ThisAV
ジスエーブイ
国家 香港(運営会社は香港法人と認定されている)
種類 アダルトサイト(動画共有型・閉鎖済み)
業種 動画配信
廃業日 2023年1月
別名 thisav、ディスエーブイ
リンク なし(2023年1月に閉鎖、2025年1月に旧ドメインが原告側へ移転)


概要[編集]

ThisAV(ジスエーブイ、ディスエーブイとも。小文字で「thisav」と表記されることもある)とは、香港を拠点に運営されていた、利用者投稿型のアダルト動画共有サイトである。日本のアダルトビデオ作品をはじめ、権利者の許諾を得ていない動画を大量に掲載していた海賊版サイトの一つで、中華圏では「老舗」として知られ、日本からの利用も多かった。MissAVやJable.tvと並べて語られることが多い。

2023年1月初めに予告なくアクセスできなくなり、その後は運営が再開されていない。さらに2025年1月には、日本の制作会社ウィル(Will Co., Ltd.)が米国で起こした著作権侵害訴訟の判決により、元のドメインが MissAV の旧ドメインなどとともに原告側へ移転された。

詳細[編集]

歴史・特徴[編集]

ThisAVは2009年ごろに開設されたとされ、香港の成人向けサイトとしては比較的古くから存在していた。会員登録をしなくても無料でストリーミング視聴でき、ダウンロードの必要がない手軽さが特徴だった。掲載動画は利用者がアップロードする形式をとっており、日本のAV作品のほか、中華圏の作品や海外のポルノ作品など、正規の許諾を得ていない侵害コンテンツを幅広く集約していた。海外運営のサイトであるため、日本国内では販売・配信されない無修正の作品も掲載されていたとされ、この点はMissAVやSupJavといった後発のサイトにも共通する。

米国の裁判記録によると、サイトの運営主体は香港の会社 YouHaHa Marketing and Promotion Limited で、その取締役である香港永住者の個人がドメイン名とドメインのプライバシー保護サービスを購入していたと認定されている。2021年2月時点で掲載動画は22万1,541本にのぼり、収益は第三者の広告主に広告枠を販売することで得ていた。サーバーは米国ユタ州のホスティング事業者に置かれ、配信には Cloudflare のCDNが使われていた。2020年4月〜6月の約2,800万ページビューのうち4.6%(130万件以上)が米国からのアクセスだったとされる。

収益源が広告である以上、表示される広告には成人向けの怪しいものが多く、香港の報道では、閉鎖時に利用者が「ゾンビのような広告」を思い出として挙げていたことも伝えられている。

香港社会との関わり[編集]

ThisAVは、香港の社会運動に対してたびたび立場を表明したことでも知られていた。2012年には、中高生らによる「国民教育」科導入への反対運動(いわゆる反洗脳運動)を支持して、サイトを一時的に停止したと報じられている。その後も2014年の雨傘運動(占領中環)への支持を示すなど、成人向けサイトでありながら政治的な発言をすることで香港のネット上で話題になった。2019年には逃亡犯条例改正への反対を呼びかける声明を出したとも報じられた。

2023年の閉鎖[編集]

2023年1月初め、ThisAVは告知なしにアクセスできなくなった。台湾の複数のメディアは「10年運営された老舗成人サイトが予告なく閉鎖」と報じ、掲示板のPTTやDcardでは「古い名作はあそこにしかなかった」「お気に入りのリストが消えた」と惜しむ声が多く投稿された。閉鎖当時、ドメインが売りに出されているような表示になっていたという利用者の報告もあった。

閉鎖の理由について運営側の公式な説明は出ていない。ただし、後述する米国の訴訟では、2023年4月の時点で被告側が「ThisAV.comはもう運営していない」と主張していたことが裁判所の決定に記されている。

ドメイン差押え訴訟[編集]

ThisAVの元ドメインに決定的な影響を与えたのが、ウィル(Will Co., Ltd.)が2020年に米国ワシントン州西部地区連邦地方裁判所に起こした著作権侵害訴訟(事件番号 3:20-cv-05802)である。ウィルは、自社の著作権のある動画13本が無断でThisAVに掲載されているとして、運営会社と取締役個人を訴えた。

被告は香港の会社と個人であり、米国の裁判所に管轄権がないと争った。地裁は2021年6月に人的管轄権がないとして訴えを却下したが、ウィルが控訴した結果、第9巡回区控訴裁判所は2022年8月、ThisAVが米国向けの広告を販売し、米国法(DMCAや記録保存義務に関する連邦法)に対応したページを設けていたことなどから、米国の利用者を意図的に狙っていたと判断し、却下を取り消して差し戻した。差し戻し後の2023年4月、地裁は改めて管轄権を認めている。外国の海賊版サイトの運営者を米国で訴えられるかという点で、この控訴審判決はネット法の分野でも注目された。

その後ウィルは訴状を修正し、MissAVなどの関連サイトも対象に含めた。被告が修正後の訴状に応答しなくなったため、地裁は2025年1月7日に欠席判決を言い渡した。判決は、ウィルの作品50本が少なくとも6つのサイトに掲載され、計300件の侵害があったと認め、1件あたり1万5,000ドル、総額450万ドルの法定損害賠償を命じた。ウィル側は1件あたり上限の15万ドルを求めていたが、実際の損害の立証が不十分だとして減額されている。このほか、弁護士費用など約7万7,000ドルの支払いと、今後の侵害を禁じる恒久的差止めも命じられた。

あわせて裁判所は、.comドメインを管理するVerisignに対し、thisav.com・missav.com を含む7つのドメインを無効化し、原告側に移転するよう命じた。2025年1月13日ごろから、これらの旧ドメインにアクセスすると、違法アップロード動画を扱う海賊版サイトであったため法的手続きによってドメインが没収された旨と、正規に作品を流通させているFANZAの利用を促す告知が表示されるようになった。日本のSNSでは「FANZAがドメインを取得した」として広く話題になり、正規事業者が海賊版サイトのドメインそのものを無力化した事例として注目された。なお、判決で移転先とされたのは原告のウィルであり、FANZA(DMMグループ)が訴訟当事者だったわけではない。

日本の法制度との関係[編集]

日本の著作権法では、2010年1月施行の改正により、違法にアップロードされたものと知りながら音楽・映像をダウンロードする行為が違法となり、2012年10月からは、有償で提供されている作品について刑事罰の対象となった(2年以下の拘禁刑〈2025年6月の刑法改正前は懲役〉もしくは200万円以下の罰金、またはその併科)。2021年1月施行の改正では、ダウンロード違法化の対象が漫画・書籍・論文など著作物全般に広げられた。

一方、ストリーミング形式でその場で再生するだけの行為は、こうしたダウンロード規制の対象には含まれないと解されるのが一般的である。ただし、専用ソフトなどで動画を保存すれば規制の対象となりうる。また、動画をアップロードした側は、公衆送信権の侵害として視聴者よりはるかに重い責任を問われる。

無修正作品については、著作権とは別に、刑法175条(わいせつ物頒布等)が配信・販売する側に適用されうる。海外のサーバーから配信されている場合でも、日本国内で運営や販売に関与していれば摘発対象になった例がある。

業界・権利者側の動き[編集]

ThisAVをめぐる訴訟は、日本のアダルトビデオ業界が海外の海賊版サイトに対して、運営者の所在地以外の国の裁判所を使って法的措置をとった例として位置づけられる。サイトが米国のサーバーやCDN、.comドメインを利用していたことが、米国での訴訟とドメイン移転を可能にした。

判決後、旧ドメインの告知がFANZAへの誘導を含んでいたことから、日本では業界側の海賊版対策の一環として受け止められた。一方で、同じ判決で旧ドメインを失ったMissAVは直後に別のドメインで運営を続けたと報じられており、ドメイン単位の措置だけでは海賊版サイトそのものの停止にはつながりにくいという限界も指摘されている。

日本の業界団体としては、AVメーカーなどが加盟する知的財産振興協会(IPPA)が違法アップロード対策に取り組んでいるほか、アニメ・漫画などを中心に海外の海賊版対策を行うコンテンツ海外流通促進機構(CODA)が各国の捜査機関と連携した摘発を進めている。ただし、ThisAVの閉鎖や訴訟にこれらの団体が関与したかどうかは公表されていない。

閉鎖後の状況[編集]

2023年1月の閉鎖以降、元の運営によるThisAVの再開は確認されていない。一方で、ThisAVの名前や似た名称を使い、「ThisAVの後継」「復活版」などをうたうサイトが現れることがある。これらは元のThisAVと運営上のつながりを示す情報がなく、名前の知名度を利用しているだけの別サイトとみられている。

こうした名前だけを借りたサイトは、偽のウイルス警告やアプリのインストール誘導、当選をうたう詐欺広告など、マルウェア感染や個人情報の窃取につながる広告を多く表示する傾向があると指摘されている。また、掲載されている動画が権利者の許諾を得ていない点は元のThisAVと変わらず、法的なリスクもそのまま残る。

稼働していた当時から、ThisAVを利用するとウイルスに感染するのではないかという口コミや相談は多く見られた。サイト本体が直接ウイルスを配布していたという確かな記録はないが、海賊版サイトの多くは大手の広告ネットワークを使えず、審査の緩い成人向け広告に頼るため、トラブルの多くは広告経由で起きるとされる。

正規の配信サービス[編集]

日本国内では、権利処理をしたうえでアダルト動画を配信する正規のサービスとして、FANZA(DMMグループ)、MGS動画、DUGAなどがある。購入・レンタル・月額見放題など形態はさまざまで、売上の一部がメーカーや出演者に還元される点が海賊版サイトとの大きな違いである。

よくある疑問[編集]

ThisAVは今も見れる?[編集]

見られない。ThisAVは2023年1月に閉鎖され、元の運営による再開は確認されていない。元ドメインは2025年1月の判決で原告側に移転され、現在は没収を知らせる告知が表示されるだけである。

なぜ見れなくなった?[編集]

直接の理由は、2023年1月にサイト自体が運営を停止したことである。停止の理由について運営側の説明はないが、当時ウィルによる米国での著作権侵害訴訟が続いていた。その後、2025年1月の欠席判決で元ドメインが原告側に移転されたため、旧アドレスでもサイトにたどり着けなくなった。

見るだけで違法?[編集]

日本の著作権法では、ストリーミングでその場で再生するだけの行為は、ダウンロード違法化の対象には含まれないと一般に解されている。ただし、動画を保存すれば違法ダウンロードにあたる可能性があり、有償作品であれば刑事罰の対象にもなりうる。法律とは別に、広告経由の詐欺やマルウェアの被害を受けるリスクもある。

運営者は誰?[編集]

米国の裁判所は、香港の会社 YouHaHa Marketing and Promotion Limited と、その取締役である香港在住の個人がThisAVを運営していたと認定している。ただし被告は途中から訴訟に応答しなくなっており、命じられた賠償金が実際に支払われたかどうかは公表されていない。

後継サイトは安全?[編集]

「ThisAVの後継」をうたうサイトは、元のThisAVとの関係が確認できないものがほとんどである。詐欺広告やマルウェア誘導が多いと指摘されているうえ、掲載動画が無許諾である点も変わらないため、法的・技術的なリスクは元のサイトと同等かそれ以上とされる。

MissAVとはどういう関係?[編集]

2025年1月の判決では、ThisAVとMissAVの旧ドメインが同じ被告に関連するサイトとしてまとめて移転を命じられた。両サイトの運営上の関係の詳細は公表されていないが、同じ訴訟の対象になったことから、日本では一緒に語られることが多い。

余談[編集]

  • MissAV・Jable.tv・SupJav・Avgle・TKTube・Tokyomotionなど、同種のアダルト動画サイトと比較・混同されることが多い。
  • 「ジスエーブイ」「ディスエーブイ」「thisav」などの表記で検索されることが多い。
  • 第9巡回区控訴裁判所の判決は、海外のサイトがCDNを使って米国の利用者に配信していたことが管轄権を認める一因になった例として、米国の法律ブログなどで紹介された。成人向け海賊版サイトの事件が、インターネットと裁判管轄をめぐる判例として扱われることになった。
  • 香港では、政治的な声明を出す成人サイトとして一種の名物的な存在だった。2023年の閉鎖時には、台湾や香港のメディアが「老舗サイトの閉鎖」をニュースとして取り上げている。
  • 訴訟で問題になった作品は当初13本だったが、修正後の訴状では50本・300件の侵害に拡大された。日本語の解説では「300作品」と書かれることがあるが、判決の認定は「50作品×少なくとも6サイト=300件」である。

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