており、[[ゲーム]]専用機が消えなかったのはその一例である。何でも入る箱ができたときに残るのは、入ることを拒める性能を持ったものだった。
かつて別々の機械だったもの(カメラ、音楽プレーヤー、目覚まし時計、地図、電卓、懐中電灯、ゲーム機)が一台に吸収された結果、それぞれの単体市場は縮小した。一方で、一台に集約されたことで「その機械でしかできないこと」を作れる分野は生き残っており、[[ゲーム]]専用機が消えなかったのはその一例である。何でも入る箱ができたときに残るのは、入ることを拒める性能を持ったものだった。
一台に集約されたことは[[広告]]の届き方も変えた。世帯ではなく個人に届くようになったため、誰に見せるかを選ぶ技術が価値を持ち、[[SNS]]や検索の事業が成立する条件が整った。[[電子書籍]]や音楽配信、決済が同じ端末に乗ったことで、見る・買う・払うが一続きの操作になった点も、以前の携帯電話とは性質が違う。


[[Category:企業・サービス]]
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[[Category:インターネット]]
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2026年9月18日 (金) 18:27時点における版

概要

スマートフォンとは、通話機能を持つ携帯端末のうち、利用者が自由にアプリケーションを追加して機能を増やせるものを指す。電話に付加機能が付いた製品ではなく、通話がひとつの機能にすぎない小型のコンピュータであり、この位置づけの転換が生活と産業の両方を作り替えた。

詳細

電話ではなく持ち歩く計算機

従来の携帯電話は、作った会社が決めた機能の範囲内で使う道具だった。搭載する機能は発売時点で確定し、後から増やすことはほとんどできない。

スマートフォンの決定的な違いは、端末を売った後に機能が増え続けることである。誰でもアプリを作って配れる仕組みが用意されているため、端末の用途は製造元が想定していない方向へ広がっていく。地図も財布も定期券もカメラも、端末の設計時に部品として入っていたのではなく、後からアプリとして乗ってきた。この「出荷後に用途が決まる」構造は、インターネットが「接続の作法だけを決めて中身は各自に任せた」のと同じ発想である。

家にあるものの順位が入れ替わった

総務省の通信利用動向調査では、2025年調査でスマートフォンの世帯保有率が91.8%となり、テレビの90.1%を初めて上回った。個人のインターネット利用も端末別ではスマートフォンが74.4%で、パソコンの46.8%を大きく引き離している。

この逆転が重いのは、順位が変わったことより「一人に一台」と「一家に一台」の違いにある。テレビは家族が同じ画面を囲む機械であり、何を見るかは同居する人の間で調整される。スマートフォンは各人が別々の画面を持ち、誰が何を見ているかは同じ家にいても分からない。視聴率の測り方が世帯から個人へ移らざるを得なかったのも、広告が「どの家に届くか」ではなく「どの人に届くか」を売るようになったのも、この一台の性質の違いから説明できる。

縦に持つことが表現を変えた

スマートフォンは片手で持つため、画面は縦長で使われるのが標準になった。映像も文章も、長い間は横長の画面に合わせて作られてきたので、これは作り手にとって条件の変更である。

縦読みの漫画(ピッコマLINEマンガが広めた形式)が、見開きを前提とする従来の漫画と別の作法を持つのはこのためである。ページをめくるのではなく指で流し続けるので、区切りは紙の端ではなく作り手が置いた空白になる。TikTokや短尺動画が縦画面を前提にしているのも同じで、横長の映像を縦の画面に収めると人物が小さくなり、顔と表情を見せる作りが成立しない。

画面の形が内容を決めるという言い方は大げさに聞こえるが、実際には「その画面でしか成立しない作り」が先に定着し、後から作品の側がそちらへ寄っていく順序をたどっている。

いつでも見られることが時間の使い方を変えた

放送は時刻が決まっており、見るためには生活の側を合わせる必要があった。手元に常に端末があると、この関係が逆になる。数分の空き時間に見られるものが増え、一本あたりが短くなり、途中から見ても分かる作りが有利になる。

TVerABEMAの見逃し配信、YouTubeの短い動画、TwitchVTuberの長時間配信を途中から視聴する習慣は、いずれも「決まった時刻に画面の前にいる」という前提が外れたところに成立している。

便利さの引き換えに起きていること

常に持ち歩く機械が位置情報と利用履歴を持つことは、地図や決済が成り立つ前提であると同時に、行動が記録され続けることでもある。総務省の調査では、インターネット利用者の約7割が利用時に何らかの不安を感じていると答えている。

依存や睡眠への影響を問題視する立場と、機械の性質ではなく使い方の問題だとする立場があり、どちらの主張にも研究が付いていて、決着した論点とは言いがたい。

余談

「スマートフォン」という言葉は日本では2008年前後から一般化したが、それ以前にも同じ性格の端末は存在していた。普及の分かれ目になったのは技術そのものより、指で直接触って操作する方式と、アプリを配る場所が用意されたことの二点だとされる。どちらも「使い方を覚えなくても使える」「使い道を売り手が決めなくてよい」という、機能表には載らない性質である。

かつて別々の機械だったもの(カメラ、音楽プレーヤー、目覚まし時計、地図、電卓、懐中電灯、ゲーム機)が一台に吸収された結果、それぞれの単体市場は縮小した。一方で、一台に集約されたことで「その機械でしかできないこと」を作れる分野は生き残っており、ゲーム専用機が消えなかったのはその一例である。何でも入る箱ができたときに残るのは、入ることを拒める性能を持ったものだった。

一台に集約されたことは広告の届き方も変えた。世帯ではなく個人に届くようになったため、誰に見せるかを選ぶ技術が価値を持ち、SNSや検索の事業が成立する条件が整った。電子書籍や音楽配信、決済が同じ端末に乗ったことで、見る・買う・払うが一続きの操作になった点も、以前の携帯電話とは性質が違う。

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